なぜ「50代以降の転職」はこんなにも難しいのかごく「シンプルな理由」
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仕事を行う上で、報酬に結びつく能力・スキルは、
1)型(フレームなどの一般教養、全体把握力、資料作成力、プレゼン力)
2)業界や職種特有の知識(どれだけ他社を経験し、知っているか)
3)社外人脈(商品を斡旋・販売できるコネクション)
4)その企業内特有の作法(慣れ)・社内人脈(信頼資産)
の4つで形成されていると考えています(マネジメントスキルは、これらの組み合わせに過ぎません)。このうち、1)は、コンサルなどに入ると徹底して叩き込まれ身につくもの。一方で、日系一般企業のOJTでは、他社に評価されるほどのスキルは身につきません。2)は転職数を増やせば自然に増えます。どれだけ転職してきたか次第(コンサルPJでも可。コンサルはこの点が有利)。3)は越境活動や副業、個人事業主、ボランティアなどで、日頃から社交的・好奇心旺盛であれば自然に身につくものですが、今の中高年サラリーマンには持ち合わせている人は少ないでしょう。
結果、普通にサラリーマンをやってきた「少し意識の高い50代のおじさん」が持ち合わせる能力・スキルとは、4)のみとなり、これは、自社特有のものですから、エンプロイアビリティとしては機能しないのです。
一方で、今の若い人は2)、3)は副業や転職、XやTikTokなどのSNSを通じて保有している人も多いのではないでしょうか。今の50代と、今から20年後の50代では、また転職市場も変わっていると思います。私自身は54才で大企業を退社して個人事業主となりました。その経験から「会社を50代で辞めて勝つ!」、「45才の壁、55才の谷」という2冊の本を書きました。
執筆の際に勉強したことも含めて「50代の転職はなぜ難しいか」について書きます。
①市場ニーズ自体が少ない
35才の壁は徐々に崩れつつあるかに見えますが、50代の転職市場はエクゼクティブ層(役員候補)か、エキスパート層(ジョブ型の上位層)にほぼ限られます。
多くのサラリーマンは45才前後で出世の限界点を知るわけですが、「今の会社ではこれ以上の昇格が望めない」という50代を他社が採用してくれる可能性は高くありません。
日本には社内失業者(在籍しているが実際には仕事をしていない人)が何十万人もいると言われており、その多くは50代以降の「働かないおじさん」と呼ばれる方です。仮に優秀な方でも、企業がこの年齢の方を採用するハードルは極めて高いです。
②年収条件が合わない
年収が高い方(1000万円以上)は要注意です。そのクラスの年収になるとビズリーチ等が言う「ハイクラス転職」の範囲を超えてきます。「日本の転職市場におけるハイクラス」は主に年収600~800万円を指します。1000万円を超えている求人は結構「訳あり」が多い。トップのパワハラで採用した人がすぐ辞める…とかです。
人によっては「800万円で十分、ただし勤務地は東京で」と言ったりしますが、転職先は簡単には見つかりません。「500万円で地方勤務」でもあればいいと思った方がいいです。
③働く側の意識が変わらない
特に大企業で管理職までやった方は、中小企業で自身の知見や人脈が生かせると考えます。それは一面事実なのですが、多くの方が過去の経験を過度に自慢する「出羽守(前の会社では…を連発する人)」になりがちです。そんな方に部下は着いてきません。多くの場合、中小企業の方は大企業ほどには「上司は絶対」と思ってくれません。
④可能性があるのは縁故採用だが…
50代で転職する場合に縁故採用は有効な手段です。今の会社の取引先等、人間関係ができている「会社のトップ」にお願いすることです。
ただし、今までは取引先として接していた会社の社長は今度は上司になります。従来と同じ感覚で接していると大抵はうまくいかなくなります。そんな当然のことが分かっていない方がまだまだ多いです。50代管理職経験者ですと、部下に仕事を任せすぎて一人で仕事を完結できないという面があるかもしれません。コアタスクだけでなく、周辺タスクや雑務もできないと仕事は完結しませんから。
社外とのオンライン会議のセッティングに苦労したり、社内システムで申請するのに規則やマニュアルを調べられないのは典型です。人任せで実践経験が乏しいので、想像力が働かないのだろうと思います。