数百円の商品もRF-IDタグで管理できる時代に

2021年11月8日
全体に公開

先日、ユニクロで商品を買い、その支払いシステムに驚いた。店が提供する大きな網でできたカゴの中に商品を入れ、セルフレジで精算する訳だが、カゴをセルフレジのくぼみに載せた途端、瞬時に各商品名とその各価格、合計金額を表示した。QRコードやバーコードを読み取るレーザーもない。しかし、カゴを置くだけで見事に商品名、金額を表示したのだ。しばし唖然とした。

帰宅してから、RF-IDタグではないかと気づき、値札を触ってみたが、どこにもチップらしきものはない。もちろん、アンテナも感じない。

RF-IDは、アンテナと半導体チップが載ったバッテリレスの回路システムだ。バーコードのレーザーに相当するリーダー(読み取り機)が、高周波の電波を送信し、タグからの内部データを受け取る。13.56MHzなどの高周波をRF-IDタグに当てると、その電波を受信し検波・整流して直流電圧を発生し、回路を動かす、エネルギハーベスティング技術である。回路を動かした後は、商品名や価格などの情報をチップ内の発振器でリーダーに送信する。この一連の動作を瞬時に行う。このため電波を受け、最後の情報を発信するアンテナがチップの他に必要だ。

これまで様々な展示会でのデモや入場カードなどでRF-IDが使われてきた。手でカードをなぞればチップを感じることができた。しかしユニクロの値札にはチップの有無が感じられない。そこで、念のため値札を透過するかなと思いながら、天井灯にかざしてみた。するとアンテナの配線がくっきり見えた。これは間違いなくRF-ID回路だ。ただし、厚い値札の中にラミネートされているため、簡単には剥がせない。そこで一晩、水に付けて値札の紙を柔らかくすることにした。

翌朝、洗面器の値札は水を含んでブヨブヨになっており、丁寧にしかし確実に剥がすことができた。図1がその写真である。回路の真ん中に見える小さな(0.3mm角程度)黒い点が半導体チップである。上の二つは3000円弱、一番下は600円程度の商品。半導体チップから出ている金属膜がアンテナとなる。極めて薄い。チップはWLP(ウェーハレベルパッケージング)技術で作られているかフェイスダウン接続のベアダイかもしれない。

図1 3種類の商品についていたRF-IDタグ 出典:撮影筆者

筆者は顕微鏡を持っていないためにこれ以上の解析はできないが、RF-IDの半導体回路はそれほど複雑ではないため、出来るだけ小さく作り量産効果でコストを削減したようだ。アンテナを含め安く実装するために、紙の上に印刷で金属配線パターンを描くか(上の二つ)、10mm×5mmの小さな紙上にチップを張り付け、薄いアルミホイールのパターンでアンテナを形成した(一番下)ようだ。

これまでRF-IDタグはコストダウンが最大の問題だった。シリコン半導体チップとアンテナを構成する金属配線を設けたタグを10円以下にしなければ商品には取り付けられないと言われていた。ユニクロの安い商品に付けられていたのには感動した。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
坂本 大典さん、他1460人がフォローしています