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LIFULLが「老卒」採用。65歳以上雇用、トヨタも本格着手
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
これは人事担当者向けのトピックなのですが、定年前にその会社に就労していなかった定年年齢以上の高齢者を雇用するときは、第二定年制を導入し、老卒向け定年を就業規則上用意した方がいいです。
それというのも、定年年齢以上の労働者の無期転換権行使を防止するにあたっては、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法に基づく第二種計画認定を利用するのが通常ですが、第二種計画では定年前にその会社で働いていなかった労働者の無期転換権行使を阻止できません。
何を言っているのかというと、別の会社で働いていた定年年齢以上の老卒者であって、5年以上働いて契約が有期契約更新されたことのある労働者は、無期転換権を行使できてしまうので、亡くなるか身体機能が衰え労働能力が真に喪失するまで雇用を継続しなければならなくなります。たいていの会社が考えている老卒採用は、短期間の雇用契約の更新によって会社が切りたいとき切るような制度だと思いますので、日本の無期転換権制度と相容れないことが出てくるでしょう。
老卒採用向けの就業規則上のルール整備までしている会社はおそらくほとんどないので、今後課題になってくると思います。
「アディダス」VS「トム ブラウン」のストライプ商標権侵害訴訟、第二ラウンドも「トムブラウン」に軍配
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
日本でもアディダスの三本線商標(登録第4913996号)と、株式会社ニッセンホールディングスの四本線商標で訴訟になったことがありまして(知財高裁平成24年11月15日)、このときもアディダスが勝訴しています。
三本線のような非常に単純な商標は、通常であればその会社固有のブランドを意味するものではないと判断され(我々はよく「希釈化」と表現します)、他社による商標利用が許容される傾向にあります。しかし、アディダスは「希釈化」対策を昔から巧妙に実施し続けており、世界中で度重なる訴訟(二本線や五本線のケースもあります)を繰り返し、勝ったり負けたりを繰り返しつつも、三本線はアディダスのブランドであることを世界中の人々に意識づけることに成功し、実際に商標を巡る訴訟でも勝訴の数を増やしつつあります(個人的には担当している弁護士の腕も非凡なんだろうと思っています)。
アディダスの真似はなかなかできないことですが、商標の世界ではいかにブランドイメージを固有のものとして消費者に意識づけるかが決定的に重要なことを思い出させてくれます。
立憲民主党が「脱糞民主党」の誹謗中傷に刑事告訴も不起訴処分 公党の民間人訴えに物議
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
確かに政党による名誉棄損の刑事告訴の案件は珍しいですね。ただし、政治家を原告とする名誉棄損訴訟(民事)自体は1990年代以降増えていて、2000年以降は10年間あたりで5~60件くらい名誉棄損訴訟が起こされています。政治家が原告の名誉棄損訴訟の勝訴率も50%を超えていて、特に2010年以降は原告政治家の勝訴率が非常に上がり、損害の認容額も上昇傾向です。政治家全体の「名誉棄損」に対する意識はここ30年で敏感になっているものと思われます。
古くは中曽根元総理や森喜朗元総理が原告としてメディアを訴えており、その後は党派に関係なく政治家が原告となる名誉棄損訴訟は増加していきました(山田隆司 2020年「政治家の名誉毀損訴訟 ―対メディア型における司法判断の経年調査―」『創価法学』50(2) 73-88頁 がより詳細です)。
【退職代行は“正義”なのか?】若者の働き方に飛び交う「やさしさ」、本当に自分のためとなる選択とは
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
非弁護士による退職代行には、トラブル発生時の対応力の問題から手放しで賛同はできないと思っているのですが、記事にあるように、どうしても自分の力で退職の意思を示せないときの手段として人の手を借りるのはやむを得ないし、手を借りることで助かる命があるというのはうなずけます。
どんなに心と身体が強い人間でも、一度心身に不調を来たせば本人や周りが思っている以上に脆くなりますし、適応障害を始めとする精神的な不調で他者に自分の意思をはっきり伝えるのが困難になり、そのまま自分を追い詰めて病状が悪化するのは世の中でかなり頻繁に起きていることだと思います。
会社起因でそういった状態に追い込まれてしまった場合には、労働災害と判断される可能性もありますので、会社側にとっても思わぬ損害を招く可能性があり、労働者のストレス管理はどこまで注意をしても注意しすぎないことはないと考えています。
退職したいと伝えたら“陰陽師代120万円”を請求され……退職代行会社が明かす、本当にあった怖い会社
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
陰陽師代はもうめちゃくちゃですが、従業員が会社側と揉めて何らかの請求をされている場合には、ただ退職をしただけでは会社からの請求は止まらないことがあります(少なくとも私が会社側の代理人なら無条件でそんな手ぬるいことはしません)。
退職代行に頼みさえすれば揉めている状態でも安心して退職できるかのような表示は誤解を招くのであまりいいものとは思えませんね。
弁護士ではない退職代行事業者はそもそも弁護士法の規制がありトラブルには一切介入ができず、退職の意思表示を使者として伝達する以上のことはできません。退職をしたい人にどんなトラブルが起きようがお構いなし(にならざるを得ない)となりますので、退職代行を利用したい方はその辺も含めてよく考えた方がいいです。
衝撃の異物混入、「超熟」食パンにクマネズミの一部が入ってた…購入者は「慰謝料」もらえる?
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
異物混入にもさまざまなパターンがあり、骨片など原材料からのコンタミが想定できるようなものであれば製造物責任法上の製造上の欠陥に該当しないと判断されることもあります(別途指示・警告上の欠陥に該当する可能性はあります)。一方、原材料等からの混入が考え難い異物の食品混入は、製造上の欠陥に該当するとして、製造物責任法上の責任を負う可能性が高まります。ネズミの混入は製造上の欠陥に該当し得る典型例だと考えられます(製造後の流通過程で混じっていたのであれば話は別ですが)
ただし、異物混入という事実はショッキングですが、そこから治療が長期間に渡るような具体的な健康被害が生じたことを立証できないと慰謝料額は僅少になりがちで、例えばファストフード店で購入したジュースにガラスのようなものが混じり喉をケガしたような事案(名古屋地判平成11年6月30日)では、損害として認められた慰謝料額は5万円でした。
「お前、何様だ」2時間怒鳴る 会社間のカスハラめぐる異例の裁判
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
取引先から行われるハラスメントに対し、ハラスメントを受けた従業員側により、自身の雇用主の安全配慮義務違反(どうしてハラスメントをするような取引先から適切に守ってくれなかったのか)が問われるケースはこれまで多く見られました。その雇用主が取引先に対し毅然と法的措置をとるケースは、従業員がその雇用主に対し責任追及をする例に比べれば稀であると考えます。
安全配慮義務違反の観点から雇用主に落ち度があったケースにせよ、雇用主も自身の雇用する従業員を傷つけられており、雇用主もその意味では被害者であるといえます。本件については係争中であるため特段コメントはできませんが、カスハラに関しては、ハラスメントを直接受けた従業員もその雇用主も、被害者として泣き寝入りすることが減っていってほしいです。
GW明けが「最も忙しい」 依頼殺到 退職代行サービスの今
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
本来、無期雇用契約は2週間前に辞める旨を会社に伝えればいつでも辞められるはずなんですが(民法627条第1項)、実態としては以下の2点のような悩みに直面している労働者が多いことを退職代行業者の隆盛が示していますね
①会社が納得してくれないと辞められないと思い込んでしまっている
②退職の話を切り出すこと自体が精神的に難しい
どうしても会社を辞めたいときは内容証明郵便で退職の意思を会社に示してしまえば自分でも似たようなことはできてしまいますので、会社をどうしても辞めたいときに自分だけでもできることとして知っておいてもらえると幸いです。
また、弁護士ではない事業者は代理人はなれず、退職代行利用によってトラブルになった場合の交渉などは行ってもらえません(弁護士以外の退職代行事業者がトラブルに関して交渉をした場合には弁護士法違反となります)。退職代行を利用したいと思い悩むほど会社との関係が悪化しており、退職に伴いトラブルの発生が目に見えているケースでは、退職代行を受任してくれる弁護士に依頼するほうが安心できます、宣伝とかではなく。
米FAA、ボーイング787の調査開始 検査記録改ざんの可能性
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
一般論ですが、事案の軽重を問わず事業者として不正や不祥事を追及された場合には、客観的な証拠が表に出てしまえば言い訳ができなくなることが分かっていたとしても、その事実を認める言説を表に出せない状態になりがちです。
これは、企業経営においてリスクコミュニケーションの専門性が本邦に限らず軽視されてきたことの証左だと考えます。企業における不正や不祥事のリスクコントロールは、最終的に行政などの権力主体が強硬手段をとり、不正が明らかになる蓋然性とその場合のリスクを考える必要がありますが、こうしたリスク分析に慣れている職業は、弁護士などの一部専門家に限られており、端的にいえばもっと私たちを頼ってほしいなと思っています。
「週5日労働がふつう」は大間違いである…仕事でへとへとになってしまう人に決定的に欠けている視点
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
現在労働基準法に規定される原則週40時間1日8時間の労働時間規制は、オイル・ショックを日本が乗り越えた後、諸外国から長時間労働の是認によるソーシャル・ダンピングによって価格競争に打ち勝っているという批判を受け、昭和62年にようやく導入されました(それまでは昭和22年に制定された労働基準法に基づく週48時間が原則的な一週間の法定労働時間でした)。
現在に至るまで日本における労働時間規制は、昭和22年の労働基準法制定当時(もっといえば、明治44年制定の工場法も)から、国際関係を踏まえた外圧をベースに見直しされてきたものであり、労働者とのコミュニケーションに基づく制度形成はちゃんとできていなかったんじゃないかと推察されます。
1日8時間、週5日という労働時間法制も、欧米における労働者の健康に関する研究をベースに取り入れられたものですが、当時の研究は工場労働者の画一的な労働環境をベースにしたもので、これを踏まえると労働時間規制は業種・担当業務・役職なども十把一絡げにしたものであるとも思えます。
人手不足が謳われる今、労使間でより長くwin-winな労使関係を築くためにも、個々の労働者の適性や成長に合わせた労働時間の在り方は、国や各会社でより検討されていいんじゃないかと考えることがあります。
証券会社が変え始めた、スタートアップ支援の中身
外国人向け「二重価格」はアリ? 円安でインバウンド増加 一杯5500円ラーメンに観光客「とても安い」 日本人は1100円割安の海鮮バイキング店も【news23】
松下 朋弘ユニヴィス法律事務所 弁護士
法令上、締約強制義務や料金規制が敷かれていない業種であれば、店側には、顧客を選ぶ自由も、顧客によって売る品物を変える自由も、顧客毎に値段設定を変えるも自由も保障されています(平等権に抵触するケースもあり得ますが今回は捨象します)。
外国人に対する接客スタンスは、店によって入店禁止から完璧な外国語対応まで様々あり得ますが、様々なスタンスの事業者同士で競走が行われ、ときには淘汰もなされることで、ユーザーにとって残ってほしい店舗が生き残り、ユーザー属性毎の棲み分けも徐々にできていくんだろうと思います。外国人の人気観光先として日本がどういう方向で成熟していくのか上から目線で恐縮ですが楽しみでもあります。
NORMAL
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