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電気料金、値上げ幅圧縮へ 経産省、燃料費低下を反映―引き上げ5月以降に
時事ドットコム
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
次冬に再度燃料価格が高騰し、燃料調整費の算定に用いられる基準燃料価格の上限を突破するリスクがあります。この場合、再値上げの可能性は否定できません。 ・国際エネルギー機関(IEA)は2月15日の関係閣僚会議で提出したペーパーの中で、欧州は次冬400億㎥の天然ガス不足に直面する可能性があると指摘しています。 ・また、Gas Market Report, Q1-2023においても、中国のLNG需要の不確実性はロシアによる欧州向け天然ガス供給停止に伴う不確実性よりも大きいと指摘されており、今後の燃料価格は非常に不安定な状況と理解しております。 ・燃料費下落を理由に値上げ幅を大幅に圧縮したとして、仮に燃料価格が大幅に上昇した場合、再び燃料調整費上限を突破する可能性は否定できません。 ・更に、東京電力EPの原価算定にあたっては柏崎刈羽原発再稼働が想定されていますが、再稼働が進まなかった場合には当然原価上昇となります。 ・これら懸念が現実のものとなった場合には再度の値上げが必要になる可能性があります。 先日、日本経済新聞でコメント引用いただきましたが、以上の問題意識から、「値上げ幅の大幅な圧縮には慎重な判断が必要」とコメントしました。 発電用石炭、オーストラリア産が急落 日本の電力値上げに影響も - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB253MD0V20C23A2000000/
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送配電会社の完全分離を提言 大手電力と資本関係解消へ
共同通信
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
この提言を拝見しましたが、「何故所有権分離なのか」の論理付けが極めて甘いと感じました。所有権分離が目的化しているように感じます。 内閣府の山田正人参事官は、税金を使って開いているタスクフォースなのですから、単なる問題提起で投げっぱなしの姿勢ではなく、「所有権分離における便益」をもう少し整理して委員・そして国民に示す必要があります。 また、川本・大林・八田・高橋の各委員も連名で提言を出すのですから、山田さんともう少し詰めてください。具体的に問題だと感じた点は3点です。 ①「実際に所有権分離が主流の欧州では」とありますが、仏送電部門は所有権分離されていませんし、今回の問題の焦点である配電部門は、英・仏・独・北欧では所有権分離されていません。 ②米の多くの州で実施済・英で実施に向けた準備が行われている機能分離(需給調整・系統運用機能のみISOとして分離)の議論が全くありません。送配のネットワークサービスセンターと中給・地方給のみ機能分離すれば、所有権分離と機能分離では得られる便益は同じはずです。 ③「所有権分離を実現した方が社会的な総コストは小さいと考えられる」とありますが、所有権分離の場合には、電力会社の資金調達コストが上昇する恐れがあります。この議論が全くないのは大変問題だと考えます。
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東北電力、抜本値上げ申請 平均32.94%、13年以来
共同通信
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
今回の値上げは燃料費の増加に伴うものです。日本の電源構成の76%は火力発電が占めていますが、石炭の輸入価格は1年前と比べて3.18倍、LNGは2.69倍に上昇しています(21年9月と22年9月対比)。 値上げの話になると、必ず人件費圧縮のご指摘をいただきますが、営業費用に占める割合は、人件費4%、燃料費・電力購入料は67%で、人件費を抑制したとしても効果は僅少と言えます。 また、電力会社は原発停止等による影響で10年前から人件費を圧縮しております。更なる人件費圧縮は、電力会社の士気に関わり、安定供給に関わる人員の採用にも影響が生じかねないと考えます。 さて、今回32.94%の値上げとのことですが、電力会社の費用の1/3程度は流通設備(送電線・変電所・配電線等)であることを差し引いても、今回の値上げはかなり努力した水準であると言えるでしょう。 尚、電気料金には「燃料調整費」という燃料価格の変動に応じて上下する項目が設けられています。これまで、「燃料調整費」には上限が設けられていましたが、電力会社側の努力も限界に達しています。 今回はあくまで「基準の料金」が値上げとなることを示しており、燃料価格が低下すれば、自然と電気料金も低下していくことになります。 今回の値上げでは、自由料金において昼間料金の値下げ・夜間料金の値上げも示されています。再生可能エネルギー、特に太陽光発電の導入拡大により、昼間の料金が低下したのです。 カーボンニュートラルに向けた今後の非化石電源導入拡大のイシューは、太陽光から徐々に風力・地熱といった再エネ電源への導入移行や、原子力発電所再稼働へ変化させる必要があると考えます。
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政府、電気料金2割軽減へ ガスは月900円支援
共同通信
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
使用量に応じて電気料金に補助が付く形になるようです。一般家庭7円/kWhはかなりの水準ですね。 他方、法人については、実は足元の料金上昇幅をカバーしきれません。例えば、東京電力EPの燃料調整費(高圧)は7月と11月を比較すると5.38円/kWh上昇しています。今回の補助額は3.5円/kWhとのことですので、この4カ月の上昇分をカバーしきれていません。 また、もう一点気になるポイントがあります。この補助はいつまで継続するのでしょうか。 エネルギー危機は当面の間継続すると考えられています。私自身、先週土曜日の日本経済新聞マーケット面「発電用石炭最高値続く 22年秋契約分、1トン395ドル」で以下のコメントさせていただきました。 「ガスを含む発電用燃料の世界的な逼迫は数年単位で続き、以前の価格水準には戻らない可能性がある」 LNG・天然ガスはカタールノースフィールドが運開する2026~27年まで(JOGMECは2029年までとの予測を出しているようです)、石炭は当面の間(中国の大増産により、石炭輸入量が減少するまで)需給改善要素はありません。 英国ではエネルギー料金の補助や減税政策をきっかけにトラス首相が退陣に追い込まれました。エネルギー補助は巨額の財政負担を伴い、将来世代の負担となります。また、中長期的には、「危機後」のエネルギー価格に日本経済が適応していく必要があります。 来年9月には補助金減額方針とのことではありますが、政府はこのエネルギー補助の中長期的な在り方、エネルギー料金の展望を説明していく必要があると考えます。
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英、冬季に3時間の計画停電実施も ガス輸入不十分なら=送電大手
Reuters
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
今回の計画停電実施シナリオは、1000万kWのガス火力停止といった過去発生したことのない事態が生じた想定であり、National Grid ESOや英国の電力専門家の間では「発生する確率は低い」と評価されています。但し、先日Ofgem(ガス・電力市場規制庁)は、ガス緊急事態発生時のガス火力のインバランス精算についての緊急ルール変更を行っています。これは、英国政府のエネルギー規制当局が、ガス緊急事態発生の可能性を念頭に置いているのではないかと見られています。 NGESOは毎年夏冬に需給見通しを出しています。今回の冬季需給見通しの対象期間は10月31日から3月31日であり、ベースケースを元に、2シナリオが示されています。 ・シナリオ1…欧州からの電力輸入量が減少した ・シナリオ2…欧州からの電力輸入量減少に加え、英国内のガス供給不足が重なった シナリオ1では、安定供給を確保できると評価されています。 シナリオ2では、計画停電に踏み込んでいます。NGGSOの「ガス緊急事態宣言」発出等に伴い、1月第2週に1000万kWのガス火力が停止した想定です。石炭臨時契約や節電プログラム(それぞれ200万kW)を導入しますが供給力不足は避けられず、電力供給緊急事態コード(ESEC)に基づき一回3時間程度の計画停電を実施します。 2019年8月9日英国大停電では、洋上風力74万kW、太陽光等148万kW、ガス火力455万kWが計画外停止した結果、115万世帯が停電する事態になりました。 今回は2019年計画停電の1.5倍の供給力脱落が生じた想定です。 私の心配は4点です。 ①英国には天然ガス貯蔵施設に乏しく、ガス運用柔軟性は非常に乏しい。昨冬も、LNG輸入施設の設備容量一杯を活用してLNGを輸入しました。今冬も風力の出力不調や原発計画外停止が重なった場合には、本当にガス不足に直面するかもしれません。 ②英国は天然ガス消費量の半分近くを自国生産していますが、欧州と市場でつながっているため、自国生産の天然ガスも欧州大陸と争奪戦になります。 ③フランスの原発再稼働が読めません。仏政府やEDFは冬に向けて現在停止中の原発32基を全て再稼働させる方針ですが、配管腐食問題が原因ですので、本当に全て再稼働するのか不安を感じます。 ④ノルウェーが渇水で電力輸出制限に踏み切るかもしれません。
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プーチン大統領 “原発 政府管理下に” 支配の既成事実化 加速
NHKニュース
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
このザポリージャ原発をどのように活用するのか、私には皆目見当がつきません。3月にウクライナの電力系統運用者、NPC Ukrenengoは欧州ENTSO-Eが管理する欧州同期系統(CESA)との同期を開始しました。これにより、ザポリージャ原発はロシア方面への電力供給には極めて活用しづらい電源となってしまいました。この状況を打破するためには、ザポリージャ原発と接続されているNPC Ukrenengoの系統(現時点は750kV4回線、ザポリージャ火力発電所を介して330kV送電線6回線、150kV送電線6回線)を切り離す必要があります。 様々な課題があります。考えられる課題を列記しました。 ①ロシアの系統運用者であるインターRAOによる、ウクライナ占領地域における地方給電指令所設置 ②一次変電所における開閉器、コンデンサ等の遠隔操作機能奪取とインターRAO地方給との連携 ③送配電線復旧班の配置 ④(クリミアやロシア本土の火力の運用、変電所の運用次第では不要かもしれませんが)電圧維持用の火力電源の並列・同調運転 非常にハードルが高いと思います。 ザポリージャ原発をクリミアへの電力供給に活用するといった観測もありますが、クリミアにはザポリージャ原発がフル出力運転した場合に発電される電力に対応した電力需要はありませんし、送電系統も容量制約があり、送れる電気は限定的です。ロシア本土に送電する場合も、同じく送電系統制約に直面します。これほど巨大な電源を何に使うつもりなのでしょうか。 ちなみに、私は開戦前にTwitter上で「ロシアはザポリージャ原発を廃止する肚なのではないか。もしロシア軍政当局がザ原発の廃止を仄めかした場合、ウクライナは供給力不足に直面する。ウクライナ政府はロシア軍政当局と電力買取交渉を行わざるを得ないのではないか。」といった推論を述べておりました。手前味噌で恐縮ですが、私はこの推論が現時点で最も可能性の高いシナリオではないかと考えております。
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ノルドストリームの損傷、爆破が原因-スウェーデン安全保障当局
Bloomberg
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
Nord Streamは1・2両方ともストリングA・ストリングBの2回線、合計4回線で構成されています。実は、Nord Stream2 ストリングBは破壊を免れているのです。Gazpromは10月3日に公開したステートメントで、ドイツと合意できればNS2ストリングBを活用して天然ガス供給が可能であると言及しています。 これは個人的な意見ですが、何て都合が良いことでしょうか。。都合よく、Nord Stream2の1回線だけ破壊を免れるとは… 最近、欧州の電力市場関係者の間で話題になっている事件があります。2006年のウクライナ・ジョージア天然ガス危機です。特に2006年1月22日に発生したジョージア電力・ガス危機は今回の参考になると考えます。 この日、北オセチア・モズドクとジョージア・トビリシを接続する天然ガスパイプラインが2回線とも爆破されました。また、同日にロシア南部のカラチャイ・チェルケス共和国でジョージアと接続する送電線も破壊され、ジョージアは全土で停電しました。当時は、ロシアとジョージア・サアカシュビリ政権の間で緊張が高まっており、3月にはロシアがジョージア産ワインの輸入禁止措置を発動、7月にはジョージア軍がアブハジアへの軍事攻撃を実施しています。 犯人はその後の南オセチア紛争も相まって、うやむやになってしまいました。 当時、アルベラゼ大統領首席補佐官は「今回ジョージアで発生したことは欧州にとって大きな教訓となった。ロシアへのエネルギー依存は大変危険であり、常に代替調達ができるように、供給力を確保する必要がある」とコメントしていました。残念ながら欧州、特にドイツはこの警告に耳を傾けることなく、2011年のNord Stream 1運用開始、そしてNord Stream 2建設へと突き進むことになります。 今回のNord Stream破壊は、2006年のジョージア電力・ガス危機とそっくりです。ジョージアの教訓が活かされることはありませんでした。
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ノルドストリームガス漏れ、4カ所目発見=スウェーデン沿岸警備隊
Reuters
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
今朝、スウェーデン沿岸警備隊司令部はNord Stream1・2で新たな漏出が確認され、パイプライン破壊ポイントは合計4か所となったと公表しました。 メディア・SNSでは「NS1・2を誰が破壊したか」話題になっています。EUは犯行主体について言及を避けていますが、爆発海域にロシア海軍の艦艇が確認されたといった報道もあり、ロシアの攻撃である可能性があります。 現在、欧州に対して気体状天然ガスを最も供給しているノルウェーでは、危機意識が高まっています。海軍士官学校Tor Ivar Strømmen大佐はノルウェーのテレビ局TV2に対し「ロシアは意図的に天然ガスパイプラインを破壊した」「今後半年以内に、ノルウェーのエネルギー輸出インフラが攻撃される可能性がある」といったコメントをしています。エネルギー危機は安全保障問題そのものとなりました。 日本でも、アジアスーパーグリッドなど、国際連系を推進する動きがありますが、安全保障面から再考すべきだと考えます。 さて、今回の事態で欧州エネルギー危機は新たな局面に突入したと考えます。弊職はこれまで、ロシア産天然ガスの輸入を制限すると市場価格が上昇して、結果としてロシアの財政収入を潤わせることから、ロシア産天然ガスの輸入制限等の制裁・輸入自粛は反対でした。 以前から述べておりますが、Gazpromの欧州向け長期契約のうち、85%以上はガスハブ価格若しくはプロンプト市場価格リンクとなっており、市場価格が上昇したら販売価格も連動する仕組みとなっています。ACER(欧州エネルギー規制機関)が欧州公益事業者に対し、調達した天然ガスの市場玉出しを要請していたことから、公益事業者は市場価格変動リスクを抱えることができず、結果として欧州にとってリスクのある契約となっていたのです。 仮に供給量が半減したとしても、取引価格が3倍になれば、ロシアの収入は増加します。制裁を声高に述べられている有識者はこの点を無視された言説が多く、私は大変問題視しています。ちゃんと勉強していただきたい。 ところが、ロシアと欧州公益事業者の長期契約で最も重要であるNS1・2が破壊され、今後ロシアによる欧州への天然ガス供給が大幅に増加する見込みはほぼなくなりました。「量か価格か」の議論は「量」の前提が変化したのです。欧州は、脱ロシアを加速させることになるでしょう。
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独、電気ヒーター使用で「停電の恐れ」 ガス不足で販売増
Reuters
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
電気ファンヒーターなど電熱機器は効率が大変悪く、大量の電気が必要になります。今回は2つの懸念があると理解しています。 ①「kWh不足」 BDEWアンドレーエ事務局長の「控えめに使用しなければ電気代がかさむ」とのコメント、連邦ネットワーク庁(BNetzA)ミュラー長官の「電気ヒーターは、ガスによるセントラルヒーティングよりも高くつく」のコメントに該当します。 今冬はロシアから天然ガスが来ない事態を念頭に置かねばなりません。また、欧州で導入が進む風力発電は冬場の偏西風の影響で、通常冬場に強いと言われています。ところが、2020/21年、2021/22年と二冬連続で風力出力が低下する事態が生じています。これらを背景に、今冬は極力節電・節ガスを行うことで燃料消費を抑える必要がある。電気代が高い、つまり月もしくはシーズンを通じて電気の使用量が高い状態は極力避ける必要があります。 ②「kW不足」 BDEWアンドレーエ事務局長の「寒い冬の夜、多くの家庭が一斉にヒーターをつけた場合、電力系統に大きな負荷がかかる」とのコメント、BNetzAミュラー長官の「電気ヒーターの使用ピーク時に局所的な停電が起こる可能性がある」のコメントに該当します。 寒波が襲来した際、火力・風力発電所の計画外停止が相次ぐことがあります。テキサスでは2021年2月の極渦襲来時に火力発電所の燃料供給系が凍結して計画外停止、風力発電所も停止が相次ぎました。日本でも2012年2月3日に九州電力新大分発電所のLNG供給系の一部が凍結して流量調整ができなくなり、計画外停止した事例があります。 当然寒波では電力需要は増えますし、前述の通り再エネ出力が得られない可能性もあります。効率の悪い電熱機器が大量に使用された場合には、需給バランスが維持できなくなり、最悪ブラックアウトに直面するリスクがあります。 ※英国の場合、全域停電になる前に系統周波数が低下した時点で配電用変電所でUFR(英ではLow Frequency Demand Disconnection:通称LFDDと呼称)が作動、一部地域を強制停電させます。作動値は48.8Hz、周波数低下検知から作動まで200mS未満です。 本来脱炭素にあたって、家電製品や輸送機器の電化は非常に重要ですが、今冬は電熱機器は、安定供給のため使用を控える必要性があります。
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ロシア石油が欧州へ裏流通 ギリシャ沖経由、日経分析
日本経済新聞
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
実はロシアは天然ガス収入よりも原油・石油製品収入が圧倒的に多いのです。ロシア中央銀行の統計「BANK OF RUSSIA STATISTICAL BULLETIN」によると、2021年のロシアの原油・石油製品収入は1809.5億ドル、天然ガス・LNG収入は628.5億ドルです。 ロシア制裁や収支への影響を議論する際、我々は天然ガスに注目しがちですが、ロシアの国際収支では、天然ガスより原油・石油製品の方が圧倒的に重要度が高いのです。その観点では、今回の日本経済新聞さんの記事は大変価値が高いものだと感じます。但し、記事内にはロシアのEU向け出荷量は日量280万バレルとありますので、瀬取りのボリュームはかなり小さいように感じます。(おそらく瀬取りは日量13-14万バレル程度?) ちょっと脱線しますが、天然ガスは輸送手段が①パイプライン、②LNGの2手段があります。前者は事前に敷設したパイプラインに輸送先が限られます。後者は、販売先は柔軟性に富むもののの、一定量のBOG(ボイルオフガス。LNGはマイナス162℃で輸送しますので、輸送中に一定量が気化します。この気化したガスをBOGと呼びます)が発生するため、航海日数があまり長くなると経済性が低下していきます(ただし、昨年8月末に豪州を出港し、9月上旬に東扇島に入港したものの、基地タンクの空き容量不足で全量荷揚げできずに洋上待機、12月に欧州へ転売された遠州丸のような事例もあります)。 LNGに比べ、原油タンカーの瀬取りは常温の液体であることから比較的容易であると感じます。 但し、ベルギーのゼーブルッヘではヤマルLNGから出荷されたカーゴ(砕氷LNG船で輸送されます)から一般のLNG船にShip to Ship(瀬取り)方式でLNG移送されます。日本の国交省もShip to Ship方式LNG移送のオペレーションガイドラインを公開しています。BOGなど原油に比べて発火性が高い物質が出る可能性がありますので、安全対策が非常に厳格に定められています。
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独、原発2基の停止延期 エネルギー危機で方針転換
AFP
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
流石にNord Stream停止を受け、方針転換でしょうか。ドイツはこの一週間、明らかにこれまでの方針を転換しています。 まず、電力市場改革。8月29日にハーベック経済相は電力市場への緊急介入を認める発言を行い、同日欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が電力市場への緊急介入方針と中長期の電力市場改革の方針を明らかにしました。Pay as clearと呼ばれる現行のシングルプライスオークション方式の市場メカニズムを抜本的に見直す可能性が指摘されています。 ※英国では7月下旬に電力市場の見直し案(REMA)を公表しており、バランシンググループ(英国ではBMUと呼びますが)によるセルフディスパッチから、系統運用者によるセントラルディスパッチへ、Pay as bidの枠組みへ変更になると見られています。 電力市場改革は昨年10月から、フランス・スペイン・チェコ・ギリシャ・ルーマニアの財務大臣が連名で欧州委員会に求めてきたものです。 また、英国が採用していた超過利潤税の導入も決めています。RWEやStatkraftなど、限界費用の安価な電源を有する事業者は市場価格高騰の恩恵を受けていますので、これら事業者から過剰収益を徴収し、国民に還元する仕組みです。 ストレステストも、当初はバイエルン州の1基のみ稼働の可能性が高いと報じられていましたが結果は2基。 今回の原発稼働延長方針も、先週からの動きも、Nord Stream停止による状況の変化やNS停止前後の急激な電力先物価格高騰、市場不安に対応したものと考えられます。 大変なのは事業者です。原発と同じく運転継続・再稼働を認められた石炭・褐炭火力発電所では、発電所従業員のリストラを一時停止しており、雇用継続など事業者の負担が重くなり始めています。(ドイツでは7月8日に石炭、褐炭、重油火力発電所の運転継続・再稼働を認める電力代替法が連邦参議院で可決し、12日に発効しました。) いずれにせよ、想定以上に早い段階でロシア産天然ガスが止まってしまいました。ロシアにとっては経済的な「ベルリン危機」を演出しているのでしょう。 動きの遅かったUniperも、ここに来てLNG長期契約締結のリリースを相次いで出しており、徐々に「ウクライナ前」のエネルギー市場への回帰は難しくなりつつあります。
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米カリフォルニア州、停電リスクさらに高まる-熱波で電力需給逼迫
Bloomberg.com
松尾 豪合同会社エネルギー経済社会研究所 代表取締役
カリフォルニアでは2020年8月14日・15日にも計画停電を実施しております。日本の6月末の需給ひっ迫と同じく、猛暑による需要増大に加え、太陽光の出力が下がる夕方の供給力が不足したことが主要因です。 日本を含め、再エネの導入が進んだ国では、残余需要(需要から太陽光・風力の出力を除いた需要のこと)に対応した供給力、Dispatchable Generation(制御可能な電源)の確保が課題になっています。 今回のカリフォルニア需給逼迫は、この課題を改めて突きつけたと言えるでしょう。 カリフォルニアでは再エネ導入拡大に伴う火力電源の廃止が課題になっており、2021年12月に北米電力信頼性協議会(NERC)より公開された「Long-Term Reliability Assessment」では、2026年に3,264MWの供給力不足に直面することが示されているほか、オンタリオ州やMISO(イリノイ州など)でも供給力不足に直面する可能性が高いとの予測が公表されています。 また、別途カリフォルニアPUC(公益事業委員会)が取りまとめた長期予測でも2025年に1.8GWの供給力不足に直面する見込みです。 対策は、Dispatchable Generationを作るしかありません。実はカリフォルニアではガスもデススパイラルが始まっており、ガス火力の運転延長は容易ではありません。現実的には原発の運転延長と蓄電池導入、他州との連系線増強くらいしか手段がないのです。 2025年に閉鎖予定だったディアブロ・キャニオン原子力発電所も、2030年まで運転延長すべく、先週同原発への資金援助法案が州議会を通過しました。カリフォルニアは原発稼働延長や連系線増強といった現実的な政策と、揚水がない立地を活かした大型蓄電池導入、需要側の取り組み(ヒートポンプやEVの協調制御)を同時に進めていくことになります。 ※ちなみに2020年計画停電の際に最も機能したDRは、製油所などの工場自家発、次いでアメリカ海軍第三艦隊、三番目にデータセンターでした。
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