フィンランドのサウナから
もい、初めまして。フィンランド第三の都市、世界サウナキャピタルと任命されているタンペレ市出身のノーラ・シロラです。日本に移住して4年目となり、フィンランド大使館商務部勤務を経て、現在は北欧旅行フィンツアーに務めてフィンランドと日本を繋ぐ活動をしています。
よく「日本に引っ越してからよりフィンランド人っぽくなりましたね」と言われていますが、確かに国を離れてから、子どものころからずっと入っていたサウナもより好きになって、サウナ文化の大切さに目覚めました。
因みに、「もい」というのはフィンランド語で「こんにちは」の意味です。でもそれよりも知られているフィンランド語、世界で最も知られているフィンランド語は「サウナ」です。

約550万の人口に対して、サウナの数は約300万のあるサウナの本場フィンランド。日常生活に染み込んでいる国の文化であり、2020年に念願のユネスコ無形文化遺産にも登録されました。
フィンランドのサウナはずっと昔からある文化なのであまり簡単にまとまらないものですが、一番重要なところから紹介しますとロウリュ(löyly)は欠かせません。ストーブの熱したサウナストーンの上に水を掛けて蒸気を発生させることで体感温度と湿度を上げて楽しむのです。「じゅわぁ〜」っとロウリュの優しい音に癒され、柔らかい蒸気を浴びて体も心もリラックスさせます。
最近日本でもフィンランド式、つまり温度が低め(70〜80度ぐらい)で、湿度の高いサウナが定着しつつあり、都会だけでなく地方もどんどんフィンランドのサウナ文化に触れることのできる施設が増えています。とはいえ、もうフィンランドのサウナがブームになっていると言っても過言ではないぐらいです。
フィンランドで当たり前の存在、普通にシャワー室の横に位置しているサウナがここまで日本で流行っているのは、日本に住んでいるフィンランド人として驚くとともに感動しています。

シンプルでフラット
日本に移住してからよく聞かれるのは
・サウナは週に何回入りますか?必須グッズは何ですか?何セット入りますか?
など、正しいサウナの入り方とか、おすすめのサウナの入り方についての質問がとても多いです。
しかし、サウナの「正しい入り方」は人の数だけあると思います。自分自身が気持ち良いと感じるのであればそれで良いのです。サウナは我慢したり、頑張ったりするところではありません。サウナの中は性別も年齢も肩書も問わずみんなが平等、サウナの入り方もすべて正しいです。10分でも20分でも、一セットでも五セットでも、大丈夫です。(正直言いますと、サウナをセットとして考えて時間を意識するフィンランド人はほとんどいないと思いますw)

また、フィンランドのサウナはシンプル、とにかくモノは要りません。ロウリュ用のバケツとひしゃくさえあれば、あとはリラックスする自分らしく楽しむだけです。公衆サウナに入る場合でしたらベンチに引くサウナマット「pefletti(ペフレッティ)」もあれば清潔に楽しんでいただけます。使い捨てでなくお気に入りのマイサウナマットを持参すれば、環境にもやさしくてより良いです。
どこ行ってもサウナがある
サウナは住宅はもちろんですが、町中の公衆サウナとサウナリゾート、学校や空港、観覧車やゴンドラサウナという変わった施設も、至るところでサウナに出会えます。夏休みを長く取ることで知られているフィンランド人は、お休みの間、湖畔にあるサマーコテージに移動し、そこでサウナに入り湖に飛び込んで、桟橋で風を感じながらゆっくりして、自然と一体化しながら疲労を解消しています。

サウナで信頼関係を深める
一方で、実は多くの会社にもサウナが併設されていて、ビジネスシーンの欠かせない要素でもあります。
サウナは体だけでなく心も気持ちも和らぐ効果があり、話しやすい環境を醸し出してくれると言われています。社会がフラットとして知られているフィンランドですが、やはり会社で意見が言いづらいときもあったり、なかなか良いアイデアが出てこなかったり、良いアイデアがあっても声を出す勇気がないときだってあります。しかし、サウナの中に入れば、少し気楽に話せるようになるかもしれません。気持ちが緩めた状態で発想力や想像力もアップグレードし、変わったアイデアも思い浮かぶんです。サウナの中なら、最初はおかしいと思う発想も語り合えるでしょう。
まだそこまで日本で知られていませんが、フィンランドのサウナ文化の大事な一部である「サウナイルタ(Saunailta)」というものをここで紹介させていただきます。直訳すると「サウナの夕べ」という意味ですが、簡単に説明しますと、友だち同士や職場の仲間と休日や仕事終わりにサウナに集まって、食事をしながらサウナに入ったり、リラックスしたりして、仲間と自由に話し合って交流します。本来なら片手にビールを持って、テラスで風を感じながら同僚と仕事のこともプライベートのことも語り合ったり、仲良くなったり信頼関係を築きます。もちろん職場の人だけでなく、ビジネスパートナーをサウナに招待するのが普通です。ただし、サウナイルタも、会社のサウナの使い方もそれぞれなので、今後はフィンランドのいくつかの会社にサウナの役割について伺い、ここで紹介したいと思います。

最近特に意識するようになったのは、フィンランドのサウナはサウナ室自体だけだとあまり伝わらないことです。周りの環境が非常に重要であり、休憩スペースも周りの自然や設備も、食事や飲み物も、もちろん一緒にサウナを楽しむ人も、そのすべてが融合されフィンランドのサウナになります。子どものころから当たり前だった自分の国のサウナ文化の深さに、来日してからようやく気づくようになりました。
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