飲食業界に衝撃。「世界一のレストラン」閉店が意味するもの
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もう10年近く前になりますが家族ぐるみの付き合いのあるレストランのオーナー夫妻と一緒にコペンハーゲンのNOMAに行ったことがあります。同業者ということもありNOMAのシェフとも親交があるということで2階のラボを私も一緒に見学をさせていただいたのですが、そこに人が沢山おりびっくりしました。後で聞くと研修生という名目で半数は無給だとのこと。
これを聞いて思い出したのがかつての研修医制度。私立の某ブランド大学の研修医はほぼ無給に近い額しか払われていませんでした。しかしそこでのキャリアが「箔」になるので皆若い頃は丁稚奉公を受け入れるのだと。このような薄給と引き換えに箔を手に入れる仕組みは有名大学病院やミシュラン店、アトリエ系建築事務所やスタイリストなどの徒弟性的な職場でよく散見されましたが、さすがに今後は難しい。
一方MBAのようにオンザジョブではなくトレーニングは学校に外注する傾向の強いアメリカではシェフもCIAのようなトップ料理学校の卒業生が有名レストランに就職する傾向があります。ここは2年で学費が2000万。すでに有名シェフになるのにも初期投資がいる世界になりつつあります。
丁稚奉公モデルは今に合わないし飲食業界の待遇改善には大賛成ですが、その一方で初期投資のできる富裕層の子弟が有利なゲームだけにならずある種の成り上がりの手段としての料理人というモデルもあって欲しいなとも思います。ミシュラン獲得など高級店のご支援先でもNoma閉店は話題に。独立を夢見て就職より修行視点で勤めてくれるからこそ成り立つ売価。この環境を一気に製造業のようにするとちょっとした値上げではまず無理です。オーナーシェフ型の小箱は変化は乏しいでしょうが、規模があるところはビジネスモデルの見直しは着実に進んでいます。
世界一のレストランという称号を何年にもわたり欲しいままにしてきたコペンハーゲンの名店ノーマの閉店に関する話題が世界中のメディアで持ちきりですね。
FTでも「トナカイのラグーよりサステナブルじゃないノーマ」と報じていました。
プレートに花びらを散らすためにも若手スタッフを雇わなければならないほどの陣容を必要とする一方、そうした若手スタッフは三つ星レストランでさえ無給で働いているという現実。
本記事にあるとおり、ノーマでは昨年10月から無給就業をなくしたと言われているもののコストが膨らんで経営は成り立ちませんでした。2011年に閉店したスペインのエルブジも大量の無給スタッフに依存していても年間50万ユーロの赤字だったそうです。
パンデミック以降、カリフォルニアやフランスでもミシュランの星付きレストランの閉店が相次いでいて、カジュアルな店にスイッチしたり、明らかに世界の高級レストランに変化が起こっています。
御多分に洩れずサステナビリティが求められており、業界も客も変化の時なんでしょうね。