【早わかり】海外・国内の更年期スタートアップ30選。世界メノポーズデー記念

2023年10月15日
全体に公開

毎年10月18日は、更年期の健康にかかわる情報を、世界へ届ける「世界メノポーズデー(更年期の日)」。高齢化社会の到来を受け、1999年に開催された国際閉経学会で採択された。

日本でも、10月18日からの1週間をメノポーズ週間として、社会への理解促進を目指し、さまざまな活動を行っている。

更年期(40代後半から50代前半)は、卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急速に減少する。その結果、ホルモンのバランスが乱れ、月経周期の乱れやエストロゲンの欠乏による不調があらわれる。

具体的には、肩こり・のぼせ、発汗・動悸・頭痛などの身体症状や、不眠やイライラなど精神面にも変化が出てくる。

今まさに更年期市場は、40代以上の人口増加や女性活躍推進、ジェンダーギャップ解消の動きもあり、女性活躍を後押しする社会環境の構築を進めるうえでも、注目されている分野である。

今回は世界メノポーズデーを目前に控え、海外の更年期製品・サービス30選を、カテゴリー別にお伝えする。

UnsplashのLindsey LaMontが撮影した写真   

【1】オンライン(ハイブリット)診療

更年期市場の中でプレイヤーが多いのが、オンラインもしくはハイブリット診療である。

日本でも新型コロナウイルス感染症対策として、オンライン診療の利用が増加し、更年期分野でも徐々にプレイヤーが増えてきたが、まだまだ対面診療による患者と医師との信頼性構築や、身体検査・診察が重要視されている。

また、スマホなどデジタルデバイスで診察を受けることに抵抗がある更年期世代が、欧米と比較し多いと推測している。

👩‍⚕️オンライン(ハイブリット)診察のプレイヤー9選

1.🇺🇸Gennev

・更年期障害ケア専門で、医師や看護師と30分程度のビデオ診療が可能。
・更年期障害を専門とする医師は米国でも不足。
・気軽に専門家へ相談できるプラットフォームが、米国でも増加。

2.🇺🇸Lisa Health

・更年期女性向けに、症状の把握やテレヘルスを提供するアプリ『Midday』を提供。
・プレ更年期、更年期女性を包括的にサポートする。

3.🇺🇸Midi Health

・主要保険会社がカバーする更年期ケアを提供。
・2023年9月にGoogle Ventures主導で2,500万ドル調達。
・不妊治療サービスのNASDAQ上場企業Progynyとも提携。

4.🇬🇧Elektra Health

・更年期向けの医療相談、コミュニティサービスを提供するヘルスケアプラットフォーム。
・更年期症状に対する臨床ケアが受けられる
・エビデンスに基づいたアプローチで、更年期女性が直面する課題を、さまざまなプログラムで提供

5.🇺🇸Caria

・更年期のさまざまな悩みを記録することで、専門的なアドバイスを受けられるアプリ。
・個人差のある更年期の悩みを、パーソナライズされたアドバイスでサポート。

6.🇺🇸Alloy

・40歳以上の女性の更年期症状における簡易診断サービスと、症状緩和などのプロダクトを提供
・北米更年期学会(NAMS)で認定され、トレーニングを受けた医師によるテレヘルスを展開
・FDA(米国食品医薬品局)で承認されたホルモン処方箋も低価格で提供

7.🇯🇵Truly

・更年期が訪れる男女に向けて、信頼性の高い情報・体験談などを発信
・企業向けにはLINEを使い、男女の健康について学ぶeラーニング、不調について専門家に相談できるチャット相談サービスを展開

8.🇯🇵menopeer

・LINEで更年期症状や女性特有の身体の悩みを専門家に相談
・更年期や女性の健康、生活習慣に関する記事の配信を行う

9.🇯🇵MYLILY

・LINEで診察予約可能
・婦人科医師がオンライン診療の元、薬を処方してくれる。
・処方薬はクリニックから最短翌日発送

UnsplashのJESHOOTS.COMが撮影した写真   

【2】尿失禁や骨盤底筋

閉経前後は尿もれや子宮脱など、下半身のトラブルを抱える女性が増える。40代以降の女性の44%に尿もれの経験があるといわれているが、尿トラブルの原因として骨盤底のゆるみが原因となっている場合も多い。

尿もれや頻尿の解消には、理学療法士による骨盤底筋トレーニングなどが一般的であるが、トレーニングデバイスなどのプレイヤーも増えてきている。

👩‍⚕️尿失禁や骨盤底筋のプレイヤー10選

10.🇺🇸Origin

・妊娠、産後、更年期などに特化した、骨盤底筋をはじめとする全身の理学療法を提供するオンライン&対面プログラム。
・独自の運動プログラム、教育コンテンツ、コミュニティによってサポートされる対面・オンラインのセッションを提供。

11.🇬🇧Elvie Trainer

・アプリと連動して使う骨盤底筋トレーニングデバイスで、ゲーム感覚で楽しくトレーニング可能
・国連で働いていたTania Bolerが創業。
・アカデミー賞の候補者に配られるノベルティになったことでも話題。

12.🇫🇷Emy

・骨盤底筋トレーニングアイテム。
・骨盤底筋を強化することで、尿失禁を減らし、失禁をなくす。
・患者の91%が同製品で骨盤底筋トレーニングの結果、失禁改善。 

13.🇬🇧Living With

・理学療法士が推奨する運動プログラムが準備されている、骨盤底筋トレーニングアプリ。
・NHS(英国の公的医療保険サービス)に承認。

14.🇮🇹SRS Implant

・合併症を発生させない安全な方法で骨盤臓器脱を解消するインプラント。
・身体の構造を模して骨盤周辺の臓器が身体構造・機能の面で正しい位置にくるようにする。

15.🇫🇷Perifit

・理学療法士が設計した、骨盤底筋トレーニングアイテム。
・同社によると、世界で10億人以上の女性が失禁や骨盤底疾患を患っている。 

16.🇺🇸Finess

・尿道口を覆うように装着し、一時的に尿漏れを防ぐもの。
・膀胱が圧迫された際、粘着性のハイドロジェルが作用し、尿道口を覆うことで、尿漏れを防ぐアイテム。

17.🇺🇸Kegelbell

・ケーゲル体操=骨盤底筋トレーニングを週3回(1回5分)できるように作られたトレーニングアイテム。
・重りを追加していき、負荷をかけた効果的なトレーニングが可能。

18.🇬🇧Contrelle Activgard

・膣内に挿入して使用する、使い捨ての尿漏れサポート製品。
・スポンジが尿道と膀胱周りを支えてくれる。

19.🇺🇸Attn: Grace

・有害な化学物質を含む従来の尿失禁製品とは異なり、安全性を優先。
・EUで禁止または制限されている約1,700の化学物質を除外し、再生可能な植物ベースの材料を使用。

UnsplashのPossessed Photographyが撮影した写真   

【3】デバイス

日本では、40歳以上の骨粗しょう症の患者数が、男性300万人に対し、女性は900万人以上とも言われている。

骨粗しょう症予防デバイスや、更年期の汗が止まらない症状(ホットフラッシュ)軽減デバイスなど、海外では出てきている。

ただし、以前のNewsPicksトピックスでも触れたとおり、ホットフラッシュの出方などは、人種や民族によって異なるため、ビジネスなどを検討する際には注意が必要である。

👩‍⚕️更年期デバイスのプレイヤー6選

20.🇺🇸Bone Health Technologies

・骨粗しょう症の予防には負荷の高い運動が有効。
・デバイスをつけることで、同様の効果が期待。
・NASAの技術を利用。

21.🇩🇪Marodyne LiV

・体重計のような見た目のデバイスで、台の上に乗るだけで、振動による骨への刺激で骨量減少を抑える。
・NASAの技術を利用。

22.🇬🇧GRACE

・ユーザーの体温を常時モニターし、ほてりやのぼせ・発汗を検知したら、自動的にデバイスが冷たくなり、体の熱を冷ます仕組み。
・体表近くの脈拍の触れやすい太い血管を冷やすことで、全身をいち早く冷やすことが可能なため、即効性がある。

23.🇺🇸Kulkuf

・熱電冷却により、ほてりを瞬時に緩和できるデバイス。
・同社で特許取得済みの冷却技術で、蒸発冷却を使用し身体から熱を奪い、従来の冷却方法に替わる効果的で便利な製品を提供。

24.🇺🇸Ebb Sleep

・脳の前頭皮質の代謝活動を減らし、レーシングマインドの感覚を沈める。
・眠りに落ちて健康的に回復力のある睡眠が可能。

25.🇸🇬Elocare

・更年期のホットフラッシュ、心拍数増加、発汗等の症状を記録できるウェアラブルデバイス。
・アプリと連動し、症状を検出・追跡。
・個人にあわせた治療プラン提案・医療へのアクセス提供。

UnsplashのPossessed Photographyが撮影した写真   

【4】その他

エストロゲンの減少などで髪の毛の悩みも増える更年期だが、そういった課題を解決するようなヘアケアブランドや、更年期患者のコミュニティなども存在。

また、「症状のデパート」ともいわれる更年期症状を記録し、AIで分析してアドバイスするアプリなども出てきている。

👩‍⚕️その他のプレイヤー5選

26.🇺🇸ROSY

・医師と心理学者によって、科学的根拠に基づいたオンラインセクシャルウェルネスプラットフォーム。
・パーソナライズされたウェルネスプランや医療提供者へのアクセスを提供。 

27.🇬🇧Perry

・更年期女性向けの専門家コミュニティ。
・同じライフステージにいる、同じような考えを持った女性たちとつながるためのプラットフォーム
・更年期障害の専門家へのアクセスも可能

28.🇺🇸Better Not Younger

・年齢を重ねた女性のためのヘア・頭皮ケアブランド。
・P&Gやロレアルで幹部だった女性たちが創業。

29.🇺🇸GenM

・更年期向けの製品を開発する企業とパートナーシップを組み、企業が更年期障害をよりよく理解するための支援を実施。
・更年期女性が働きやすい雰囲気をつくる企業向けのコンサルティングなども実施。 

30.🇯🇵YStory

・更年期ヘルスケアサービスアプリ『Her Life』
・35歳以上の女性に向けて、更年期症状の記録機能、パーソナライズされたヘルスケアのアドバイス、匿名コミュニティ、症状の推移を確認できるインサイトを提供
・京都大学との共同研究によって開発

UnsplashのPossessed Photographyが撮影した写真   

【5】まとめ

筆者はフェムテックや更年期の社会情勢やビジネスモデルについて、大学や企業などで話す機会が多いが、更年期に関する周知や教育が足りていないことを日々感じる。

また、「更年期」という言葉のタブー感が強く、「更年期向け」とうたってもターゲットには響かないため、「40歳からのヘルスリテラシー」など、サービスに気づいてもらえるような言葉選びが求められている。

更年期症状が多岐にわたるため、不調の原因がわからないまま過ごしている女性も多い。

もちろん病院へ行くのが第一だが、その前段階において、不安な部分を払拭して、気づきを与えて不調の理由を認識する。そのうえで女性たちが理由を納得できるようなサービスが求められているのではないだろうか。

UnsplashのAmy Hirschiが撮影した写真   

【6】<お知らせ>Femtech Community Japan会員募集中

筆者が活動しているFemtech Community Japanでは、スタートアップ・大手企業、VC・投資家、⼤学・研究機関、医療・ヘルスケア関係者・メディアパートナーなどが集まり、フェムテック関連の取り組み・情報共有や現状の課題と今後に向けた議論・ネットワーキングなどを行っています。

2023年より、法人会員・スタートアップ会員も募集しています。ご関心の方はお問合せ(hello@femtechjapan.com)もしくは下記お申込みフォームよりご連絡ください。

11月には、今回紹介できなかった海外更年期スタートアップを詳細に紹介する「更年期市場レポート」(約40ページ)を、法人会員・スタートアップ会員向けに発行予定です。

***

記事の感想やご意見をコメント欄でお待ちしています。このトピックスを気に入っていただけたら、ぜひフォローいただけるとうれしいです。

X(旧Twitter)でも、ご意見やコメントお待ちしています。

<参考>

・市場規模は65兆円以上-いま、世界で注目を集める更年期向け市場「メノテック」
(大嶋紗季氏)
https://signal.diamond.jp/articles/-/935?fbclid=IwAR2WF5HYqJA_w_ZyWDih031hg-Whf-6fCpbaBo8f9dNWjU91GX293KOL_C0

トップ画像:UnsplashのKelly Huangが撮影した写真

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
津覇 ゆういさん、他450人がフォローしています