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米、債務上限上げで基本合意 2年分、デフォルト回避へ
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
連邦政府と議会が与野党ねじれ状態(divided government)になっているときならではの事態といえるだろう。債務上限引き上げと引き換えに、バイデン政権は歳出削減に応じた。財政インフレ(fiscal inflation)が起きている状況では、野党共和党の主張を聞き入れたという形をとりながらも、歳出を削減した方がインフレ圧力を弱められる点で、政権側にとっても悪くないディールだったのではないか。それに、民主党が望みながらも削減された歳出については、次期大統領選挙・連邦議会選挙にて、それを復元させるから投票してほしいと支持を集める口実にも使える。
他方、共和党からすれば、政権をとる前でも要求した歳出削減をバイデン政権に飲ませることができた点をアピールできるだろう。詳細を見なければならないが、今般の合意は共和党・民主党ともに得る者を得た合意のようにみえる。
子ども予算を「ねずみ講」「消費税」以外で賄う解
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
社会保険料と税は、国民からすればどちらも負担であり、あまりその区別を意識しないかもしれない。しかし、両者は制度の設計思想が根本的に異なる。社会保険料は、負担者の拠出記録を残し、誰がいくら負担してどのようなリスクに直面した際にいくら保険給付を行うかを見定めて、社会保険料水準を決める。リスクに直面する可能性がほぼゼロである人から、「保険料」をとることは原則として正当化できない。他方、税は、原則として使途を問わず、受益と負担の関係を意識せずに、財源を賄うことができる。
子ども予算に社会保険料を用いるなら、子育てに関するどのようなリスクを想定し、誰から社会保険料負担を求めるかについて、しっかりと制度設計しなければならない。
急速進化のAI、課税に抜け穴だらけの現実
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
結局、所得は人間に帰着する。個人に税を課すと「給与水準の高い労働者が収入を1ドル失うと米国の連邦政府や州など地方政府は、税収が約30セント減るが、企業がコストを1ドル削減したときに増える納税額は21セントに過ぎない」というが、それはアメリカで、高所得者の個人所得税の税率が30%だが、法人税率が21%と言っているにすぎない。法人税課税後に個人ひ配当されれば個人所得税が課税される。
投資家で課税されていないのは法人格(及び同様の仕組み)で配当を受け取っているからであって、個人として受け取れば、(よほど妙な節税スキームを使わない限り)課税される。
AIへの課税が弱いとすれば、人間が一切関わらない形でAIが生み出したAIが、人間が所有権を主張できない形で生み出した所得に、課税できないところだが、今それを人間が想像できるだろうか。
子どもや若者1万人に調査 “大学までの教育無償化を” 4割
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
大学に行きたいという願望はよくわかる。一大学人として、それに応えられる大学教育でありたいと思う。
しかし、日本の大学の多くが、その願望に応えられるだけの教育内容を備えているといえるだろうか。「大学の教育無償化」をするなら、大学教育についての質の評価が当然として問われ、質が悪い大学は「無償化」の対象とすべきではない。
それとともに、日本にいる大学人の多くが、「学部教育」に今以上に注力したいと思っているのだろうか。教育の担い手が今以上に「学部教育」に注力できない状態で、無償化をしても、学生と教員との間のミスマッチ(温度差)が顕在化してしまい、学生に失望感を与えてしまいかねない。現状として、学部教育で(出席を一切問わない)講義で出席率がどれほどなのかという実態を直視しないといけない。このミスマッチがあるとすれば、無償化をする前にその解消が必要だ。
7年かけたシステム使わず、急造ハーシスで混乱…厚労省「詳しい経緯わからない」
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
最近、以前に比べて感じるのは、省庁内の「縦割り」が(当事者も望んでいない形で)進行していること。厚生労働省だけでない。局を越えて(場合によっては課を越えて)詳細な情報共有が肝心なところでできていないことに、外部の人間である私が気がついて指摘したりすることがある。
人事異動は、これを助長しているとは思わない(むしろ改善の方向)のにも関わらずである。
それをよく感じる場面は、審議会等の政府の会議である。複数の会議の委員として、同じ省庁でも別の局の担当者と、それぞれ別の会議で議論することがあるが、そこで同じ省庁の別の局で進めている企画や方策に関連があると思い、それらのコラボや連携を当方から提案したりすると、それを知らなかったことが判明したりする。
恐らくは、それぞれの部局の所掌が近年ますます高度化して、専門性がますます問われることで、自らの所掌については責任が伴うから真剣なのだが、他の部局のことまでは知悉できないということかもしれない。
最近の学界でも似たようなことになっている。
その打開策は、ちょっとした日常的なコミュニケーションというか「会話」での「耳学問」だろう。もう少し省内での「耳学問」があっても良いのではないだろうか。

【本音】僕たちの「育休取得」の決め手を教えます
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
育児休業給付は、雇用保険の被保険者でないと受け取れない仕組みになっているのが現状なので、今後雇用保険の適用拡大を進めることにも注力することが重要だろう。
もちろん、育児休業給付を、雇用保険でなく、(雇用保険の仕組みに捉われない)新たな子育て支援のための「公的保険」に仕立て直す方策もありうるが、若年世代ばかり負担増となってはいけないので、高齢者からも負担を求める必要がある。しかし、「育休時の所得保障」というリスクに直面することのない高齢者にもこの保険に加入させないと高齢者から保険料を取れないものの、リスクに見合わない形で保険料を取ることになって矛盾をきたしてしまい、悩ましい問題である。
鉄道各社、自動運転に本腰=人材難背景、新幹線も
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
今さらながら、今年3月にコペンハーゲンに赴いたら、地下鉄は無人運転、改札も無人だった。コペンハーゲンの地下鉄は2002年に開業。無人運転技術自体は珍しいわけではないが、「自動運転」の文脈で考えると、その含蓄は奥深い。
大量輸送用でなく、空港のターミナル間やサテライトとの往来(そういえば、成田空港第2ターミナルにもかつて無人運転のシャトルがあった)などなら、自動運転は使えるという先入観があったが、踏切がなくホームドアがある鉄道なら、今すぐにでも技術的には自動運転が可能と言ってよいのではないか。踏切がある鉄道はすぐには無理かもしれないが、踏切がない地下鉄は、自動運転化をもっと急いでもよいのではなかろうか。
デンマークは、人口が少なく人材は貴重という発想があるから、人材の投入場所を率先して工夫している。運転も自動にでき、改札がないいわゆる「信用改札方式」で人を張り付けず、ホームに人は、無賃乗車に対して罰金を取る検札しかいない。どこで稼げるか心得たものだ。
日本は、まだ働き手がいるということにかまけて自動化を怠れば、今後高いコストを支払わなければならなくなるだろう。そうなる前に、既に人で不足なのだから、省力化投資に舵を切った方がよい。

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