神保 謙

ウクライナが戦争を戦い続け、勝利しなければならない意義は、徐々に「ウクライナ支援疲れ」の国々に響かせることが難しくなっている。それをゼレンスキー大統領自身が感じとるが故に、その警告の言葉が強くなるのだろう。特に91年の国境線を目指す（東部２州だけでなくクリミアまで奪還する）目標に、国際社会が心中することは難しい。個人的には「2022年2月24日以前」というラインを軍事的目標から動かすべきではなかったと考えている。

エマニュエル大使にとり、専制国家は自由を束縛する悪であり、自由主義国家は連帯して彼らとの競争に勝利する必要がある。ロシアのウクライナ侵略の際に、その旗幟鮮明なメッセージは迫力があった。また米中戦略的対立が深まる中で、強硬な対中政策の旗振り役でもあった。ただ、米中関係はそれほど単純なものではなく、一方的な価値付けは政策のリアリティから離れていく。

ベトナムの兵器調達先の８割はロシアが占めており、弾薬や部品の調達を含めれば、ロシアと取引を継続することは当然といえる。尚、ベトナムも調達先の多角化は模索しており、イスラエルや韓国がそのシェア拡大を虎視眈々と狙っている。

横田基地にはもともとミサイル防衛の運用を担う日米共同統合運用調整所があり、弾道ミサイルの探知・追尾・迎撃に関する情報共有を行っていた。その後、航空自衛隊航空総隊が府中から横田に移転、米第5空軍との連携が深まった。府中にある空自宇宙作戦群とも連携できる。横田基地に設置されることは理にかなっている。

台湾国防部が示した第20回党大会以降の習近平体制と党軍関係の特徴、台湾侵攻がありうる際の意思決定の分析に誇張はないように見受けられる。中国の意図に対する甘い見通しを排していることは、総統選挙の各候補者が踏まえなければならない認識の基盤ともなる。

レズニコフ国防相は今年のシャングリラ・ダイアローグで直接見ることができ、ウクライナの国益を主張し対ロシア国際連携のために奔走していた姿が印象的だった。汚職については知る由もないが残念だ。

こうやって社会秩序破壊的な暴力行為でさえ、否定することができないところに、中国の官僚機構の弱さがある。

中国が対外関係を調整したい、という全体的な方向性は変化していない。9月にインドでのG20、11月にはAPEC出席のため習近平訪米、そして日中韓首脳会談など、それぞれの外交を成功させる必要があるからだ。また来年は台湾、韓国、米国などで主要な選挙があることも、今年中の外交が重要とされる所以である。 それだけに福島処理水の問題と水産物の全面輸入禁止などの対応と、日中韓首脳会談への前向きな姿勢がどのような関係として捉えられるのか、やや複雑な方程式という様相だ。

プリゴジン死亡でワグネルの勢力弱体化は避けられないだろう。ワグネルはロシアのハイブリッド戦争の先兵だったが、ロシア軍指導部との対立を通じて局面は大きく変わってしまった。ワグネルがプーチン体制に従順となり正規軍に統合されていくか、統制を失った民兵集団のようになるのか、は現時点ではわからない。ベラルーシ、北アフリカなど異なる展開があるかもしれない。

中国社会は根は多様であるにもかかわらず、一度方針が決定すると異論を挟むことが許されない。対米政策をどうするか、G20にどのように臨むかといった議論は専門性が高いが、処理水問題は身近な問題として、ナショナリズムを刺激される格好のテーマとなった。中国人の環境への意識が高いということは、中国国内にもエネルギーは向かいうる。中国の原発の処理水や、大気汚染、水質汚濁など、時限爆弾ともいえるのだ。

松川るい議員は能力も高く優秀な方だが、今回の件は期せずして日本社会の鬱積に触れてしまった。日本社会には公人の迂闊さを許す余裕がない。別の場所でぜひ挽回して、政策面で能力を発揮してほしい。

「1人の研究者が1日で読める論文数は約30本に対し、同社の創薬AIは米国立医学図書館の論文データベース「パブメド」で掲載されている論文数約3000万本を解析できる」というフロンテオ社のAI創薬支援もすごいが、「1日で読める論文数は約30本」とさらっと書いてあることに驚愕した。。今日はNewsPicksを離れて論文を読もう。。