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なぜ「アート」が社内エンゲージメントを高めるのか?
服部 泰宏神戸大学 准教授
上司と部下の1on1のやりとりを文字化し,言語データを分析をするという研究を行ったのですが,その結果,対話とアートの奥深さ,一見すると全く別物に見えるこの2つの間に,重要なリンケージがあることがわかりました。
例えば面白かったのは,アートがない場面とある場面とでは,上司と部下の発話の比率が変わってくるということです。
アートがない場面では,1on1が複数回行われていく中で,上司と部下の間の発話の割合が,どちらかに優勢な方へと進んでいくことが多い。極端に言えば,お喋りな上司の場合,ほとんどその人が喋っているというようなことも多々あるのです。
これに対して,アートがある場面では,1on1を繰り返していく中で,両者の発話の比率が,上司:部下で「3割弱 対 7割強」に補正されていくのです。この割合は奇しくも,1on1において「理想」とされる両者の発言比率なのです。
まだまだ解明するべきことは多いのですが,とても面白い,注目に値する現象だと思いました。
有能なリーダーが犯さない8つの過ち
服部 泰宏神戸大学 准教授
リーダーシップ研究は、実に100年以上にわたる長い長い歴史を持つのですが、「どういうリーダーが良いリーダーになれるか」ということに関してわかっていることは、実はそれほど多くないのです。
その理由の大部分が、「どのようなスタイルのリーダーが好業績をあげるかは、そのリーダーが置かれた環境(部下のタイプ、仕事のタイプなど)によって異なる」という理由によるものです。
「わかっていることは多くない」と書きましたが、この点についてはは、これまでの調査によってはっきり示されているのです。
ただしその反面、この記事にあるように、「どういうリーダーが悪いリーダーか」ということに関しては、比較的共通点があるように思います。
「何をするべきか」ということを明らかにするのが難しいならば、まずは「何をしない方が良いか」を明らかにしようという、逆転の発想ですね。
デキる新人とダメな新人、入社直後から開く「3つの格差」
服部 泰宏神戸大学 准教授
実績のある方の言葉は重いですね。
色々な調査結果などとも一致していて、興味深いです。
ちなみに経営学では、「最初の上司との良好な関係と、後のキャリアの成功との間には相当程度強い相関がある」ということが、アメリカや日本の実証研究の中ではっきりと示されています。
採用時の様々な出来事や配属先、仕事内容といった様々な要因よりも、最初の上司との関係性の方が、のちのキャリアと強い関係にあったのです。
その理由については色々な説があります。
1つは、最初の上司との関係がよければその上司が後々もその人を引き立ててくれるという説。
もう1つは、後々活躍するような優秀な人は、最初段階からちゃんとした仕事をし、ちゃんとした人間関係を構築しているから、必然的に上司との関係も良くなる、という説。
真実はどうなのか、それはまだわからない部分もあるのですが、とにかく会社でのスタートが重要であることにかわりはありませんね。
80年代生まれは、もう“おじさん”? 「おじさん」と「カッコイイ大人」の境界線は!?
服部 泰宏神戸大学 准教授
「おじさん」と思われてしまうことは仕方ないとして、大事なのは、本人が加齢とどう向き合うかということだと思います。
ある時点までは、若者と同じような服装、髪型、言葉使いをすることが「かっこよさ」と見られることがよくあります。「年齢の割に若い!!」と言われるわけです。
私の言葉で言わせていただくと、「加齢に逆らうことで得られるかっこよさ」というやつです。
ところがある時点を過ぎると、そのことが今度は、全く逆の評価に転じてしまう。
「あの年齢であの服装を着て、無理をしている」という風に、「加齢に逆らっていること」がかえってカッコ悪いことになっていくのです。皮肉なことに。
この段階で必要なのは、「加齢を受けいられること」なのだと思います。
年齢相応の服装、髪型、言葉使いというものを理解した上で、その一般的な平均水準よりも少しだけ「若く」、自分自身の水準を設定することが大事なのだと思います。
難しいのはその転換点が明確にわかりにくいことと、若干の個人差もあることですが。。
本は理解するために読まなくていい 月100冊の読書術
服部 泰宏神戸大学 准教授
東京在住のビジネスパーソン数千名規模にアンケートをしたことがあるのですが、それによれば、ビジネスパーソンの皆さんが一ヶ月あたりに読んでいるビジネス書の数は平均値ベースで0.2冊、中央値だと0冊でした。
ただし数十冊を読みこなしている人もいて、その人たちは、社外の学習やて上げ式の研修にも積極的に参加しており、本を読まない人たちはそうした学びの機会にも参加する割合が少なかったのです。
要するに、「学ぶ人はますます学び、学ばざる人はますます学ばない」という現象が起こっているのです。
さらに注目するべきは、そのような「学ぶ人」は、総じてキャリア開発や日々の仕事への問題意識も高く、そのことがさらなる読書や学びを誘発する・・・というサイクルが存在するということです。
この記事が示すように、月に100冊を読むためには確かに「技術」が必要なのですが、月に100冊読むことそのものが、読書の「技術」を育て、そのことによってこれだけの読書が可能になるという、サイクルがあるのだと思います。
会社を退職ではなく、「卒業」する人が増えるわけ
服部 泰宏神戸大学 准教授
「会社と人」の関係に関するモデルに、変化の兆しがみられるのだと思います。
「勤務地や職種などの選択の自由」を放棄する代わりに、「雇用の保障」と「組織内での優遇」を受けていたのが、これまでの日本企業の正社員でした。このモデルは、「組織と個人が、長いお付き合いすることを前提とする。そのため、お互いのために尽くすことが、結局はお互いにとってメリットになる」というものであり、いわば「運命共同体モデル」です。
成果主義/目標管理の導入によって、このモデルに部分的な修正がはいりました。
組織と個人が「長いお付き合い」をすること、運命を共にすることをお互いに期待できなくなったかわりに、共通の「目標」を設定することによって、目線合わせを行おうとしたのです。
いわば「目標一致モデル」だったのです。
そして「出戻り」が象徴するのは、このモデルの1つ先にあるモデルだと思います(私自身の願望や希望的観測も含めて、あえてそう言いたいと思います)。
そもそも組織と個人とは、「目指すもの」も「大事にするもの」も異なるものです。
しかも組織の中には「目指すもの」や「大事にするもの」が全く異なる様々な個人がいるものです。あるいは少なくとも、そうした個人を受け入れていかなければならない時代に入ってきているのだと思います。
・・・・いま起こりつつあるのは、こうした事実を受け入れて、これまでにはない新しいモデルを紡ぎだそうとする動きなのではないでしょうか。
私はこの新しいモデルを、「手段(利害)の一致モデル」と呼んでいます。「出戻り」に典型的にみられるように、組織と個人とがお互いの「利害」が一致する限りにおいて雇用関係を続け、一致しなくなったら離れ、また「利害」が一致するようになれば雇用関係に入る、というようなモデルです。
お互いがお互いの目標達成の手段になっているのです。
こうした動きは、組織の「人事管理(HRM)」に発想の転換を迫るだけでなく、自身のキャリアを自分自身で管理する「セルフ・マネジメント」を個人にも要求します。
組織によるマネジメントを、(1)人事によるヒューマン・リソース・マネジメント、(2)現場上司によるミクロ・マネジメント、そして(3)社員自身によるセルフ・マネジメントの3つに分けた時の、3つ目が重要性が浮上するのが、これからの時代なのだと思います。
就活の悩みどころは志望動機。時には本音と建前の使い分けも必要
服部 泰宏神戸大学 准教授
採用サイドのコメントになります。
志望動機を聞くことで何を知りたいのかによって、この質問に意味があるかないかは、かわってくるように思います。
例えばこの質問は、「その人が自社を志望している度合いと、その程度」を聞くためのストレートな質問としては、あまり機能しないように思います。
これは他の皆さんが書いておられる通りです。
まだ付き合ってもいない相手に、「ねえ、私のどこが好き?」と聞くようなものですから。
他方で、これは「(それが本音であるかどうかはひとまず置いておいて)他者が納得するように志望動機を説明させることを通じて、ある種のコミュニケーション能力を見極める」ことを目的に置くならば、ある程度は機能するように思います。
物事に後付け的な説明を加える能力も、ある種の能力ではあるので。
問題は、後者の能力を必要とする企業がどこまであるのか、そして、仮にあるとして、こういう明確な意図を持ってこの質問を投げかけているのか、ですね。
繰り返しますが、1つ目の目的を達成する手段としては、かなり怪しい質問ですから。
初めての管理職、どうすれば? 不安を抑える3つのコツ
服部 泰宏神戸大学 准教授
ハーバード大学のリンダ・ヒルは、はじめて管理職についた人がつまずく原因となる、5つの誤解をあげています。
(1)管理職の権威は絶大である
→現実には、管理職といえど、他の人と相互依存。それどころか、管理職の将来は、部下たちの働きいかんにかかっている。この現実を直視しなければならない。
(2)管理職の権威はその地位から生まれる
→現実には、権威の源は色々ありそれらを維持しなくてはならない。
例えば「ちゃんとま振る舞い、成果を出す人であること」を早期に示さないと、権威を失う。
(3)部下をコントロールしなければならない
→現実には、部下たちが自発的に考え、仕事しない限り、いかに権限移譲しようと望む成果は得られない。
(4)全ての部下と良好な関係を築かなければならない
→現実には、マネージャの目標は、チーム全体の力を最大化する方法を見つけることであり、全ての人と仲良くやることではない。
(5)何よりも円滑な業務運営を心がけるべきだ
→現実には、現状を維持するだけでなく、必要であれば改革を起こす義務を負っている。
日本人が教えられていない「自由」の本当の意味とは?
服部 泰宏神戸大学 准教授
自由とは、本来、とても厳しいものですよね。
その昔、エーリヒ・フロムが「自由からの逃走」の中で問うたのは、革命によって尊い命を落としてまで手にした自由から、なぜ人々は逃げ出して、全体主義のような不自由へと走るのか、、、、でした。
私は10年ほど裁量労働で働いており、その意味で、比較的自由度の高い仕事をしてきたのだと思います。
ただ、生来怠惰な自分が裁量労働下で、平均以上の成果を維持しつつ、しかも家族と自分を傷つけないようにするためには、かなりの意思と管理技術が必要であることを痛感する毎日です。
皮肉なことに、与えられた自由をいかに自分の手で制約するか、ということに腐心しているのです。
今回の趣旨とは少しずれてしまいますが、裁量労働とは、結局、組織から与えられた自由に対して、自分の意思と技術でもって縛りをかけたり、あるいは緩めたりしていくことなのだというのが私の結論です。
【就活】新卒採用にAI導入進む 住友生命はES分析、入社後も追跡し人事戦略に生かす
服部 泰宏神戸大学 准教授
今回の事例で見過ごせないポイントは、ESの分析にAIを導入することで、採用担当者の稀少なリソース(e.g.時間労力、注意)が、(機械ではなく)彼ら自身が担うべき業務へと配分可能になる、という点です。
某大企業では、AIを使うことで担当者の業務時間が数十パーセント圧縮され、その分を、めぼしい求職者との面接であったり、その他の活動に振り分けることができたと聞きます。
社内の優秀な人材の稀少なリソース(e.g.時間労力、注意)をどこにどのよう配分するかということが、企業間競争の大事な焦点になっていくはずです。
そこに大きな貢献をするのが、AIだと思うのです。
少なくとも人事部門におけるAIの活用は、現在のところ、その多くがこの部分に関わるものだと思います。
その意味では「まだまだこれから・・・」なのでしょうが、とにかく、大きな一歩だと思うのです。
ドラッカースクールで学んだ「一人称」で語ることの大切さ
今年の就活生は“超ホワイト志向” 「40歳で年収1000万円」「サビ残はイヤ」
服部 泰宏神戸大学 准教授
ここ数年の就活生(特に私が普段接している大学生)の志向の傾向をあえて単純化していうならば、「2種類の安定志向の並存」と「働き方へのセンシティビティ」の2つになるかと思います。
まず「2種類の安定志向の並存」について。
就活生にアンケートをすると、「安定志向が強まっている」というような結果が出てくることが多いのですが、この「安定志向」には、実は2つの異種が混在しているように思います。
1つは、経営基盤なり組織体制なりが磐石で、揺らぎない組織に所属することによって、キャリアの安定を確保したい、というタイプの安定志向。もう1つは、「会社なんて、いつ無くなるかわからない」ということを前提に、だからこそ自分自身のスキル・知識・経験を早期に蓄積することで、キャリアの安定化をはかりたい、というタイプの安定志向。
全く違うこの2種を一緒くたにして、「最近の若者は安定志向だ」と一刀両断するのはよろしくないと思います。
後者のタイプの就活生は企業に求めるのは、組織そのものの安定ではなく、安定的なキャリアを可能にしてくれるようなスキル・知識・経験ということになります。具体的にいえばそれは、企業選択において「初期キャリアにおける成長」が重視されるということです。
多くの人材を輩出している企業、独立して起業する人が多い企業、若いうちに事業の中核を経験できる企業など、キャリアの早い段階での成長機会がある企業(もう少し正確に言うと、成長機会があると実感しやすい企業)に、人気が集まっているのはこのためであると、私は見ています。
ただ、就活生が「成長機会」だけに目をとられているかというと、そうでもないのです。それがこの記事に書かれている点であり、私の言葉で言うならば、「働き方へのセンシティビティ」です。
これもまた、組織への根本的な不信感にあるのかもしれません。柔軟な働き方、キャリアの事情に合わせて働き方を提唱している企業がポジティブに評価されやすいのも、このためです。
とにかく、こうした彼らの志向性をちゃんと理解した上で、採用活動なりキャリアなりを設計することが、これからの企業には求められるのだと思います。
いつもと違う場所に旅をすることで、 3つの成長の機会を得られる
服部 泰宏神戸大学 准教授
私は、旅の目的地や旅そのもののコンセプトに加えて、移動手段、とくに、旅が終わって日常生活を営む場所まで帰ってくる際の交通手段もまた、旅からの学びの密度をあげる鍵を握っていると考えています。
旅に限らず、「いつもと違う場所」での「日常からかけ離れた奇異なもの」との遭遇は、私たちの脳を瞬間風速的に刺激してはくれるのですが、そうした経験の意味を理解し、咀嚼するために、私たちの脳はある程度の反芻時間を必要とするのです。
「奇異」で「かけ離れ」た経験であったならばそれだけ、多くの冷却時間を必要とするわけです。
だから例えば、美術館やら古(いにしえ)の史跡をめぐるような旅の後は、あえて飛行機ではなく列車(できれば鈍行列車)に揺られながら、時間をかけて帰るというようなことをよくやります。
そうやって時間をかけることで、そこで目にしたもの、感じたものの反芻と、頭の冷却を行うことができるからです。
初めてアフリカに行った時には、あまりに強い刺激に、帰りのトランジット先で2日ほどクールダウンしたこともあります。
経営学の領域では、企業研修の成否が、研修「後」のリフレクション(研修内容の反芻、内省)によってかなりの部分が決定されることがわかっています。
「終わり方こそが、学びの濃度を決定する」というわけですね。
旅もまたしかり。私はそう思います。
NORMAL
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