土居 丈朗

キッシンジャーの著書 "Diplomacy" https://www.simonandschuster.com/books/Diplomacy/Henry-Kissinger/9780671510992 は、和訳もされて、 『外交（上・下）』 https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/1996/9784532161897/ 何度もよく読んだ。歴史的経緯を戦略的な見方で捉えた記述がとても印象的だった。

外形標準課税に関する税制改正をめぐり話題となっている、資本金を１億円超から１億円以下に減資する企業はどんな企業だろうか。法人税申告書の個票データに基づく実数から明らかになった実態について記している。

やはり、資本金１億円超の大企業に課す外形標準課税について、資本金を１億円以下に減資する企業が出ていることに対抗して、資本金と資本剰余金の合計額が１億円を超える企業も課税対象とすると、外形標準課税が始まって以来一度も課税対象となっていない企業がそれにより新たに課税対象となる、という批判は抗しきれなかったのだろう。 そこで編み出したのが「資本金と資本剰余金の合計額が５０億円を超える企業」ということなのではないか。これだと、資本金を減資する際に単純に資本剰余金に移し替えた企業なら、減資前は恐らく資本金が４９億円超の企業だったというところで、これぐらいなら経済界の批判を押し切れるかを考えたのではないか。 次なる焦点は、その外形標準課税の対象拡大を、いつから適用するかだろう。防衛財源確保のための法人税増税も実施予定である。これらを同時期にできるのか。外形標準課税の対象拡大を遅らせれば、その間に資本構成をさらに変えて、「資本金と資本剰余金の合計額が５０億円を超える企業」とならないようにして外形標準課税の対象外となるような企業行動が起きるかもしれない。こうした「いたちごっこ」の様相が目に浮かぶ。

残念ながら、目下のこの議論の契機が(NTT株の売却益が使えれば)「防衛財源」を増税に拠らないようにできる方策という思惑が混じってしまい、純粋にわが国の電気通信産業のあり方だけで論じられなくなって、議論が錯綜しているように映る。防衛財源の議論と切り離して虚心坦懐に議論すればよいのに…

もともと、フィリップス曲線は、失業率とインフレ率との関係を捉えていたわけで、それと「雇用」がどれほど近似・相関しているか、ということに尽きるだろう。つまり、労働力人口のうち就業者でない人が失業者という関係があり、就業者のうち自営業主（含家族従業者）を除くと雇用者となる。ギグワーカーは雇用的自営と位置付けられ、自営業主か雇用者のどちらに位置付けるかは、労働経済学の観点からも議論があるところだが、この記事の文脈でいえば、インフレ率との関係でどちらに位置付けると今後のインフレ動向をより的確に捉えられるか、という議論になるのだろう。

外形標準課税の対象法人の要件変更は、一見簡単そうに見えて実は政治的には大ごとになりそうだ。総務省は、外形標準課税の対象法人を、現行の資本金等の額が１億円超の法人としているところから、資本金と資本剰余金の合計が一定額を超えた法人に、定義を拡大して対象法人数を減らさないようにしたい思惑がある。 しかし、そもそも外形標準課税創設以来、一度も対象法人になっていない「中小企業」が、自ら減資をしてもいないのに、この定義拡大によって初めて対象法人となるという可能性が出てきた。それは、反対が出て当然だろう。 他方、全国知事会も、外形標準課税で引き続き税収を得たい半面、地元の中小企業の支持者からの圧力に押されてか、「中小企業」への対象拡大には及び腰だ。本気で定義拡大をする気があるのだろうか。

コロナ禍での補正予算で乱立・積み増した基金についても、見直しの視座を示して、コロナ後には安易に新増設しない仕組みにしてゆくことが求められる。基金は、一旦設けられると、国民・国会の眼が行き届きにくくなり、財政民主主義の観点からも問題が多い。

政治的に独立している日本銀行が、量的緩和政策の転換のために、政治的に振る舞わざるを得ない状況に追い込まれつつあるのかもしれない。

インフレを抑え込みすぎてもリセッションを誘発しかねないから、インフレに「勝利」しても景気で「敗北」しかねない。さりとて、インフレを放置したら、将来慢性的な悪性インフレを助長してはよくない。でも、今のインフレを放置したからといって、そのままインフレが続くとは限らない。そこの見極めの難しさを表現しているように思える。

補正予算の規模だけでいえば、2023年度は2022年度よりも半減（以下）となる見通しとなった。2023年度に補正予算には、未使用の予備費が使われるとすると、実質的な規模は10兆円より小さくなりうる。「減税」騒動のが「お蔭」で規模半減に対し与党から実質的に異議が出なかった。2022年度は20兆円だとか30兆円だとかと言っていたのが、もはや過去の話となっている。

「１人４万円減税」で、所得税（含む個人住民税）の納税額が４万円に満たない人は、減税の恩恵がそれだけ受けられない、かと思いきや、そうならないような仕組みを検討するとのこと。それなら、「給付付き税額控除」が最も効果的な場面だろう。

「歳出改革」は、言うは易し行うは難し。歳出の量より質の向上を図るべく、できるだけ実現するに越したことはないが、負担増を生じさせないようにするには、歳出改革の「量」も求められる。