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「飲んだくれ」「太っちょ」の単語含む病名は差別的…欧州で変更、日本も2つの肝臓病を新名称に
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
ちょっとニュアンスが伝わっていない気がするので、補足します。このAlcoholicという言葉には「アルコールの」という形容詞としての使い方があり、その意味で病名に使われていたので、「飲んだくれの」という意味の、問題のある病名を長らく使用していたというわけではないと思います。
しかし、「アルコールの」という形容詞が転じて、アルコール依存症の人をalcoholic(s)と総称する使い方をされることがあり、この場合、「アルコール依存症の人」という意味の名詞として使われます。こうした呼称を人を呼ぶときに使ってしまうと、その個々人の違いを無視した形で人がラベリングされることになり、そのラベリングが差別的な考え方につながります。
このような事例は他にも数えきれず、ダイアベティスで話題となった糖尿病についてもdiabetics(ダイアベティクス)が糖尿病の人たちという意味合いの言葉遣いで同様に問題視されています。
こうした背景から、英語圏ではperson first language(人を最初に置く言葉遣い)が重要視されるようになってきています。例えば、alcoholicであれば、person with alcohol use disorderを使うようにするということです。これは糖尿病も同様で、diabetic patientではなく、person with diabetesが好ましい表現になります。
文法などは異なりますが、差別の排除はまず言葉遣いから、というのは日本語にも適用できる話でしょう。差別を生むような避けるべき言葉は日本語にも散見され、そうした言葉遣いについては見直されるべきと考えます。「老害」などはその代表例だと思っています。
PFAS汚染対策を 地方議会で意見書相次ぐ
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
PFASは、食品の容器や包装、焦げ付き防止機能のついた調理器具、汚れ防止加工されたカーペットや衣類、防水の衣類、さまざまな化粧品など、身近な幅広い製品に使用されています。 先日、多くのコンタクトレンズにも含まれることが報道されました。
このため、PFASへの曝露は飲料水、空気、食品の容器、調理器具などのさまざまな経路を介して起こっている可能性があります。先進国のほとんどの人はこのPFAS に曝露されていると考えられています。
腎臓がんのリスク増加など、健康リスクの可能性から、血液中の PFAS を測定する血液検査が必要かという疑問も起こります。しかし、どのぐらいのレベルで有害なのかのエビデンスは限られており、 結果に基づいた対応も難しいため、今のところ血液検査は推奨されていません。
ただし、よりエビデンスが蓄積されてくれば、そのようなことが今後推奨されるようになる可能性もあります。現時点では PFASを体から除去したり、排泄を促進したりする方法がないことにも留意する必要があります。暴露機会の多い人では甲状腺機能検査や一部のがんの兆候がないかを何らかの方法で評価する必要が出てくるかもしれません。
たった1滴の涙から乳がん発見 神戸大ベンチャー、大阪万博めどに実用化
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
線虫がん検査と異なり、検査の生物学的妥当性が説明可能な点が強みです。しかし、これをがん検診として用いるという場合には、既存のがん検診との比較などにより、臨床的な有効性(すなわち、検査精度の議論にとどまらず、検査によって既存のがん検診と少なくとも同程度にがんによる死亡リスクを低減できるかといった点)を評価した上で実用化につなげていただきたいところです。
なお、現時点では、乳がん検診としては「唯一」マンモグラフィが推奨されています。その根拠として、マンモグラフィを受けることにより、検査を受けない人に比べて乳がんによる死亡リスクを低減できる、すなわち検査で命を守る可能性が高いことが知られている唯一の検査だからです。
該当年齢の方は、ぜひ目先の利益や面倒臭さに負けず、検査を受けていただくことを強く推奨いたします。繰り返しになりますが、あなたががんで命を奪われてしまうリスクを低減できる検査だからです。
熊本県内の男性、日本脳炎に感染 2023年で全国初の確認
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
日本脳炎は蚊が媒介するウイルスの感染症ですが、発症した方の20~40%が亡くなってしまうといわれています。また、生存できたとしても45~70%に精神障害などの後遺症が残ってしまうとされています。
しかし、予防接種によって、その罹患リスクを75~95%減らすことができると報告されており、予防接種がとても重要な役割を果たします。
平成7~18年度に生まれた方は、予防接種を受ける機会を逃していることがあるそうです。ぜひ母子手帳などを確認し、未接種の場合には予防接種を受けるようにしてください。
参考
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou20/japanese_encephalitis.html
糖尿病、ダイアベティスに 学会、英語名の通称提案
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
英語での発音は、ダイアビーティーズが最も近いカタカナだと思いますし、このダイアベティスは「英語名」でもない和製英語でしょう。ダイアベティクスという近い単語もありますが、これは糖尿病患者をまとめて総称する、使用を避けるべき言葉です。
また、そもそも由来となったdiabetes mellitusという英語は、糖が尿に出るという意味を持つ言葉であり、この言葉自体、直訳すると「糖尿」あるいは「尿糖」という意味を持ちます。カタカナにしたら皆が分かりにくいという意図だと思いますが、本質的には同じことを言っています。
尿という言葉が含まれるのが問題とされているのであれば、高血糖病、高血糖症候群など、いくつかの候補を簡単に想起することができますが、中途半端で親しみにくいカタカナ英語が提案されるのは、消極的な消去法に基づいている印象もあり、そういう意味では残念な気がします。
薬の価格引き下げへ 診療報酬改定、財源の使途巡り議論
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
薬価の引き下げのマイナス面にも丁寧に目を向け、天秤を計ることが重要です。
日本の薬価が低いことは、時には市販薬より安い処方薬を求めて、より頻繁で安易な受診を招いていることが指摘されています。処方薬が安くなっても、受診回数が増えれば、当然ですが、医療費は増加します。
また、薬価が低く設定されることで、国外の製薬企業の参入の障壁となります。営利企業である製薬企業にとっては、薬を売っても儲けの出にくい日本で営業を行うメリットが下がります。これにより、特定の薬が国外では手に入るものの、日本では手に入らないというドラッグロスにつながりやすくなります。
こうしたマイナス面を上回る効果が期待できるのか、慎重な判断が求められます。付け焼き刃な対応であれば、当然ですが避けた方が良いでしょう。

【解説】公表資料からわかる「線虫がん検査」の不可解さ
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
企業側が検査は「科学的根拠に基づく」と主張するのであれば、既存のエビデンスに対して内部、外部双方から複数の疑惑が出されている以上、販売を一時的に停止して、再現性を明らかにすることこそ、科学に誠実な姿勢であり、最良の方法ではないでしょうか。
それを既存の不十分なエビデンスで回答したり、机上の討論で対応するのはもってのほかだと思います。このような状態で、検査が続けられれば、被害に遭う方をますます増やしかねません。
また、今から私たち一人ひとりにもできることがあります。それは、まずはとにかく興味本位でこの検査を受けないこと、勧めないことです。将来的な可能性まで否定するつもりは全くありませんが、このような状態では受け入れられないと、今はこの検査にNOを突きつける必要があるのではないでしょうか。

【解剖】「疑惑のユニコーン」を肥大化させたエコシステム
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
論文データの操作は頻繁に世界中で生じており、科学論文の半数近くが多かれ少なかれこのようなデータ改ざんの問題を抱えていると主張する有識者も存在します。これまでの記事内の発言や主張が全て正しかったとしても、何の違和感もないということです。
この背景には、企業利益、結果を出したいという科学者としてのプライドや心理、有名論文に掲載される名誉、地位の昇格、研究者と企業の癒着といった様々な要因があります。それに該当するようなキーワードが、これまでの記事にも複数見られてきたのではないでしょうか。
こうした問題は、時に患者さんの命にまで直結しうる重大な問題です。お金や名誉によって、命が奪われることもあるのです。「たかが検査」、「検査の侵襲が小さい」と言う人がいるかもしれませんが、この検査によって、間違って陰性という判定を受け、本当に必要だったがん検診や早期治療の機会を逸することにつながれば、たった一回の検査が命とりになることも十分に考えられます。その事実を科学者、企業は決して忘れてはいけません。
企業は当然のことながら懸命に正しさを主張するでしょうが、個人の自助努力に任せるには限界があります。様々な証言が出てくる中、記事が明らかにしているように外部からのチェック機構が全く働いていないことは大きな問題です。

【ドキュメント】「線虫がん検査」の知られざる過去
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
この検査、科学的には二重の問題があります。ひとつは検査の再現性と精度の問題、もうひとつは症状のない人へのスクリーニング検査として有効性を確立していない問題です。スクリーニング検査の有効性は、その検査を受けることにより、実際に受けた人の益につながるというエビデンスで、検査を広げるにあたっては、それがリスクや害を上回る可能性が高いという証拠も必要です。
前者が今回の連載で度重なり指摘される点ですが、仮に前者がクリアになったとしても、後者については論文も報告されておらず、クリアになることはありません。仮に企業側の精度や再現性への主張が正しかったとしても、後者については不明のままなので、いずれにせよスクリーニング検査として広げることには問題があり、下流で起こる実害(Downstream adverse effect)への課題は拭えません。
後者の理由がある限り、そもそも医師として推奨することはありませんが、そこに再現性への疑義が加わったことで、検査は商業的にも停止される妥当性が増していると考えられます。
米、改良ワクチンを全員に推奨 週内に接種開始、秋冬コロナ対策
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
こちらのワクチンは、日本では9月20日から接種開始が予定されており、生後6ヶ月以上の全員が対象となります。
このワクチンですが、XBB.1.5と呼ばれる変異ウイルスに対して、中和抗体を接種約2週間後に16.7倍に増加したことが報告されています。このことから、短期的には感染予防効果をもたらしてくれる可能性が高いと考えられます。また、長期的には重症化予防効果を増強してくれることが期待できます。
また、あなたが過去にコロナに感染したことがあっても、なくても、同様に抗体を増やすことが示されています。また、その効果は懸念されている変異ウイルスEG.5.1(通称エリス)に対しても同様に期待できることが報告されています。
安全性については、副反応はこれまでの追加接種のそれと大きな差異がないことが報告されています。例えば、気になる発熱の頻度は6.0%程度でした。
日本国内でも通称エリスの感染拡大が現在進行形で起こっています。しかし、XBB対応ワクチンがこの「エリス」に対して有効な可能性が高いことから、このブースター接種が広がることで、風向きを大きく変えられる可能性もあります。
新型コロナ患者急増“第9波”か 新変異株「エリス」が拡大
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
朗報は、9月20日から接種が開始となるXBB対応のブースターワクチンがこの「エリス」に対して有効な可能性が高いということです。過去に獲得した免疫をすり抜ける可能性が十分あるものの、今回のブースター接種が広がることで、風向きを大きく変えられる可能性があります。また、少数例の検討ですが、安全性については過去のブースター接種と同様で、参考までに発熱の頻度は6%と報告されています。
そうした意味で、9月20日からの接種はタイムリーで重要だと思います。対象は生後6ヶ月以上のすべての人とされており、「またマスクか」とため息をつく前に、その接種を検討いただくと良いと思います。

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