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「年収の壁」130万円超え2年連続まで扶養OK 10月から 政府方針
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
せっかく「年収の壁」を106万円まで引き下げて、年金保険料の「第3号被保険者問題」を被用者保険の適用拡大によって事態の縮小を図ったはずなのに、2年連続までなら被扶養者にとどまれる、としてしまうと、文字通り「引き続き第3号被保険者のままでよい」と公認したも同然となり、「第3号被保険者問題」を蒸し返してしまう。これでは、これまでの被用者保険の適用拡大の努力を無に帰してしまいかねない。
「年収の壁」の解消は、これよりもっと良策がある。「第3号被保険者問題(保険料を払わなくても年金給付が受けられる)」を解消するには、本人にまずは一旦保険料を払ってもらわなければならない。しかし、その保険料負担で手取り所得の逆転現象が起きるから、保険料を払ってもらった上で、別途所得税等で年末調整などをする形で負担減免を図る方策(「社会保険料割引税額控除」)が考えられる。
幼児教育の効果を追跡調査 学力、稼ぐ力など影響確認―1万人規模、5歳から成人後・文科省
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
こうした調査を、長期間コミットした形で行うことは重要だし、後に貴重なデータとなろう。同一人物について長きにわたり継続してデータ収集にご協力頂くこと(経済学ではパネルデータと呼ぶ)で、単年度でそれぞれ別々の人物を調査すること(繰り返しクロスセクションデータと呼ぶ)ではわからない政策効果が明らかにできる。
しっかりとデータを蓄積して、後年になって研究者が分析できるように整備し、研究者の分析結果をエビデンスとして、教育政策に反映してゆくことが求められる。それでこそ、わが国でも教育政策にEBPM(根拠に基づく政策形成)が実現できる。
そのためには、調査を始める前の段階から、調査項目をどうするか等綿密な調査設計がカギとなる。後から「あの時こういうことを質問しておけばよかった」となっては、後の祭りとなる。私もパネル調査の設計にもかかわっているが、長きにわたり調査に応じて下さる方々はとてもありがたい存在なので、できる限り長く調査にお付き合い頂けるよう工夫が必要だろう。
「昭和型」の遺族厚生年金は「不平等」 男女格差是正求める声相次ぐ
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
遺族年金の「不公平」は、そこが最大のものではない。後期高齢者医療や介護保険の保険料や自己負担における「不公平」こそがもっと深刻な問題。
自分の年金受給権で得た公的年金は、課税対象所得となりかつ後期高齢者医療や介護保険の保険料の算定や自己負担割合の決定において加味されるが、遺族年金は非課税所得だから加味されない。
すると、同じように200万円の年金を受け取っていても、自分の年金受給権で得た公的年金で受け取ると保険料がそれだけ高くなったり、自己負担割合が高くなったりするのに、遺族年金で受け取るとノーカウントだから保険料が免除されたり自己負担割合が1割で済んだりする。こちらの「不公平」を先に是正すべきだろう。
“防衛増税”は2025年度以降に 実質“先送り”注目は「決算剰余金」?
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
これには2つの意味があろう。1つは、2024年から「防衛増税」を実施するには、今秋にそのための臨時国会を開かなければならない(法改正が必要)が、その前に今夏に与党税調・政調で議論の上で了承をもらわなければならない。それは(衆院選を考えると?)難しい、と認識しているということ。
2つ目は、「防衛増税」に反対する与党内の勢力に対し、2024年からの「防衛増税」を諦めるという手柄を取らせる代わりに、決算剰余金を追加で防衛財源に回すとともに、今年度の補正予算は(決算剰余金がそれだけ使えなくなるから)規模を減らす、というバーターを持ちかけた、ということ。
「防衛増税」を先送りするといっても、結局は2025年度から増税を始めるといきなり大きく増税になるだけなので、それよりかは2024年度から小さく始めた方がまだましだと思うのだが…
年収の壁、130万円超でも扶養可に 一時的増なら 政府対策原案
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
元来、106万円と130万円は、制度的由来が異なる。130万円は、被扶養者が扶養から外れる際の要件である。週の所定内就業時間が20時間以上か以下かは不問だし、所定内賃金が月額8.8万円以上か否かに関係なく、年収が130万円を超えていれば、扶養から外れ自分で保険料を払わなければならないというもの。
他方、106万円は、被用者保険の加入要件である。被用者保険の適用拡大を図るために後付けでできた。所定内賃金が月額8.8万円以上という要件から12ヶ月分ということで106万円(厳密には105.6万円)以上だと被用者保険に入らなければならず、自分で保険料を払わなければならない。その結果、扶養から外れることになる。
現時点では101人以上の事業所に勤めていて保険料の支払義務が生じる106万円と、(100人以下の事業所に勤めていて)扶養から外れて自分で払わないと無保険状態になるという130万円とでは、「年収の壁」克服に向けた対応が異なるのは制度的にはあり得ることだろう。
それと、社会保険から「扶養」という概念をなくすのは、子どもや無収入の人の社会保険をどう考えるか重大な問題である。子どもや無収入の人を無保険状態にしないようにするには、誰かが保険料を肩代わりするしかない。そのための「扶養」という概念でもある。無収入(0円)という閾値は極端だから130万円というところに閾値がある。それが嫌なら、税で財源を確保するしかない。そのための増税が受け入れられるのだろうか?
児童手当拡充+扶養控除廃止なら 年収900万円で負担増
土居 丈朗慶應義塾大学 経済学部教授
児童手当の高校生までの支給に関連して、扶養控除が廃止されると年収900万円以上が負担増になるというが、それは間違っている。私も推計しているが、この計算では、社会保険料控除が含まれていない。社会保険料控除を入れないと、計算上重要な点で問題がある。
どんな低所得者でも16~18歳の扶養控除を受けている、というのが税制面から見て肝心なところでの間違いである。
そもそも、給与所得控除があり、その上に基礎控除があって、(106万円ないし130万円超の所得の人には)社会保険料控除もある。そもそも低所得者は、扶養控除を適用する前の段階で、これら3つの控除を差し引くだけで課税所得がゼロになる。だから、16~18歳の扶養控除は、使い残しの控除となって、税負担を軽減するのに何の役にも立たない。だから、そうした所得者は、16~18歳の扶養控除がなくなっても、税負担は全く変わらないのである。ここの部分で、社会保険料控除をカウントに入れるか入れないかが重要となる。
結局、私の推計では、社会保険料控除も入れると、年収1200万円前後以上になると、16~18歳の扶養控除が廃止されることに伴う所得税と住民税の負担増が12万円を超えるので、負担増となる。年収900万円以上というのはミスリードである。

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