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いなば食品、日本語が意味不明な釈明コメントが物議…ヤバい同族企業の典型例か
ビジネスジャーナル
高橋 義仁専修大学 商学部教授
記事に書かれている内容が事実であれば、問題点は3つあり、第1に労働契約法上の契約違反、第2に社宅運用に関する一般的な認識のずれもしくは違法行為、第3に企業側の公私混同(労働基準法違反および創業家の税務上の問題の存在)です。 第1の労働契約が締結された後に企業側が一方的に給与を下げたという内容は労働契約法上の違法行為に当たりますから、従業員は従う必要はまったくなく、企業には本来の給与を請求できます。企業が応じなければ、司法に訴えれば解決すると思われます。 第2の社宅運用に関してですが、本来社宅とは福利厚生の手段として活用されるものであり、使用する「権利」を従業員に与えられるというものです。従業員はその福利厚生に魅力を感じなければ、使わないという選択肢が与えられているはずです。いなば食品では給与の天引きシステムとして使われ、また社宅経営を企業自身が行っていたと思われる内容ですから、この方法を用いることで、実質的には実質給与の削減がなされているのでしょう。強制なら違法性が高いため、行政から早々に指導を受けると思われます。 第3の問題点は、そのような社宅居住者に、創業家のお世話をさせていたとみられる点です。お世話には強制性はないため、当然に従う必要はありません。もし強制させているなら、対価の支払いが必要になると思います。また、その報酬をいなば食品の経費で支払うことは、税務上許されないでしょう。 同社の株式は、同族の資産管理会社が100%所有しており、外部の目にさらされることもなさそうです。しかし、今回は多額の費用をかけて採用した社員が入社せず、他社に流れたことでいなば食品は莫大な損失を受けています。当然の結果でしょう。また、今後の人事戦略上の悪影響も非常に大きいでしょう。「企業は人なり」という言葉の意味は、経営資源のなかでヒトが最も重要で代替できない資源という意味と理解しています。同社は、人材採用難の現状を全く無視しており、これでは企業経営がうまくいくはずはありません。
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円安に柳井会長「日本にとって良いわけないですよね、これ」企業経営者から懸念の声
TBS NEWS DIG
高橋 義仁専修大学 商学部教授
ほとんどの企業が採用している「ドル建て」の場合、輸出型の企業は円安により、莫大な利益を上げています。例えば、自動車産業などが典型的で、海外で台数ベースの売り上げが拡大しているわけではないのに、ただ、為替変動で利益が積みあがっています。また、「外国人を対象にできる」観光業については大好況に授かることができます。 柳井会長も自社がこのパターンに当てはまっていることはわかっていながら、「企業の実力ではない」と言っているわけでして、おそらく社内で部下に対し、「今の実力は君の実力によるものではない。もっとしっかりと分析しなさい」などと、部門の好業績を報告してくる部下とのやり取りを頭の片隅に置きながらの回答でしょう。 一方、一般消費者にとって、急激な円安は輸入品の購入額の高騰、原料に輸入品が入っていればやはり高騰します。 大学教員の目線としては、海外に出ていくハードルが上がることから、学生や大学等での研究者の海外経験の低迷(円高と物価高で、日本の給与水準では費用が支払えない)により、将来日本人が世界的なフィールドでの活躍が難しくなる(他のアジア諸国人材が優先される)など、将来の国力の低迷が起こることを危惧します。これは現実に起こっています。 海外企業に買収された元日本企業(海外企業の傘下)で働いているものの、幹部の多くは世界を知る欧米アジアなどの外国人が多く、その下で他の先進国と比べ格段に低い所得でこじんまりと生活するというイメージの将来が待っています。 すでに海外での売り上げが十分に大きい企業は、本音では円安は歓迎です。
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富士フイルムが北米に約1800億円投資、抗体医薬品原薬製造設備を増強
Bloomberg.com
高橋 義仁専修大学 商学部教授
抗体医薬品を含むバイオ系の医薬品は研究の難易度は高いのですが、製造についても難易度は高く、先発薬と同等の技術水準を確保することは難しく、したがってバイオ系医薬品のジェネリック薬を作ることが難しいことも、バイオ系医薬品への参入の動機になっています。 バイオ系の医薬品は、大学等の非商業系の研究室で原理が発見されることが多く、特に1980年代~2000年代には、低分子医薬品にはノウハウを持つ大手製薬企業に製造技術が蓄積できていないことが多くみられました。そこで、バイオ系医薬品の研究と量産化を早くから始めていた大手製薬企業には、受託生産事業を事業の中心に据えた企業(ロシュなど)がみられます。低分子医薬品の製造にはない特徴です。 今回、富士フィルムが米国で工場に投資する理由を3点あげます。 (1) バイオ系医薬品の製造は高利益 一般に低分子医薬品の製造コストは低いものの、バイオの場合は一般に非常に高くなります。低分子医薬品の原薬製造とは競争環境が異なるため、富士フィルムはこの領域への参入に対して積極的に動いています。 (2) 新薬研究との相乗効果をねらった製造技術の向上 基礎研究能力を有する企業が製造受託することにより、基礎研究能力が向上する傾向が見られ、その後ロシュなどはバイオ系医薬品にシフトして成功しています。 (3) 米国で事業を行う必要性 企業は医薬品の価格が安い国での事業性には魅力が低く、逆に米国市場には魅力を感じているはずです。日本発祥の製薬企業の米国シフトは加速しており、その一環として米国に製造設備を置く必要があるのも理由の1つだと思います。
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「機能性表示食品」として届け出された全製品のうち約2割を事業者が撤回 小林製薬の「紅麹」問題受け消費者庁は5月末めどにあり方を取りまとめへ
TBS NEWS DIG
高橋 義仁専修大学 商学部教授
記事中の記述「2015年からこれまでに届け出された製品は8198あり、およそ2割にあたる1500製品あまりについて、事業者が届け出を撤回していた」という点について、「不具合があったから撤回」というケースはかなり少ないとは思います。実際には、問題が発生しているケースがあったのかもしれませんが、食品ならば、そのような症例を網羅的に集める仕組みがないことから問題として認識されにくく、また問題の可能性を企業が知ったとしても、企業が公表しなければ実態は闇の中です。普段診察に当たっている医師や服薬管理を行っている薬剤師なら、もしそこに特定の問題があったなら、公表情報はなくても、問題の実感は得られていると思います。 「機能性表示食品」とは、国の定めた一定のルールに基づき安全性や機能性に関する評価を行うとともに、生産・製造、品質の管理の体制、健康被害の情報収集体制を整え、商品の販売日の60日前までに比較的簡単な書類を消費者庁に届け出ることとにより、「商品パッケージに機能性を表示できる」とする日本独自のルールに基づく商品です。 問題点としては、基本的に届け出のみで「機能性表示食品」を名乗ることができ、行政は提出された内容(企業の主張)に対する裏付けをとっていません。国は「事業者の責任」とする以上の手段も持っていません。医薬品の場合は、製薬企業や処方医の過失ではない「副作用」は十分起こり得ることが前提で、医師はメリットがデメリットを上回る予想をした医薬品を処方、薬剤師がその処方内容のダブルチェックと服薬管理をして、事故ができるだけ起きないような仕組みが作られています。不幸にして、副作用が発生した場合、製薬企業が拠出する副作用被害救済基金で対処することになっています。(食品では適応されません) また、国が定めた一定のルールといっても、医薬品許認可のレベルにはまったく及ばない内容であり、医薬品の場合にはあらかじめ想定している種々の問題点のチェックはほとんど行われていません。 食品なのに医薬品様の作用を期待する成分ということは、食品なのに医薬品様の副作用が起こる可能性が高まる成分ということです。「サプリメントが安全なわけでもなく、漢方も安全なわけでもない」は、医療関係者や製薬事業には常識ですから、「サプリだから、漢方だから安全」と言い切る広告には、その信憑性を疑う必要があります。
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紅麹健康被害 死亡5人のうち70代が3人 90代が1人 3人には既往歴あり 厚労省
TBS NEWS DIG
高橋 義仁専修大学 商学部教授
問題究明にあたろうとしていますが、簡単ではありません。まずは、原因物質の究明から。毒性の高いプベルル酸が入っていた可能性が報道されていますが、毒性が高くとも、混入量が問題になることから、確定的なことは言えません。一般に健康食品(サプリ)では、効果や副作用は全くと言ってよいほど確認されていません。 医薬品は副作用は発生するものと考えて製品化されるため、ポリシーが異なります。医薬品なら、承認申請で求められる安全性にかかわる主な項目は、以下の通りです。 (1) 血中濃度、臓器移行性、代謝の経路:医薬品では開発の初期に確認されます。リスクの所在を検討するために必須。 (2) 急性毒性:薬を投与した動物の半数が死亡する「半数致死量(LD50)」をみる。同時に、投与した動物の半数に最小限の効果があらわれる「半数効果用量(ED50)」も確認する。LD50÷ED50の値は「治療指数」と呼ばれ、大きいほど安全性が高く、治療薬として好ましい特性とされる。 (3) 慢性毒性:動物やヒトで通常使用量を長期に投与し、毒性をみる。特に腎臓や肝臓に対する悪影響をよく確認。 (4) あらゆる併用薬やサプリメント、食品との併用の問題:組み合わせにより、分解酵素が抑制されて血中濃度が高くなったり、逆に分解が促進されて低くなる恐れをみる。 (5) 年齢に対する影響:高年齢や乳幼児の場合は大人と代謝が異なることがあるので確認。 (6) 妊娠に対する影響:動物に投与して、妊娠率の低下や奇形発生をみる。 (7) 変異原性:動物に長期に投与して、発癌性をみる。 上記を確認して、医薬品としての是非や、注意事項が決められます。その後に新しい事柄が発見されれば、その都度改定されます。 (8) 製造過程について、承認時に工場のライン設備の審査があり、一旦受けた設備は一切変更できない。製造設備を他の医薬品とは完全に分離する。原料の由来や産地についても許可を受けた後は、変更が許されない。変更したい場合は、再審査。いずれも事故を未然に防ぐことが目的です。 今回の事件に関し、上記(1)-(5)、(8)のすべてが、今のところ原因から除外できていないと思います。 年齢による影響も現時点ではわかりません。既往歴は、死亡原因が明らかに別という意味なら(癌死等)、サプリメントによる死亡との関連性はないと、医師は判断します。
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内臓脂肪減少薬「アライ」販売開始 大正製薬、日本初の市販薬
毎日新聞
高橋 義仁専修大学 商学部教授
内臓脂肪減少薬「アライ」には、薬効成分に「オルリスタット」というリパーゼ阻害薬が60mg含有されています。リパーゼは、大部分が膵臓由来で胃液などにも存在する糖タンパクであり、消化酵素として脂肪の分解に働きます。リパーゼを阻害すれば、脂肪は消化されずに排泄されますから、脂肪由来のカロリー摂取を抑えることができます。しかし、脂肪の摂取量を下げずに、また食事制限や運動といったダイエットにも取り組まずに、医薬品に頼ることは望ましくないでしょう。 「オルリスタット」は、海外では医療用医薬品として発売されています。「オルリスタット」の開発につながった多施設二重盲検試験成績では、食事療法によりカロリーとコレステロールやアルコールの摂取に制限を加えたうえで、無作為にプラセボ、オルリスタット60mg、120mgをそれぞれ1日3回投与下で、スタート時と比較して1年後の減量効果をみた結果、プラセボ4.26kg、オルリスタット60mg、120mgではそれぞれ7.92、8.78kgの減量がされていました。 Hauptman J, Lucas C, Boldrin MN, et al.: Orlistat in the long-term treatment of obesity in primary care settings. Arch Fam Med 2000, 9:160-167. 一方、オルリスタットを使用すると、便を伴う放屁が21%、肛門からの油の漏れ(気付かぬうちに漏れていることがある)が20%あるため、使いだした当初は紙おむつをするなどして、万が一に備えた方が良いと思います(10名に3~4名は下着を汚すため)。リパーゼを阻害すると、副作用として脂質吸収抑制による下痢、脂肪便等が高頻度に発現することは避けられないことが原因です。つまり、効いている証拠でもあります。 日本での医療用医薬品としての販売実績がない成分を含む医薬品が、いきなり一般用医薬品として販売許可されるケースは異例ですし、日本で医療用医薬品としての販売実績があったとしても、医療用医薬品から市販薬に転用されたばかりの薬は、未知の危険性の高さから、薬剤師による「要指導医薬品」に指定されます。要指導医薬品は、購入の際には必ず薬剤師から対面での指導や情報提供を受けなければならず、インターネットでの販売も禁止されます。
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「紅麹原料」製造途中のサンプル保管 究明のてがかりになるか
NHKニュース
高橋 義仁専修大学 商学部教授
医薬品の場合は、認可を受けるためには、薬を投与した動物の半数が死亡する「半数致死量(LD50)」と、投与した動物の半数に最小限の効果があらわれる「半数効果用量(ED50)」の確認は必須です。当然、LD50よりもED50の方が少くないと、効果が表れる前に死亡するため、医薬品になりません。 LD50÷ED50の値は「治療指数」と呼ばれ、大きいほど安全性が高く、治療に使う薬として好ましいとされますが、一般に抗がん剤などでは、「治療指数」は小さくても商品化されます。効果域と安全域の差が小さくても、効果に賭ける価値があるためです。 今回のサプリメント(紅麹由来原料)はもとより、多くの食品にさえ、LD50は存在してますが、食品の場合はその値は確かめられず販売できています。致死量が特定されていない物質の場合を原因と疑う場合は、第1段階として、その致死量を特定する研究も必要になります。 仮により毒性を示す不純物が原因だったとしても、毒性の発現はやはり摂取量によることから、やはり物質の特定と致死量の両方がわからないと究明には至りません。 少量の摂取で医薬品様の効果を示す物質は、医薬品ほどではないにせよ、少量で健康被害も起こすはずです。もちろん効果と健康被害を起こす量に差はありますが、(医薬品のような研究を省きたいがために)食品として発売されているのだと思いますから、これまで致死量に関してはおそらく何も確認されておらず、原因究明は簡単ではありません。 そうではありますが、製造途中のサンプル保管は、「毒性が高い物質がイレギュラーに混入したケースにおける原因究明」には役立つはずです。逆に言えば、紅麹菌の特性により健康被害が起こっていた場合は、過度に原因物質を予測してしまうことになり、誤った判断の誘発につながります。 前から書いていますが、サプリメントを機能性表示食品として売り出せる制度が安全性のチェックを甘くする原因になっており、今回の事件は、そのリスクが顕在化した種類の問題だと思います。医薬品ほどではないにしても、すべてのサプリメント類似商品に対して、ある程度の規制をかけないとこの種の問題は再現すると考えた方が良いと思います。
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次世代のがん治療薬を宇宙でつくる。ISSで製薬を試みるスタートアップ
WIRED.jp
高橋 義仁専修大学 商学部教授
蛋白質の結晶化の実用的な意義は、高分子化合物である蛋白質の立体的な構造を解析することにあり、固形物(結晶)にエックス線を照射し、分子から反射されるエックス線を感光体に当て、光線の拡散状態を電子計算機で分析して、立体構造を解析できます。 しかし、蛋白質の結晶化は簡単ではありません。結晶化には、「蒸気拡散法(Vapor diffusion method)」という方法を使います。ベークライト製のシャーレ内に蛋白質を溶かした溶媒を入れ、水分を徐々に飛ばして蛋白質の濃度を上げていきます。 蛋白質が結晶を作る条件は非常に限られるため、条件をごくわずかずつ変えて試します。そのパラメーターとしては、溶媒の種類、濃度、PH(酸・アルカリ度)、温度、湿度があり、予想はつけてやりますが、基本的に総当たりのような考え方で試していきます。結晶ができる場合は、早ければ週単位で現れますが、遅ければ数か月だと思います。すべて試しても蛋白質が結晶することの方が稀です。 重力も結晶化に影響するとされ、結晶化の工程では、温度設定できる冷蔵庫にも振動を避ける工夫を行います。ただ、無重力装置のような設備は、通常の研究環境で用意をすることはできません。すでに35年位前の話ですが、大学の研究室で、ある蛋白質と阻害剤の複合体の結晶化に関わりました。結晶化の技術はその後進歩していると思いますが、基本的な原理は今も変わりません。 記事によれば、無重力状態をつくれば、簡単に蛋白質の結晶が作れるかのように書かれていますが、おそらくできやすくはなるものの、他のパラメーターも関係してくるので、できる保証は全くありません。 無重力空間への設備投資となると採算性の点で問題が生じることから、単に蛋白質の濃度を上げたい目的には、凍結乾燥、限外ろ過(高分子を通さない浸透膜を使う方法)、沈殿/再懸濁などの既存のよりローコストな方法が有利です。ただし、蛋白質のこのような宇宙空間での無重力装置は、立体構造解析に用いる意味は大きいため、技術開発自体は、人類のために役立つと思います。
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バイオ3Dプリンターで神経再生 26年にも実用化、京都大
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
微細な組み立てができる3Dプリンターに細胞自体を搭載し、立体的に組織を組み立てて作られた「人工組織」は、神経を保護する形状を意図してつくられています。この組織を人体に埋め込むと、埋め込んだ部分から神経再生がされやすいことを京都大学の研究チームが医師主導治験で確認していました。 記事中の「企業治験」というのは、通常、単に「治験」または「臨床試験」と呼ばれています。通常は、製品化を目的として企業が医薬品や医療機器の研究開発、製品の企画立案し、医療機関に臨床業務を委託して製品化を試みます。 今回の「3Dプリンターで作られた人工組織」に関しては、初期の段階では成果が確立しておらず企業としてリスクをとることができないと考えたのだと思います。しかし、医師の要望が強く、医師主導治験として臨床試験をしたのだと思います。ただ、製品化に至るためには製造責任が伴うため、今回のように世界的に未発売の商品については、企業主導の臨床試験が必要になると理解しています。 「3Dプリンターで作った組織を移植 患者3人の知覚神経が回復 京都大学病院が治験」(京都新聞 2023年4月24日) https://newspicks.com/news/8377677/?ref=user_1310166
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県庁の〝手のひら返し〟で大損した民間企業が激怒「『契約書準備してます』っていうから発注したのに…」いきなり大量キャンセル、契約前なら行政は許されるの?
47NEWS
高橋 義仁専修大学 商学部教授
民法において、契約は「当事者の意思表示の合致」があれば、書面がなくても成立すると定めているため、口約束にも法的な効力はありますが、これを被害を被った側が立証することは難しいと思います。実際、第一審でもこの口約束を法的な契約とは認定していないようです。したがって、 コロナ禍での防護服の打診だとしても、契約書がなければ取引に応じるべきではなかったと思います。 参考:民法第522条(契約の成立と方式) 1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。 行政の意思決定のフローを理解すればわかりますが、行政の最終意思決定権は議会にあるため、口約束程度の話を反故にすることは日常茶飯事ですから、契約書をベースにしない取引は非常に危険です。 今回の判決では、「口約束を契約とは認定していない」にも関わらず、「信義則違反として損害賠償を支払うように」との判決が出たのは、私としては意外に思います。よほどやり取りが悪質だったのでしょう。ただ行政側の裁判費用は県民の負担、損害賠償が確定すれば損害賠償も県民の負担になるだけです。今後どう転んでも残念な結果になります。
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<独自>小林製薬、取締役会報告は回収決定と同じ3月22日 初症例から2カ月以上が経過
産経ニュース
高橋 義仁専修大学 商学部教授
同社の取締役会は社内から3名、社外取締役が4名で、数の上では過半数が社外人材を登用している点から、しっかりしたコーポレート・ガバナンスを世間にアピールできる体制にありましたが、記事の内容が事実であれば、言うまでもなく同社の取締役会はコーポレート・ガバナンスとしては論外です。今後、これを正せるのもまた取締役会しかありません。 社内に紅麹サプリによる健康被害の疑いが集まりだしたのは1月中旬~下旬頃からとされています。企業による分析の結果、想定外の物質が入っていることを疑ったのは2月29日、サプリ自体から想定外の物質を検出したのは3月16日、小林製薬がこれを問題として3月22日に自主回収を決定・記者会見した流れです(出所:小林製薬報告)。 少なくとも、1月下旬以降の直近の取締役会か、事の重大さからみて、2月中旬までに臨時取締役会を開いても検討すべき事案でしたが、同社はこの問題を3月22日まで社外取締役の4名に伝えなかったということになります。 つまり同社は取締役会によるガバナンス(統治)は機能する以前の状態にあり、「企業のトップ・マネジメントに取締役会がコントロールされてしまっている状態」でした。本来企業の社外取締役はリスク管理の為に存在しているといっても過言ではありませんが、社内の取締役メンバーによりその働きが止められてしまったわけです。 社内の責任の所在の把握と業務改善に対する義務が、取締役会にはありますが、3月28日の同社の株主総会やその後の取締役会において何かを行ったという話も伝え聞いていません(これから動くのかもしれませんが)。同社の社外取締役は、本来のガバナンスには何ら機能せず、報酬と引き換えに社内の取締役の意思決定に説得力を与えるだけの「用心棒」的存在と、株主や世間には見られてしまいます。取締役には、知っている情報から判断できる範囲での善管注意義務があります。 社会の要請により、取締役に社外人材を取り入れる企業は増加しています。日本の社外取締役の報酬水準は、東証プライム上場企業で2022年の中央値が840万円で、長期的にも顕著に上昇しています。一般的な社外取締役の業務実態によれば、社外取締役は取締役会への出席を含め、月に1~2日程度の業務負担とされます(出所:日本経済新聞 2022年10月27日 )。形骸化への対策が必要でしょう。
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上司との年齢差が大きいほど、Z世代やミレニアルズの生産性が阻害されやすい
Business Insider Japan
高橋 義仁専修大学 商学部教授
仕事において創造性の高い仕事が達成できるのは、自己目標管理に向かって努力しているときであり、逆に阻害されるのは、自己目標が企業や自己の所属する組織と一致しないときだと言われています。自己目標は上から言われるものではなく、自分がパーパス(目的)を理解して設定するものですから、自分と企業の関係を理解できる立場にないと、目標設定をすることはできません。つまりは、ここにコミュニケーションが不可欠です。上司との年齢差がある場合には、上司と部下との世代間ギャップがあることのほか、部下が萎縮しやすく、コミュニケーションがはかりにくいことが、理由にあげられそうです。 経営組織に関し、(1)上司の目標達成指向性の高さと(2)上司の雰囲気づくり指向性の高さのどちらが業績に寄与しやすいかを検討した研究があります。スキルが低い方に対しては(1)がより重要ながら、スキルが上がるにしたがって低下する。スキルがある程度高い方に対しては(2)の重要度が高まるが、スキルが最高度に高くなれば逆に低下する。つまり、スキルが高度に高まった方に対しては(1)(2)ともにその重要性は失われる(放置したほうが成果が上がる)と結論付けられています(コンティンジェンシー理論)。成果を出させるための条件は、組織構成員のスキルにも影響を受けると思います。
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オプジーボ、血液で効き目を予測 がん患者治療、効率的に
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
医師主導治験の制度による研究ですが、目的としては臨床検査機器の開発につなげる研究で、日本に本拠がある検査機器会社「シスメックス株式会社」との共同研究として実施されています。今後の検査機器開発につながることが期待されます。 本庶博士による「免疫チェックポイント」と呼ばれるタンパク質の発見はノーベル賞の対象になっています。その研究基盤を用い、小野薬品が開発した「オプジーボ」の効果発現の原理は、PD-1と名付けられた「免疫チェックポイント」の1つをがん細胞に侵されないようにすることにあります。分子標的治療薬とよばれる「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)、抗PD-1抗体」は、当初悪性黒色腫治療を目的として効能取得、その後、非小細胞肺癌などに適用拡大されています。 正常にPD-1が機能していると免疫が保たれますが、ここにがん細胞が作るPD-L1というタンパク質が結合すると、免疫が抑制されてがん細胞が増殖します。「オプジーボ」は、「抗PD-1抗体」として、PD-1とPD-L1の結合を阻害することから、がん細胞が有する免疫の破壊を抑制することができ、原理的に多種の腫瘍に効果を発揮する可能性が期待されています。 ただ、「抗PD-1抗体」は、非常に有効な方が存在する一方で、長期的に有効性が得られる患者の割合は約10~20%とされています。例えば、「オプジーボ」は継続して使用しなければならない医薬品ながら、高額でもあるため年間の薬剤費が700~800万円程度必要です。副作用も高頻度に発現することから、効果を示す可能性がある患者をあらかじめ選別したいというニーズがあります。 効く方の選別については、これまでは腫瘍組織を採取し、抗PD-1抗体の有効性を予測する手法が使われていました。今回の技術は、血液を用いて患者の免疫状況を予測できるものであり、精度が確保できるのであれば、簡便性と即時性の点で、組織検査に勝ります。 参考資料:「世界初、オプジーボ等の効果を免疫チェックポイント関連因子から予測 非小細胞肺がんの治療方針検討に役立つ研究成果」(シスメックス株式会社 2024年4月2日) https://www.sysmex.co.jp/news/2024/240402.pdf
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AIの画像解析で「性病の早期発見」謳うアプリの謎だらけの実態
Forbes JAPAN
高橋 義仁専修大学 商学部教授
特に画像から判断する診断領域におけるAIの進化は凄まじいことは承知していますが、性病の早期発見という点で、「人の目に見えず、アプリでは見えるというようなごく些細な変化に気を付けるメリット」は聞いたことはありません。 また、精度以前の問題として、日本の現行法下においては、病気の診断は医師の有資格者だけに与えられている権限です。良いものは、「医師の診断を助けるツール」として提供されています。 従って、日本では、一般の方の使用を想定した「医学診断サービス」の販売も違法です。日本で販売されている一般向け検査サービスにおいては、法的な規制を回避するために、商品には単に「検査」「早期発見」とだけ書かれています。 被験者は検査手法開発ボランティアの扱いです。検査で何かあっても「病院に行って検査をすることを推奨します」という結果を返すだけですから、結局病院に行かないとわかりません。また、品質保証もなく、何かあれば「医学検査ではない(から当然責任はない)」が釈明に使われます。このような商品のほとんどは、医薬品や医療機器の承認取得に必要な精度での臨床試験は実施されていません。 そのような事情から、当アプリは日本では違法の可能性があるほか、参加者にとってはプライバシー流出のリスクに比べて、メリットが考えにくい商品だと思います。
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小林製薬、インサイダー取引が取り沙汰か…社内協議の直後に株価が大幅下落
ビジネスジャーナル
高橋 義仁専修大学 商学部教授
社内に紅麹サプリによる健康被害の疑いが集まりだしたのは1月中旬~下旬頃からとされています。企業による分析の結果、想定外の物質が入っていることを疑ったのは2月29日、サプリ自体から想定外の物質を検出したのは3月16日、小林製薬がこれを問題として3月22日に自主回収を決定・記者会見した流れです(出所:小林製薬報告)。 株価に不自然な変化が現れたのは2月の第1週で、第3週にかけて徐々に前後比10%程度の下落を見せています。その後株価は下がった状態で一旦安定し、次に急落したのは3月22日の記者会見後です。したがって、「インサイダー取引が疑われる事案」と認識されて差し支えありません。このようなケースでは、証券取引等監視委員会として調査をするはずで、今後、内容の詳細が明らかになると思います。 インサイダー取引とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株等を売買することで、自己の利益を図ろうとするものです。そうした情報を知らされていない一般の投資者は、不利な立場で取引を行うこととなり、証券市場の信頼性が損なわれかねないため、金融商品取引法で禁止されており、違反者には証券取引等監視委員会による刑事告発や課徴金納付命令の勧告が行われます。(出所:日本取引所グループ) M&Aなどの株価に与える影響が甚大な経営上の重要情報は知ることができる人物がごく少数に限られるのに対し、企業の不利益情報の場合については、多くの従業員に指示し、迅速に、広く調査を始める必要性があるために、狭い範囲に情報をとどめることが難しいという性格があります。したがって、このようなケースにおいて企業は、この情報を業務上知り得ることになる従業員に対して、自社株の取引を行わないことと関係者以外への口外を一切禁止する指示を併用する必要があり、怠った場合は問題が発生しやすくなります。仮に企業の内規や指示がなかったとしても、インサイダー取引を行った個人が重い責任を負います。
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検出物質、厚労省が発表するとは…4時間半に及んだ小林製薬会見
毎日新聞
高橋 義仁専修大学 商学部教授
今回の小林製薬の対応には大きな問題点は認められません。分析できないのは能力の問題です。厚労省には要請通り可能性として内容の報告を行っており無問題。発見物質が健康被害につながったかは量によるので現時点で断定できず、原因が特定できていない以上、記者会見で断定的に話すこともできません。厚労省は、因果関係がはっきりしない物質名をこの段階で報告する必要はありませんが伝えたから悪いとは言えず、一方、明らかに隠蔽とは違う状況で、報道が隠蔽として追及した点は、極めてナンセンスだったと思います。 問題の商品は食品ですから、製造時の臨床的な効果やある程度の規模で初めて発生する副作用は全く確かめられておず、市場に出てからもモニタリングされておらず、医薬品のような副作用の発生や特定ロットで発生する変質の発覚をリアルタイムですることはできません。これが当初問題察知が遅れた原因です。これは制度上の問題。 何かあればまず報告を義務付けられる医薬品の報告期限が2週間に対し、2か月くらいかかっているのは小林製薬に責があるといわれることになると思いますが、そもそも医薬品の精度で当該製品を作っておらず、問題発覚への対応体制がないのも制度上の問題。 今回の事故は、正しく服用しても、誰にも非がない死亡を含む副作用が避けられないことを前提として制度設計されている「医薬品」と、基本的にごく少量の摂取では、食中毒を除いては健康被害は発生しない前提の「食品」の違いを反映しています。 医薬品では、事故を極力防ぐために、製造ラインを他の医薬品とは明確に分離、管理者を設置、保管場所の規定など、コンタミネーションと呼ばれる汚染を防ぐための国際的な仕組みが決められており、量産前に検査を受けます。一旦審査を受けたあと、変える場合は再度審査を受ける手続きを取ります。日医工などで発覚し、処分を受けたのは、このような手順や検査違反です。ほとんどのケースで健康被害はなくても、規定違反があれば全部回収、販売停止です。 食品では上記のような規定はありません。ただ、今回のサプリメントのように、医薬品に近いコンセプトを有する少量で体内に影響を及ぼす食品は、有害作用も医薬品に近いものが見込まれるため、今後は医薬品に近い方法による対策が検討されるでしょう。
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