スマートフォンが消滅した後の世界

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Stephen Lam/getty images

そのうち、すぐにではないかもしれないが、あなたが思うよりも早く、スマートフォンは消え去るだろう。ポケットベルやファックスがそうであったように。

とはいえ、スマートフォンから次のテクノロジーに移行するまでに、少なくとも後10年はかかるに違いない。

来るべきスマートフォンの消滅に備えて、起業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏やマイクロソフト、Facebook、アマゾンが新たな時代のための基盤づくりを進めており、数えきれないほど多くのスタートアップ企業もその役割の一端を担っている。

スマートフォンが実際に消滅するとしたら、その時こそが、奇妙で混乱した時代の始まりだ。その先の未来にはどのようなデバイスが登場するのだろうか。我々の日常生活がどのように変わるのだろうか。はたまた、人類はどうなってしまうのだろうか。

ゆっくりと、しかし確実に消滅へと向かっているスマートフォンの歩みと、スマートフォン以後の世界を見てみよう。

スマートフォンの今とこれから

スマートフォンは革命的な道具だ。小型でどこにでも持ち運ぶことができ、日常のさまざまなタスクをこなしたり、カメラとGPSセンサーを活用した「Snapchat」や「Uber」などユニークなアプリも登場した。

デスクトップPCやノートパソコンには、マウスやキーボード、モニターが付属しているが、スマートフォンにはそれら全ての機能が取り込まれ、触れることで入力ができるようになった。

このほど発売されたGalaxy S8はベゼルレス(縁なし)の美しいデザインで、高い機能性を有している。素晴らしい製品ではあるが、しかし、革命的というよりはむしろ、これまでの製品の改良版という位置づけに過ぎない。音声アシスタント機能「Bixby」を備え、将来的には声だけで全ての機能やアプリがコントロールできるようになるという。米国のサムスンストアでは、Galaxy S8を予約購入すると、バーチャルリアリティ(VR)ヘッドセット「Gear VR」の新機種も特典としてついてくる。さらにはOculusのコンテンツも利用可能だ。

サムスンのGalaxy S8

サムスンのGalaxy S8

Business Insider

iPhoneの最新モデルも、アップグレードした「Siri」を搭載し、さらには拡張現実(AR)の機能も備えるとの噂だ。

Amazon EchoSony PlayStation VRApple Watchといったデバイスは、まだ大きな広がりはないものの、相当の成功を収めている。今後も多くの企業が、新たなコンピュータインターフェイスの開発に向けて、実験的な試みを行っていくことだろう。

新たな技術への移行

これまで蓄積されてきた実験的な試みや技術は、次第にまとまりを見せ、現時点では想像もつかないものへと変化していくだろう。

マイクロソフト、Facebook、グーグル、(グーグルが出資している)Magic Leapといった企業は、リアルな3Dのイメージを映し出すARヘッドセットの開発に取り組んでいる。さらにはアップルも同様の取り組みをしていると噂されている

マイクロソフトのアレックス・キップマン(Alex Kipman)氏は、スマートフォンやテレビなどディスプレイを備えた機器は、ARにすっかり置き換えられてしまうだろうと、Business Insiderに語った。「通話やチャット、映画、ゲームが全て自分の視界に投影されるようになれば、個別のデバイスの必要性はなくなる」

アップルのワイヤレスイヤホンAirPods

アップルのワイヤレスイヤホンAirPods

Hollis Johnson/Business Insider

「Amazon Echo」や「AirPods 」などのデバイスは、重要性が一段と高まってくる。アップルのSiriやアマゾンのAlexa、サムスンのBixby、マイクロソフトのCortanaといった人工知能システムはいっそう賢くなり、より意味のある会話ができるようになるだろう。

言い換えると、テクノロジーを介して「現実が拡張される」ことで、人間の感覚は今以上にコンピュータにハイジャックされることになるだろう。あなたが身の回りをどのように見るかということを、Facebookがコントロールするという世界もあり得るのだ

現実の世界とテクノロジーが、継ぎ目なくなじんでいくことが期待されており、そのような未来であれば、技術的な混乱は少なく、よりバランスの取れた世界になると、主要テクノロジー企業は考えている。

本当に奇妙な未来とは

これまで述べてきたテクノロジーを使うには、今後10年ほどは、まだ眼鏡のようなデバイスを着用する必要がある。最もクレイジーで未来志向で、予測不可能な進化は、さらに何十年か先に待っている。

起業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏はこのほど、Neuralinkという企業を立ち上げたと発表した。開発されたばかりの技術「neural lace」を用いて、脳内にコンピュータの構築を目指している。デジタルの世界と身体的な世界との融合、すなわち人間と機械を1つにしようという全く新しい取り組みだ。

脳内でのコンピュータの構築が現実のものとなると信じている人は多く、これはスマートフォンから始まった進化が最終的に行き着く所でもある。スマートフォンが情報へのアクセスを可能にし、ARが必要な情報を目の前に提示し、脳内のコンピュータが情報とのギャップを埋めることになる。

未来学者のレイ・カーツワイル氏

未来学者のレイ・カーツワイル氏

Tech Insider

マスク氏は、音声アシスタントやVRを含むさまざまなテクノロジーを支える人工知能の発達が、今の取り組みにつながっていると述べている。つまり、人間は機械化に追い付くために、自らをアップグレードさせる必要があることを意味している。このことについては、未来学者のレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)氏が議論をリードしている。

人間と機械の融合というのは、恐ろしさを感じさせるアイディアだ。サイエンス作家や科学技術者、哲学者は「そもそも人間とは一体何なのか」と疑問を持つだろう。このアイディアはまだ非常に新しいため、それが実現した世界がどのようなものなのか、誰もよく分かってない。

スマートフォンが消滅するとしたら、それは単に1つの時代でなく、いくつもの時代の終わりを意味する。デバイスを持ち歩く時代は終わり、人間の体が直接デジタル情報の波長を受け止める時代の始まりである。

とはいえスマートフォンは、知識や知恵へのアクセスを可能にし、我々にもともと備わっている能力をはるかに超えるスーパーパワーを与えてくれるものだと、多くの科学技術者が指摘している。と同時に、人間の思考を拡張することが、究極のスーパーパワーとなるかもしれない。こう考えるのは楽天的だろうか。

[原文:The smartphone is eventually going to die, andthen things are going to get really crazy)

(翻訳:仲田文子)

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