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東芝でボロ儲け、4500億円超を稼いだファンド群
高橋 義仁専修大学 商学部教授
株式会社は、出資者から投資を受けた「資本」で事業を運営することにより成り立っています。このような資本獲得の仕組みがいないと、大規模な企業をつくることは難しくなります。投資家から集めた資金を運用するファンドや年金原資を運用するファンドなどは、資本提供者としての機能を有しています。その責務は、運用益を生み出し、ファンドの出資者に対してリターンすることです。
記事には、東芝が将来に稼ぐキャッシュが低迷、つまりは経営状態が悪いと市場が考えているときの「株価が安い時」、以下のいずれかのような状況が来ることを予測して株を購入した「できる」ファンドのリストが挙げられています。したがって、「できるファンドが悪い」かのような記事中の表現には疑問があります。
できるファンドの条件は、株価低迷時に、(1) 今後キャッシュが稼げるようになることを予測できる、(2) 経営状態をよくするアクションがとれることを予測できるまたは自らが働きかける(戦略の再構築、人員の再構成など経営戦略の最適化)、(3) 「そのうち株主にがうるさくなって、非公開企業に移行するだろう、その時はある程度高額な価格付けをしないと取引が成立しないので株価は上がるだろう」と考えて株価が上がることを見込むことが予測できる、などだと思います。今回のケースは(3)です。東芝のTOB以前のファンドのアクションにもありましたが、ファンドが経営陣に株主提案するのは(2)に当たります。(2)と(3)を組み合わせて、アクションを起こすこともあり得ます。
株式の価格(株価)は公開会社(上場会社)の場合、単純に売り買いの相場で決まります。つまり、株価は人気投票で決まるものではありますが、理論としては、将来に企業が生み出す価値に対し、資本コスト(=荒く言えば金利のようなもの)を考慮して、将来の価値を現在の価値に割り戻す手法により、おおまかな説明がつきます(上記(1),(2)の説明として)。
負債80億円…脱毛サロン「シースリー」倒産 直前まで勧誘「詐欺罪にも」
高橋 義仁専修大学 商学部教授
前払いで購入した「権利」に対し、それを使用する場合にその権利に基づき商品やサービスを提供する企業が倒産した場合は、倒産企業の財産処分に基づき保有債権として支払代金の一部が返還されるとはされながら、「ほぼ返ってこない」と考えた方が良いと思います。
この企業のほか、「○○会員権」「長期に使用できる権利」「利用チケット」の類を高額で購入した場合、つまりは対価にあたる商品やサービスを前払いで購入する場合、消費者はその危険性を十分に考える必要があります。
従業員の給与に関しては、会社都合で解雇する場合で30日前に解雇の予告をすることができない場合には、予告期間に不足する期間に応じて過去の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項「解雇予告手当」)。その点で、この企業の従業員への給与支払い対応にはおそらく問題があります。企業の残余資金は最優先で給与支払いに回されます。チケット代金はその後の配分です。
こういったことは、事業者の方は当然に熟知し、債権管理を行いますが、一般の消費者の方に危険性の認識が甘い方が多いように思います。注文住宅購入の前金などのケースでも警戒する必要があり、建築会社が倒産する危険性がないか、などの点について、本来は財務諸表を確認するなどの必要があります(ただしこのケースでは、建築会社が「倒産保険」に入っているケースが多いはずです)。
先に書いたように、基本的には、代金を支払った後に倒産してしまったケースでは、購入者が責任負担を行います。つまり損をします。ただし、倒産することがわかっているのに、(自転車操業中の企業が)それを隠して、新規に顧客を募集すれば詐欺罪(刑法246条)にあたる可能性があり、企業は刑法に基づき処罰されますが、だからといって国が購入者にお金を返してくれることはありません。
この企業の場合、記事から「守るべきルールに従っていない」とみられる記述が多く読み取れ、問題を多く抱える運営を行う企業という印象が拭えません。さらに、前運営会社は倒産、引き継いだ運営会社が消費者との前契約を破棄して運営、従業員には移籍を勧めていると書かれていることから、計画倒産、資産隠しを視野に入れた調査が行われることになるでしょう。
このようなケースが多々ある中で、おそらく公的機関が動くことになるのは、このような報道の貢献といえます。
「SMILE-UP.」社名を変えても“再生”は難しい なぜ日本企業は素人を「社長」にさせるのか
高橋 義仁専修大学 商学部教授
良記事です。内部昇格者を企業のトップに据える場合、「組織文化の継承」に正の影響を与えます。しかし、一般に組織文化には、利点、欠点ともに含まれ、どちらが強いかは企業により様々です。したがって、問題が発生している企業の場合には、過去の悪しき「企業パラダイム」(注:組織としての価値観の意味)の引き継ぎを避けることを優先し、組織文化の改革が行われます。
組織文化の改革を実践するにあたり、社会心理学者のクルト・レビン博士が提唱した「組織文化変革プロセスの理論」は経営学でも引用されます。曰く、「変革には、従来のやり方や価値観を壊し(解凍)、それらを変化させ(変革)、新たな方法や価値観を構築する(再凍結)という3段階のプロセスを経る」と説明されています。
生え抜きの新代表は過去の組織の中で評価されていた人物であり、権力者の不正に目をつぶってきたという事実が、その方の昇進の前提として存在していることが強く推認され、社内のしがらみが強いことから、「解凍」の主体者としては不向きとされます。
先にも書いたように、内部昇格者の強みと弱みは表裏一体であり、伝統を守ることにはプラスですが、合理的な新方式の実践やイノベーションに向いた人選ではありません。かといって、過去の企業文化に基づく良い部分の内部資源をすべて捨てるべきではありませんが、それぞれの企業の実情に合わせて、バランスをとるべきでしょう。
ジャニーズ事務所に目を移せば、どのような状況かは誰の目にも明らかで、この状況において (1) 内部昇格者が企業の代表を務めることと、(2) 経営に関して社外を含めた広い視野を有するプロフェッショナルな「社外取締役」の指名と、そういった構成の経営陣(取締役会)によるコーポレート・エグゼクティブ(業務執行者)の監督が望まれていると思います。
関連コメント:「ジャニーズ事務所、被害者補償と経営分離 新会社社名は公募へ」(日本経済新聞 2023年9月30日)
https://newspicks.com/news/8984303?ref=user_1310166
四谷大塚を個人情報保護法違反で書類送検 元講師がSNSに教え子盗撮画像と住所など投稿か 別の元講師も新たに逮捕
高橋 義仁専修大学 商学部教授
「個人情報保護法違反」部分に関して、住所を流出させた事実について、性犯罪としては処罰できないため、意図的に、最大限に「情報保護法」を適用して立件しているという理解であり、評価できると思います。
犯罪を行った本人は当然ですが、セキュリティーが甘い「法人」に対して相当に強い警告であり、このような教育現場に、いつ紛れ込むかわからない性犯罪者を自由にさせない仕組みづくりを行うよう、行政指導をしている位置づけでしょう。
私の知る大学では、教職員のうち、教務事務に携わる一部の職員しか学生の個人情報を知ることができないシステムがとられています。教員は学生の個人情報にアクセスすることができないため、学生への連絡手段は「学内メール」のみです。授業に必要な最小限のコンタクトは行えますが、個人的なコンタクトは一切禁じられています。このようなシステム構築・運営、厳格な規約の制定は、犯罪を未然に防ぐことにつながるでしょう。
四谷大塚盗撮、別の元講師も逮捕 法人を個人情報保護法違反で立件へ
高橋 義仁専修大学 商学部教授
「個人情報保護法違反」部分に関して、住所を流出させた事実について、性犯罪としては処罰できないため、意図的に、最大限に「情報保護法」を適用して立件しているという理解であり、評価できると思います。
犯罪を行った本人は当然ですが、セキュリティーが甘い「法人」に対して相当に強い警告であり、このような教育現場に、いつ紛れ込むかわからない性犯罪者を自由にさせない仕組みづくりを行うよう、行政指導をしている位置づけでしょう。
私の知る大学では、教職員のうち、教務事務に携わる一部の職員しか学生の個人情報を知ることができないシステムがとられています。教員は学生の個人情報にアクセスすることができないため、学生への連絡手段は「学内メール」のみです。授業に必要な最小限のコンタクトは行えますが、個人的なコンタクトは一切禁じられています。そのようはシステム構築・運営、厳格な規約の制定はこのような犯罪を未然に防ぐことにつながるでしょう。
「ステマ」きょうから禁止…インフルエンサーの「自主的な投稿」対象外、線引き難しく
高橋 義仁専修大学 商学部教授
「広告」に対しては、「広告主がお金を払っている」と大多数の人が認識しているため、その広告の対象になっている商品が無条件に称賛されていても差し引いて考え、商品選びの際にはほぼ正常な判断ができるものとみなされます。しかし、「報道」「世論」「口コミ」の類は、そのような金銭の流れが発生していないことを前提として、出される情報の重みはストレートなものと認識されるようになります。
ステルス・マーケティングは、金銭が発生している「広告」であるにも関わらず、これを隠してあたかも「正しい情報」かのような錯誤を狙ったものですので、これを放置することには問題があります。日本でこの行為が放置されていたことは、明らかに不適切です。
日本では、かつて企業のみならず公益団体、政府、自治体でさえ、「『ステルス・マーケティング』の手法で売り上げを拡大させよう」という雰囲気になっていたことがあり、広告ということを考えるうえでこの認識がおかしいことは明らかでした。その後、タレントが関与した「『ステマ』商品を売る企業の犯罪性」が問題になったことをきっかけとして、少しだけ改善されていると思います。
口コミの依頼は、そこに金銭(対価)が発生していたとしても問題はないとみられますが、口コミの内容が対価によって制限されていれば問題が発生します。例えば、口コミの目的をあらかじめ企業が報酬で雇われたインフルエンサーに指示するケースや、ネット通販で5つ星の商品レビューを行えば購入額の全額または一部をキャッシュバックするという「依頼」がこれに当たります。
ステマでの悪質なケースを挙げると、旅行代理店や商品販売業者が「当社の口コミ」として次々に高評価をページにあげながら、自作コメントが疑われるものや選択根拠が不明のものが多数あります。消費者は、「コメントが自動的に掲示されるシステムがないものについては不正」と思って対応した方が良さそうです。こういった商業活動に「景品表示法で定める不当表示」という見解が明示されることは、一歩前進です。
医師がスマホのアプリを“処方”「治療支援アプリ」利用広がる
高橋 義仁専修大学 商学部教授
医療用アプリを使うことは、経営学で知られる「ホーソン効果」を得るようなものであり、治療方法の一環ではありながら、健康管理を患者本人任せにする代わりにシステムによる管理しようとするものです。
「ホーソン効果」とは、メーヨー(Mayo, G. E.)を中心とした米ハーバード大学産業調査部メンバーが実施した企業経営を対象にした大規模な社会学的調査であり、質問紙による調査とインタビュー調査で構成されたものです。初期実験(1924-27年)と後期実験(1927-32年)から構成されています。
ここでは、被験者たちの「自分たちが選ばれた」という意識の共有が高い作業水準の維持に結びついていると考えられたため、観察者が個人的に関与することで実験そのものに影響を及ぼしてしまったと理解する場合、その効果を「ホーソン効果」と呼びます。
ホーソン効果やプラセボ効果(偽薬を投与した場合、偽薬でも身体の改善が図られること)自体を否定するものではありませんし、アプリを使うことにより生活習慣改善の「見える化」を通じてモチベーションが高まり、あるいは医療従事者等による生活習慣の改善指導にもプラスの効果を発揮すると考えられるため、適切に使用されることは望ましいといえます。しかし、物理化学や分子生物学的な原理から生体に作用させて効果を発揮させる医薬品と比較するようなものではないことも同時に言えます。
ジャニーズ事務所、被害者補償と経営分離 新会社社名は公募へ
高橋 義仁専修大学 商学部教授
ジャニーズ事務所の創業者(故人)は、児童性加害者でした。雇われていた所属タレントは被害者に罪はありませんが、雇っていた事務所が組織的にこれを隠ぺいしていたとなれば、反社会的団体と同様とみなされても言い訳できないでしょう。そのうえで、家族が後継者になり、100%株主としてジャニーズを経営するとしていたわけです。
タレント事務所の業務は、スポンサー企業が資金提供する番組等に所属タレントを出演させること。スポンサー企業が対価から得られるものは、企業イメージまたは製品イメージという「印象」。この状況の中で、スポンサー企業がジャニーズ所属タレントでは印象が低下すると考えれば、ジャニーズ事務所に仕事の依頼が来なくなるのは当然です。
被害者への補償を認めるということは、ジャニーズ事務所のイメージ低下と一体ですから、ジャニーズ事務所がこの点に対して積極的にはならないという行動予測ができるわけですから、この点において世間はジャニーズ事務所を信用せず、イメージは地に落ちたままでした。
今回、被害者補償とタレント・マネジメント事業を分離、創業者の後継者(家族)が被害者補償を行う会社の代表取締役に専念し、事業会社には関与しないとしており、かなり修正されましたが、いまだ必要十分との印象はありません。
コーポレート・ガバナンスの点からは、2点問題が残っています。これを解決しないと世間は納得しないでしょう。1点目は、タレント・マネジメント会社の代表者らの経営における独立性です。代表者らは元経営者に近い関係にあることから、犯罪行為を知っていたのに声を上げていなかったのであれば、新会社の経営者として不適切とのレッテルがついたままです。この点について説明が必要ですが、本当のところは外部にはわからないので、ベテランタレントを立てるようなことはせず、その疑念が全くない経営者を呼んでくるべきでしょう。
2点目は、このケースにおいて企業のコーポレート・ガバナンスが問題になっているため、独立性の高い社外取締役による経営が必要だと思われるところ、そうなっていないところに疑問附がつくでしょう。
小出しにして様子を見ている印象を持たれると回復が遠のきます。このようなケースにおけるリスク・マネジメントの鉄則は、「できる限り正直に、速やかに、完全性を求めて一気に」ということになります。
双日の30代元社員を逮捕 前職の営業秘密を持ちだした疑い
高橋 義仁専修大学 商学部教授
転職先が、本人に帰属する技能に期待して採用するという側面は当然にあるわけですが、前職の機密をはじめ「すべての『データ』に類するもの」を持ち出し転職先で使うことは法律に触れます。これを企業が転職の条件にすることは論外ですが、黙認などでも組織犯罪と認識され、より大きな問題になります。
したがって、同業他社からの転職者を受け入れる場合、受け入れ先の企業はそのようなことを転職者が行う可能性(危険性)を予見し、未然に防ぐ仕組みをつくらないといけないため、転職希望者に対し「前職の機密事項を転職先(当社)で使用してはならない。使用した場合は当社を解雇する」という内容の誓約書の提出を雇用条件の1つに加えていると思われます。
本件は、双日に転職した社員が自らの利益のために前職での機密を持ち出した事実が分かったことから、双日はこの社員を解雇しています。企業としては正しい行動ですが、持ち出された企業に損害が発生している場合は、雇用者責任として損害を賠償する責任も発生すると思われます。
スポンサーによる「CMの出稿停止」が相次ぐジャニーズタレント出演番組と、テレビ業界で囁かれる「ACジャパンのCMが流れたら終わり」の意味
高橋 義仁専修大学 商学部教授
ACは、正式名称を公益社団法人ACジャパン(Advertising Council Japan)とし、何らかの事情で広告が放送できないとき、その広告枠をつかって、モラル向上のための啓発や、公共福祉活動に取り組んでいる団体の支援などを行っている民間団体です。
広告販売の仕組みは、メディアは広告枠を広告代理店に卸売り、広告代理店は広告主に小売りします。放送枠を買い取った広告主が何らかの事情で放送できなくなった場合や放送したくなくなった場合でも、急に別の企業の広告に差し替えることは難しく、その広告枠が無音声や無画像になることを避けるため、ACジャパンに提供して、公益性の高いメッセージが発信されます。
ACジャパンのメッセージが流れる背景には上記の事情があることから、「その時間の広告枠の広告が使われなくなった」ということについてはわかります。
収益改善、期待できず=ファンド傘下で、再ストも示唆―そごう・西武労組委員長
高橋 義仁専修大学 商学部教授
そごう・西武の労働組合は、その親会社であるセブン&アイHDが第三者に株式を売却しないよう、労働者の正当な権利に基づき、そごう・西武の経営陣に対してストライキを行いました。株式会社のルールに基づけば、ストライキを行われたそごう・西武は、その親会社によるそごう・西武の株式売却を止める権限は有しません。この一件をもって、セブン&アイHDとしては、ますます売却を急ぎたくなるように見えました。
労組の短期的目的(売却阻止)が達成できる可能性があったとすると、売却予定先であるフォートレス・インベストメントがそごう・西武の購入を危険と考えて購入契約を撤回することでしたが、そうはならず、2200億円程度で株式売却は実行されました。
一連の労働組合の強硬姿勢が影響したか明らかではありませんが、今回の売却に伴い、セブン&アイHDがそごう・西武に貸し付けていた内の900億円が、フォートレス・インベストメントから付加的に放棄させられています。その結果、そごう・西武が抱えていた負債を引くと、実質、数千万円程度の売却になりました。それでもセブン&アイHDは株式を手放すことを急ぎました。セブン&アイHDには、本体の財務に影響を及ぼすほどの非常に高い勉強料になったと思います。
そごう・西武の労働組合は、新しい親会社(フォートレス・インベストメント)に対しても、「赤字の地方店を放置し、一番の稼ぎ頭をたたき切るもの」と批判、「新たな親会社の下で4期連続赤字の収益構造が転換する見込みには全くない」とし、「再度のストライキを行う姿勢」としています。
そごう・西武の事業内容を分析すると、赤字が積みあがり続ける構造になっており、再建のためには、客観的にみて同社の事業形態の見直しが不可欠だと思います。そのような中で、事業構造の転換に対して一切を拒否するような労働運動の目的は何を創造するためなのでしょうか。この状態が続けば、経営側としても債務超過企業に対して適用できる手段に訴える必要が出てくるでしょう。
東京都が“インフル流行注意報” 患者報告数が基準超え 調査開始以来もっとも早く
高橋 義仁専修大学 商学部教授
新型コロナ蔓延下、厳しい感染対策を行ったことがおそらく功を奏し、インフルエンザウイルス感染者は激減していました。一方で、感染防止対策を緩めた時点で、インフルエンザが流行しやすくなるだろうと専門家は予想していました。
インフルエンザには亜種(株)が多数存在しますが、型が違っているとワクチンの効果はほとんど期待できません。そのため、WHOは年2回の頻度で、次のインフルエンザワクチンに使用する候補株を選定しています。日本の製薬企業はWHOの推奨株を参考に、国内の状況も考慮に入れて株を選択し、3種程度の株を混合したワクチンを出荷します。
日本での選定の時期は通例年1回で、初夏(6月頃)に冬用のワクチン株が決定されますが、インフルエンザワクチン製造は鶏卵を使うため、製造に2か月程度を要します。通常インフルエンザは夏には流行しないため、接種は10月頃に開始されますが、それに間に合わせるような製造スケジュールがとられます。
例年通りの製造スケジュールで動いているなら、現在の時期はおそらくインフルエンザワクチンがないため、その点も含めて、警戒が必要だと思います。
《ジャニーズ性加害問題》ジュリー氏「代表取締役残留」は相続税支払い免除のためだった 国税庁関係者は「被害者やファンを馬鹿にした話」
高橋 義仁専修大学 商学部教授
国税庁関係者は、税制に基づきその基準を正しく適応する業務に携わっているのであり、「被害者やファンを馬鹿にした話」とは絶対に言わないはずです。公務員は業務上、このような個人の感情に基づく私見を述べることはできませんし、この基準にあてはめるか否かは都道府県の窓口が判断することになっており、その判断に国税庁は従う必要があります。
本件を考察する上では、まずは「事業承継税制」を理解する必要があり、それ以前に法的根拠になっている「経営承継円滑化法」も理解する必要があります。経営承継円滑化法は「中小企業の事業承継を後押しするために創設された法律」で、税制や金融支援などの優遇措置の充実が図られることが目的とされています。
同法適用の認定は都道府県が行います。円滑化法に基づく認定がされると、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予されます。この事業承継税制には、会社の株式等や個人事業者の事業用資産がともに対象になっていますが、ジャニーズ事務所は会社形式ですので、全社として適用を受けている可能性があります。現在猶予されているなら、期間内で基準を満たさなくなれば過去に遡り納税の義務が発生しますから、延滞税の対象にもなるでしょう。
ジャニーズ事務所としての存続を優先したいのであれば、特例税制の権利を放棄する判断も必要だと思いますが、税制特例を優先したいのであれば企業を存続させながら、タレントを自由にさせる(事実上事業はやめる)選択をするかもしれません。
それ以前に考えるべきことは、「親が行っていた事業を相続が発生する子らが継承する場合に認めている相続税控除」の是非についてです。全盛期のジャニーズ事務所のように、制度がなくても後継者に困らない場合や、税制の優遇だけで存続価値に乏しい企業を存続させることのデメリットを検討すべきですが、これは法律の問題ですので、ジャニーズ事務所の事案と分けて考える必要があるでしょう。
社外役員兼任4割増の2500人 23年、女性候補少なく
高橋 義仁専修大学 商学部教授
社外役員とは、企業の業務に携わっていない取締役や監査役のことです。企業は株主の集合体(以下、株主)のもので、株主は能力が高い経営陣(=取締役)による事業運営を望みます。しかし、株主と「トップマネジメント(=執行役など)」の利害関係は必ずしも一致しません。利害関係者が取締役に入ると、株主の意見が通らないというデメリットが起こりやすくなります(少なくとも外形的には)。
取締役や監査役は株主総会で選任される株主の代表者という位置づけですから、取締役は基本的に社外人材で構成されるべきであるという理屈になり、実際、欧米大企業のコーポレートガバナンスでは、株主に納得してもらうため、社内から選任される取締役をCEOやCOOを含んだ0~2名に留めているところが多いと思います。
社外取締役の必要性は、第1に「外形基準」を満たすため、第2に多面的な視点から経営のアイディアやリスクの所在と言った視点を確保する「ダイバーシティ」の獲得にあります(女性の選任もこれを目的にしているといえます)。国際的なフィールドで事業を行うなら、社外取締役の割合を増やす必要があり、特に女性の取締役が増えている理由です(ダイバーシティをいうなら多国籍でも構成されるべきと考えられます)。
近年日本企業でも増加する社外取締役ながら、形は重視しながらも役割は発揮してほしくないかのような、以下のような選任例は気になります。
(1) 実質的に非独立
トップマネジメントの「取締り」をするためには、企業運営の問題点を把握する高度な能力が必要ながら、能力を発揮されるとトップマネジメントの自由度が低下することを嫌い、グループ企業や仲間内などから円環状的に選任するケースや他社と兼任する取締役をあえて選任するケース。
(2) 高額すぎる報酬
月に数日程度だけ勤務する(本業や他社との兼任で忙しい)社外取締役に対し、極めて高額報酬を設定することにより、企業の「トップマネジメント」に対する忖度を期待しているとみられるケース(あるいは結果的に)。
(3) 都合の良いダイバーシティの解釈
「企業イメージが向上する」方を選任するのは良いのですが、企業経営者に意見を言えるレベルでの経営への高度な専門性を有しない方を敢えて選任するケース。
取締役の意味が正しく理解されないと、コーポレートガバナンスの質の向上は日本では難しいと思います。
《ジャニーズCM打ち切り問題》元ネスレ社長独占告白! 看板商品のCMに退所後の香取慎吾さんを起用した「タレントには罪がない」という理由
高橋 義仁専修大学 商学部教授
リスクマネジメントとして当然のことが書かれていますが、日本でできていたことに対してプロ経営者の見識を感じます。香取慎吾さんを助けたいからあえて使ったということよりも、「前事務所所属ではリスクマネジメントの点から使えなかった」ということだと思います。企業経営に必要な判断ですが、現状、これができていない経営トップが多いため、トップが広告に対する判断をすることの手本にしたいところです。
日本ではタレントの活用が横並びになりがちです。経営トップが関与しないことにより、担当部署レベルは「単純に売り上げ重視のための無難な選択」をしたがり、したがって「広告代理店の提案通り」を受け入れがちになり、また広告営業も「特定のタレントを抱える事務所に便宜を図ってもらうためにその事務所を推す」という流れになります。このような構図が、日本の広告の現状につながっているといえるでしょう。
記事には書かれていませんが、欧米(特に米国)の場合、不祥事のリスクから企業本体を守るために、ブランドは製品単位で構築するという考え方が主流です。私が関係していた医薬品産業では、医薬品自体にどうしても副作用などのリスクがあるため、製品名と企業名と関連付けすぎないようにすることが意識されていました。マーケティングには高額な支出をするのですが、考え方や使い方において、日本とは異なる点があります。
同様の意図から、タレント自体にも(不祥事)リスクがあるため、商品とタレントを関連付ける場合はメリットがデメリットを上回る場合にとどめているように思います。つまりは、イメージキャラクターとしてのタレントの活用は、製品内容の判断が難しいセグメント(および想定する消費者)の商品にとどめるという考え方です。
正式社名「日本電信電話」は「事業とマッチしていない」…NTT社長が社名変更に言及
高橋 義仁専修大学 商学部教授
現在のNTT(The Nippon Telegraph and Telephone Corporation: 日本電信電話)の名称は事業内容を表していません。企業名をつける際に想定されていた電信(電報)事業は限りなく小さく、(専業としての)電話事業でさえ今後存続しないでしょう。
しかしながら、事業ドメインと企業名との一致性は必ずしも必要ではなく、その内容は経営理念や経営ビジョンで補うことができます。したがって「名が体を表さない」名称の是非は、その企業の事業ドメイン(領域)の関連性を重視するか、ブランドを重視するかで異なってきます。
IBM(International Business Machines Corporation: 直訳=国際事務機器)の語源は、手動計算機などの事業を手掛けていた同社の当時の事業を反映したもので、1924年のIBM創立以来使われて続けている名称ですが、いくつもの変遷を経て、同社の現在の主力事業はITコンサルティングに移っています。
GE(General Electric: 直訳=一般電機)の語源は、1892年のトーマス・エジソンが設立した電気・機械製造企業をもとにして使われ続けている名称ですが、現在は電気事業のほか、航空機エンジン、金融事業、コンサル事業など、多分野に事業を有する多国籍コングロマリット企業ながら、この名称を使っています。
NTTの名称を変える理由は、事業ドメインとのリンクを重視するというもので、変えない理由は伝統の企業ブランドの継承の重視からというものになります。
ジャニーズ性加害問題、タレントの広告起用で揺れる企業
高橋 義仁専修大学 商学部教授
基本的に企業はイメージアップのためにタレントの力を借りているので、逆効果になるなら依頼することはありません。そのタレントが社会的責任を果たしていない企業に所属していた場合はタレントの責任ではなく気の毒に思いますが、仕事を依頼するのがクライアントである企業である以上、企業の判断が全てです。
企業がどのように判断するかですが、立場を利用して「児童に対する性犯罪」を長期間行っていた代表者の過去の実態が不明確なままだと、犯罪に対する贖罪・精算がされているとみなすことはできず、一般に取引を継続することは難しいという判断が主流になると思います。特に、欧米は取引の際の規則が厳しく、児童に対する性犯罪の懸念が払しょくできないと判断した場合は、消費者の不買を招く恐れも考慮に入れると、日本企業より取引を避けたがる傾向にあると思います。
事務所がすべきことは、「どの角度から見ても隠蔽することができない」という社内の組織体制と、「被害にあわれた方に真摯に向き合っている事実」を社会に認めてもらうためにできることをすべてすることです。逆に、隠蔽や保身の雰囲気を少しでも感じ取られると、社会がざわつき、頓挫します。
この件に関して、企業が「頑張っているタレントをつらい立場に追いやる」などと考えると方向を誤る可能性があります。なぜならば、大多数熱狂的なタレントのファンからは構成されていない一般の企業顧客は、「タレントを応援するためであっても広く一般の社会的責任を軽視できる側」についてくれないからです。結果、タレントを応援したい一部の世論に応じてしまうと、多数の一般顧客の離反を招く可能性があると思います。
所属タレントも被害者と考えると、その受け皿としての芸能事務所を社会が協力して運営するなどの方法をとれば、一定の効果があると思います。

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