これからの日本の宇宙産業

2024年6月19日
全体に公開

宇宙産業は、技術革新や重量化によるロケット・衛星の低価格化に伴い急速に進化しています。

経済産業省は2024年6月7日、「経済産業政策新機軸部会第3次中間整理」を公表。今回はこの中間整理の中から、宇宙産業に焦点をあててとりあげたいと思います。

宇宙産業分野を取り巻く環境

宇宙からの通信、地球観測、測位といったサービスが普及しつつあり、特に、モビリティ産業、土木・建築・インフラ産業、農林水産業、海洋産業などをはじめ、多くの産業に影響を与えています。

また、宇宙からの環境モニタリングによる高度化が進み、宇宙における安全保障分野はますます重要となっています。

世界の宇宙産業市場は現在約56兆円規模で、今後2040年までには約150兆円へと倍増すると予測しています。日本政府はこの成長に向けて、2040年には国内宇宙産業の市場規模を4兆円とする目標を掲げ、2030年の早期には8兆円まで拡大することを目指しています。

衛星通信サービスや人工衛星の利用が広がり、宇宙輸送(ロケット)への民間需要が増大しています。また、安全保障ニーズも高まり、政府や軍需分野でも需要が拡大しています。

宇宙産業におけるデジタルの領域では、衛星通信(通信、地球観測、測位)分野での進展が目覚ましく、Beyond5G/6G通信、自動運転、インフラ監視、海洋観測など、多岐にわたる分野での活用が期待されています。さらに、宇宙データを活用した高頻度地図作成や、宇宙プラットフォームの発展も進んでいます。

GXの領域では、地球観測衛星によるGHG(温室効果ガス)の排出状況の監視が高度化し、産業界全体での排出削減に向けた取組が進んでいます。これにより、環境ビジネスが拡大し、森林・水資源の保護や、カーボンニュートラルに向けた取り組みが加速していくことが期待されています。

宇宙の利用は安全保障分野においても一層重要となっています。従来の衛星による情報収集や測位サービスの提供に加え、超高速ミサイルの探知・追尾、船舶の海洋状況のリアルタイム把握、高速・大容量の光通信インフラの提供などが進展しています。

宇宙ビジネスは民生主導による持続可能なビジネスを

2000年以降、SpaceXに代表される民間企業による宇宙ビジネスが急成長し、民生主導への移行が本格化しています。再利用可能なロケットや小型衛星コンステレーション技術の進展により、宇宙へのアクセスが拡大し、大規模な投資が必要な宇宙サービスが民間企業により提供されるようになっています。

今後、グローバル市場を獲得するロケット企業、衛星コンステレーション企業(通信、観測等)、衛星運用・地理空間データプラットフォーム、軌道上サービス企業、宇宙状況把握(SDA)企業、キーパーツメーカーなどが出現し、これらの垂直統合や他産業との水平統合、プラットフォーマーの登場が予想されています。

宇宙産業は、安全保障上重要な技術やビジネスであるため、他国に比べて競争力が劣後しても、一定程度は国が支援して自国や自地域でのビジネス化を目指す動きが続くことが見込まれています。

しかしながら、安価で高品質なサービスを求めるユーザー側のニーズを考慮し、政府が支援をしても生き残れない企業が増えれば、結果的に宇宙活動の自立性を失う国が現れる可能性も指摘されています。

日本が宇宙分野での競争力を確保できない場合、日本の安全保障や経済・社会に不可欠なインフラを海外に依存することとなり、安全保障上のリスクを抱えることに加え、デジタル赤字と同様に新たな貿易赤字をつくることも懸念されています。

日本の宇宙産業の課題と展望

日本の宇宙産業は、今後も厳しい国際競争にさらされる中で、国際競争で勝ち残るリーダーシップや、技術及び事業モデルを有する企業群が競争優位に立っていくことが予想されます。

こうした企業群が、国内外の安全保障ユーザー、政府機関、民間企業などからのサービス調達などから投資資金を得て、さらに技術革新を行うという好循環につながることが期待されています。

今後、グローバル市場を獲得するロケット企業、衛星コンステレーション企業(通信、観測等)、衛星運用・地理空間データプラットフォーム、軌道上サービス企業、宇宙状況把握(SDA)企業、キーパーツメーカーなどが出現し、これらの垂直統合や他産業との水平統合、プラットフォーマーの登場も予想されます。

宇宙産業は、日本の安全保障や経済・社会に不可欠なインフラとなり、安全保障のリスクを抱えることに加え、新たな競争力の差がより顕著になることが予想されます。

日本の宇宙産業が国際的な競争力を維持し続けるためには、持続的な技術革新と戦略的な投資が不可欠であり、政府の宇宙政策と民生主導との両輪がますます重要となっていくでしょう。

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