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【音声】日銀新総裁、金融政策の変革ポイントとは
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
サッシャ様、世良様とも、中立的に、かつ楽しくこの問題を取り上げていただき、深く感謝致します。
新総裁にはもちろん期待致しておりますが、同時に、金融政策がすべきこと、すべきでないことの認識の共有や、政府・公共政策の領域と民間・市場の領域のあるべき論は、国民全体の理解が不可欠な分野と感じます。極端な話、「誰が中央銀行総裁になっても、物価と通貨システムの安定が自然に実現される状況」こそが、本来目指すべき道だろうと思います。
とはいえ、植田先生の培われた理論と中央銀行実務への深い理解、それに根差した発信力には大いに期待しております。また、植田先生は未来のマネーシステムなどにも深い問題意識をお持ちです。以下のURLなども、ご関心があればぜひお読み頂ければと思います。
https://www.boj.or.jp/research/conf/data/rel161201a8.pdf
白川氏、黒田氏政策を批判「壮大な金融実験」 IMF季刊誌に寄稿
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
3月号のF&D拝読しました。今回のIMFのF&Dは、執筆陣を見ても大変気合の入った号だと感じます。
日本ではどうしても日本人の論稿の報道が多くなりがちですが、かつてのIMF調査局長でありいまだにIMF内で尊敬を集めているRajanさんの論稿("Less is More")なども読むに値する内容を含んでいると感じました。
https://www.imf.org/en/Publications/fandd/issues/2023/03/Central-Banks-less-is-more-raghuram-rajan
やはり昨年は、2008年のグローバル金融危機以降の金融政策議論が、世界的に大きな転換点を迎えた象徴的な年だったと感じます。過去10年間の政策対応にはさまざまなものが含まれていた訳ですが、それぞれについて議論や評価が今後、サイエンスとデータの目から精緻化されていくことを期待しております。
日銀の植田総裁の人事案、政府が14日に国会提示へ
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
植田先生とは、ご一緒に働く中でもその慧眼に感服させられることが多くありました。とりわけ、政策運営への注目がとりわけ高まった以下の政策委員会での姿が、個人的には強く印象に残っております。
・「非不胎化介入論」という、マイクロファウンデーションが必ずしも明確でない論説に当時の世論が大きく動かされていた1999年9月の会合。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_1999/gjrk990921a.pdf
・ゼロ金利政策解除に反対票を投じつつ、政府の議決延期請求にも反対票を投じられた2000年8月会合
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2000/gjrk000811a.pdf
(とりわけ78頁以下)
後世の歴史的検証に耐え得るよう、日本銀行が1998年に、議事録も含めた開示制度を整備したことは、現在の情勢を踏まえても本当に良かったと感じます。国会におかれても、理論と実証に基づく建設的な議論が行われることを期待しております。

【日銀総裁】ノーマークだった植田さんって誰?
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
植田先生がいわゆる「フォワードガイダンス」の考え方を世界に先駆けて政策に取り入れようとしたのは、実際にはこの記事より早く、1999年4月の金融政策決定会合でした。
植田先生は「名目金利のゼロ政策」「流動性の罠」の先の緩和効果の可能性として、この会合で、フォワードガイダンスの考え方を文言の形で現実に政策に取り入れようとされました。既に議事録も公表されていますので、(ちょっと大部ですが73頁だけでも、、、)ご関心があればお読み頂ければと思います。https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_1999/gjrk990409a.pdf
私も一緒に働かせて頂きましたが、大変洞察力に優れた、実務感覚も卓越した方と感じました。
昨年末の保有国債評価損は8.8兆円と日銀総裁、YCC修正で拡大
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
この議論はかなりテクニカルな内容を含んでおり、報道だけではなかなか分かりづらい面もあるように思います。ちょっと技術的で申し訳ありませんが、元調節担当の立場からコメントさせて頂きます。
中央銀行の調達の大半は短期の当座預金ですので、中央銀行による長期資産の買い入れは、「短期調達・長期運用による長短ミスマッチリスクを中銀B/S上に抱え込む」ことになります(だから異例の政策であるわけです)。
これを償却原価法で評価した場合、(総裁答弁の通り、)たしかに「期間損益」には直接には影響しにくいといえます。
真のリスクは、「先行きの不確実性に対処しなければならない」という、政策運営に関わる部分です。
例えば、30年物国債を買ったとして、今後30年間ゼロインフレが続き当座預金金利(政策金利)もゼロであれば、何も起こりません。しかし、先行き30年となれば、その間に、インフレ圧力が高まり、その対処として政策金利を引き上げざるを得なくなるケースも考えられます。この場合、「長短ミスマッチリスクの顕在化」という形で中銀収益が悪化することになります。
(より直截には、過剰流動性吸収のために中央銀行が国債をアウトライトで売却すれば、より見えやすい形で収益への影響が生じ得ますーこれは現実には考えにくいでしょうが。)
中央銀行収益を巡る議論はとかく複雑でわかりにくいのですが、報道も含め、より理解が深まっていくことを望みます。
日銀 拡充した資金供給策を初実施 約1兆円供給で長期金利低下
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
用語がかなりテクニカルでわかりにくくなっていますが、要は「中央銀行による長期固定金利での低利融資」となります。
このオペレーションを何故他の国がやらないのかと言えば、「中銀財務への中長期的影響」などいろいろな理由はありますが、最大の理由は、超緩和政策を未来永劫続ける訳にもいかない中、「政策を変える際の市場調節負担がその分後々大きくなる」ということが大きいと考えられます。
例えば、インフレ懸念が高まる局面で流動性を吸収しようとする場合、「既に過去、固定金利で長期で供給済みの流動性が溜まっている」ことになるため、その分余計に流動性を吸収しなければならない、といったことが考えられる訳です。
いずれにしても、日本の金融政策は他国の政策当局にとっても、また長い目でみた歴史的検証の対象としても、興味深い事例を提供しているように思います。
「日銀は市場に負けた」と言う人の根本的な間違い
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
市場との「勝ち」「負け」を問うのは本筋ではないという点については、その通りと思います。
(かなり捻った書き方をしておられるとは思いますが。)
中央銀行の責務は、国際的理解でも日銀法でも「物価の安定」と明示されています。中央銀行が「負け」るとすれば、それは究極的には「物価の安定」を守れなかった時であり、特定の金融資産価格を守れるかどうかは本筋ではありません。
また、いわゆる「市場の攻撃」も、結局は「中央銀行がこのままの政策を続けていれば物価の安定を守れなくなる(からいずれ政策を変更するだろう)」と一部の市場参加者は考えたという話であり、市場にさまざまな見方があること自体は、当然のことと思います。
メディアとしては、「市場との対決」の方が見出しを作りやすいという事情はあるのかもしれませんが、是非、「日本のためにどのような政策が望ましいのか」という視点からの報道を望みたいと思います。
「日銀の全面降伏」不可避か-政策修正見越し、投資家は容赦ない圧力
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
「圧力」、「降伏」、「屈服」といった最近流行りの見出しは、ちょっと筋が違うという印象を受けています。
私が調節担当時代、市場と「対決」、「戦う」などと考えたことは一度もありません。インザマーケットであるべき中央銀行が、市場を敵視しても良い事は一つもありません。そのことは、中央銀行員であれば皆実感していると思います。
また、中央銀行は唯一、流動制約を受けない主体ですので、「10年物国債金利」といった特定のプライスを守ることが戦の目的なら、必ず勝てます。しかし、中央銀行の目的は特定の金融資産価格を守ることではなく、(法律で定める通り)「物価の安定」を守ることです。特定の金融資産価格をいくら守ったところで、インフレにしてしまっては意味がありません。
金融政策を巡る報道も、「勝った負けた」ではなく、例えば「短期調節手段である共通担保オペをこれだけ長期化した中で、今後数年間の金融調節はどうするのか」といった、より政策寄りの議論になっていくことを望みますし、その方が政策論の深化につながるように思います。
FRBの独立性は重要、気候変動への関与は不適切=パウエル議長
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
原文はFRBのウェブサイトにありますが、パウエルさんらしく短く簡潔で内容に富んだものと思いました。「物価安定は健全な経済の基盤だが、高インフレ時に物価安定を回復するには、景気を減速させるために金利を引き上げるという短期的には不人気な措置も必要となる」等々、経済が歴史の中で積み上げてきた知見を再認識させるものとなっているように感じます。https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20230110a.htm
これとの関連で、記事末尾の「米国における政治的分裂を浮き彫りにしている」というまとめ方は、やや疑問に感じました。この講演は「気候変動対応の重要性自体は自明であっても、議会の決定の外側にある中央銀行が自ら資源配分に踏み込むことは、民主主義の観点から避けるべき」というオーソドックスな考え方を示したものと思います。
(例えば、仮に一国の政策が輸出振興で固まっていたとしても、中央銀行が自らの判断で輸出企業に恩恵的融資を行ってしまうことは避けるべきであり、それは議会の判断を経由した政府系金融機関等の融資として行うべき、というのと同様と思います。)

【解説】日銀の「サプライズ政策」 識者たちの見解
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
テクニカルなことで恐縮ですが、オペレーションの観点から2点ほど。
・まず、長期金利のコントロール政策(日本はYCCと呼んでいますが米国はYCTと呼称)は、理論的には「先行きの短期金利についての約束」に近いです。(例えば、「10年物金利をゼロにする」というターゲットは、「翌日物のゼロ金利を10年間続ける」と予めアナウンスすることと近い。)
したがって、その変更はほぼ不可避的に、市場の期待形成の急激な変動を伴います。変更が「サプライズ」になりやすい性質を元々持っている政策であり、だから他の国々はやりたがらない訳でもあります。
・長期金利については、もともと介入すること自体が異例ですので、そこからのExitについても「金利引上げ」ではなく、「徐々に手を放す」という形になりやすい訳です。それを「市場機能に配慮した調整」と呼ぶか「exit」と呼ぶかは、もはや価値判断の世界です。もともと長期金利介入政策自体、市場機能をある程度犠牲にしてでも金利を下げることを優先した政策ですので。
日銀の「債務超過」がありうるという最悪シナリオ
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
野口先生も字数の制約から論点を単純化しておられる面はあるように思いますが、中央銀行の目的はあくまで「物価の安定」です。学界の多くの議論も、中央銀行の財務状況の悪化それ自体を避けるべきということではなく、「中央銀行が、自らの財務状況が制約となって、物価安定のために必要な政策が採れなくなったり、対応が遅れては困る」ということかと思います。
この、かなり複雑な問題については、今から約20年前、当時上司であった植田和男教授が日本金融学会で取り上げておられます。ご関心がある向きはご一読いただければ幸いです。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2003/ko0310f.htm/
日銀、保有国債に含み損8749億円 異次元緩和下で初めて
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
中央銀行界でも学界でも長年議論されてきた、複雑で難しい問題の「一端」に触れた記事と感じましたので、多少テクニカルですが敷衍させて頂きます。
報道にある保有国債単独での含み損は、マグニチュードとしては限界的かと思います。より本質的な問題として議論されてきたのは、中銀がB/Sを拡大させ長期債を保有に至る中で、中銀が物価安定確保のために必要な政策(負債サイドの中銀預金引上げや長期金利引上げ)を採れば自らに巨額の損失が生じ得るという問題かと思います。(一方、決済用現金の範囲内に長期債保有を抑えておけば、- 現金は無利子なので - 上記の問題は避けられます。)
もちろん、中銀としては自らの損失には左右されずに物価の安定を追求すべきなのですが、現実の政治社会の中でそれを押し通せるかという問題に加え、そもそも中銀政策がそうしたインセンティブ問題に左右され得ると市場に捉えられること自体、政策の信認にとってマイナスではないか、等の議論です。
いずれにしても、この問題は日本がいずれ直面する訳ですので、課題を直視した議論が深化していくことを期待したいと思います。

NORMAL
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