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ルネサス、ソフトウエア会社アルティウム買収で合意-約8900億円
小倉 舜
今回の買収は、アルティウム製品利用者に対するルネサス製品の拡販と顧客のニーズ汲み上げによる製品力強化を目的としたものです。マイコンのみでの差別化には限界がありRisc-Vの流行によって新たなマイコンベンダーが登場する可能性が高まる中にあって、川下の設計分野と一体となって製品を提供する戦略は、ルネサスが従前から提唱しているwinning-combinaitonの思想に沿う論理的なものではあります。
ただ、個人的にはかなり心配なディールでもあります。なによりプレミアムが高いです。ルネサスというチップベンダーが買収することによるアルティウムからの顧客流出リスクも考えられ、この辺りをどう評価するかは議論が分かれそうです。
端的に言えば、成功すればwinning-comboとは比較にならない規模でルネサス製品の販売数量拡大が可能なものの、失敗した際のリスクもかなり高い、乾坤一擲という言葉がふさわしいディールだと思います。
政府端末に国産サイバー対策ソフト 25年度から導入
小倉 舜
NICTは数年前にCYNEXを立ち上げて以来、民間企業へのサイバー攻撃情報の共有や開発支援を進めてきた経緯があり、今回の報道はこれの延長として捉えることができます。なお、具体的なスキームとしては、アンチウイルスのOEM供給を民間から受け、攻撃情報収集部分をNICTが開発するという役割分担になると見ています。
一部で国産製品の性能を懸念する声もありますが、政府への攻撃の大部分は軍が特注で開発するマルウェアなので、海外の一級製品であっても攻撃を防ぐことはほぼ不可能です。それならば、積極的サイバー防衛に必要な情報収集を優先させるべく、(多少性能を犠牲になる可能性があっても)NICTにアンチウイルスを開発させるという戦略はあってしかるべきかと考えます。
2023.10.3追記
記事中の「民間企業がつくったソフト」に対する言及から推測するに、当該ソフトはFFRI Yaraiである可能性が高いと思われます。従前から民間や地方公共団体への納入実績のある企業なので、大きな心配は不要でしょう。
マイクロソフトのアクティビジョン買収、米国での完了に青信号
小倉 舜
Sony/FTC側が敗訴という形になりましたが、個人的にはマイクロソフトのAB買収には反対です。
このような超大型買収(買収費用はほぼ10兆円)が認められてしまうとゲーム企業同士のシェア争いはマネーゲームの様相となり、GAFAMのような資本力を持たない者はかなりの苦戦を強いられるからです。
また、マイクロソフトは抱き合わせ商法によって先発の競合を市場から排除するという戦略をウェブブラウザ(IE vs Netscape)やオフィスソフト(Office vs Lotus,一太郎)、チャットアプリ(Teams vs Slack)で行っており、今回の買収もSonyを市場から排除し、市場を独占する意図が明らかです。今後クラウドゲーミングが主流となれば、巨大なクラウドプラットフォームであるAzureとクラウドゲーミング需要の少ない昼間の計算リソースをキャッシュカウたらしめるOffice365によって他社に対する競争優位性はいよいよ手を付けられなくなる状況まで高まるでしょう。
なお、この裁判ではマイクロソフトが形振り構わず世界のゲーム大手の買収を試みていたことや、判事の息子がマイクロソフト社に勤めていることも明らかになっており、そういった意味でも本判決の妥当性には疑問が残ります。
トランスジェンダーの女性用トイレ使用 国の対応は違法 最高裁
小倉 舜
まだ第一審判決にしか目を通せていませんが、女性としての服装をすることや乳がん検診を認め、名簿のジェンダーレス化にも取り組むなどした経済産業省の歩み寄りが認められず、敗訴という結果となったことは残念です。
確かに性別転換手術が不可逆的であり、侵襲性で、手術費が高額であり、性自認が人格権の一内容として尊重されるべきことは理解できます。しかし、女性職員から原告が女子トイレを使用することについての懸念があった以上、セクハラにならないよう、周囲の女性の納得を得てから女性トイレを使うよう指導した経産省側の対応は正しいように思います。
なお、地裁判決は国民の意識変化を判決の理由として挙げていますが、判決に多くの国民が不安を覚えていることは紛れもない事実です。
最高裁は新聞記者と弁護士の賛同しか受けられないような判決を出すべきではなかったと思います。
(当方素人ですので、本コメントの信頼性は担保できません。判決については専門家の意見をご参照ください。)
※追記
少なくとも一審判決は、ですが、①原告が長らく女性として生活してきたことや、②女性ホルモンの投与や服装によって(性転換手術は受けていないものの)外形的には女性であるということを判決理由として挙げており、いかにも「男性」という風体の方が女子トイレに侵入することを認める趣旨ではないと解せるため、本判決が性犯罪に悪用されるリスクは低いと思われます。
オランダ政府、ゲーム内「ガチャ」を全面禁止へ
小倉 舜
SMBCコンシューマーファイナンスによると、我が国の20代の内、日常的にゲーム課金を行うユーザの課金額は一人当たり月5638円と前年の同4804円と比べて増加傾向にあり、そのうち9.8パーセントの人が「ゲームでお金を使いすぎて(ゲーム課金しすぎて)生活に困ったことがある」(原文ママ)と回答する深刻な状況にあります(注1)。また、ルートボックス規制はパターナリスティックな権利制約として憲法問題となりうる可能性があり、政府が導入に向けて舵を切ったとしても制度設計には時間を要すると予想されます。こうしたことから、そろそろルートボックス規制について、立法府が議論を始めても良い頃合いではないかと個人的には思います。
注1
20代の金銭感覚についての意識調査2023, SMBCコンシューマーファイナンス株式会社
https://www.smbc-cf.com/news/news_20230119_1039.html
Meta、Twitter競合の「Threads」の“予約注文”ページをApp Storeで公開
小倉 舜
メタは2000年代に二度もtwitterを買収しようとした過去を持っているので、いずれは打倒twitterのサービスをローンチするだろうと思っていましたが、ThreadsがAcvtivityPubを採用したということは驚きです。
AcvtivityPubはMisskeyやBluesky、Mastodonで採用されているデータやり取りの方式で、これを採用したSNSは相互に投稿内容を融通しあうことが出来ます。
こうしたことから、ActivityPubを実装するSNSが増えれば増えるほど、ネットワーク効果による参入障壁を築くというSNSプラットフォームの勝ち筋が通用しなくなり、消費者やスタートアップに優位な市場が形成される可能性が高いです。オープンで、エコシステムやUI(使いやすさ)が優れたSNSが林立し、その中から消費者は自由に選択することができる。そんなSNS新時代が到来しようとしているのかもしれません。
p.s.記事によるとThreadsへの登録に際して、かなりの個人情報を要求されるようですね...。先述のように、ActivityPubが実装されることは他SNSからもThreadsの投稿を閲覧できることを意味しているので、わざわざ個人情報を差し出してまで登録する価値は見出しづらいなと感じます。
「AIは0から1を生み出せない」 PSYCHO-PASS監督の予測
小倉 舜
監督の仰る視点に大いに共感します。
実際に、新技術に寛容な中国ではAIによって新米イラストレータが既に不要になりつつあり(注1)、ベテランイラストレータのみになっていると聞きますが、ベテランはいつまでも働き続けられるわけではありませんし、貴重な新人教育の場が限られてしまうと「0から1を生み出せる人材」が減っていくのではないかと強い危機感を覚えます。
ただ、人件費削減による効率化という資本主義秩序に逆らうことは難しい上、破竹の勢いで進化を続けるAIを見ていると、今後この傾向はあらゆる業界に波及するのだろうなとも感じます。
AIによる人間の排斥が避けられない時代が到来しつつある現代にあって、人が人らしく創造力を発揮するためには、例え名声を得られなくても、金銭的な見返りがなくても、己の面白さを求め、考え続ける。そういった心構えが求められているのかもしれませんね。
注1:AI is already taking video game illustrators’ jobs in China
https://restofworld.org/2023/ai-image-china-video-game-layoffs/
ヤフーの検索エンジン技術契約、Googleから変更検討
小倉 舜
LINEは2019年頃よりNAVARの検索エンジンを日本でファインチューニングして提供する方針を明らかにしており、今回の変更検討も既定路線だったものと思われます。
ただ、NAVARの検索エンジンは主戦場である韓国検索エンジン市場においてGoogleにシェアを削られ続ける厳しい状況にある上、韓国でNAVARのシェアを確固たるものとしているUGCエコシステムの構築も後発の日本市場では難しく、本邦の検索エンジン市場を開拓することが容易でないことは明らかです。
なお、NAVARとLINEはLLMの開発も進めており、生成AIを用いた検索エンジンを実用化する可能性もありますが、生成AIのハルシネーションを防ぐ手段が確立されるまでは生成AIを用いた検索エンジンが主流になることはないと感じます。
確かに検索エンジンを内製化すれば広告収入の総取りが可能となるため、LINEヤフー(とNAVAR)は莫大な利益を手にできます。しかし、前述のような状況でGoogleからNAVARに乗り換えることがリスキーであるのも事実。LINEヤフーには難しい決断が求められていると言えるでしょう。
TBSがU-NEXT株式20%取得、調達金額は約242億円 パートナーシップ協定を締結
小倉 舜
ここ数年TBSはSVODドラマ制作に特化したTHE SEVENの設立や、「愛の不時着」で有名な韓CJ ENMと業務提携の実行を通してSVODへの対応を加速させている印象で、今回の株式取得もこの戦略に沿ったものだと思われます。確かに他のSVODプラットフォームも国内制作コンテンツの品ぞろえは薄く、u-nextがそこへ商機を見出すのは間違っていないと思いますが、テレビ業界のしがらみに飲まれる可能性やロングテール化に伴う原価上昇などデメリットも少なくない印象で、こうした点をu-nextがどのように捉えているのか気になります。
ともあれ、TBSが自前のプラットフォームを捨てて「破竹の勢いで快進撃を続ける」u-nextと手を組んだことは衝撃的で、近年のシェア争いで防戦一方のhuluを擁する日テレや泡沫プラットフォームに甘んじているTELASAや黒字化の見通せないabemaを抱えるのみのテレ朝の今後の動向に注目が集まります。
産業革新機構、半導体素材大手JSRを1兆円で買収へ
小倉 舜
私としてはJSRを政府主導で非公開化することにはメリットを見出せません。
katoさんの仰る通り、フォトレジスト産業を再編するといっても独占禁止法の問題がありますし、買収資金の問題もあります。なによりフォトレジスト産業は「そこまで市場規模が大きくない」ので業界再編を行ったところで元が取れるとは思えません。
また、JICがルネサスの一件で大きな利益を手にしたことが今回の買収に至った理由の一つであるとする見方が一部にあるようですが、むしろINCJのルネサスへの経営介入はマイナスであったように思います。当時INCJ側が連れてくる取締役はどう見ても業界に精通している方ではなく、ルネサスは迷走を極めていました。同社の場合は「たまたま」天才的な経営センスを有する柴田CEOが就任したから良かったものの、こうした悲劇がJSRで繰り返されることがないか、非常に不安です。
[この記事は掲載が終了しました]
小倉 舜
うーん。例えばstable diffusionは23億枚以上の画像を学習に利用したとされていますが、23億枚の画像の全ての出典を調べてデータとしてまとめるというのは非現実的であり、こうした制限を設けることは実質的にAI開発を制限することになります。こう言っては悪いですが、著作権を人権として尊重するというイデオロギーに固執するあまり、テクノロジーをイデオロギーで制限するようでは中国などの権威主義国家と同レベルではないでしょうか。 EUがstability.AIに代表されるような地場系AI企業を抑圧しても他国のテック企業は開発を進めますし、シビアに生産性の優劣が競われる国際市場で他国と勝負しなければならない事を考えると、こうした規制が合理的であるとは思えません。
NORMAL
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