峯村 健司

1962年のキューバ危機を彷彿とさせるWSJのスクープ。中国は米国の「裏庭」である中南米に影響力を拡大させておりその一環の可能性があります。同紙は最近の米諜報、軍関連のディープな記事を書いているので精度は高そうです。このロイター記事はライバル紙故か否定的なトーンで書いています。しかしホワイトハウスのカービー戦略広報調整官はWSJに対し「中国は世界各地で軍事目的の可能性があるインフラへの投資に努めており、バイデン政権はその動きを監視し、対策を講じる」と語っています。キューバは米軍の重要な基地が集まるフロリダ州から最も近いところで150キロ余り。米軍の電波などを傍受するには十分な近さといえます。

先月、インドを訪れました。政府や軍の高官らと意見交換をして感じたのは「世界最多になる」という躍動感とプライドでした。「グローバルサウス」の盟主としての自負と戦略も刮目に値しました。一方、本稿が指摘する深刻な国内の問題点を抱えているのも事実です。東部のミャンマー・バングラデシュ国境も訪問しましたが、西部とは数十年の落差があると言ってもいいほどのインフラ開発が遅れていました。このあたりの課題をいかに解決するか。真の世界一になれるかどうかがかかっています。

ウクライナの優勢を保っているのがスターリンクと言っても過言ではありません。ペンダゴンが資金を投入したのもその証左でしょう。中国もその状況をしっかりみています。台湾有事に備え「中国版スターリンク」である低軌道衛星を１万基以上打ち上げています。今台湾有事関連のとあるシナリオを執筆しています。その調査過程で自衛隊の通信設備の抱える問題点がわかってきました。防衛費を優先的に注ぎ込む分野の１つです。日本も早急に対策をとるべきです。

報道が事実だとしたら、この調停案は中国共産党的に言えば調停案は「紙くず」と言わざるを得ません。最も重要な領土の割譲をウクライナ側に求める仲裁案は現実的とはいえません。習近平政権は３期目になりロシア寄りの姿勢を鮮明にしています。

先日来日した米共和党の議会関係者と会いました。デサンティス氏は有力候補ではあるものの、選挙選の戦略が必ずしも明確ではなく今後失速する可能性がある、と指摘してました。２０１６年の大統領選で本命候補とみられながらレースから離脱したジェブ・ブッシュ氏を思い出しました。

この分析は的を射てるといえます。軍事力を含めた総合国力で米国に追いつく目標として2049年だとみられていました。習近平政権になって様々な指標が前倒しになっていることを考えると合理的な分析です。今翻訳している中国軍幹部が執筆した書籍が指摘しているいくつかの目標とも符合しています。

昨日のＧ７成果を指摘した私の論評にご批判をいただいていますが、ゼレンスキー大統領がオンラインではなく来日したからこそインドなどとの重要な二国間会談を効率的にできたのです。数々の国際会議を取材した経験からマルチの会合では意見表明をするだけで中身のある議論はほとんど交わされていないからです。

これほど成果を出しているＧ7は前例がないでしょう。ロシアから核の恫喝を受けているゼレンスキー大統領が被爆地から発信するメッセージは非常にインパクトがあります。ロシアと関係が深いインドのモディ首相との会談が実現できれば意義は小さくありません。これまでウクライナへのF16の供与にバイデン大統領が前向きに転じたのも成果と言えます。

世界の分断が進む中、今回ほど重要なＧ7はないでしょう。いろいろなアジェンダがあるのはわかりますがまずはウクライナ侵攻と中国の脅威にどう団結して対処するのかが重要です。バイデン大統領らが原爆資料館をどれほど時間をかけて視察するかも注目です。

こういうことをやるから東南アジアやオセアニア諸国の対米不信が募るのです。2017年のトランプ大統領のアジア歴訪ではフィリピン訪問をドタキャン。バイデン大統領も昨年5月のバンコク訪問を家族の事情で取りやめました。いくら米国国内の事情といってもパプアニューギニアや豪州は失望するでしょう。こうしたパワーの隙間を中国が着々と埋めていくのです。

プーチン政権内部の不協和音が出てきているタイミングでこうした声明を出すことは効果的でしょう。被爆地からロシアの核使用を牽制する意義も小さくありません。

もし米大統領が来日しなかったらＧ７は半減していたでしょう。2011年以降、債務超過問題は「政争の具」となっており13年にはオバマ大統領がアジア歴訪をキャンセルしています。こうした状況はアジアの同盟国や友好国の対米不信を誘発しているのです。