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中国恒大、不履行回避も危機脱却遠く 利払い実施と報道
日本経済新聞
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
中国共産党は、恒大集団が無秩序に崩壊することは絶対に避けたいでしょう。恒大集団は150万人を直接雇用あるいは間接雇用しています。特に、習主席が「共同富裕」を達成するとしている時に無秩序な崩壊を許せば、その150万人が一斉に職を失って混乱を引き起こし、習近平氏および現在の共産党指導部の権威が失墜しかねません。 だからと言って、中国政府は恒大集団自体を救済しようとしているようには見えません。人民銀行などは「影響は限定的である」という言い方をしています。 今回、ドル建ての社債の利子を支払ったのも、本来は9月23日に支払うべきものでした。30日間の猶予期間ギリギリに支払ったということです。まさに綱渡りと言えます。来年3月まで、多くの利子支払いが続きます。恒大集団は、ギリギリの資金繰りを繰り返さなければならないということです。 中国政府は、中国経済や金融システムへの影響を最小限にするよう、秩序立てた破産に導くのかもしれません。海外の報道で、何人もの香港市場関係者の意見を聞いたものがありましたが、あまりに多くの要素があり多くのシナリオが考えられるので、様子を見なければならないという意見が多くありました。 恒大集団がデフォルトに陥るのか免れるのか、市場への影響はどのようなものになるのか、まだまだ目が離せません。投資家だけでなく、世界経済に悪影響を及ぼしかねない問題なのです。
中国・ロシア艦艇 津軽海峡に続き 大隅海峡も初めて同時に通過
NHKニュース
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
中国の「環球時報」は、10月19日にはすでに、津軽海峡を抜けた中ロ艦隊は、そのまま日本を一周し、大隅海峡または宮古海峡を抜けて帰るだろうと言っていました。日本を牽制するための航海であったということです。 2013年にも中国海軍艦艇7隻が日本を一周しましたが、この時は津軽海峡ではなく宗谷海峡を抜けました。今回と同様、「海上連合」という中ロ海軍合同演習の後に航海したものですが、ロシア艦隊は加わりませんでした。しかもロシアは中国に不信感を持っており、オホーツク海に中国艦隊が入るのを見計らって、ロシア海軍がオホーツク海で実弾射撃演習を行なっています。 その時の中国メディアは、「今回の日本一周の航海は、日本をあらゆる方向から攻撃できることを示すものだ」と言っていました。今年の中ロ艦艇の日本一周も、明らかに日本に対する軍事的な威嚇と言えるでしょう。ただ、威嚇するのは、日本に何かしてほしくないことがあるからです。 その何かとは、米国との軍事運用の一体化でしょう。中国は、昨年の米大統領選の頃から、バイデン政権の米国は単独で対中圧力をかけることができず、そのために「同盟国重視」を掲げていると分析していました。そうすると、米国の対中圧力を緩和する最も効果的な方法は、米国の同盟国を米国から切り離すことになります。今年8月の中国メディアは、「中国はもっと米中対立について語るべきだ」と報じました。中国対西側という対立の構図を避け、米国を単独で相手にすべきだというのです。 その意味で、AUKUSは中国に衝撃を与えたでしょう。中国は自らオーストラリアを米英の方に追いやってしまったのです。豪州の海軍運用は、将来的に米英と一体化するでしょう。その時、中国メディアは、同じファイブ・アイズのメンバーであってもカナダとニュージーランドは反中姿勢が強くないためにこの枠組みから外されたとしています。 しかし、10月初旬には、フィリピン東方海域で、日本、米国、英国、カナダ、ニュージーランド、オランダ6カ国が海軍合同演習を行いました。カナダとニュージーランドの参加は中国の危機感を高めました。この時、56機の中国軍機が台湾防空識別圏を通ってバシー海峡に向かって飛行しました。 今回の中ロ艦艇の行動は、特に危機感を強めた中国が、日本が米国と軍事的に一体化しないよう牽制したかったのでしょう。
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中国、外交の柔軟性失う
日本経済新聞
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
中国の外交が柔軟性を失うのは、そうせざるを得ないからでもあります。記事が言うように、習近平総書記への権力集中が周囲の忖度を生んでいるという側面もあると思われますが、習近平氏自身も強硬な対外姿勢を取らなければならない事情があります。 今年に入って繰り返し公開される中国人民解放軍の台湾上陸を意識したかのような訓練動画などは、台湾の軍人が見れば、実際の上陸作戦のごく一部を切り取ったもので、事さらに格好良く見せようとしているものの、実際の着上陸作戦はそのように実施できないと理解できるものです。 例えば、中国東部戦区の水陸両用戦車が味方の陸岸から着上陸作戦を実施する対岸まで自力で洋上を航行し、対岸に砲撃を加えている動画もありましたが、中国大陸と台湾の間は、最も狭いところで200キロメートル強あります。この距離を水陸両用戦車が自力航行するのは現実的ではありません。燃料の無駄遣いですし、重い車体に比較して非常にか弱い水上での推進装置しか持たない水陸両用戦車が、海流が早く複雑な海峡を自力で渡れるかどうかさえ危ぶまれます。 一般的に、水陸両用装甲車は、揚陸艦に搭載されて着上陸地点の40から50キロメートルの洋上で自力航行を始めるのです。本当はもっと近づいた方が水陸両用戦車には良いのですが、それ以上近づくと敵の地上に設置されたレーダーに揚陸艦が捕捉され、攻撃される可能性が高くなります。 そうすると、シナリオ仕立てにして格好良く勇ましく見せるこの動画は台湾に対する軍事的圧力というより中国国民に対して、共産党あるいは人民解放軍は台湾を武力解放する能力があるのだと示すためのものであると考えられます。中国国民の多くに、このような強硬姿勢がうけるということです。 習近平氏自身、国民の支持を集め権威を維持するために、強硬な対外姿勢を取らざるを得ない側面もあると思われます。中国にとっては、外交やパブリック・ディプロマシーの効果よりも、あるいは国際社会からどう見られるかよりも、国民からどう見られるかの方が深刻な問題であるとも言えます。
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米が極超音速兵器実験 南部で成功、アラスカでは失敗
共同通信
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
米国は、2000年代初頭から、プロンプト・グローバル・ストライクというプログラムの一環として極超音速兵器を開発してきました。そのプログラムは、冷戦後、米国が欧州から兵力を退こうとした時に欧州の不安を取り除くために、実際に兵力を展開していなくとも、米国本土から1時間以内に世界中のどの地域に対しても攻撃ができるようにする、というものです。米国本土から発射する兵器として極超音速兵器が開発されてきたのです。 米国は、大きく2種類の極超音速兵器を開発しています。一つは、弾道ミサイルの弾頭部分に極超音速滑空体を搭載するもの、もう一つは、航空機等から発射された後に、自分のエンジンで加速して極超音速に達するものです。後者は、HAWC (Hypersonic Air-breathing Weapon Concept) と呼ばれています。極超音速吸気型兵器コンセプトです。超音速でも燃焼させることができるスクラムジェットエンジンが推力を与えます。こちらは米空軍とDARPAが共同で実験を行なっています。 極超音速兵器は、極超音速で飛行するために特殊な形状をしています。その形状の機体を設計するためにコンピュータで繰り返し計算され、巨大な風洞実験設備で繰り返し実験された後に初めて実際の発射実験になります。極超音速で飛行すると圧力で極めて高い温度に晒されます。宇宙船が大気圏に突入する時に発生する熱と同様です。その熱に耐えるための特殊な素材も必要です。さらに、極超音速で飛行していると、ほんのわずかな気流の乱れでも安定を失って墜落してしまいます。 これら課題をクリアして、初めて極超音速飛翔体となるのです。今回の米軍の失敗はロケット・エンジンの不調とされています。この不具合は、極超音速兵器特有の課題によるものではありませんから、極超音速兵器自体の課題とは言えないかもしれません。 極超音速兵器は、現在の防空ミサイル防衛システムで迎撃することが極めて難し事から、どこか一ヶ国が配備すると抑止のバランスが崩れるかもしれないと各国が懸念します。そのため、各国は一様に極超音速兵器の開発を急いでいるのだと言えます。
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中国、脱炭素「3060目標」で政策着々 原発や資金(写真=ロイター)
日本経済新聞
「欧米VS中国」の最前線となる台湾海峡
NewSphere
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
中国メディアは8月に、中国対西側の衝突を薄め、米中対立についてもっと語るべきである、と主張しています。中国が対立しているのは米国であって、欧州とは対立していないと言うのです。ですから、中国は人権問題に関する非難を緩和させるよう、文明の多様性の観点から欧州との交流を増やすべきとしています。 中国は、米国くと欧州を引き離そうと考えているのです。その中で、米英豪の軍事協力枠組みであるAUKUSができたことに対して、中国は危機感を強めています。AUKUSは、米国による対中牽制の第一段階の軍事的牽制です。次の段階で使われるのは、同じファイブ・アイズのカナダとニュージーランドでしょう。 欧州と言っても、英国とその他の欧州各国ではインド太平洋への関与の仕方は異なります。欧州各国もそれぞれに思惑があるのです。中国は、米国と英国以外の欧州各国との思惑のギャップを利用しようとしているのだと言えます。 欧州が全体として米国と軍事オペレーションを一体化させることはありません。ドイツやフランスは、それぞれの権益を確保するためにインド太平洋地域で軍事プレゼンスを示そうとしていますが、台湾有事に米国と共同作戦を取るかどうかは疑問です。やはり、軍事的には、高いレベルで情報や技術の共有ができるファイブ・アイズのメンバーが強力な枠組みを構築するでしょう。 問題は、日本が日米同盟を基盤として、これら枠組みにどう関わるかです。日本は現段階で、ファイブ・アイズに参加できるほど情報の管理やセキュリティー・クリアランス等の制度ができていません。そうした制度の構築や実質的な運用を進めることは、現在の日本では難しいかもしれません。
戦闘機の飛来、台湾「統一」緊張高まる中台関係をBBC司会者が解説
BBC NEWS JAPAN
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
9日の習近平氏の講話は、辛亥革命110周年記念大会で行われたものです。確かに台湾統一を念頭に置いて、「祖国の完全統一という歴史的任務を必ず実現しなければならない。必ず実現できる」と述べていますが、「平和統一」と「一国二制度」の基本方針を堅持するとも言っています。何より、この講話全体のトーンは中国にしてみれば非常にソフトなものでした。 共産党、習近平総書記のこれまでの成果をアピールし、これから習近平氏がどのように中国の世界強国にしていくのかを宣言しなければならなかった、7月1日の共産党結党100年記念大会における講話と、共産党こそが辛亥革命の正当な後継者であると示す必要があった今回の講話では目的が違っていたということもあります。 また、米国が米中首脳会談に前向きで、中国はこれを焦らせてより良い条件で会談に臨もうとしていますから、米国を過度に刺激するのは得策ではないと考えたのかもしれません。 しかし、講話の内容がソフトであったからと言って、中国が台湾に対する軍事的圧力を緩和した訳ではありません。さらに、中国の軍事的圧力は台湾だけでなく、それよりも、米国とその同盟国に向けた牽制になっています。 中国の軍用機が大量に(1日:38機、2日:39機、4日:56機)台湾の防空識別圏に侵入した、ちょうどその時、フィリピン東海上で、日本、米国、英国、カナダ、ニュージーランド、オランダの6カ国による海軍演習が実施されていました。 中国軍機が侵入したのは台湾の南西空域の防空識別圏で、台湾とフィリピンの間のバシー海峡に向かって飛んだのです。その先には、6カ国合同海軍演習があったということです。 中国は、AUKUSという、高度な情報共有が可能な、純粋に軍事的な協力枠組みができたことに警戒感を募らせています。今回飛行した中国軍機56機のうち、38機がJ-16という戦闘爆撃機でしたが、現在、この機体は、中国の制海権・制空権奪取のための主力であると言われています。さらに、潜水艦に対応するための対潜哨戒機も2機飛ばしています。中国軍機は海の目標をターゲットにしていたと言えるのです。 Financial Times紙が中国の極超音速ミサイル発射実験の様子を報じたばかりで、英国メディアによる中国の軍事的脅威に関する記事が目立ちます。英国政府の思惑を反映しているのかもしれません。
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台湾防空圏に中国軍56機 米の軍事連携「断固反対」
共同通信
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
56機の台湾防空識別圏侵入は異常な多さです。台湾国防部の発表では、侵入した56機のうち38機がJ-16戦闘爆撃機です。最初に4機が侵入し、その後、34機が侵入しています。 J-16戦闘機の機体は、ロシアのSu-30MKKのコピーですが、改造して、より多くの爆弾やミサイルを搭載できるようにし、対地攻撃および対艦攻撃能力を上げています。中国空軍は150機以上のJ-16を保有しており、現在、J-16が制空権/制海権を取るための作戦の主役になると見られています。 防空識別圏に無断で侵入する航空機に対するスクランブルは、1機の侵入機に対して2機で対応するのが普通です。どの程度の間隔を空けて中国軍機が侵入したのかは不明ですが、台湾空軍は大量のスクランブル機を発進させたはずです。最近は、中国軍機の台湾防空識別圏侵入が大量に繰り返し行われていますから、台湾空軍も疲弊するでしょう。 また、台湾国防部の発表を見ると、今回、中国軍機は全て台湾南西空域を飛行していますが、以前、実施されたように多方向から台湾に接近すれば、対処はより大変になります。 中国は、AUKUSが中国の対米核抑止を無力化し、中国の軍事行動を封じ込めるための純粋に軍事的な同盟と見て危機感を強めています。中国の軍事行動が封じ込められるということは、台湾武力侵攻というオプションを失うことになります。中国としては、これを許容することはできず、台湾に対してより一層の軍事的圧力を加え、中国は台湾武力侵攻を実施することができると誇示したいのでしょう。
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中国、岸田次期政権の経済安保路線強化に懸念か
産経ニュース
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
中国は、米国単独では中国に十分な圧力をかけられないと考え、米国と同盟国の間を切り離すことが米国の対中圧力を緩和する最も効果的な方法だと考えています。中国メディアは、「中国はもっと米中対立を強調しなければならない」としましたが、同時に「中国は欧州と対立していない」とも述べています。中国対欧米諸国という構図を避け、米中二国間の問題にすべきという意味です。 日米関係についても同様です。4月に、菅総理がバイデン大統領の協力要請に無条件で応じたと中国が捉えており、日米が一体化するのではないかとの警戒感を持っています。4月の日米首脳会談以降、日本が米国に対する宿題を抱えている状況だとも言えます。 その途中で日本の総理が交代したのですから、中国が日本の新しい総理と政権の政策に関心を持つのは当然です。日本はようやく経済安全保障に対する意識を持ち始めたところですが、中国にしてみれば、日本が、他国とは異なり、安全保障と経済を分離して考えてくれていた方が都合が良かったのです。 中国自身は、経済も資源も科学技術も総体的安全保障観という統合された安全保障体系の一部として捉得られます。米国は伝統的に「国家目標達成のために、戦争に至らないあらゆる政治的手段を用いる」政治戦を戦います。日本も、こうした視点を持たなければ、米国や中国の外交、軍事行動や経済活動を理解することはできません。 中国は他国の政治状況を詳細に分析していますが、メディアに取り上げられること自体、中国が日本の政治状況に関心を有していることを示しています。また、中国国民が読むものであることから、強気の姿勢を示しがちであることも考慮して内容を分析する必要があります。
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極超音速ミサイル発射と報道 北朝鮮、日米韓に新たな脅威か
共同通信
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
極超音速とは5マッハ以上の速度を言います。戦闘機は、最速のものでも3マッハを超える程度です。(最近では最高速度には意味がないと考えられていますが) 弾道ミサイルの弾頭は、非常に高い高度から落下するので、極超音速に達します。大陸間弾道ミサイルであれば、より高い高度を飛行するので、落下速度は20マッハに達します。 弾道ミサイルに搭載すれば、弾頭部が極超音速に達するのは自然ですが、問題は、極超音速で機動することです。極超音速で滑空し飛行経路を変えられるように機動するためには、圧力による高熱に耐える素材の技術だけでなく、空気力学的な課題を克服するための機体形状も重要な要素になります。 その形状の一つが、ウェーブライダーと呼ばれる形状です。名前のとおり、波に乗るような先端の形状をしており、中国が2019年の軍事パレードで公開したDF-17の弾頭部は、このウェーブライダーと呼ばれる形状をしています。 もう一つの形状は全翼型です。機体全体が平たいクサビのような形状をしており、米国は、この両方の形状の試験を繰り返していました。 米国でさえ、極超音速滑空体の試験には苦労しています。極超音速で安定して滑空させることが難しいのは、大気が一定ではないからです。少しの気流の変化で極超音速滑空体はバランスを崩して墜落してしまいます。 米国は、米国本土から世界中を狙える極超音速滑空体を開発しようとしており、そのために大陸間弾道ミサイルを使用するので、その弾頭部の速度は20マッハに達します。一方で、中国の極超音速滑空体は、短距離から中距離弾道ミサイルを用いた攻撃を想定しているので、速度はマッハ5から7程度です。 速度が高ければ空力的課題の克服は難しくなりますが、5マッハであっても容易だという訳ではありません。空力的課題を克服するためには、大規模な風洞実験室や高度の各種技術が必要とされます。北朝鮮が単独で極超音速滑空体を開発するのは困難でしょう。 この写真は、シルエットにしていますから、極超音速滑空体に似せた形状をした弾頭部を作成し、搭載したものと考えられます。もし、これが本物であれば、中国かロシアから技術を導入したということでしょう。
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中国、産業ハイテク化で狙う「世界の工場」の支配的地位
Reuters
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
中国が利用してきたハイテク技術は、サイバー攻撃による技術情報の窃取を含め、海外から取得してきたものを基礎にしてきました。米国が、違法な手段を含む中国への技術流出に危機感を強め、技術と製品の中国への移転を止める措置を取ると、中国企業は困難に直面し、中国は国内で技術を開発し製品を製造する必要性に迫られたのです。 中国では、国内でイノベーションが起こるよう種々の政策をとってきましたが、イノベーション自体は思うように起こっていません。2017年11月23日には中国科技部(科学技術省)が、2020年までに20箇所の国家イノベーション・センターを設立するとしていましたが、計画どおりには建設できなかったようです。 中国共産党19期五中全会で承認された14次五カ年計画では、改めて企業のイノベーション能力を向上させる対策を盛り込んでいます。中国政府は製造業の効率を飛躍的に上げるなどの技術を開発する企業に対して資金援助しています。 欧米諸国は自国内の重要な技術や製品、資源を守り、さらに、不足しているものを内製化しようとしています。こうした動きは、2010年代前半には中国の台頭と時期を同じくして始まっていました。コロナ・パンデミックによって各国の危機意識が高まり、改めて国境が意識されるようになっています。各国とも自国第一になっているということでもあります。 他国から技術が得られなくなった中国は、自国内でイノベーションを起こし、自ら先進技術を獲得しようとしているのです。「中国製造2025」で述べているように、中国は、強大な製造業を有することが世界強国への道だと考えており、世界強国になるために製造業を強化する新たな技術を開発しているのだと言えます。
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日米豪印、5G・半導体の技術利用に共同原則 対中国念頭(写真=共同)
日本経済新聞
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
5Gや5Gを用いたサービスを実現するためのハイレベルの半導体等を含む技術が、中国では新疆ウイグル自治区におけるイスラム少数民族を始め国民を監視する能力を向上させることにも使用されています。こうした技術が人権侵害にも利用されているということです。 また、こうした技術が、無秩序に武器装備品に使用されたり、サイバー攻撃やディスインフォメーション・キャンペーンに利用されたりすれば、世界各国の安全保障上の脅威となりかねません。 新興・破壊的技術やサイバー空間・宇宙の利用は、秩序やルールに基づいて行われなければなりません。その秩序やルールは、人権を重んじ、自由で安全な情報の利用を保障して、人々の安全で自由な活動を支えるためのものでなければならないはずです。 日米豪印は、そうしたルールを定めようとしているのです。しかし、中国にとっては、自分たちが行いたいことを妨害するものになると認識されるでしょう。中国が、日本や米国、オーストラリア、インド、さらには欧州各国とは異なる目的を持っているのだとすれば、自らの目的を達成するために有利な標準、ルール、規範を実装する競争は、簡単には終わらないでしょう。
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中国、包囲網の隙狙う=周辺国外交も強化
時事通信社
小原 凡司笹川平和財団 上席研究員
中国が「冷戦時代には戻らない」、「米中関係は冷戦構造ではない」と主張し、米国の他国との安全保障協力などを「冷戦思考」と批判するのは、米国が他国と協力して本気で中国の台頭を抑え込もうとすれば、中国が実現したいと考える中国版標準・ルールに則って動く国際社会が実現できなくなるからです。 以前、中国の研究者は、「中華民族の復興とは、中国の経済規模が世界のそれの4分の1を占めることだ」と述べたことがあります。中国の経済規模は、2020年、世界の経済規模の約17%と言われます。現在の2倍の経済規模になるというのです。また、今後10年間、中国が5から6%の経済成長率を維持できれば、2030年には米国を抜いて世界最大の経済大国となると予想されています。中国国内では、「中華民族の偉大な復興が実現する」と歓喜する人もいると聞きます。 しかし、急激な経済規模の拡大は、他国の経済権益を脅かすことにもなります。特に米国は、自国の権益が奪われることを簡単に許容しないでしょう。中国は、現在のルールは中国に不利だと考え、不満を表明しています。中国がこれ以上に経済規模を拡大するためには、中国版の標準、ルール、規範を国際社会に実装する必要があると考えているのです。 知的財産権などの領域において、中国が主導するルールが適用されれば、これまでの秩序が崩れるのではないかとも懸念されています。中国が軍事的にも優位に立てば、国際社会における影響力を増すことになります。 AUKUSは軍事的な協力を中心としたものですが、QUADは軍事同盟ではなく、より広い範囲で中国の過度の台頭とその悪影響に対処しようとするものです。一方で、中国からすれば、QUADなどは中国が目指すものを妨害するものと認識されます。 各国の国益は異なりますが、中国はこうした各国間のギャップを突くのが上手です。インドにとって最大の脅威はパキスタンで、中国ではありません。中国がパキスタンとの協力を控えるのであれば、インドは中国との緊張緩和に応じるかもしれません。 ただ、こうした緊張緩和は、その時々の情勢に応じて一時的になされるものなので、根本的な解決にはなっていません。一時的な緊張の高まりや緩和は、それぞれ注意する必要がありますが、大きな流れも見失ってはいけないと思います。
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