6本足の哺乳類ができた
哺乳類の足は4本、昆虫の足は6本と、生物の足の数は種類によって様々です。
ポルトガルのリスボン近郊オエイラスにあるグルベンキアン科学研究所のチームが、遺伝子操作の結果できた6本足のマウスについて、3月20日のNature Communications誌で報告しています(下図B, C、。 余分な後肢はマゼンタ)。
Lozovska, A. et al. (2024) Tgfbr1 controls developmental plasticity between the hindlimb and external genitalia by remodeling their regulatory landscape.Nat Commun 15, 2509 https://doi.org/10.1038/s41467-024-46870-z
チームは、胚発生のいろいろな場所で重要な役割を担うシグナル伝達経路にある受容体タンパク質の1つであるTgfbr1(Transforming growth factor beta receptor I)を研究していました。 この遺伝子を完全にノックアウトすると発生初期に死んでしまいます。
そこで、チームは、Tgfbr1遺伝子コンディショナルノックアウトマウスを利用し、発生の途中で、尾側の胚領域だけでこの受容体の遺伝子をノックアウトすることで、十分発生が進行するようにしました。すると、2本の後肢に加え、更に2本の肢ができることがわかりました。
これまで、四肢動物では、後肢と外生殖器(陰茎または陰核。外生殖器とは内生殖器に対して、 主に交接のための器官のことです)の両方が、同じ構造から発生するとされてきました。後肢と生殖器原基は、重要な調節因子の多くが共通していることがわかっています。
この6本足のマウスをさらに詳しく調べたところ、Tgfbr1がクロマチンの構造を再構築することにより、内胚葉からのパターン形成シグナルに対する中胚葉の応答を調節し、四肢または外生殖器の遺伝子発現を決めることがわかりました。つまり、このTgfbr1タンパク質が存在しないと他の遺伝子の発現が変化し、その結果、余分な足が生じ、真の外生殖器が消失すると解釈されています。
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