“ユニクロ超え”シーインの三大イノベーション

2022年11月16日
全体に公開

「売上高、時価総額でユニクロを超えた?」とも噂されている中国の越境EC企業「SHEIN」(シーイン)のショールームが表参道にオープンしました。

シーイン提供。

Newspicksが記事にしていますが、「おまえもなにか書け」と担当の方に言われたので、深夜にこのエントリーを書いています。新オープンのお店がどんなところなのか、知りたい方はぜひご一読を。

【単刀直入】最強「SHEIN」はサステナブルか聞いてみた 

私はメディア向け内覧会に参加したのですが、このショールームはひょっとして逆効果なのではと思うところも。というのも、シーインのクオリティは値段相応で、激安なわりに質はいいという意味ではコストパフォーマンス良しですが、絶対的な品質は決して高くないからです。

レベル的にはかつて一世を風靡したH&M、あるいはスーパーや商店街の激安店で販売されている服、と考えればだいたいはわかるでしょうか。服をじっくり見ると縫製は荒いですし、布の質感も気になります。バッグやネックレスなどの装飾品もちゃちさは明らか。

後述しますが、マーケットハックの妙によって、そして公式サイトのオシャレ写真によって、がんがん売っていくところに破壊力があったわけですが、リアルに商品を見てしまうと魔法が解けてしまうのではないか、というのが率直な感想です。

筆者撮影。

インフルエンサーの投稿を参考にしながら、「これは使える服かも」と思ってぽちり。うまくいったーor失敗したー(きゃっきゃ)というのが正しいシーインの楽しみ方だと思うので、最初からモノを確認できちゃいましたはあまりビジネスモデルにあっていないように思いました。

シーインの三大イノベーション

さて、私は1年半前に、おそらく日本でもっとも早くシーインについて記事にしています。(【最前線】ZARAよりググられたアパレル、知ってますか?

その時点ではわからないことも多かったのですが、地道に情報収集を重ねて自分の中では結構納得いく答えがまとめられました(「SHEIN」の急成長を支える3つの理由とは?中国専門ジャーナリスト高口康太氏が分析) 

筆者撮影。

できればこの記事を読んでいただければと思いますが、ざっくりまとめますと、以下3つのトレンドの交差する位置にシーインは存在しているということです。

  ・サプライチェーンマネージメントがすごい。「世界の工場・中国」では優秀な工場、稼働していない工場が乱立。それらを選抜し競争させることでコスパに優れた製品を作り出す新ブランドが大量出現している。その多くは中国市場をターゲットにしているが、海外市場だけに注力したところがシーインの発明。
・マーケットハックがすごい。クローラー使って海外の最新デザインをがすがす吸収したり(で、やりすぎて模倣商品として訴えられたり)、海外のインフルエンサーをがんがん起用したりウェブ広告打ちまくったり(表参道のショールームも電通、サイバーエージェント、UUUMなどなど代理店、MCNからの花束がわんさか並んでました)
・脱プラットフォームがすごい。アマゾンやeBayに頼って海外進出する中華セラーは以前から多数いたが、自社サイトに注力したのがシーインの発明。最近では二匹目の土壌を狙って、中華セラーの自社サイトブームが巻き起こっているうえに、それを支える中国版ショピファイまで流行りになって、ソフトバンクががんがん投資するという流れも(【黒幕】ビジョンファンドも投資する越境ECの神ツール)  

ビッグデータの分析で売れ残りを劇的に縮小とか、「シーインはなぜ強いのか説」がいろいろ語られていますが、抑えておくべきは上記3点かな、と。

万国郵便条約と税金

あと、シーインに限らないのですが、越境ECで重要なポイントとして送料と関税があります。

万国郵便条約の規定により、途上国から先進国に送る場合の送料は安く、逆は高くなるとのこと。なのでアパレルとか小物とかの場合は中国から送ったほうが日本からの発送よりも安くなってしまうということも。

この裏技を活用したのはシーインが初めてではありません。以前にある日本人経営者に「香港からダイレクトメールを日本に発送して、格安で顧客獲得してました♪」という話をうかがったこともあります。ともあれ、越境ECの存在感の高まり、そして中国の経済的地位の向上もあり、このあたりは見直しが必要なのではないでしょうか。ちなみに、トランプ前大統領が万国郵便条約脱退や!!!みたいな話を言っていたこともありましたが、立ち消えになっています。

そして税金。日本は個人使用目的の場合には1万6666円以下ならば関税はかかりません。もちろん消費税も不要。こりゃもう日本企業も海外から送りつけたほうがいいのでは……という気持ちにもなったりするわけです。

EUでは2021年から越境ECのお買い物では、どんなに安い注文でもVAT(付加価値税)を払うようにと規則を変更。シーインへの影響はわかりませんが、アリババの越境EC「アリ・エキスプレス」はこれで欧州向けの売上がかなり落ちたと自ら発表しています。

越境ECを潰すのは消費者にとってもデメリットですが、ビジネスが拡大する中で公平な競争環境をどう整えるかという観点は必要となるでしょう。

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