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米政権、全政府職員に接種を要請 報奨1万円、新たな禁止規定も
共同通信
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
ワクチン接種にインセンティブを提供することには一定の論理があります。 まず、インセンティブには、予防接種にかかる間接的なコスト(予約、移動、待ち時間などの時間によって発生するコスト)を相殺する役割が期待されます。ワクチン自体が無料でも、こういったコストが実際に低所得者がワクチン接種を受けるのを妨げる要因となることがありますが、金銭的なインセンティブで、真に「無料」のワクチン接種に近づけることができます。 また、個人の行動が他の人々にまで及ぼす影響のある場合、政府が介入する意義が高いことがこれまでの経済学的研究で示唆されています。なぜなら、人は自分の行動が他人に与える影響を過小評価する傾向が知られているからです。 例えば、対外的な「負の」影響の例として、大気汚染する工場が挙げられます。政府からの制裁がなければ、大気汚染する工場の方がコストがかからないため、汚染が進む傾向になります。このため、政策的な制裁が妥当化されます。一方、ワクチン接種は「正の」対外的影響をもたらす行動です。個人のワクチン接種が他の人々も保護することにつながるからです。しかし、そういった影響が多くの人に過小評価されるため、インセンティブが、その補正につながるという理屈です。 さらに、インセンティブは、ワクチン接種行動を促進することで、結果としてCOVIDにかかる医療費を削減することにつながるので、将来回収できるという理屈もあります。このCOVIDならば尚更でしょう。 インセンティブの欠点として、インセンティブが終了すると人々は行動を元に戻してしまうため、慢性的な持病の治療にはうまく働きませんが、ワクチン接種のように短期的な行動を変えるのに特に効果的と考えられています。 引用文献:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp2107719
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「ワクチンパスポート」申請受付開始 住民票ある市区町村で
NHKニュース
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
ワクチンパスポートの主な根拠は、「公衆衛生上の理由による自由な活動の制限は、検証可能なリスクに合わせて調整されるべきだ」というところにあります。特に、制限が厳しく、国民感情が何らかの緩和を求めている場合、説得力を持ちます。 コロナ禍において、集団免疫の獲得以前にただ制限を緩和することは、感染者及びそれによる死者を増やすこととイコールです。このため、緩和を制限するリスクを低減する方法が求められますが、その手段の一つがこのワクチンパスポートということになります。 例えば、海外渡航でこのワクチンパスポートを求めるケースを考えてみると、銃を所持することが法的に認められた米国において、海外渡航では銃の持ち込みが禁止されたりするのと同様、航空機内や渡航先の安全を確保するための手段として、このワクチンパスポートが道徳的に妥当化されることになります。コロナ禍になり、マスク装着の上での飛行機搭乗が許可されるようになったのも、同様の考え方です。 ただし、ここには限界が数多く存在することも知っておく必要があります。まずそもそも「ワクチン接種済み」と言っても、世界を見れば効果の異なる様々なワクチンが用いられていること、接種を受けたタイミングもバラバラで、その効果は個々で大きな差があるという点が挙げられます。 また、新たな変異ウイルスの登場によっても、ワクチン接種完了の持つ意味は変わる可能性があります。有効性の持続期間も不明確な中、全ての人のワクチン接種完了を同等のリスク低減と扱えるのかという課題が生じえます。あるいは、国によりワクチン供給の進みに違いがある中で、ワクチンをいち早く獲得した先進国を優遇することにつながるとった道徳的な問題も生じえます。 これらの限界をふまえた上で、自治体あるいは政府として、エビデンスの追加、新たな変異ウイルスの登場などともに、一度始めた方法論に固執せず、フレキシブルでいられるかという点が運用の鍵になるでしょう。また、ワクチンパスポートの偽造を防いだり、民間企業の誤用を監視するような役割もまた、政府・自治体に求められることになります。
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