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明治HDが粉ミルクで米国進出へ、ネスレやダノンなど大手に挑む
高橋 義仁専修大学 商学部教授
Bloombergの記事にも詳細は書かれていますが、粉ミルクのブランドを変えたくないという母親心理は事実としてありますが、現在は米国での最大のシェアをもつアボット社の粉ミルクの販売停止がされた結果の品不足ですので、消費者としてはそのようなことは言っておれず、使い慣れていないブランドも購入されるチャンスだと思います。
販売が停止されていたのは、アボット社のスタージス工場で製造された「シミラック」等の粉ミルク製品で、摂取した乳児4人がクロノバクター属菌によって体調を崩して2人が死亡したことから、アボット社は「シミラック」を含む乳児用主力製品を回収しました。これが直接の不足原因です。
しかし、アボット社工場への査察においては細菌汚染の明確な証拠は見つかっていません。一方で、健康被害を受けた乳児4名の家を調査では、乳児4人の家での未開封のアボット社粉ミルク容器へのテストでクロノバクター属は検出されず、3つの開いた容器の1つからは検出されました。検出された容器にはクロノバクター属の2つの異なる菌株が含まれ、その内の1つは乳児の感染を引き起こした菌株と一致していたとされます。
これまでの調査からは、アボット社に重大な瑕疵が存在しない可能性が高いと思われますが、少なくとも菌の混入があったことは事実ですから、製造メーカーに莫大な損害賠償請求がなされる可能性があります。
粉ミルクは無菌で製造することが難しく、また調整時にスプーンを通じての菌の混入も避けられません。そのため、調整時には「70℃以上のお湯で溶かす」ように決められているはずですが、この徹底を消費者に求めるだけの努力をしたかが問われるという「消費者保護」の問題などが争われるでしょう。
米国で消費者保護の対応を誤り、何十億円~何千億円規模の訴訟に直面するケースが繰り返し起こっています。日本企業は、こういった点への対応が必要でしょう。
富士フイルム、バイオ薬の生産4倍 欧米で2000億円投資
高橋 義仁専修大学 商学部教授
富士フィルムは2000年代初頭、それまでの売り上げの大半を占めていた写真用フィルム(感光材)の継続性に不安が生じ多角化を進めました。同社の場合、成長のために多角化をする「オプション(選択肢)」ではなく、多角化を成功させなければ同社の継続性に重大な問題が発生するというレベルでの「必勝態勢」が掲げられていたと思います。
医薬品に関しては、2005年頃より進出を水面下で本格化させ、まずは安定的収益を得るために老舗製薬中堅の富山化学工業の経営に参画、同じ頃、参画を躊躇していた日本の製薬大手企業を尻目に、そのような大手企業から人材を積極的に引き抜いて事業を構築してきました。
これまでバイオ領域で、商業的な大きな成功は見られていませんが、蓄積された技術力は日本のバイオ医薬品企業としてはトップクラスといえると思います。他社からの受託生産によりシナジーを期待する戦略を併用することが伺えますが、同様の戦略は、2000年代からスイス製薬大手ロシュ社もとっており、その後の同社のバイオ医薬品事業の成長につながりました。
武田薬社長:株主還元に意欲-注力分野での大型薬候補獲得で買収視野
高橋 義仁専修大学 商学部教授
円安に対する記載の部分は的を射ていると思います。同社の売り上げは約2.6兆円ですが、その80%以上が海外の売り上げで構成されるという特徴を持ちます。さらに、ほとんどの海外取引分がドル建てで決済されているはずです。非常に簡略化した計算ですが、計算基準のドルー円レートから円が30%下がると海外取引分(約2兆円)の円建て売上額が30%上がる計算です。つまりは、この前提だと売り上げが6000億円上がる計算で、そのほとんどが税引前利益の増額分になります。
しかしこれは円安によってもたらされるものであり、円高に移行すればその逆行が起こります。歴史的円安を前提に経営計画を組むと、逆ぶれしたときに経営危機を招きます。現在の円安の進行は、経営計画に携わる方にとって、非常に悩ましい状態といえます。
株主還元について、これまでも同社は、株価(現在約3800円)に対し年間配当180円を行っています。結果、配当利回りが日本有数に高いことが知られます。利益に対する配当率も異例に高く、年度によっては税引き後利益の100%以上を配当しています。内部留保を減らすことを意味しますので、結果として成長への投資余力が落ちます。
同社の株価は長期的に下落していましたが、高い配当率によって下落が支えられながらも、投資の内容が株主に支持されていないことが読み取れます。さらに株主還元するかのような発言が出ていますが、非現実的です。さらにそれを行わないと短期的な株価が支えられないということを視野に入れているものとの憶測を呼ぶ可能性がありますが、一般的なリップサービスの範疇かもしれません。(実際に実施すれば一時的には株価は上がるはずです。)
製薬企業の長期的な成長は研究開発力が強く関連します。同社の研究投資について、基本的には日本撤退に近い状態です。海外の研究開発拠点も世界の巨大企業と比較すると規模が小さく、近年の同社の基本戦略は「シーズまたは企業の買収」に側に寄っていました。そういった事情と今回の発言にも矛盾はありません。
買収時期と可能性について、円建て利益が上がり豊富なキャッシュ創出力から(日本企業の)買収はやりやすい状況にありますが、海外企業の買収は円建て支出も増えるためメリットは帳消しになります。海外企業から見た場合、逆に円安により武田薬品の買収が積極検討されているとも推測されます。
悪者アニサキス、スーツ着せるといいヤツに? 阪大教授、サバ100匹さばき「がん治療」の夢拓く
東京・国分寺市のクリニックでモルヒネ100倍誤処方 93歳男性死亡 警視庁が医師と薬剤師を書類送検
高橋 義仁専修大学 商学部教授
医療用医薬品は、医師、歯科医師の処方箋のもとに薬剤師が調製しますが、処方箋に一般的な投与量、方法から逸脱する内容が含まれる場合、「疑義照会」といって、その処方せんを交付した医師、歯科医師に問い合わせて疑わしい点を確かめ、処方の意図を確認できた後でなければ調剤に応じてはいけないことが、薬剤師法第 24 条により定められています。
このフローはダブルチェックの意図を持ちます。世界共通で実施され、品質保障のシステムとして機能していますが、今回は医師と薬剤師の両方のミスがすり抜けていることから、双方の過失責任が問われます。
モルヒネは副作用が出やすい医薬品ですが、徐々に増量することにより、それを抑えることができるとされます。したがって患者により処方箋により指示される投与量のばらつきが大きい医薬品であり、過剰投与時の死に至る作用(呼吸抑制)が起こりやすい医薬品ですので、関係者においては注意が必要であることはわかっていたはずです。
また、処方箋システムにも警告が出るようになっているはずですが、システムに頼りきりかつ確認が疎かになったのでしょうか。ミスの原因を究明し、今後に役立てる必要があります。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りします。
屋外マスク、原則不要 熱中症予防で医師会も呼び掛け
高橋 義仁専修大学 商学部教授
感染の危険を避けるか、熱中症の危険を避けるかは場所により本来は個人が判断すればよいことではあるのですが、「屋外の開放空間」ならば感染のリスクが小さい一方、今は熱中症のリスクが非常に高いのでマスクをとって熱気を開放させることを優先すべきだと私も思います。・・・というより、屋外に出ること自体が危険なケースもありますので、炎天下での長時間の外出自体をできるだけ控えた方が良いと思います。
日本医師会は開業医を中心とする職能団体(労働組合の古典的な形態、現在の法人格としては公益社団法人)で、医師免許取得が入会資格になっています。医師会の呼びかけは医療の専門家の意見という意味で重みがありますし、このようなメッセージを提供することは社会貢献活動と考えてのことでしょう。こういった団体の呼びかけにより呪縛が解け、ご自分で判断できるようになればよいと思います。
米FDA諮問委、ワクチンの見直し勧告 オミクロン株に対応へ
高橋 義仁専修大学 商学部教授
さらっと書かれた記事ですが、FDAのmRNAワクチンに対する承認審査のポリシー変更の意図が含まれる可能性があり、特に医療産業関係者にとって重要な報道である可能性があります。
基本的に新型コロナウイルスの mRNA ワクチンは、次の3つの成分から構成されています。
(1) mRNA 本体
(2) mRNA を包む部分:壊れやすいRNAを細胞内まで保護して届ける役目
(3) 塩類、糖類、緩衝剤:薬剤の安定性や保存性を高める役目
これまでの変異では、従来の新型コロナウイルスのmRNAに対し変異部分は限られていたことから従来のワクチンがある程度共通に有効でした。しかし、オミクロン株では変異部位が30程度と多いため、従来の新型コロナウイルスのmRNAから作られたワクチンでは、有効な抗体がつくられにくいと考えられています。
「オミクロン株対応ワクチン」とするものは、(1)の部分のmRNAにオミクロン株のRNAを使い、(2)と(3)は従来の新型コロナウイルス用ワクチンと同じものを使って製造することを意味しています。さらにBA.4、BA.5の方が進化の過程が新しいので、これを(1)の部分に使った方が、高い交代価を得る期待ができます。
従来型ウイルスのmRNAに替え、オミクロン株のmRNA塩基配列を用いてデザインされた商品はmRNAを販売する2社が開発中です。一般に従来の設計や製造工程を1点でも替えると改めて審査を受ける必要があります。
今回の「FDA勧告」は、ワクチンの開発ポリシーの変更意図を含むものととれます。つまり、今後すでに多くの臨床使用された実績を有するワクチンで、変異株に対する対応のために、(1)の部分に用いる変異株の使用を積極的に行うことを推奨することと、その点だけの変更に伴う精緻な臨床試験を求めないようにするという意図が読み取れます。このことにより、mRNAワクチンの変異株への即応性が格段に向上すれば、他のタイプのワクチンとの差別化能力も向上します。
「不採算」だけで承認整理はできない 経済課が念押し、製造体制改善やADRで注目も
高橋 義仁専修大学 商学部教授
先発薬、ジェネリックにかかわらず、いったん認可を受けて販売した場合、販売中止にも厚生労働省の許可が必要です。これに違反した場合、おそらくその企業は不適格業者として行政指導を受け、その後の認可にも大きな影響を及ぼします。
販売中止の「許可」は、代替品の有無と供給可能量により厚生労働省が判断します。この仕組みにより治療に必要な医薬品が確保されます。
ただし日本政府と医療関係者の「都合」が優先され、市場原理が全く働いていないことが問題です。日本の薬価制度は公定価格としての「薬価」を政府が決定する仕組みです。「薬価」は医療機関が患者に請求する保険での負担分を含めた医薬品の価格です。医薬品卸が医療機関の値引きに応じると「薬価」に対して実勢価格が下がり、これが毎年行われる薬価改定に反映される結果、「薬価」が下がります。
特にジェネリックは臨床研究費用が安いことから、「薬価」が安く設定されており、発売時から製造原価率が高い状態です。現在のように資源価格が高騰すると「原価割れ医薬品」が拡大しますが、それでも実勢価格に応じて「薬価」は下がり終売もできないことから、製薬企業の収益性を圧迫し続けます。
今後こういった企業が事業継続できなくなるケースが発生するとみられ、その時には大幅な品薄が発生し、治療に深刻な影響を及ぼすことになります。「不採算」を放置することは問題の先送りに過ぎないことを政府は認識する必要があるでしょう。
サル痘感染者に天然痘の薬 投与可能な研究開始
高橋 義仁専修大学 商学部教授
米国と欧州ではテコビリマット(tecovirimat)と呼ばれる抗ウイルス薬がサル痘治療薬として認可を受けています。 もともとは天然痘感染症の治療のために開発されたものを系統の近いサル痘ウイルス感染症に適用拡大しています。
両ウイルスはオルソポックスウイルス属に属しており、テコビリマットはオルトポックスウイルス属のp37タンパク質を標的にして放出を阻害する作用を有する抗ウイルス剤です。
日本の法律に基づき、日本での使用を可能にするために簡易な承認プロセスを経て、早急に薬事承認されると思います。
感染拡大の傾向、サル痘と天然痘の違い等については、以下の記事へのコメントに記載しています。
「台湾で初のサル痘感染例、ドイツ留学帰りの男性」(Reuters 2022年6月24日)
https://newspicks.com/news/7232978?ref=user_1310166
東芝、社外取締役の綿引氏が辞任 物言う株主選任に反対
高橋 義仁専修大学 商学部教授
大株主であるファンドが社外取締役を推薦することは、ファンドの投資家から集めた大切な資金を有効に生かすためによくあることです。経営が思わしくない企業に出資者が取締役を送ることは、日本の金融機関もよく行っている手法です。
今回辞任された社外取締役がいう「特定株主だけに情報が流れるという点に懸念」ということについては、心情的にわからなくはないですが、ファンド推薦の社外取締役には今後守秘義務が発生し、問題行動を起こした場合は株主代表訴訟の対象になることからも抑止力はかかっています。これを言うなら、「日本の金融機関による同様の手法」「増資を繰り返した結果、創業者一族の出資比率がわずかしかないのに取締役に留まる」ことなども問題になるはずです。そもそもですが、取締役の推薦の権利は法的に大株主に認められている権利です。これがだめだとは言えません。
今回辞任された社外取締役は「取締役会の多様性」を強調されていたと伺いますが、その点はご自身にこそ期待されていたはずです。ご自身の主張をここまで明確にされている方が取締役のメンバーであることにより「東芝の取締役会は正常化している」との印象を受けていたところ、株主総会で「ご自身の意見が認められなかった」として社外取締役の辞任を申し出ることについては非常に残念です。そもそも「指名委員会(の多数決)で自分の意見が通らなかった」ことが発端です。株主総会後に辞任されることについて、「(自身も意思決定に関与した案を)可決させた株主が悪いから辞める」という形になります。指名委員会に対する抗議として株主総会開催前に決断されるのであれば(残念ではありますが)強い意思表明と言うことで理解はできます。
「屋外ではマスクをはずして」 厚生労働省、連日SNSで注意喚起
高橋 義仁専修大学 商学部教授
マスクは個人の考えでつけているもので、日本では政府の発言は参考意見(ガイドライン)にすぎません。屋外のような開放空間で、人との距離があればマスクを外せるし、かなり蒸し暑い場所で継続的に活動し、頭が冷えない状況であれば、外さないと熱中症にかかる恐れが高まると思います。マスクをつけることでさらにリスクが高まりますので、誰に遠慮することなく個人の判断で「マスクをつけない」ことは当然にかまいません。
しかし、なおマスクの着用は(人権を侵害しているわけでない限り)その場所が誰かの管理下にある場合、管理者の指示に従わなければ立ち入りを禁じられても仕方ありません。ふさわしくない服装で入店を断られるのと同じですから、嫌いな方はこういったお店は避ければよいことです。逆に感染対策の意識が低いお店を避ける人もいると思います。
(追記)私の勤務先の大学でのマスク着用は現時点では義務になっています。雇われの身として勤務先が定めるルールに従う義務がありますので着用しないという選択肢はありませんし、同様に正当な理由がないのに着用しない学生の受講も認めていません。正当な理由により対応が必要な場合は大学当局が検討しています。この追記文は本文と矛盾しません。
製薬企業の新薬創出潜在力 欧米勢席巻、第一三共9位
高橋 義仁専修大学 商学部教授
医薬品の研究開発には臨床研究といわれるPh1以降から製品開発に至るまでの期間として通常は5~10年かかります。どの段階にどのような医薬品があるかは今後の企業の収益性を見極める上で重要な指標になります。
数も重要ですが内容がさらに重要です。製薬企業が開発を行っていた期待の医薬品候補に結果が出れば、企業価値(時価総額)にも変化が起こります。好ましい結果の場合は株価が急激に上がり、逆の場合は急激に下がります。
研究開発の候補が完成に至るまでの確率はは、医薬品の種類によって大きく異なりますが、感覚的な指標では、Ph1からで約10~20%、Ph2からで約20~40%、Ph3からで約30~50%くらいだと思います。
医薬品研究開発全体でみるとは基本的には大企業有利です。なぜならば研究初期段階よりも後半の臨床試験に巨額投資が必要になるためです。研究力が優れるベンチャーも臨床試験を実施するためのノウハウと資金力が潤沢な「誰か」に頼る必要が出てくるためです。ただし研究には小回りが必要で、その点ではベンチャー企業が有利です。
自社で研究を行う場合は、特定の技術に集中させ、シナジー効果を狙う方法がとられます。日本の企業のように研究開発の資金が少なければその領域の範囲を絞るという方法がとられます。
日本の企業は、国内の医療費抑制策のあおりを受け、診療報酬が維持~微増のなかで、医薬品部分で「価格引き下げの役割」を担ってきました。このような政策は半世紀ほど続いており、外国企業と競争するためにはグローバル化しかありません。
国内海外問わず新薬創出力で大きくランキングを下げている企業は、研究能力の低下または自前主義をやめた企業です。ランキングを上げている企業は研究開発の自前主義、研究開発ベンチャーの成功企業、企業規模が大きい企業(資金が豊富)といったいずれかの要素をもつ企業です。
自前主義をやめたい企業は「オープンイノベーションこそ切り札」といいますが、有望な創薬シーズは当然に他企業との獲得競争に勝たなければ獲得できませんし、情報力も重要な要素になります。基本的には王道のない世界ですので、各社の内部資源に合わせた最適戦略が求められます。それにしても、医薬品の研究開発では1にも2にも「資金」は重要です。
東京都、インフルエンザと新型コロナ同時流行に警戒 専門家「夏場にはやることもあり得る」
高橋 義仁専修大学 商学部教授
記事中に「国内のインフルエンザのワクチンは毎年10月の接種開始に合わせて製造を始めるため、夏場の現在はワクチンがない時期になる」とあります。インフルエンザには亜種(株)が多数存在しますが、型が違っているとワクチンの効果はほとんど期待できません。
WHOは年2回の頻度で、次のインフルエンザワクチンに使用する候補株が選定されています。 日本ではWHOの推奨株を参考に、国内の状況も考慮に入れて株を選択します。日本での選定の時期は通例年1回で、6月頃に冬用のワクチン株が決定され、接種が開始される10月頃に間に合わせるように製造されています。通常、候補株として選択された3種程度の株が混合された混合ワクチンとして流通させます。
記事にあるように、新型コロナ蔓延下、おそらく厳しい感染対策を行ったことが功を奏し、インフルエンザウイルス感染者は激減しています。現時点でインフルエンザが流行する兆しがありながら、インフルエンザワクチンが手元にない状態であり、直近に流行した株を混合ワクチンに入れる株から外して有効率を高める「予想」もできないことから、インフルエンザにも十分に警戒しなければならないとの考えが、今回の報道の背景にあります。
インフルエンザワクチン製造は鶏卵を使い、2か月程度を要します。夏場の流行対策に間に合わせることは不可能なため、警戒が必要だと思います。
仕事で心の病、過去最多 629件、3年連続増―21年度
高橋 義仁専修大学 商学部教授
仕事で心の病を患ったという訴えによる「労災認定の件数」が過去最多という報道ですが、周知と法の整備も進んだ結果、訴える人が増えたという認識です。今後しばらくは実態としては改善しながらも、さらに周知が進み、件数として増加すると思います。
パワハラについては、2019年改正の「労働施策総合推進法」で、まずは大企業の事業主に防止措置を講じることを義務付け、あわせて事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されました。2022年4月1日からは中小事業に拡大されています。
パワーハラスメントとは以下のすべてを全て満たすものを指します。
(1) 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、
(2) 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
(3) 労働者の就業環境が害されるもの
「仕事内容・量の変化」が71件とパワハラに次いで多く、新型コロナウイルス蔓延下におけるテレワークにより仕事のオン・オフの境目があいまいになったことが原因の可能性もあります。労務管理のルールでは、仕事の開始時間、終了時間の管理は企業の義務です。
一定の労働時間を越えた従業員に対して医師による面接指導を実施することが定められています。その対象になる労働者を把握するための手段としての労働時間の把握(勤怠管理)も企業の義務です(改正労働安全衛生法の第66条の8)。みなし労働でも同様ですし、「労働時間の把握をする労働者の対象に管理監督者は含まれる」(平成30年12月厚生労働省通知)と示されているため管理監督者も対象です。被雇用者側もしっかり記録することが重要です。いざというときに自己の主張を裏付ける証拠になります。
以前から労働時間・健康・精神衛生管理は法に定められた雇用主の義務でした。実施していないだけで雇用者が罪に問われます。これに「パワハラの防止措置」が加わりました。パワハラの実態を企業が「知らなかった」との言い逃れはできません。この点は雇用者、被雇用者共に知っておく必要があります。
「職場におけるハラスメントの防止のために」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
台湾で初のサル痘感染例、ドイツ留学帰りの男性
高橋 義仁専修大学 商学部教授
アジアでは4か国で感染例が見られていますが、オーストラリアではイギリスからの帰国者、韓国ではドイツからの帰国者、シンガポールでは滞在している英国人、台湾ではドイツ帰りの留学生で、アジア地域は欧州から持ち込まれている傾向があるようです。
サル痘は、主要発生地域だったアフリカ域外で散発的に発生していますが、なぜ急にアフリカ域外で広がるのはっきりとかわかっていません。何かしらの特別な理由の存在と、今後の流行が懸念されます。
サル痘は、これまでは死亡率は1%以下~10%程度、ヒトからヒトへの感染も稀とされてきました。しかし濃厚な接触では感染の危険性があり、患者を診断した医療従事者にも感染が見られたという報告もあることから飛沫感染や体液・皮膚を介した接触感染も起こりうるとされています。
サル痘の潜伏期間は1~2週間、発症後は症状が2~4週間程度続くとされます。症状として発疹や膿をもった皮膚病変など外観から容易に判別できるため、水面下で爆発的に拡大するHIVウイルスのような脅威は少ないと思います。
サル痘と同じオルソポックスウイルス属の天然痘ウイルス感染症(天然痘)は30%程度が死に至り、同時に容易にエアロゾル感染を起こすほどの感染力が高いことから恐れられてきましたが、世界的なワクチン接種が功を奏し、1977年以来発生がないため現在は自然感染は根絶されているとされています。WHOは現在の状況下では、(副反応が多いとされる)天然痘ワクチンの定期接種の推奨は行っていません。
天然痘ワクチンはサル痘にもある程度有効とされています。今後、サル痘感染拡大の恐れがある地域に対し、サル痘発症予防目的に天然痘ワクチンの接種が推奨されると思います。米国と欧州ではtecovirimatと呼ばれる抗ウイルス薬がサル痘治療薬として認可を受けています。
米ジュールの電子たばこ、国内での販売禁止をFDAが命令
高橋 義仁専修大学 商学部教授
米ジュール社の電子たばこの米国市場での販売禁止命令には「未成年者をターゲットにするかのようなファッショナブルな広告手法への制裁」の意図があるようです。
ジュール社は、かつてグローバルな野心を持ったスタートアップと評価され、USBデバイス型の喫煙具、派手な広告、フルーティーなフレーバーで人気を得ていましたが、米国FDAには「ジュール社の製品は未成年者を対象としているようだ」との批判が寄せられていました。
米国では、医薬品や健康関連製品を対象とする誤解を招く恐れのあるマーケティング手法、広告に対し、厳しい対応がなされることが知られています。
ジュール社は「電子タバコを子供に販売する意図はなかった」と述べていますが、すでにこの件で何千もの訴訟に直面しており、数十の州もジュール社の広告を調査しています。有罪とされれば巨額の費用が発生します。
Bloombergアジア版にも解説があります。
「Juul Soon to Be Ordered Off the Market by FDA, WSJ Reports(Bloomberg Asia Edition 2022年6月22日)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-06-22/fda-preparing-to-ban-juul-e-cigarettes-in-us-wsj-reports
東芝株が2カ月ぶり上昇率、1株7000円の買収提案も検討との報道
高橋 義仁専修大学 商学部教授
「技術があってビジネスで負ける」企業は、事業再構築の結果、企業価値が創造される余地が大きい企業とも言えます。そこでファンドはこのような企業に投資し、経営者を送り、企業再編することにより価値創造を行いたいと考えます。年金基金をはじめそれぞれのファンドには投資責任が伴っており、ファンドに投資した投資家たちに報いる目的があります。
現実的に東芝でこれを実行する場合、市場に分散している株式の株主をその都度招集し総会を開く必要があります。これを簡略化ないし非公開で行うために、複数のファンドが結託してまずは東芝の非公開化を目指すという流れになっているのだと思います。ここには政府系ファンドも加わり、政府が求める方向性も確保されることになると思います。
ただ、どのファンドが株式を集める側になり、どのファンドが株式を手放す側になるのかはまだ決まっておらず、しばらくは引き続き混沌とするとは思いますが、もしこの点がある程度集約されれば非公開化に動くでしょう。その後は株式を集約した側のファンドが集まって分割が検討されると思います。
非公開化の目的は、同床異夢のプレイヤーたちが意思決定を閉じた集団内で行うことにありますので、どのような分割が検討されるかは、いまのところ具体的になっていないと思います。事態をスムーズに動かすため、プレイヤーには「政府系」も含まれてくると思います。

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