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FRB、0.75%利上げ 通常の3倍 記録的なインフレ抑制優先
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
いろいろな見方はあると思いますが、「『インフレは一時的』と見通しを間違えた」「政策が後手に回った」との批判を受けていたFedからすれば、まずはインフレファイターとしての姿勢を強く打ち出した上で、0.75%の利下げを「モデレート」に見せる、というのは、良く尽力されている方だと思います。
興味深いのは、ボードメンバーがそれぞれ自分の見方をどんどん話す傾向の強い米国が、コミュニケーションが相対的には上手くいっているように見えることです。さすがは合議制での意思決定に慣れている国という事かもしれませんし、不確実性の高い情勢では、シングルボイスによる情報発信は、これが裏切られた時のマイナスも大きい、ということかもしれません。

【3分理解】日本は緩和継続で、欧州は0.5%利上げ。なぜ?
ヨーロッパ中央銀行 11年ぶり利上げ インフレ抑え込みへ
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
1990年代から前面に出てきた「金融政策の透明性」の議論の本筋は「政策反応関数の透明性」、すなわち、中央銀行がどういう状況でどのような行動を採るのかを透明にする、ということでした。ただ、近年これが、「金利を何%上げるのかを事前に言うのが透明性」といった、やや妙な方向にスライスしている面もあるように感じます。
言うまでもなく、こういう政策運営はむしろリスキーな面があります。先行きの予見が難しいからこそ、現実の経済の中で生身の人間が毎回集まって合議制で政策を決めている訳です。避けがたい不確実性の中で安定を実現することがマクロ政策の根幹ですし、今回のECBの事例などが、有益な透明性の議論につながっていけば良いなと思います。
とはいえ、ECBにとっては、(ちょっと面倒な新プログラムを入れてでも、)不人気だったマイナス金利政策からExitできたことは、歓迎する向きが多いかもしれません。
異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
小幡先生の通常のご見解は理論的にも傾聴に値する点が多く、また、今回敢えて極端なご意見を述べておられるであろうことを承知の上で、元オペレーション担当の立場から、いくつか申し上げます。
まず、本来オペは金融政策上、極力透明に、恣意性を排して行うべきものです(中銀界では「オペが口を効いてはいけない」と言います)。金融政策は政策委員会が決定すべきものであり、あくまで事務方であるオペレーションデスクがオペのタイミングだけでなく、介入の金利水準まで勝手に判断してしまうことは、政策の透明性を損なうだけでなく、政策への民主的コントロールの観点からも大きな問題を孕みます。
また、「10年物金利ペッグ」は、理論的には「短期金利ゼロを10年間約束する」ことに近い(だからこそ出口が困難でありどこの中銀もやりたがらない)わけで、そこからの出口を考える上で、年限を「短縮化」(10年→5年→2年)してはどうかという意見が出るのは、理屈の上ではわからなくもありません。一方で、日本の国債市場は10年カレント物の流動性が圧倒的に厚く、他の年限の流動性は相当に低いため、年限を短縮化していった場合、イールドカーブが不安定化するリスクが大き過ぎると思います。
また、「インザマーケット」で政策を実施する金融政策当局として、示した政策枠組みの中で市場参加者が利潤最大化を目指す行動を採ることも、当然予想すべきことといえます。中央銀行の政策目的は物価の安定であり、特定の投機筋をペナライズすることではありません。
「インフレはサプライズ」どういうこと?
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
経済予測が当たらないのは今に始まった話ではなく、従来からそうだったと思いますし、この分野では多くの実証研究が既にあります。過去「予測が当たっていた」ように見える状況は、単に経済変数の動きそのものが小さく、外挿的な予想があまり外れていないように見えた、というケースが殆どであったように感じます。
20世紀の大型計量モデルの開発も、元を辿れば経済予測パフォーマンスの不芳が動機であったように思いますし、大型計量モデルも予測の精度を十分に高めるには至りませんでした。「三体問題」の難しさは言うに及ばず、ましてや極めて多くの変数が相互作用を起こす経済において、サイエンスとしての予測能力には所詮限界があります。だからこそどの国々も、マクロ政策運営をAI等に委ねることはできず、生身の人間が頻繁に集まって、合議制で政策を決めているわけです。
経済政策としては、予測の限界を常に認識し、断定的な言説については懐疑的に捉え、政策対応の側で十分な柔軟性と機動性を備えながら対処していく他はないだろうと感じます。
トルコ 6月の消費者物価指数 前年同月に比べ78.6%の上昇
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
トルコは、私がIMFに勤務していた初期のGreat Moderationの時代、どの国もIMF融資を必要としなかった時代にもほぼ唯一IMF融資を受けていた、国際金融では伝統的な脆弱国です。
マクロ政策運営は、多くの方がお書きの通り、理論的に到底是認し難いものといえます。問題は、トルコは自らが地政学的に重要な場所にあり国際社会が無視できないことを熟知していて(G20メンバー国でもあります)、そのことがマクロ政策運営の規律を低下させている面があるように見えることです。今回のスウェーデン、フィンランドのNATO加盟を巡るトルコの対応も、多くの国際金融界の方々は既視感を持ったのではないかと感じます。
シンガポールの規制当局幹部、仮想通貨に対しては「容赦なく厳格に」対処
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
仮想通貨に関してはとかく各国で、「他国の規制は緩いのに自国の規制は厳しすぎる(から緩和せよ)」といった論調が多くなりがちなのですが、国際決済銀行の関連委員会に参画している主要国(含むシンガポール)の間では、2017年以降、かなり密接に連携しながら対応を進めてきました。シンガポール当局であるMASもその責任者モハンティさん(日本在住経験あり)もお馴染みのメンバーです。
実際、「仮想通貨→暗号資産」の呼称変更なども、国際的に協調して進めてきたものです。巷に目立つ「海外の規制は緩い」といった論説については、慎重に事実を確認した方が良いと思います。
海外勢と日銀の攻防激化=緩和修正めぐり思惑―混乱の国債市場
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
チーペスト銘柄への指値オペ拡大が注目されていますが、「10年物金利0.25%を死守」ということであれば、中央銀行は流動性制約を唯一受けない主体ですので、可能でしょう(いざとなれば、チーペスト銘柄の周辺銘柄まで買い支えることもできないわけではないので)。
より本質的問題は、「自由な資本移動のもとで10年物金利という特定のプライスを死守しようとする行動は、他市場のボラティリティを高めるリスクを伴う」ということだと思います。「特定の金利死守ができるかできないか」というよりも、「その金利を死守することの意義」を考えていく事が、有意義な政策論につながるだろうと感じます。
「急速な円安に憂慮」鈴木財務相 一時1ドル=135円台・24年ぶり円安水準で
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
理論的には、他国が長期金利形成を市場に委ねる中、日本は長期金利ペッグを行っている訳ですので、長期金利の変動圧力が抑え込まれている分、ボラティリティが為替レートに表れるのは当然と感じます。
逆に言えば、「円安は嫌だが金利上昇も嫌」というニーズを自由な資本異動の下で満たすのは、本質的に難しいだろうと思います。
また、海外主要国にとって、現下の優先課題はインフレ抑制ですので、自国通貨の売り介入を行ってくれるフィージビリティは現実にはありません。
この中で、日本にとって真に望ましいマクロ政策のあり方について、包括的な議論が深化していくことを望みたいと思います。
サマーズ氏、FRBは高インフレの重大さ認識を-景気後退リスク
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
サマーズさんの指摘はもちろん尤もですし、自らの債務として通貨を発行している中央銀行の責務がその価値の安定(→物価の安定)であること自体は、広く共有されていると思います(デュアルマンデートとされる米国も、中長期的な雇用最大化は物価安定を通じて実現されると説明されています)。
サマーズさんの指摘でより複雑な論点を含むのは、中銀の物価予測です。世界的に中銀が物価予測を数値で出すようになったのは比較的最近のこと(日本は2000年)です。これにはもともと、以下のような課題が意識されていました。
一つは、短期金利操作という政策手段を持つ中銀が「インフレが続く」という情報発信をすれば長期金利に上昇圧力をかけかねないため、そういう情報発信はしにくいのではないかという論点です(もちろん、だからといってバイアスのかかった予測を出していると、中長期的に予測への信認を失ってしまいます)。
もう一つは、民間も中銀も予測は間違えるということです。今回の米国でも、多くの民間も予測を間違えたわけですが、民間はしばらく黙っているという手を使えても、当局者はそういうわけにはいきません。
これらへの特効薬がない中、「中銀は自らの予測の不確実性も良く説明した上で、政策対応の側で十分な機動性を確保すべき」と誰もが言いますが、これ自体決して簡単ではありません。サマーズさんはこれらの論点はもちろん全てご存知のはずで、痛い所を突くなあと感じました。

【レイ・ダリオ】歴史から読み解く「世界の危機」の救い方
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
大変示唆に富む内容でした。とりわけ
「インフレ、、、が嫌ならお金を刷るのをやめるしかない。しかし、お金を刷らないと債務危機が発生します。」
というのは、私が国際機関勤務時代に何度も目にした光景と一致します。
危機国は、危機に至る前にほぼ必ず「いくらお金を刷っても大丈夫。それでインフレになりそうになったら刷るのを止めれば良い」という言説が、手を変え品を変え登場しています。しかし、起こってきた現実は、「インフレになりそうになったら刷るのを止める」ということが、ーその過程で膨れ上がってしまった民間債務や政府債務のために― 極めて難しいということでした。
興味深く拝読しました。
FRBの信用失墜、インフレに関し市場と国民に説明を-エラリアン氏
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
昨年、多くのエコノミストが「インフレは一時的」という情報発信を繰り返していた中、エラリアンはサマーズ、ブランシャールとともに、インフレ圧力は一時的に止まらないと主張してきただけに、彼の不満は理解できます。(ましてや、見通しを外した言い訳として当局も民間もウクライナ要因を安易に使いがちなムードには、とても我慢できないという所でしょう。)
とはいえ、インフレ予測は誰がやろうと所詮限界があるでしょうし、だからこそ今だに政策をAIではなく人間の合議制で決めている訳です。昔も今も完全なインフレ予測モデルなど出来ないという限界を認識した上で、政策の方で十分な機動性を確保していくことしか、解決策は無いように感じます。

NORMAL
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