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はしかで寝たきりに 感染の10年後、少年をおそった難病
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
麻疹(はしか)に罹った後、5年から10年が経過した後に発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)。
麻疹ウイルスが脳の炎症をゆっくりと起こし、治療法はありません。
麻疹にかからないように予防接種をすることが懸念を減らします。
イギリスでは2013年から麻疹ワクチン接種率が低下し、麻疹患者が増加しました。そして2017年から2019年までの3年間に、麻疹を経験した子供6人が麻疹後の脳炎であるSSPE(亜急性硬化性全脳炎)を発症しました[1]。
現在、日本でも麻疹の流行の兆しが見られています。一方で、麻疹ワクチンの不足があり、簡単に接種ができなくなっています。
今回の流行が、もし小さなもので終わったとしても(そのようになることを願っています)、その後に接種をしていない方は接種が望まれます。
[1] Pediatric infectious disease journal 2023; 42.
致死率3割~7割「劇症型溶連菌」 過去最多の去年上回るペースで増加 約2か月で378人 去年の4割超
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
先行して欧州などで流行しており、日本でも拡大する可能性があります[1][2]。
それ以外にも、現在、麻疹症例の報道が増えていますし、先行して中国や欧州でマイコプラズマが流行しました。
中国でマイコプラズマが流行したときは、当初『原因不明』とされていましたね。
詳しくはニュースレターで書きました[3]。
[1]Open Forum Infect Dis. 2023 Apr 6;10(5):ofad188.
[2]The Lancet Respiratory Medicine 2023; 11:e16.
[3]世界で感染拡大がはじまっている『マイコプラズマ』。日本で感染拡大する前に。
https://pedsallergy.theletter.jp/posts/6a6409a0-d6c6-11ee-955f-2da67ddd9a97
子どもの睡眠不足は「一生のハンデ」 問題行動の引き金に?忙しすぎて寝足りない日本、警鐘を鳴らす専門家
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
もちろん、睡眠時間が多いほうが、さまざまな問題行動は減りますよね。
▷Sleep and Health. Academic Press; 2019:435-445.
OECD参加国33カ国のデータって、さまざまでてきますが、日本の女性の睡眠時間はさらに平均より短いという報道もあります。
▷Japanese women sleep the least in OECD survey of 33 countries
https://www.asahi.com/ajw/articles/14861166
睡眠がすくない、だから睡眠をとってくださいという話はわからないではないのです。睡眠をしっかりとったほうがパフォーマンスを維持できるのですが、睡眠を増やすことができるような勤務体系になっていないんですよね…
ソウル主要5病院の全研修医がきょう退職届 20日から勤務せず
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
韓国政府による大学医学部の入学定員増に反対する専攻医(研修医)たちが、ストとして集団退職するという記事です。
英語の記事はこちら。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-02-16/south-korea-plan-for-more-med-school-seats-may-prompt-walk-out-by-doctors?embedded-checkout=true
2025年から、韓国は医学部の定員を増やし、現在の3058人から2000人増やして5058人にするのだそうです。
1000人あたりの医師数は、日韓ともに2.6人(2021年)で、OECDの平均値3.7人を大きく下回っているとしています。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79444
そして、入学定員増に反発して20日に一斉に休学届を出すことを決定し、全国で約2万人の医大生が休学すると推計されています。
花粉症の小学生、4人に1人「勉強に集中できない」 気づかぬ親多く(毎日新聞)
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
Yahoo!エキスパートコメントを書きました。
花粉症による仕事や勉強への影響に関し、治療で改善させることができるものの、薬剤によってはかえってマイナスになるという趣旨です。
**
(抜粋)
アレルギー性鼻炎が仕事に与える影響について調べた試験をまとめた研究では、アレルギー性鼻炎で仕事の時間が平均3.6%失われ、仕事の能力が約35.9%下がることがわかっています[1]。
一方で、アレルギー性鼻炎に対する薬を使うことで仕事の効率が良くなる効果があることも示されました。
しかし、この場合、眠気などの副作用が少ない『非鎮静性』のものを使う必要性があります。
1834人の高校生を対象にした調査で、数学、英語、理科の成績が下がった生徒を調べた結果、アレルギー性鼻炎がある生徒は40%さがり、『鎮静性』抗ヒスタミン薬を服用している生徒はさらに70%、成績が下がる可能性が高いことが示されています[2]。
[1]J Allergy Clin Immunol Pract 2018; 6:1274-86.e9.
[2]J Allergy Clin Immunol 2007; 120:381-7.
医師の長時間労働、42病院に労基署が是正勧告…「働き方改革」対応に遅れ(読売新聞オンライン)
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
4月から、医師の働き方改革が厳格化されます。
多くの2次病院では、夜間や休日は『宿直』となります。
以下の条件を満たす必要があります。
・通常の勤務時間から完全に解放された後のもの
・宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限る(救急患者の診療など通常同様の業務が発生したとしても、稀であること)
・一般の宿日直の許可の条件を満たしている
・宿直の場合は十分な睡眠がとりうること等の条件を満たしている
https://journal.epigno.jp/reform-of-physician-work-style-permits-and-applications
『大きな病院だから大丈夫』ではありません。
宿日直許可ですら、宿直が最大限できる医師9名がいる必要があります。すなわち、小児科医が宿直を毎日するためには『屈強な小児科医9名』が必要です。さらに、当直医として稼働するためには『屈強な小児科医20名』が必要です。
現状、過重労働の元に医療が維持されている実態がありますので、どんなに制度をいじったとしても、一般の過重労働基準にあわせると無理がでてきます。(多くの勤務医が過重労働である実態は続いた上であっても)医療の質は下がらざるを得ないのだろうと思っています。
専門医が教える「スグできる花粉対策」5選 - 水拭きNGってホント!?
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
スギ花粉症に関しては、舌下免疫療法が普及してきて、だいぶ楽になる患者さんが増えてきました。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/490407002f6f2d06609f900775171d2fc8e0d6b2
以前、『ずっと1-2週間ごとに受診しないといけない』と思っていらっしゃる方をSNSで見かけました。開始時に1週間後に受診いただく場合もありますが、それ以降は4週間ごとが基本です。
それでも不十分な方は、症状がではじめたら鼻噴霧ステロイド薬(ステロイドですが副作用はきわめてすくないです)や、抗ヒスタミン薬(最近はきわめて副作用がすくない製品があります)を使用します。
市販薬には、長期に使用すると副作用が心配な製品や、眠気がつよく起こるものがあります。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/794a9325269c8d3ffc5e219fe4b209eed3d237f1
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3be0485051a910ae41aa5ecc4a7090947056a685
ところで、水拭きがNGというのは、なにか根拠があるのでしょうか…
雷雨ぜんそくの話が、拡大解釈されているような気もします。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5415c7712b0f2152d08fec87e10ee6eff60a222b
「寒冷じんましん」食器洗いでも突然発症…寒さに反応か 医師「冷たい飲み物も注意」(テレビ朝日系(ANN))
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
寒冷蕁麻疹は、『物理性蕁麻疹』、すなわち、様々な刺激でおこる蕁麻疹のうちの一つです。
ありふれた物理的な刺激のひとつが『寒さや冷たさ』ということです。慢性蕁麻疹の方のうち、寒冷蕁麻疹の方は7.62%いるという報告もあります[1]。
発症するメカニズムは十分にわかっていませんが、蕁麻疹だけでなく、発熱、腹痛など、そして強いアレルギー症状であるアナフィラキシーを起こすこともあります[1]。
江畑先生のおっしゃるとおり、抗ヒスタミン薬で治療される場合が多いのですが、重症の場合にはオマリズマブという特殊な注射薬が保険適用として使用できます。
[1]Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2022; 10:586-96.e4.
「先天梅毒」の子ども 過去最多に 妊婦から胎児への母子感染
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
日本では梅毒が増加し続けています。
第二次世界大戦後、日本で梅毒患者は激減し2000年から2012年まで年間500〜800人台で推移していましたが、2013年以降、梅毒患者が急増、2022年には12966例に達しました。
特に20代前半の女性で多いことが先天梅毒への問題点となります。
梅毒は「偽装の達人」とも呼ばれ、さまざまな症状を引き起こります。診断が困難な場合もあります。
2022年1月から、治療に有効な単回筋注用ペニシリン製剤の使用ができるようになった点は朗報ですが、治療したからといって先天梅毒を100%防げるわけではありません。そして、ペニシリンそのものが不足している現状ではなかなか対処も難しくなっている現状と言えます。
新変異株拡大、「第10波」か 専門家「感染対策続けて」―新型コロナ
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
2023年11月初旬から、米国においてもBA.2.86変異株から進化した変異株、JN.1の占める割合が、5%未満から60%以上に増えました[1]。
BA.2.86も免疫を回避する能力が高く、流行が拡大しやすかったのですが、さらにそのリスクが高まったと言えます。
現状、印象としては乳児への感染例がふえている印象です。
ご家族が罹っていないのに、乳児のみ罹っているという例です。よくお話をきくと、その数日以内に人混みにでていることが多く、マスクのできない乳児のみ罹っているのではないかと思っています。
乳児の全員が悪化しているわけではありませんが、入院率は高めと感じています。感染力の高い変異株である以上、隔離の対策をする以外はなく、病床を圧迫しますし、そもそも入院が不可能な場合もすくなくありません。
すくなくとも、家族の予防接種、そして妊娠中の予防接種が重要と思います。
[1]What to Know About JN.1, the Latest Omicron Variant
https://publichealth.jhu.edu/2024/jn1-the-dominant-variant-in-the-covid-surge
[2]Yang S, Yu Y, Xu Y, et al. Fast evolution of SARS-CoV-2 BA.2.86 to JN.1 under heavy immune pressure. The Lancet Infectious Diseases. 2024;24(2):e70-e72.
“人食いバクテリア”過去最多 致死率3割…「死を覚悟」片足失った男性 感染経路は
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
2022年に欧州の10歳未満の子どもに侵襲性A群溶連菌感染症が増加しました。フランス、アイルランド、オランダ、スウェーデン、イギリスなどの国々です。COVID-19パンデミック中に感染症が減少し、その後増加したことが観察され、他の呼吸器関連のウイルス感染症が併発することでリスクが高まることが報告されました。
https://www.who.int/europe/news/item/12-12-2022-increase-in-invasive-group-a-streptococcal-infections-among-children-in-europe--including-fatalities
そして、オーストラリアでも、子どもを中心に侵襲性A群溶連菌症が増加し、COVID-19パンデミック前と比較して2022年に侵襲性A群溶連菌症が大きく増えたことが明らかになっています。
Lancetの姉妹誌の報告から、重篤な例の割合は32%で、死亡率は1%とされています。
やはり、呼吸器ウイルスの感染が併発していると重症となりやすいとされています。
Abo Y-N, Oliver J, McMinn A, Osowicki J, Baker C, Clark JE, et al. Increase in invasive group A streptococcal disease among Australian children coinciding with northern hemisphere surges. The Lancet Regional Health – Western Pacific 2023; 41.
残業削減必要も地域医療に影響 医師の働き方改革、現場の苦悩(産経新聞)
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
一部の医療機関が救急外来を閉じる、これは大学病院なども含みますが、そのような状況が、現実味を帯びてきました。
4月以降救急医療の縮小が各所で始まる可能性があるということです。
そして、夜間や祝日に救急外来に受診できたとして、その施設は、多くの場合『宿直対応(当直ではない)』という建て付けになります。
宿直対応とはいえ、夜間対応している医療機関に患者さんが集中することになるでしょう。
今よりもさらに混み合う可能性があります。そのような場合に、『宿直対応での限界を超えている』として患者さんの受け入れ制限を行う可能性も高まるでしょう。
そしてそのような宿直対応とはいえ、そこで勤務している医師に過労死ラインを超えている勤務実態があるので、すくなくとも『もっと対応してほしい』ということは難しくなってきます。
小児がん、未承認薬を投与 「ドラッグ・ラグ」解消へ―国立センター
堀向 健太東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 小児科医・アレルギー科医・医学博士
AYA世代のがんは、年間で2,000人以上が亡くなるほど深刻です。
しかし、高齢者のがんに比べると、人数がすくないことから、研究や治療薬の開発が遅れがちです。特に、AYA世代の急性リンパ性白血病(ALL)の治療成果は小児ALLに比べて低くなります。
さらに、AYA世代は将来子どもを持つことを考慮する必要性があります。治療中に生殖能力を守ることも大事ですが、これには卵巣転移などのリスクが伴います。
社会経済的な面では、教育や仕事、金銭的な問題も大きな課題です。さらに、がんを克服しても、後で心臓病などの健康問題が出ることがあります。
これらの点を考えると、AYA世代のがん治療は生活全体に関わる重要な課題であり、新しい治療が望まれます。そのようなドラッグ・ラグに関わる記事といえます。
NORMAL
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