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【シフト】誘惑から自己表現へ。進化する「香水」の世界
NewsPicks編集部
中森 友喜NOSE SHOP Inc. 代表取締役
「彼らは原料を詳細に表示したり、顧客を引きつけるためのストーリーを語ったりすることに長けている。そのフレグランスは、デパートの定番商品である大手ブランドのものより、香りが強く大胆で、その上高価だ。」 新興系の香水=ニッチフレグランスの専門店を運営している身からすると、小規模な独立系のフレグランスブランド全体の特徴を「香りが強く大胆」と括られてしまうのはすこし違和感があります。香りの儚さ(弱さ・持続力のなさ)さえも、特徴のひとつとして表現している香水ブランドもたくさんありますから。カテゴライズの難しい、先鋭的な表現を試みているからこそ、ニッチとして評価されるのだと思います。 記事では、これらの香水についての受け手と作り手の変容が最先端のムーブメントのようにも語られていますが、こと作り手に関して言えば、ニッチフレグランスという新興の香水ムーブメント、ある種のカウンターカルチャーが勃興しはじめてから、実はもう20年以上の歳月が流れています。たとえば、性差を訴求しない香り作りはすでに当たり前のものとして定着しており、むしろそれを逆手にとって特定のジェンダーに向けた香りを作るなどのやり方さえも出てきています。 尖ったニッチが先行事例を作り、世にある程度受け入れられた後に大手がその流れに追従するという構図が完全に固まったのが、ここ10年の業界ではないでしょうか。 ただ、この新型コロナが猛威をふるった2年の間に、多くの独立・新興系ブランドが物作りに大きなダメージを受け、生産の見直しや規模の縮小を迫られました。この6月に久しぶりに開催された国際的なニッチフレグランスの展示会では、全体としてあまり目立った進化や尖った表現が感じられなかったのは、偶然ではないでしょう。今後もこれまでと同じようにニッチが香水の未来を切り開いていけるのかどうか、この苦境をバネにできるのかどうか、岐路に立たされている気がしています。
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