ホーム
232フォロー
6708フォロワー
92兆円のバイオ市場どうつくる。双日が米「合成生物学」パイオニア、日本展開へ業務提携
須田 桃子NewsPicks 編集委員 / 科学ジャーナリスト
ギンコ・バイオワークスは、MITで2003年に合成生物学の講座を立ち上げた「合成生物学のゴッドファーザー」、トム・ナイトが、かつての教え子たちと作った企業です。生物学と工学を融合させたその伝説の講座は、今も続く学生の国際大会「iGEM」に発展しました。iGEMはこの分野の人材育成に大きく貢献しています。
もう8年ほど前になりますが、以前、ボストンにあるギンコの研究施設「バイオファウンドリ」を見学したことがあります。すでにロボットによる実験のオートメーション化が確立され、「バイオものづくり」を効率的に進める環境が整っていることに驚きました。また、同社の研究者は、人の皮膚に生息する細菌を使ってチーズを作るという、合成生物学のプロモーションを兼ねた研究プロジェクトについて話してくれて、すごく面白かったのを覚えています。
ギンコの事業が今後、日本でどんな展開を見せるのか、楽しみです。
<神への挑戦>ゲノム編集ベビー「やがて世界は受け入れる」初作製の中国研究者(毎日新聞)
須田 桃子NewsPicks 編集委員 / 科学ジャーナリスト
2018年にゲノム編集ベビーを誕生させたと発表し、約3年間収監されていた賀建奎氏が、人の胚(受精卵)を対象とした研究を再開したとのこと。日本メディアでは初の単独インタビューという意味でも要注目です。
賀氏は昨年6月、自身のSNSでアルツハイマー病の治療法開発の目的でマウスやヒトの胚をゲノム編集するという研究計画を公表していました。そこではゲノムを改変した胚を子宮に移植して子供を誕生させることはしないと書かれており、今回のインタビューでもそれを明言しています。
しかし、子宮に戻さないなら問題ないかというと、そう単純な話ではありません。ゲノム編集ベビーの誕生以前には、中国を中心とした複数の研究グループによりかなり拙速とも言えるヒト胚の改変研究が行われており、それが賀氏による「臨床応用」の呼び水になったとも言えるからです。
一方で、「難病の治療目的ならゲノム編集は許されるのか」については、まだ国際的なコンセンサスは得られていない状況です。たった一つの遺伝子改変であっても他の遺伝子の働き方に影響を及ぼすなど思わぬ副作用が起こり得ますし、「改変ミス」も防ぎきれません。人が人を改変していいのか、というさらに重大な倫理的な問題もあります。
重大なルール違反をした賀氏が再びヒト胚を使う研究に戻ること自体に対しての批判の声もあるでしょう。今回のインタビューでも過去の試みについて説明責任を果たしたとは言えません。
卵子や精子は試験管内で作れるか。「命をつなぐ細胞」の秘密
須田 桃子NewsPicks 編集委員 / 科学ジャーナリスト
iPS細胞から卵子や精子を作り、受精させて子を生ませる……。まるでSFのようなことが、マウスではすでにできるようになっています。
この分野のトップランナー、京都大学の斎藤通起教授のインタビューをお届けします。研究の動機から現状、そして今後の展望まで、じっくり語っていただきました。
将来起こりうる倫理的な課題について考えるために、哲学の勉強会を開いているというお話が印象的でした。最先端の研究がもたらす新たな課題にどう向き合うか。技術が確立されてからの議論では間に合いません。
研究の最先端を最もよく知る科学者自身が、率先して思索を深め、議論に参加する意義は大きいと思います。
【視点】ドイツは「核のごみ捨て場」をこうして選ぶ
須田 桃子NewsPicks 編集委員 / 科学ジャーナリスト
ドイツと日本。高レベル放射性廃棄物の処分場選定の進展具合という意味ではさほどの違いはないのですが、プロセスには大きな違いがあるように思います。透明性の高さや市民参画の仕組み作りという点で、ドイツは日本のだいぶ先を行っているというのが、今回の特集を終えての率直な印象です。
違いは取材への対応でも感じました。日本の実施主体のNUMOは面会取材に応じず、メールでこちらの質問に回答するのみでしたが、ドイツでは実施主体のBGE、規制機関のBASEともに気さくに取材に応じ、ドイツが現在のプロセスに至った理由や現状を丁寧に説明してくれました。
一方、選定プロセスにはすでに遅れも生じています。国民の関心を高め、理解を得ながら、候補地を選び、絞り込めるのか。脱原発に続くドイツの挑戦の行方に、今後も注目していきたいと思います。
そして、ミランダ・シュラーズ教授へのインタビューは今回が2回目。1回目はオンラインだったので、やっと対面でお会いできて嬉しかったです。
記事中で紹介したフォーラムの様子は特集の動画でも出てきますので、ぜひ併せてご覧ください。
https://newspicks.com/movie-series/14?movieId=3582
【考古学最前線】縄文人たちは土器で何を調理したのか
3カ国突撃ルポ。核のごみ捨て場どこに作る?
須田 桃子NewsPicks 編集委員 / 科学ジャーナリスト
フランス、ドイツでの核のごみを巡る取材では、動画に登場しない人たちを含め、たくさんの出会いがありました。
一番印象深かったのは、ドイツのハレで開かれた会合に来ていた10代の子供たちです。1人ひとり、自分の言葉で核ごみについての考えを語ってくれました。ドイツは脱原発を果たしているので、彼ら自身は今後、原発が作り出す電気を享受することができません。にもかかわらず、ちゃんと自分たちの問題として学び、考えている。子どもたちもそうですが、彼らを引率している先生もすごいと思いました。
低中レベルの核ごみの処分場の近くにある学校でも取材したところ、放射線の種類や性質、核ごみについて、ガイガーカウンターなどを使って教えているとのことでした。
一方、フランスの予定地近隣の町で住民に話を聞くと、賛同だけではなく、無関心や諦めを伴う反対など、様々なトーンの声がありました。動画に登場する1人目の女性のコメントからは政府のとってきた方法が垣間見えます。
事前に聞いた話によると、2010年代後半には負傷者や逮捕者も出るような激しい反対運動があり、昨年にも反対派による数百人規模の集会があったそうです。
日本は今後、どんな道を歩むのか。2日目のインフォグラフィクスで紹介したように、日本特有の事情や背景もあります。ドイツ以上に険しい道のりになるのかもしれません。それでもやはり、未来の世代に「丸投げ」するのは違うと思うのです。この特集が誰かにとって、核ごみ問題に関心を持つきっかけになったら嬉しいです。
NORMAL
投稿したコメント