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ECBが指針変更、物価の一時的上振れ容認 総裁「デルタ株懸念」
Reuters
井上 哲也野村総合研究所 金融イノベーション研究部 主席研究員
記事はざっくり整理していますが、新たなフォワードガイダンスは、3つの条件から構成されており、かなり込み入った内容になっています。 具体的には、理事会として、1)インフレ率が見通し期間の相当早い段階で2%に達すると予想する、2)そうした状態が見通し期間を通じて継続すると予想する、3)インフレの基調が中期に2%という目標の達成に整合的な形で相当に前進したと評価するという条件を満たすまで、政策金利を現在またはより低い水準に維持するものです。 3)にはバックワードな視点が込められており、従って、声明文も明記するように一時的なオーバーシュートの容認につながる点で、これが今回の柱であり、個人的にはこれだけでも良かったようにも思います。 一方で1)と2)はフォワードルッキングな内容であり、「平時」の中央銀行にとって常識的な内容ですが、ECBの新しい「状態依存型」の物価目標-つまり、低インフレの状況では強力かつ忍耐強い緩和を続ける-に対して整合的か?という疑問は残ります。 こうした複雑なフォワードガイダンスの採用は、理事会での妥協の産物だったのかもしれませんが、いずれにせよ、金融政策の戦略見直しの柱であった「わかりやすい説明」は相容れないように思います。
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デジタルユーロ、推進しなければ通貨主権リスク=仏中銀総裁
Reuters
井上 哲也野村総合研究所 金融イノベーション研究部 主席研究員
昨晩開催された会合をliveで聴講しましたが、ビルロワドガロー総裁が、concluding remarkの殆どを使って、デジタルユーロの方向性について述べたことは予想外でした(日本時間で午前1時前でしたが、思わず目が覚めました)。 総裁は、why、how、whenについて考えを示しました。 whyについては、cashless決済の拡大に対する中央銀行マネーの必要性、stable coinの台頭に対する金融システム安定や金融政策の効果の維持、デジタル人民元の普及に対する国際通貨としての地位の維持、の三点を挙げました。 howの面では、wholesaleとretailを一体で整備する本来の意味でのgeneral purposeの意義を強調したほか、クロスボーダーへの早期展開に前向きな姿勢を示した点が注目されます。 ただし、銀行預金への影響に関しては、記事が引用したようにフィクションと切り捨てましたが、総裁が対応策として示したマイナスの付利と残高制限で十分かという疑問は残ります。 whenの面では、5月下旬のECBのパネッタ理事による欧州議会での講演と概ね同じでしたが、いずれにせよ7月に方針を示した後、2023年までにスキームを検討し、その後に本格的な実験に入るとの考えを示しました。 このように今回の講演自体が、ECBが来月公表する方針の骨子を先取りした可能性が高いように見えますが、いずれにせよ次回の理事会の結果が大変注目されます。
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FRB当局者「デジタルドル」に懐疑的、決済すでにデジタル化
Reuters
井上 哲也野村総合研究所 金融イノベーション研究部 主席研究員
専門家の皆様を招聘し、私が事務局を務めて中央銀行デジタル通貨について議論した「通貨と銀行の将来を考える研究会」の中間報告(2021年4月公表)の「メッセージ」の一つは、支払・決済の効率性や安全性の観点だけからは、少なくとも現時点で、中央銀行デジタル通貨の導入を合理化することはできないというものでした。 米国と同じく日本でも、既にこうした目的に向けて民間と当局の双方が様々な取り組みを進めており、まずはそれらを実現することの優先度が高いからです。その意味では、クオールズ副議長の主張も理解できます。 その一方で、「メッセージ」は、中央銀行デジタル通貨には、技術や金融サービスのイノベーションを促進するための共通インフラとしての役割や、それらに関する国際競争力の強化、長い目でみた「通貨主権」と経済政策の自律性の確保といった、支払・決済を遥かに超える広範かつ重要な意義が存在する点も併せて指摘しています。 これらの意義には中央銀行のマンデートを超えるものが多いだけに、中央銀行デジタル通貨を導入するか否かは、中央銀行だけの判断に委ねるのでなく、金融機関やIT業界だけでなく、企業、家計といった幅広いステークホルダーの意見を総合して決定する必要があります。 しかも、その開発や導入には時間を要するだけに、他のピッカーの方が指摘されているように悠長に構えるといった選択肢は残されていないように思います。
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FRBのインフレ予想が外れたら?
The Wall Street Journal
井上 哲也野村総合研究所 金融イノベーション研究部 主席研究員
日本の例を逆にしてみれば明らかなように、中央銀行が本当に止めなければならないのは、インフレが「自律的」に加速する事態です。典型的にはスパイラル的なインフレ上昇ですが、上昇率がそう高くなくても、いわば「生き物のように」動き出したら注意が必要です。 そうした状況がなぜ生ずるかと言えば、家計や企業の行動がインフレを前提としたものに変わるからです。家計は、先行きの価格上昇を予想して、耐久財や住宅の購入を前倒しするでしょうし、企業も投入価格の上昇に伴うマージン圧縮を回避するため販売価格を引き上げたり、意図的に供給を絞ったりすることが想定されます。そうなれば、因果関係がチェーンのように繋がって、物価は自律的に上昇します。 その意味で、家計や企業が今後の物価上昇をどう考えているかは、政策運営の上で重要な判断材料となります。 ただし、そのために活用される多くのサーベイの質問が、単に「今後の物価は上がると思いますか?」という内容になっていることには問題も残ります。より適切な質問は、「今後の物価上昇に備えて、具体的な対応を講じますか?それはなんですか?」というものであるべきです。
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