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【祝ノーベル賞】ペーボ博士が解き明かした人類の進化の秘密
NewsPicks編集部
新村 芳人宮崎大学 教授
こちらの記事が改めて読まれているということで、とても嬉しく思います。 ペーボ博士の業績は、「古代ゲノム学」(パレオゲノミクス)という学問を一から創造したという点で、ノーベル賞単独受賞は当然と思えるほど巨大なものです。 しかし一方で、ノーベル賞に「進化賞」はないので、意外でもありました。 ノーベル賞は20世紀の学問の枠組みを引きずっていますが、時代に合わせて古い枠組みを変えていこうという選考委員会の慧眼も感じました(昨年のノーベル物理学賞もそうです)。 また、ペーボ博士の業績は、短期的には何の役にも立たないけれど、人類の究極の問い—われわれはどこから来たのか?—に答えようとするもので、このような基礎科学中の基礎科学に賞が与えられたことの意義も大きいと思います。日本の科学力の地盤沈下が叫ばれて久しいですが、この受賞で科学政策の風向きが変わることも期待したいです。 本稿には書けませんでしたが、次のエピソードが好きです。 少年時代のペーボは考古学者になりたかったのですが、それでは食えないと思ったペーボ青年は医学の道に進みます。 医学部の研究室で当時勃興しつつあった分子生物学の技法を習得し、そのテクニックを古代エジプトのミイラのDNA抽出に応用することを思い立ちます。 ペーボは、日中は何食わぬ顔で免疫の研究を続け、夜中にこっそりと、たった一人で、来る日も来る日も、ミイラからDNAを抽出する実験を繰り返します。 ついに成功したペーボは論文を書き上げ、恐る恐る指導教授に見せに行きます。何も知らなかった教授はびっくりしたものの、笑って許してくれ、自らが著者に加わることを固辞したということです。 その単著論文は、1985年にNatureに掲載されています。このとき教授が激怒して原稿を破り捨てていたら、古代ゲノム学の進展はずっと遅れていたかもしれません。
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