貿易赤字、最大の21.7兆円 22年度、原油高と円安影響
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資源価格がピークアウトしたので貿易赤字は足元で多少改善傾向ですが、国内で生産する企業の国際競争力が落ちでいるので輸出がこの先大きく伸びる期待は持てません。日本経済の実力が下がって円が国力の実勢に近くなっており、日本の泣き所である資源価格、特に原油と天然ガスの高止まりも世界経済の分断の中で避け難いところですから、貿易赤字はこの先も続きそう。
日本が貿易黒字で経常収支の黒字を稼ぐ国から所得収支の黒字で稼ぐ国に変わって久しいですが、貿易収支の悪化は円安の要因です。政府と日銀による大量供給でそれでなくとも弱くなった円が貿易赤字で更に弱くなり、交易条件の悪化で日本の富が海外に流出すれば、やがて日本が海外に投資する力が衰えます。そうなると、今は大きな黒字を稼ぐ所得収支が衰えます。
政府が巨額の赤字と借金を抱える中で日本が安定していられるのは経常収支が黒字、つまり政府と民間を合わせた日本全体が黒字の状態を保っているからで、この構図が壊れたら大変です。貿易は黒字であれば良いというものではないですが、ここまで来ると流石に放置するのは危険です。
輸入に頼る資源の消費を補助金のばら撒きで奨励している場合ではありません。政府はウクライナの戦争以降、そうした措置に既に累計12兆円ほどを費やしています。それだけのカネがあれば、原油、天然ガス、石炭といったエネルギー資源の輸入を減らすため、再エネでも原子力の活用でもかなりのことが出来たはず。日本の豊かさの未来を守るため、政府も国民も、エネルギー資源を巡る政策の在り方を抜本的に見直す必要がありそうに思います。とはいえ、すでに単月季節調整値で見た貿易収支の赤字は昨年10月をピークに縮小しています。
今回公表の3月分も輸出入がそれぞれ▲0.8%、▲1.2%減ったことで、貿易赤字が前月から▲3.4%減っています。輸出に円安効果が出るとして、タイムラグがあります。とはいえ、弱いことは明白です。震災前後で輸出関数を推計し、比較すれば、その形状はだいぶ変わっているはずです(私は推計してませんが、この間の構造変化を考えれば、当然の帰結でしょう)。
であるなら、輸入、特に日本のアキレス腱たるエネルギーの輸入を抑制するしかない。化石燃料に頼らないなら、再エネだけではなく、原発も稼働するしかない。原発も事故リスクがあるなら、更新しなければならない。
貿易収支のポジションや通貨レートの水準だけが大切なわけではないですが、それが軽んじられ過ぎたのが、この10年間のリフレ時代だったのではないでしょうか。
なお、貿易収支(経常収支)が為替の需給に関係することは明白な事実です。特に資源もなく、かつ対外貯蓄の動員が金融政策の安定性を損ないかねない中で、貿易赤字には問題がないなどと紋切り型で論じることが妥当かは、果たして謎ですが。