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2度目のワクチン接種後は「陽性率0.01%」 イスラエルの速報値
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
このような疫学データ、特に生のデータを見る場合にはまず立ち止まる、という姿勢が重要です。これは、有効性でも、副反応でも同様です。
もちろん、我々医療者でもおそらく誰もがこのようなデータに期待を抱き、そしてワクチンの効果が出ているのだろうと希望を持っていることでしょう。決して悲観的なわけではありません。
しかし、臨床試験結果と異なり、示された「陽性率」というのが何を意味しているかは必ずしも明らかではありません。ワクチンを最初に接種した人たちにはおそらく医療者や介護施設の居住者、高齢者や持病をもった方が多く含まれるでしょう。接種をしていない若い方よりも活動範囲が狭く、そもそも陽性率が低いかもしれません。
あるいはワクチンを率先して打つような、感染対策にも気を配るような人が多く含まれる傾向にあるかもしれません。
また、データの収集にあたっては、記事でも言及されている通り、全数調査をされているわけではないため、取りこぼしが多く含まれる可能性がありますが、どこまで取りこぼしているかは未知数です。
繰り返しますが、決してワクチンの効果を悲観しているわけではありません。しかし、データの解釈というのは慎重に行う必要があります。まだこのデータから結論を導くのは拙速であると考えます。安易な解釈をすると間違うことがあります。注意深く見る必要があると思います。
モデルナ製ワクチン、変異種に有効 南ア種では効果弱まる恐れ
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
根拠を「抗体反応」の結果に求めていますが、現実には、この抗体価の結果だけで、臨床的な効果の差は正確に測れません。このため、効果が仮に弱まるとして、どの程度弱まるのかはまだ分かりません。
また、今後パンデミックが長期に持続した場合には、南アフリカの変異株とは比較にならないようなワクチンの耐性株が生まれる可能性も十分にあります。本来そのような耐性株はワクチンが広がった後にこそ生じ、既存の株を置き換えます。
ただ、我々の強みは、すでにmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンの技術を用いることで(少なくとも短期的な)有効性と安全性が確認されたワクチンが生み出せることがわかっている点です。
仮に強い耐性を獲得した変異株が生じた場合、その遺伝子情報をもとに、同技術を用いて変異株に対するワクチンを比較的容易に作ることが可能になったのです。
メルクがコロナワクチン開発中止、免疫反応不十分 治療薬に注力
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
そもそも全てのワクチンが成功するという可能性はほぼゼロに近かったと思います。これだけ多くのワクチン開発が進む中で、むしろこれだけの成功を収めたワクチンがすでに登場したことの方が驚くべきことであり、残念ながら今後もこのようなニュースを聞くことになる可能性が高いと思います。
メルクのワクチンは、ウイルスベクターワクチンという技術を用いたものでしたが、早期臨床試験において、過去の感染者の免疫反応と比べて、低い免疫反応しか見られなかったことが確認されました。これはモデルナやファイザーの試験でより高力価の抗体が見られたのとは対照的です。
このことから、ワクチン開発の中止を公表しました。メルクは同時に、COVIDに対する免疫調整薬およびコロナウイルスに対する抗ウイルス薬の臨床試験を進めており、今後はこちらに焦点を当てることになるでしょう。
米感染者2500万人超す 変異種確認、収束見通せず
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
見通せないのは、米国に限らずどの国でも同じです。この未曾有のパンデミックで将来を正確に見通す方が難しいのはないでしょうか。
米国および英国の感染流行曲線を見ると、必ずしも悪い方向にカーブが向かっているわけではありません。ともに現在新規感染者は減少傾向の国です。
ワクチンの効果だと言うにはまだ時期尚早であるものの、地域的なロックダウンやマスクの普及などの政策による効果も含め、何らかの改善の兆候を見ている可能性もあると思います。
なお、度々色々な方が指摘されていると思いますが、「変異株」を用いた方が良いかと思います。
参考:https://coronavirus.jhu.edu/data/new-cases
「Go Toトラベル」感染者増加に影響か 京都大学のグループ発表
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
行った政策がどの程度感染流行に寄与したのかを検討することは、今後の政策を考える上で有用です。
このような疫学研究では、もちろん個々人の行動の詳細についてデータを取得することは不可能ですので、詳細な分析とはいきませんが、政策と感染者の増加の相関といった概観を知ることはでき、どの程度のインパクトがあったのかを推し測るのには有用です。
特に6月22日から7月21日の期間については、「旅行関連の感染者」が3倍に増加したことを報告しています。「総感染者数」を論じているわけではなく、「旅行関連感染者」へのインパクトを評価しているところがポイントだと思います。
ただし、報告バイアスを中心としたバイアスの可能性が含まれ、あくまで「因果関係」ではなく「相関」を示したものであることには注意が必要です。
また、今後の展望として、政策によって得られた経済的な効果と損失(感染者が増加したことによる損失)の推測値なども合わせて評価ができると、より政策に反映しやすいデータになると考えられます。
引用文献:https://www.mdpi.com/2077-0383/10/3/398
日本発のアルツハイマー予防薬、発症前の人対象に国際共同治験
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
認知症の克服は、我々人類の夢の一つです。しかし、残念ながらこれが夢の解決策になると信じるだけの根拠が今のところまだ十分には得られていません。
ここで紹介されているような薬剤は過去にも様々な知見が積み重ねられてきましたが、何よりの課題は、本当にこのアルツハイマー病の原因をアミロイドβに求めていいかという点です。原因なのか、結果なのか。
それが部分的にでも真実であれば、治験はうまくいくかもしれません。言い方を変えれば、この治験の成功により、アミロイドβ仮説に前進がもたらされる可能性もあります。
また一方で、費用対効果の議論も重要なものになるでしょう。使用される治療薬は抗体薬で、とても高額なものです。その費用をかけるだけの価値がある結果が得られるのかにも着目する必要があります。
これまでの開発の歴史については、こちらもご参照ください。
【解説】エーザイが開発した、「夢の治療薬」の実力
https://newspicks.com/news/4539937
英コロナ変異種、死亡リスク高い恐れ ワクチンは有効=首相
重症者施設2割で専門医ゼロ 首都圏、コロナ入院困難
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
集中治療専門医自体の不足は免れない事実だと思いますが、現実として感染流行の前にもそういった施設で重症者の管理は行われていたわけであり、必ずしもその施設で重症患者を管理する能力が欠如するということを意味しないと思います。
地域性もありますが、日本では集中治療に長けた麻酔科医師や救急科医師、呼吸器内科の医師もおり、必ずしも集中治療専門医の数で医療機関のキャパシティや能力を測れないところがあると思います。
だからといって集中治療専門医を育成しなくていいということを意味するわけではないですが、その育成には何年もの年月を要し、一朝一夕で解決するわけではありません。
いずれにせよ、表面的な数字の付け合わせによる評価は間違います。このニュースを読み解く上で、「専門医がいない=集中治療のキャパシティがない」ではないという理解は必要かと思います。
緊急事態宣言 1カ月程度の延長案も
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
過去のエビデンスを参考にすると、緊急事態宣言の延長をただ行っても、その効果は減弱する可能性が高まります。
よって、感染症の更なる抑制を目的として行う場合には、ただ延長するだけではなく、政策における強化も求められると考えます。
規制の中で生きなければならない厳しい日々を送った先に、緩和の道を探りたいところですが、現状で緩和できるほどの改善を見ていないことから、緩和の道を探るのもなかなか難しい状況です。
ワクチンの接種開始は翌月に迫ってきましたが、「接種開始」には感染抑制を期待できず、「十分な普及」から1ヶ月ほど経過するまでは効果を見込むのが難しいと考えられます。
まだまだ長期戦が見込まれますので、各企業単位でも長期的な視点で戦略を練っておく必要があるでしょう。
米、COVAXへの参加を検討=ファウチ氏
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
パンデミックでは、病原体を世界中で共有しているという基本に立てば、「自国にだけ有効なワクチンが普及すれば良い」では、自国を含めてその解決にはつながりません。
実際、多くの国には十分なワクチン供給を受けるだけの資金力がありません。
ワクチンの比較的公平な普及を目指した国際的な取り組みであるCOVAXは、これまでトランプ政権が断固として参加を拒絶してきたものですが、風向きが変わるかもしれません。
資金力、ワクチンの開発力などを含めても、米国の参加の意義は非常に大きく、パンデミックの収束に向けて大きな前進のステップとなりうるのではないかと思います。
COVAXの詳細:https://www.who.int/initiatives/act-accelerator/covax
東京 職場内感染が過去最多 全国で5600人超が感染
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
ここから学ぶべき点は、「職場内感染が最多」→「職場は感染リスク」では必ずしもないと思います。それでは、結局同じことの繰り返しになってしまうのではないかと思います。
実際こちらの報道によれば、都内の新規陽性者が1471人、職場内での感染者は67人。それほど、他の場面で感染している人が多いのです。
場所が職場であれ、飲食店であれ、自宅でのホームパーティーであれ、感染者と非感染者が病原体を交わす機会が増えれば増えるほど、感染伝播は増えます。
これは、必ずしも場所が規定するわけではありません。感染伝播のリスクは、その場所にいる人が規定しています。
マスク、手指消毒、ソーシャルディスタンス、換気。英国で見つかったB1.1.7株では、KN95マスクやN95マスクが必要になるかもしれないとの議論まで欧米諸国で始まっています。
場所にとらわれず、人と人の間でどう感染伝播を防ぐかにより焦点を当てて、知恵を絞っていかなければいけません。

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