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欧州の「急激なEVシフト」失策で打撃のフォルクスワーゲン。「工場閉鎖の検討」が象徴するドイツの産業空洞化
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
2015年に発覚したディーゼル不正の影響を受け、VWは2016年に、新車販売に占める電気自動車(EV)の割合を2025年までに25%に引き上げる目標を発表しました。これを契機に、2020年以降はEVや次世代技術への開発費を大幅に増やし、競合するトヨタやテスラ、BYDと比較しても、売上高に占める研究開発費の割合は5%以上を維持しています。
中国市場は世界最大の自動車市場であり、VWは需要の拡大を見越して早期に参入しました。特に欧州ブランドとしての評価が高く、VWは市場シェアを拡大することができました。しかし、2015年の不正事件以降、VWはEVシフトの戦略に大きく舵を切り、2020年には量産型EV「ID.3」を導入しました。
中国メーカーが低価格なEVを次々と投入しており、VWはこの競争に苦しんでいます。2019年には16%(422万台)を占めていた中国市場でのシェアが、2023年には約10%にまで低下しました。VWにとってアジア市場はVW全体の販売台数の50%以上を占めており、欧州市場を凌ぐ重要な地域となっています。
ガソリン車で得た利益を次世代技術への投資に充てる戦略を取ってきましたが、中国メーカーの急速な台頭により、投資回収が遅れている状況です。
VWは「ゴルフ」のような大衆向けの優れたモデルを提供してきました。今後、VWが次世代の「ゴルフEV」を開発し、他社からもまたベンチマークされるような存在となることが期待しています。
シャープが“EV分野への参入”発表「停まっている時間でさえも価値を」新たな収益源で経営安定化へ
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
自動車は走行している時間よりも、駐車している時間のほうが長いことはよく知られています。また、車内をリビングルームの延長として捉えるというアイデア自体は新しいものではありません。しかし、ソニーやシャープなどの電機メーカーが自動車業界に参入することは、クルマ業界にとって歓迎すべきことだと思われます。
クルマの製造には自動車メーカーが優れていますが、そのクルマというプラットフォームでどのような体験を提供するかという点では、異業種との協力が重要になってきます。これこそが今後の競争の焦点であり、異業種の融合によって、これからのクルマにはさらに魅力的な要素が生まれることが期待されています。
トヨタ「KINTO」はいつブレークするのか?クルマのサブスク、「想定以上に難しい」普及の現実と可能性
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
KINTOの最大の強みは、顧客情報を一元的に管理できる点です。これまでメーカーと販売店で顧客データが分断されていましたが、KINTOは自社の顧客データも統合的に管理可能です。たとえば、スバル車からトヨタ車に乗り換えた顧客の情報を追跡できるほか、サブスクリプション契約の更新タイミングから買い替え時期を予測し、効果的なセールス活動に繋げることができます。このように、KINTOは従来の売り切りビジネスからリカーリング型ビジネスへと転換を図るための強力なプラットフォームを構築していると考えられます。現在はまだ新規顧客の獲得段階にありますが、KINTOの本当の価値は、既存顧客が買い替えのタイミングを迎えた時に明らかになるでしょう。
最強!トヨタのハイブリッド車のしくみを徹底解説!
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
トヨタは、ハイブリッド車向けのパワー半導体も内製していました(現在はデンソーに技術移管済み)。当時、ハイブリッド車に必要な高耐圧素子が市場に存在せず、自社製造を決断しました。さらに、10年以上も前からデンソーや豊田中央研究所と共同でSiCパワー半導体の研究を進め、現在では実用化されています。
ハイブリッド車の市場が不透明な中でも、長期的な技術投資を続けた結果、バッテリー、インバータ、モーターの性能が大幅に向上しました。
トヨタのEV技術に対して心配の声があるものの、ハイブリッド技術はEVにも応用可能であり、基盤技術は整っていると言えます。あとは、テスラや中国メーカーの強みを分析し、さらなるカイゼンが期待されます。
ハイブリッド車のしくみを基本から解説! 同じハイブリッドでもトヨタと日産は全然違う!
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
日本のハイブリッド車市場は、各メーカーが独自の技術を展開していることがよくわかります。
トヨタは、三社の中で最も複雑な『シリーズパラレルハイブリッドシステム』を採用しています。他のハイブリッドシステムも研究しましたが、燃費効率が最も優れているため、このシステムの採用を決断しました。
そしてトヨタは1997年に初代プリウスを発売し、2023年には第五世代を投入しました。この間、ハイブリッド技術は飛躍的に進化し、例えばインバータ技術は初代から第四世代でサイズが半分、出力密度が2.5倍になり、駆動電圧も288Vから600Vに向上しました。この技術的進化により、幅広い車種への搭載が可能となり、トヨタはHV分野で圧倒的な競争力を築きました。
EVの販売が伸び悩む中で、海外メーカーがどのシステムを採用するのかが気になります。
現代自、2030年までに世界販売30%増目標 ハイブリッド車種倍増
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
レンジエクステンダー式電気自動車(EREV)は、ガソリンエンジンを発電機として使用し、バッテリーに充電を行います。走行はすべてモーターで行い、エンジンの出力は駆動には使われません。
EREVの利点は、ピュアEVと共通のプラットフォームで生産できることです。例えばBMW i3では、ピュアEVとレンジエクステンダーの2種類が提供されており、航続距離に不安を感じるユーザーに対応できます。
トヨタのハイブリッド方式とは異なり、EVを中心に据えた戦略が見て取れます。EV販売が伸び悩む中、工場稼働率を高めるためにEREVを投入する狙いがあると考えられます。
トヨタ、BMWに水素車部品供給 普及向け提携強化、量産車販売へ
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
トヨタの2024年の世界販売台数は1030万台で、そのうちEVが11万7000台、FCV(水素燃料電池車)は4000台でした。BMWへの水素関連部品の供給は、量産によるコスト削減が期待されます。今回の提携はBMWの提案で、EVの成長が鈍化する中、FCV技術を確保したい意図が見えます。
次世代の環境車両が不透明な中、最終的にEVに収束するという見方が一般的ですが、地域によってEV、HV、FCが異なる割合で共存すると考えています。なぜなら、EVの普及目的はCO2削減ですが、化石燃料に依存する国では効果が限定的です。EV普及にはグリーンエネルギーによる発電が不可欠です。
成功事例踏襲の「ワナ」に陥らないために知っておきたい「世界のTOYOTA」の”KAIZEN”精神の正体
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
トヨタでは「カイゼン」が企業文化の中心にあり、常に改善のポイントを探しています。これは職業病とも言えるほどで、あらゆる作業や設計において改善できる点を見つけ出しています。しかし、トヨタが闇雲に改善を行っているわけではありません。
まず、将来の理想像を描き、それを実現するために何を改善すべきかを分析します。
そして、「なぜ」を五回繰り返す「5 Whys」(五つのなぜ)という手法を用いて、問題の根本原因を突き止めます。
その根本原因に対して具体的な対策を講じることで、効果的な改善を実現しています。
このような思考プロセスが、トヨタの「カイゼン」なのです。
米EV市場で気を吐くスバルとトヨタ、根強いファン層と信頼が強み
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
ソルテラとbZ4Xが2024年に販売を大きく伸ばした理由の一つとして、次の改良が効果的だったと考えられます。特に、ECOモードの自動起動による実燃費の向上が重要でした。車は発売後も毎年改良が重ねられ、特に欧州車ではモデル末期に品質が高くなり好んで購入する人もいるほどです。
※ソルテラとbZ4Xは同じプラットフォームを共有する兄弟車です。
[2024年モデル ソルテラ/bZ4Xの改良内容]
1. 急速充電時間の短縮(最大30%削減)
2. AUTO(ECO)モードの自動起動による電費向上
[TOYOTA bz4x 一部改良]
https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/39940358.html
【元日産COO】ドイツ車の苦境は「対岸の火事」ではない
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
ハイブリッドが「つなぎ」であることに同意しますが、最終的にEVに収束するかについては意見が異なります。EVの普及目的はCO2削減ですが、化石燃料に依存する国では効果が限定的です。EV普及にはグリーンエネルギーによる発電が不可欠です。
また、SDV(Software Defined Vehicle)の開発が急務である点には同意します。EVは部品点数が少なく、SDVに適しているため、新興メーカーがSDVをベースに開発を進めています。
将来的に地域ごとにEV、HV、FCが異なる割合で共存すると考えています。SDVをEV以外に展開できることが既存メーカーの競争力を高めます。自動車産業では台数の規模がコスト低減効果を生むためです。
既存メーカーがソフトウェアに強い企業と合弁会社を設立する大きな理由は、テクノロジーよりもカルチャーチェンジの方が重要であると考えています。既存メーカーにとって、トップダウンでカルチャーチェンジを実施できるかが重要なポイントになります。
(1)ハイブリッド車(HEV)の歴史 〜その黎明期〜
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
トヨタがハイブリッドに加え、EVやマイルドハイブリッドも幅広く検討していたことがよくわかります。2000年初頭、GMやフォードは時価総額でトップでしたが、彼らの主力車種であるピックアップトラックは車体が重く、ハイブリッド技術による燃費改善の恩恵を十分に受けられませんでした。そのため、当時のGMやフォードはハイブリッドを大きな脅威とは見なしていなかったと考えられます。
この現象は、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」と呼ばれる現象と重なります。成功した大企業は既存のビジネスモデルに固執し、破壊的イノベーションに対応するのが難しいということです。クリステンセンは電気自動車がこのような破壊的イノベーションになる可能性を示唆しており、今日の電気自動車のトレンドが、企業戦略に与える影響は大きいと考えられます。
クリステンセンは破壊的イノベーションの特質として、以下の3点を挙げています:
1. 単純で便利であること
2. 短期間で低コストで変更できる製品プラットフォーム
3. 低価格
これを現在の技術動向に置き換えると、①高速充電技術の開発、②車載OSの開発、③電池の低コスト化が該当します。「イノベーションのジレンマ」が提唱された1997年に、既にクリステンセンがこれらを示唆していたことは驚きです。また、1997年に発売された初代プリウス(ハイブリッド技術)がこの3つの特質を満たしていたこともまた興味深いです。
過去の開発の歴史を学び、未来に向けた次の開発に繋げられたら素晴らしいですね。
なぜ内製化は「しくじりがち」なのか、成功に必須「5つの極意」をガートナー解説
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
記事では、内製化のポイントとして「まず下流から」取り組むことが推奨されています。自動車メーカーが内製化に取り組む際、上流工程を主に担当することが多いですが、それは製造業において上流工程でコストが決まるからです。しかしソフトウェアにおいては、上流工程を担当するためにはプログラミングの知識や経験が不可欠です。ソフトウェア実装の経験がない人が曖昧な要求仕様をもとにシステムを構築すると、目標達成が難しくなります。
及川卓也さんは「ソフトウェアの本質は実装力、すなわちプログラミングにある」と述べており、この実装力が軽視されていることが、ソフトウェアエンジニアの育成が進まない原因だと考えています。
事業会社が中長期的にソフトウェア人材の育成に投資し、競争力の高い製品開発ができる組織になることを期待します。
ネコの置き物が暑さでスライムに。トヨタが実験、車のエンジン停止後「10分」で熱中症の厳重警戒レベル
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
非常に効果的な実験ですね。
暑い時期には、クルマは快適な移動手段となりますが、夏場の車内温度がエアコン停止後に急激に上昇することは、長く啓蒙されています。しかし、ヒトの感覚では「10分くらい大丈夫だろう」と思う方もいらっしゃると思います。夏場にはエアコンを停止した車内に、短時間であっても子供や高齢者を残さないよう心がけましょう。
また、最近ではPHV、EV、FC車両に限られますが、スマホアプリで車のエアコンを起動することが可能です。暑い日々が続きますが快適に夏場を過ごしましょう。
[リモートエアコン機能]
https://toyota.jp/tconnectservice/service/remote_aircon.html#howto
ホンダ・日産連合はトヨタと合流を、生き残りにはOS統一が鍵との声
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
名古屋大学の高田広章教授(車載OSの第一人者)は、日本企業がソフトウェア開発において得意でないことを指摘しています。これは、数十年にわたる努力にもかかわらず大きな進歩が見られなかったことを意味します。
自動車メーカーはこれまでOS開発をサプライヤーに任せていたため、ノウハウやエンジニアが不足しています。現在、車載OSの重要性が高まり、中途採用を含めてリソースを強化しています。車載OS開発には、独断で決定するビジョンが求められ、合併による合意形成の遅れが問題です。
個人的には、企業間の共同研究と一部オープンソース化が解決策の一つだと考えています。
[過去コメントの引用]
車載OSとは、PCでいうWindowsのようなものを開発するのではなく、既存のQNXやLinuxをベースに開発されます。車載OS開発の主な目的は、ハードウェアアブストラクションレイヤー(HAL)の構築です。HALは、異なるハードウェアの違いを吸収するための層です。ハードウェアの変更があってもソフトウェアの変更は不要になります。これにより、異なる車種でも同じアプリを使用でき、コスト削減に大きく貢献します。
参考記事[車載OSとは?目指す姿と各自動車メーカーの車載OS開発状況]
https://www.automotiveworld.jp/hub/ja-jp/blog/blog04.html
トヨタ、研究開発費が過去最高1.3兆円!使い道は「自動運転」「Woven City」?
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
トヨタ自動車の研究開発費が過去最高の1.3兆円に達した背景には、データの重要性が大きく関与しています。佐藤社長は「変革の鍵は、エンルギーとデータの可動性を高めて行くこと(中略)そして、データが生み出すモビリティの価値で暮らしをもっと豊かにしていくことを目指す」とコメントしています。今回はデータについて2点触れたいと思います。
まず1点目は、オーナーからのデータ取得です。トヨタ車に搭載されているカメラから、商品性能向上のためにデータ収集が行われています。多くの車両から収集されるデータの量と質が向上することで、より良い製品が開発されることが期待されます。しかし、顧客情報のセキュリティを確保することが重要な課題となっています。
https://global.toyota/jp/sustainability/privacy/on-board-cameras-initiatives/
次に2点目は、「Woven City」による実証実験です。Woven Cityは工場の跡地に建設され、トヨタ自動車の私有地で行われます。このため、パブリックな場よりもデータ収集や検証のスピードが加速されることが予想されます。米国で技術進化が速いのも、早期に公道での走行が許可され、データ収集を積極的に行っているためです。
トヨタがこのような投資を日本で行うことは、新しいモビリティの導入における障壁を下げ、検証のスピードを加速させる重要なステップとなるでしょう。
トヨタ、米国移転か?自動運転開発で有利、「トランプ関税200%」も影響?
原田 直一大手自動車メーカー Data analyst/Staff Engineer
日本では自動運転の実証や実用化に向けた社会受容性、公道走行における規制の煩雑さなどが課題となっています。この課題に対する解決策として、「Woven City」が注目されています。Woven Cityはスマートシティと想像する人もいるかもしれませんが、実際には新しいモビリティを検証するためのテストコースです。これにより、モビリティ技術の導入障壁を下げ、検証のスピードを加速させることが期待されています。トヨタがこのような投資を日本で行っていることが、一つの証拠となります。
ただし、米国の技術進化が速いのも事実です。米国の先進的なテクノロジーを取り入れつつ、自動車企業文化の変革と新しい技術のミックスが重要になります。
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