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IMF、日本の変動相場制へのコミットメントを支持
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
IMFの4条協議のプレスリリースは、4条報告書に関し24理事室が見解を提出し、これを踏まえて事務方が執筆します。実際に殆ど出なかった見解をプレスリリースに書いてしまうとさすがに理事会で怒られるので、それなりに各理事室の実際の見解を踏まえたものです。この中で、変動相場制の意義を改めて再確認するような文言が織り込まれるのは、ちょっと珍しいことかなと感じます。
もちろん、財務省は介入に際し、あくまで急激な変動に対処するものと説明し、「円高」「円安」といった水準判断に関する文言は一切使っていませんし、植田総裁も「為替レートが『物価に影響を及ぼすのであれば』政策対応の事由となる」と説明しておられます。このように今の政策当局者が国際的なマクロ政策の共通理解を熟知しておられることは良かったなと感じます。
イエレン米財務長官、G7国による為替介入に後ろ向きな見方繰り返す
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
インタビューを動画で拝聴しましたが、イエレンさんは慎重にG7の共通見解を繰り返しておられ、これは日本も同意しているものです。
https://www.youtube.com/watch?v=FckAFhAWpZk
(12分頃から)“Major countries like those in the G7, and this has been agreed in the G7, should have market determined exchange rates. And if intervention occurs, it should be rare, well communicated and largely address excessive fluctuations" "Difference in the stance of monetary policy across countries is a factor that influences the value of exchange rates"
このように、イエレンさんの発言は個人的見解ではなくG7の共通見解ですし、日本も介入についてはあくまで「極端な変動に対応」と説明している訳ですので、日本語版の記事のタイトルに敢えて「後ろ向き」とつけてしまうのは、日本が特殊な国と思われないかとちょっと心配してしまいます。
【緊急解説】いま「超円安」が止まらない理由
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
IMFのOBとして、テクニカルですが内容について一点。
変動相場制を採る先進国において為替介入は極めて限定的な手段であるべきという事はIMFも共有する共通認識ですが、同時に、IMFは主権国家に政策を「命令」する主体ではありません。したがって「介入は半年間に3回まで」といったルールをIMFが定めることはありません。
IMFの考え方はPrinciples for the Use of Foreign Exchange Interventionに纏められており、その記述は以下の通りです。(https://www.imf.org/en/Publications/Policy-Papers/Issues/2023/12/20/Integrated-Policy-Framework-Principles-for-the-Use-of-Foreign-Exchange-Intervention-542881)
FXI should be used only when shocks are assessed
as large enough to approach the tails of the distribution.(介入は過大な変動への対処としてのみ用いられるべき)
FXI should not be used as a substitute for warranted adjustment of macroeconomic (monetary and fiscal) policies.(介入は金融政策・財政政策の代替として用いられるべきではない)
FXI should be integrated within the overall policy response.(介入は政策運営全体と整合的であるべき)
これらはあくまで、世界の政策当局者が共有する常識的理解を記述したものです。
【3分解説】円安は158円台に。それでも日銀が「動かない」理由
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
良く整理しておられると思いますが、取り上げられていない論点を一点。
いわゆる「非伝統的緩和」の中で、長期金利ペッグ政策(米国ではYCT、日本ではYCCと呼ばれていました)は最もエグジットが容易ではない手段です。この手段は、財政も含めさまざまな経済主体による、低金利継続を前提とする行動に繋がるものであり、まさにそこに緩和効果を生み出そうとしたものとも言えます。それだけに、「先行きの政策の機動性」という、非常に分かりにくいものを犠牲にする面があります。
米国FRBが2020年6月に包括的な議論の末、長期金利ペッグ政策について、プラスよりマイナスが大きいとしてこれを採用しなかったのもこの事情によるものです。また日本銀行も現時点では従来同様のペースでの国債買入れ継続を余儀なくされています。現在の状況は、まさに非伝統緩和からのエグジットのhardshipの一側面という見方もできるように思います。https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20200610.htm
なお、非伝統緩和からのエグジットの大変さについては、植田先生自身が、約20年前の審議委員からのご退任時に以下のように示唆に富む発言をしておられます。ご関心があればご一読ください。
「上手く出口に行くとすると、今日出たような、あるいは出ていないような様々な問題が待ち構えていることは間違いない訳であり、これまで以上に難しいかもしれないし、もしも出口に行けなかったとすると、これはこれまで以上にまた大変な目に遭われることも間違いない訳である。」
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2005/gjrk050406a.pdf
日銀・植田総裁「基調インフレ上昇続けば利上げ」 ワシントンの講演で
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
当局側の事務方が原稿や想定問答を書く際には「メディアにどこを切り取らせるか」は当然気にします。報道されている発言も、当局側は「あくまで『物価に跳ねれば』と言っているのだからオーソドックスな政策運営の考え方の範囲内」と言うでしょう。一方で、受け止める側の相当数が「『緩和継続』を強調していたマイナス金利解除前とは変わってきたな」と受け止めるのも当然と感じます。
問題は、メディアを通じた刷り込みの手法を多用し過ぎると、メディアや市場が総裁発言の一字一句に過度に注目し、それがボラティリティを高めかねない、ということかと思います。
「普通の政策」に戻ったのであれば、説明も中央銀行としての「普通の説明」、すなわち、政策委員会から正式に公表される物価見通しと物価目標などの相対的関係を中心に据え、それ以外の発信は慎重に行うといったコミュニケーションに徐々に移行していくことが、長期的には望ましいと感じます。
【3分解説】円安が止まらない3つの理由
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
理由をいくつかに分けることはできても、結局は経済のファンダメンタルズが根源だと思います。米国があれだけ利上げをしても経済が強くインフレ率もなかなか下がらないので利下げができないというのは「ファンダメンタルズの強さ」と言えます。同様に、「日本は『緩和的環境が続きます』と敢えて強調しないと実体経済や財政が耐えられない」と市場が見透かしているのであれば、それもファンダメンタルズの一要素です。為替の議論をするのであれば、表層的な交換比率の奥にあるファンダメンタルズの差をどう埋めていくのかという政策論に繋げていくことが大事だと思います。
為替介入を容認=過度の市場変動なら―IMF幹部
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
そもそもIMFは、個別国の為替介入の認否を決める機関ではありませんし、そうしたことに巻き込まれるこてをIMF自身避けたがっています。
また、「変動相場制採用国の為替介入はあくまで急激な変動への対処として行われるべきであり、特定の水準防衛を目的とすることは不適切である」というのはIMFの一貫した立場であり、これまでも言い続けてきています。
このように、一局長の質疑応答での、さらにIMFとしての公式見解を繰り返す発言が「介入容認云々」と切りとられて報道されること自体が、日本における為替(というか、日本の場合は特に円ドルレート)を巡る議論の特殊性を感じます。ここまで為替介入がニュースになりやすい国は、フロート制を採る先進国でちょっと他に見当たりません。
実質賃金、プラスは夏以降か=リーマン時に並ぶ23カ月連続減―2月調査
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
「実質賃金の『前年比』プラス云々」という論争は、あまりサイエンスとして意味があるようには感じられず、多分に「作られた論争」という印象を受けます。
・まず、賃金は典型的な遅行指標ですので、インフレの進行局面で賃金上昇率が物価上昇率を上回ることはもともと困難です。実質賃金上昇率がインフレ率を上回るのは、多くの国々で「インフレ鎮静化局面」です。(今次局面の米国も。)
・また、計算上の問題として、本来重要なのは「レベル」です。たとえば、物価が急に2倍に(例えば指数が100から200に)上がり、その後指数が横ばいであれば1年後に前年比はゼロになります。一方で賃金が年率3%ずつキャッチアップすれば、水準では全然追いつけない段階であっても「前年比」はインフレ率を超えます。
・実質賃金を問題にするのであれば単月の振れで超えた超えないを議論することの意味は乏しく、中期的、趨勢的にどうかが重要です。その決定要因は日本経済全体の生産性や構造改革であり、そのコンテクストで議論していくことが有益と感じます。
給与デジタル払い、開始見通せず=解禁1年弱、長引く業者審査
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
ビジネスの可能性を広げる規制改革は、基本的に良い事だと感じます。
その上で、海外においてノンバンクのデジタルペイメントサービス経由の給与支払が伸びているケースは、実際には(東欧からの移民や出稼ぎ労働者の方々など)銀行口座開設が難しい方々を主なターゲットとするものが目立ちます。一方日本では、人口の10倍近い預貯金口座が存在するなど、既に銀行サービスが広く浸透しているという環境の違いがあります。
したがって日本では、ノンバンクのデジタルペイメントサービスが、(単なる「顧客囲い込み」の手段を超えて)銀行口座を超える利便性とネットワーク外部性を提供できるかが問われるだろうと思います。
日銀政策は「正常化すべき時」、財政への忖度不要-吉川東大名誉教授
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
さすがは吉川先生、と感じました。
非伝統緩和、とりわけ長期金利への介入の副作用として、わかりやすい事象として市場機能や中銀財務の問題が挙げられることが多いですが、これらは(決して重要でないとは言いませんが)副次的な問題です。本質的に考えるべきは、財政規律への影響などを通じた資源配分への影響であり、不確実性に対処する手段としてのマクロ政策の柔軟性への影響です。このような、短期的には見えにくいが本質的な問題をズバリと指摘しておられることに感服しました。
また、「賃金と物価の好循環」という掛け声に対する冷静な見方も、さすがと思いました。
人口7割のドイツにGDPで抜かれた日本「世界4位で騒ぎ過ぎ」と語る人たちが分かっていないこと
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
拝読致しました。実体験に照らしても、共感する所が多くございました。
・本当に円安は一時的と考える市場参加者が多数であれば、為替レートは直ちに円高方向の力が働く筈です。理論的に詰めて考えるほど、現在市場で形成されている為替レートを前提に考えざるを得ません。
・実際、IMFの各国の議決権を定める「クォータ」の計算式でも、(一部PPPも配慮はされてはいますが)基本的には市場為替レートに基づくGDPが主な決定要素とされています。
市場為替レートに基づくGDPが、国際機関のポスト取りなども含めた日本の様々なプレゼンスに影響を与えることは、リアリズムとして認めざるを得ません。その上で、では日本としてどういう価値を創っていけるかを考えていくことが必要と思います。
NORMAL
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