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たった1滴の涙から乳がん発見 神戸大ベンチャー、大阪万博めどに実用化
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
線虫がん検査と異なり、検査の生物学的妥当性が説明可能な点が強みです。しかし、これをがん検診として用いるという場合には、既存のがん検診との比較などにより、臨床的な有効性(すなわち、検査精度の議論にとどまらず、検査によって既存のがん検診と少なくとも同程度にがんによる死亡リスクを低減できるかといった点)を評価した上で実用化につなげていただきたいところです。
なお、現時点では、乳がん検診としては「唯一」マンモグラフィが推奨されています。その根拠として、マンモグラフィを受けることにより、検査を受けない人に比べて乳がんによる死亡リスクを低減できる、すなわち検査で命を守る可能性が高いことが知られている唯一の検査だからです。
該当年齢の方は、ぜひ目先の利益や面倒臭さに負けず、検査を受けていただくことを強く推奨いたします。繰り返しになりますが、あなたががんで命を奪われてしまうリスクを低減できる検査だからです。
熊本県内の男性、日本脳炎に感染 2023年で全国初の確認
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
日本脳炎は蚊が媒介するウイルスの感染症ですが、発症した方の20~40%が亡くなってしまうといわれています。また、生存できたとしても45~70%に精神障害などの後遺症が残ってしまうとされています。
しかし、予防接種によって、その罹患リスクを75~95%減らすことができると報告されており、予防接種がとても重要な役割を果たします。
平成7~18年度に生まれた方は、予防接種を受ける機会を逃していることがあるそうです。ぜひ母子手帳などを確認し、未接種の場合には予防接種を受けるようにしてください。
参考
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou20/japanese_encephalitis.html
糖尿病、ダイアベティスに 学会、英語名の通称提案
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
英語での発音は、ダイアビーティーズが最も近いカタカナだと思いますし、このダイアベティスは「英語名」でもない和製英語でしょう。ダイアベティクスという近い単語もありますが、これは糖尿病患者をまとめて総称する、使用を避けるべき言葉です。
また、そもそも由来となったdiabetes mellitusという英語は、糖が尿に出るという意味を持つ言葉であり、この言葉自体、直訳すると「糖尿」あるいは「尿糖」という意味を持ちます。カタカナにしたら皆が分かりにくいという意図だと思いますが、本質的には同じことを言っています。
尿という言葉が含まれるのが問題とされているのであれば、高血糖病、高血糖症候群など、いくつかの候補を簡単に想起することができますが、中途半端で親しみにくいカタカナ英語が提案されるのは、消極的な消去法に基づいている印象もあり、そういう意味では残念な気がします。
薬の価格引き下げへ 診療報酬改定、財源の使途巡り議論
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
薬価の引き下げのマイナス面にも丁寧に目を向け、天秤を計ることが重要です。
日本の薬価が低いことは、時には市販薬より安い処方薬を求めて、より頻繁で安易な受診を招いていることが指摘されています。処方薬が安くなっても、受診回数が増えれば、当然ですが、医療費は増加します。
また、薬価が低く設定されることで、国外の製薬企業の参入の障壁となります。営利企業である製薬企業にとっては、薬を売っても儲けの出にくい日本で営業を行うメリットが下がります。これにより、特定の薬が国外では手に入るものの、日本では手に入らないというドラッグロスにつながりやすくなります。
こうしたマイナス面を上回る効果が期待できるのか、慎重な判断が求められます。付け焼き刃な対応であれば、当然ですが避けた方が良いでしょう。

【解説】公表資料からわかる「線虫がん検査」の不可解さ
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
企業側が検査は「科学的根拠に基づく」と主張するのであれば、既存のエビデンスに対して内部、外部双方から複数の疑惑が出されている以上、販売を一時的に停止して、再現性を明らかにすることこそ、科学に誠実な姿勢であり、最良の方法ではないでしょうか。
それを既存の不十分なエビデンスで回答したり、机上の討論で対応するのはもってのほかだと思います。このような状態で、検査が続けられれば、被害に遭う方をますます増やしかねません。
また、今から私たち一人ひとりにもできることがあります。それは、まずはとにかく興味本位でこの検査を受けないこと、勧めないことです。将来的な可能性まで否定するつもりは全くありませんが、このような状態では受け入れられないと、今はこの検査にNOを突きつける必要があるのではないでしょうか。

【解剖】「疑惑のユニコーン」を肥大化させたエコシステム
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
論文データの操作は頻繁に世界中で生じており、科学論文の半数近くが多かれ少なかれこのようなデータ改ざんの問題を抱えていると主張する有識者も存在します。これまでの記事内の発言や主張が全て正しかったとしても、何の違和感もないということです。
この背景には、企業利益、結果を出したいという科学者としてのプライドや心理、有名論文に掲載される名誉、地位の昇格、研究者と企業の癒着といった様々な要因があります。それに該当するようなキーワードが、これまでの記事にも複数見られてきたのではないでしょうか。
こうした問題は、時に患者さんの命にまで直結しうる重大な問題です。お金や名誉によって、命が奪われることもあるのです。「たかが検査」、「検査の侵襲が小さい」と言う人がいるかもしれませんが、この検査によって、間違って陰性という判定を受け、本当に必要だったがん検診や早期治療の機会を逸することにつながれば、たった一回の検査が命とりになることも十分に考えられます。その事実を科学者、企業は決して忘れてはいけません。
企業は当然のことながら懸命に正しさを主張するでしょうが、個人の自助努力に任せるには限界があります。様々な証言が出てくる中、記事が明らかにしているように外部からのチェック機構が全く働いていないことは大きな問題です。

【ドキュメント】「線虫がん検査」の知られざる過去
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
この検査、科学的には二重の問題があります。ひとつは検査の再現性と精度の問題、もうひとつは症状のない人へのスクリーニング検査として有効性を確立していない問題です。スクリーニング検査の有効性は、その検査を受けることにより、実際に受けた人の益につながるというエビデンスで、検査を広げるにあたっては、それがリスクや害を上回る可能性が高いという証拠も必要です。
前者が今回の連載で度重なり指摘される点ですが、仮に前者がクリアになったとしても、後者については論文も報告されておらず、クリアになることはありません。仮に企業側の精度や再現性への主張が正しかったとしても、後者については不明のままなので、いずれにせよスクリーニング検査として広げることには問題があり、下流で起こる実害(Downstream adverse effect)への課題は拭えません。
後者の理由がある限り、そもそも医師として推奨することはありませんが、そこに再現性への疑義が加わったことで、検査は商業的にも停止される妥当性が増していると考えられます。
米、改良ワクチンを全員に推奨 週内に接種開始、秋冬コロナ対策
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
こちらのワクチンは、日本では9月20日から接種開始が予定されており、生後6ヶ月以上の全員が対象となります。
このワクチンですが、XBB.1.5と呼ばれる変異ウイルスに対して、中和抗体を接種約2週間後に16.7倍に増加したことが報告されています。このことから、短期的には感染予防効果をもたらしてくれる可能性が高いと考えられます。また、長期的には重症化予防効果を増強してくれることが期待できます。
また、あなたが過去にコロナに感染したことがあっても、なくても、同様に抗体を増やすことが示されています。また、その効果は懸念されている変異ウイルスEG.5.1(通称エリス)に対しても同様に期待できることが報告されています。
安全性については、副反応はこれまでの追加接種のそれと大きな差異がないことが報告されています。例えば、気になる発熱の頻度は6.0%程度でした。
日本国内でも通称エリスの感染拡大が現在進行形で起こっています。しかし、XBB対応ワクチンがこの「エリス」に対して有効な可能性が高いことから、このブースター接種が広がることで、風向きを大きく変えられる可能性もあります。
新型コロナ患者急増“第9波”か 新変異株「エリス」が拡大
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
朗報は、9月20日から接種が開始となるXBB対応のブースターワクチンがこの「エリス」に対して有効な可能性が高いということです。過去に獲得した免疫をすり抜ける可能性が十分あるものの、今回のブースター接種が広がることで、風向きを大きく変えられる可能性があります。また、少数例の検討ですが、安全性については過去のブースター接種と同様で、参考までに発熱の頻度は6%と報告されています。
そうした意味で、9月20日からの接種はタイムリーで重要だと思います。対象は生後6ヶ月以上のすべての人とされており、「またマスクか」とため息をつく前に、その接種を検討いただくと良いと思います。

【実録】社員が止められなかった「疑惑のがん検査」
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
このような問題のある(益以上に実害をもたらす可能性の高い)医療行為が実際に行われ続けるまでには、記事で取り上げられている「社員が止められなかった」企業構造のみならず、何重にも間違いを防ぐことのできなかった問題点が指摘できるはずです。
今回取り上げられている線虫がん検査も米国のセラノスの件もそうですが、これは間違いなく盛んなヘルステック業界において氷山の一角であり、同様の問題は複数の企業に散在しているはずです。このような衝撃的なスクープを目にすると、個人や一企業の体制の責任に話が帰結しがちですが、それでは同じことがまた別の場所で繰り返されるだけです。
社会としてどのように再発を防ぐのかを明らかにする上で、問題の上流で何が起こっているのかを一つずつ明らかにしていく作業は、社会の未来を守る上で重要です(本記事もその一端を担うものになると思います)。そうした際に、ついつい個人への批判目線になりがちですが、このような記事を読むにあたっては、「ひと」ではなく「こと」を対象に批判的に解釈する視点が大切です。そのような視点を忘れないように記事を読んでいただくことで、より生産的な議論につながるのではないでしょうか。

【スクープ】世界初の「線虫がん検査」、衝撃の実態
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
医療者の間では(実態として企業のどこに問題があるかは分からなくとも検査自体に大きな問題があることは)よく分かっていたことであり、衝撃でも何でもない話です。しかし、それを真っ向からスクープとして取り上げていただいたことに医師の1人として感謝したいです。
この先もこの検査を受ける人がいる限り、恩恵を偶然受ける人の数をはるかに上回る数の、害やリスクを受ける人が生じることが強く懸念されます。もっともっと明るみに出て、しっかりとした外部評価が入り、これから害を受ける人をその害から守らなくてはいけません。この検査が将来的に全く可能性がないと言うつもりもありませんが、今この現状で拡大すべきでない検査であることは明らかです。
記事を読む前にコメントをご覧になった方は、ぜひ記事を読んで、まず知ることからはじめてください。このようなビジネスを「流行り」や「よさそうだから」で広げては絶対にいけません。

【実話】肥満薬が「一国の経済」を成長させている
山田 悠史マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー
生活習慣の是正が可能であれば、それが最も安全で有効な方法になるのでしょうが、人間そう簡単に習慣を変えられるわけではなく、環境や教育の影響も大いに受けていて修正の難しい問題になりますので、結局解決策は薬になってしまうわけです。そうして、一国の経済を成長させながら、見方を変えれば、先進各国の医療費を膨らませ続けています。
物事をもっと上流の部分で食い止めれば、より安価に有効に止められる問題と分かっていながら、それを放っておいて、下流の問題に高額な薬で対処する。期待値も経済的インセンティブも下流に偏っている限り、そんな状況は変わりそうもありません。皮肉なことです。

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