2024/5/25

観光誘客にも効果大。ショート動画で若者に地元を売り込む

ライター
まちの魅力を発信するツールとして、SNSや動画プラットフォームを活用する自治体が増えています。そのなかでも最近増えているのが、YouTubeやTikTokのショート動画です。

自治体は地域の「推し活」にどのようにショート動画を活用しているのでしょう。TikTok Japan公共政策本部政策渉外担当部長の笠原一英さんにお話を伺いました。(第4回/全5回)
INDEX
  • 自治体の新たな広報ツールとしてのショート動画
  • 「やり方がわからない」自治体の動画制作を支援
  • さまざまなアプローチの自治体ショート動画
  • クリエイター起用で海外への拡散も
  • 成功するショート動画のポイントとは?

自治体の新たな広報ツールとしてのショート動画

地元の魅力を発信したい──。そう考える自治体が、地域の「推し活」ツールとして「ショート動画」を活用するケースが増えています。ショート動画とは、スマホで見やすい縦型で、15秒〜数分と短時間なのが特徴です。
TikTok Japanで、自治体のショート動画による広報活動を支援している公共政策本部政策渉外担当部長の笠原一英さんは、「自治体や公的セクターが広報活動にショート動画を使うケースは、ここ3年ほどで急増している」と語ります。
笠原「観光PRから、子育て支援などの行政サービス、防災、青少年の安全を守る啓発など、ショート動画はさまざまな使い方がされています。特にショート動画は短時間で直感的に理解しやすいこともあり、若い世代にもメッセージを届けやすいという点が注目されているのだと思います」
これまでTikTokが自治体とコラボしたショート動画プロジェクトは100に及ぶと語る笠原さん

「やり方がわからない」自治体の動画制作を支援

現在、TikTokに公式アカウントを持つ自治体は約30。公式アカウントは持たなくても、人気クリエイターとコラボするなどで、TikTokが協力・支援するプロジェクトは100ほどを数えるといいます。
自治体がTikTokの支援を受ける理由として、「やってみたいけれど、やり方がわからない」という点があります。
自治体側のデジタルリテラシー、人や環境のリソースもケース・バイ・ケースで、「ただ動画をつくる」だけで終わってしまい、期待した効果が得られなかったということも少なくありません。
笠原「TikTokの目標のひとつが、日本の政策や社会課題解決への貢献です。その一環として、TikTokのショート動画やLIVE配信などの活用を積極的に支援しています。
企画立てのお手伝いをしたり、TikTokクリエイターとの協動をアレンジしたりすることで、多くの自治体にショート動画で発信してもらいたいと思っています」

さまざまなアプローチの自治体ショート動画

TikTokと自治体のコラボ事例のひとつが、神戸市の「#推し神戸」というハッシュタグキャンペーンです。このキャンペーンを企画した神戸市市長室 広報戦略部 担当係長 奥田雄大さんは、次のように語ります。
奥田「これまでと違う何か面白いことができないかと、【推し活×ショート動画】という2つのトレンドをかけ合わせたのが『#推し神戸』です。
TikTokの人気クリエイターや神戸在住のインフルエンサーにもショート動画を投稿してもらうことで、『#推し神戸』の認知度アップとともに、一般の人からの投稿を促してもらいました。
クリエイターの方とのコラボでは、その影響力を実感するだけでなく動画制作のノウハウも学ぶことができ、非常に参考になりました」
また、京都市では、コンテンツ産業の振興の一環として「京都国際マンガ・アニメフェア2023(以下、京まふ2023)」のプロモーションを目的としたショート動画キャンペーン(2023年8月4日〜)を展開しました。
笠原「『京まふ2023』のイベントプロモーションはもちろん、京都にはデザイン系の大学や企業、アニメ制作会社が多くあり、それらの産業振興と同時に住みやすさをアピールすることで移住者を増やそうというのが、企画の意図です。
京都市との協力のもと、『京まふ2023』の際に訪れたいスポットや、『手ぶら観光』『朝観光・夜観光』ンあど京都を快適に観光するための『旅コツ』。京都を訪れた際に立ち寄りたい自然や景観などのオリジナルショートムービーを発信しました」
「#推し神戸」では、人気TikTokクリエイターのむにぐるめさん(左)、ふーごろさん(左から2番目)などが神戸の魅力を発信。右の2つは「京まふ2023」のキャンペーン動画(提供/TikTok)

クリエイター起用で海外への拡散も

ショート動画で海外にアピールを狙うケースも増えています。
茨城県では、大井川和彦県知事主導のもとデジタルプロモーションを強化し、おすすめスポットや県産品をショート動画でPR。
海外フォロワーの多いクリエイター・バヤシ(@bayashi.tiktok)さんとコラボして、海外にも常陸牛を発信しています。バヤシさんの動画は言葉がわからなくても伝わりやすいのが特徴のため、海外からも反響を得やすいのです。
笠原「海外をターゲットにしたショート動画を発信することで、インバウンドの観光客が常陸牛を食べに茨城県に足を運ぶことや、海外への輸出にもつなげていきたいと考えています」
海外の人気クリエイターを日本に呼んで自国やそのほかの国や地域に向けて、その地域の魅力を発信してもらうパターンもあります。
TikTokでは2024年3月に九州観光機構、沖縄観光コンベンションビューローと連携して、日韓台の人気クリエイターを招き九州・沖縄の観光促進や関連の中小事業者を支援するキャンペーン「TikTok Connect By Tourism」を実施。
日本11組、韓国6組、台湾4組のクリエイターが九州・沖縄を巡ってショート動画を投稿しました。
日本、韓国、台湾の人気クリエイターが九州・沖縄の魅力を発信するキャンペーンを実施(提供/TikTok)
笠原「それぞれのクリエイターが自分の個性を生かして発信するので、同じ場所、同じテーマでもまったく違う動画になります。アプローチが多様な分、届く対象も広がって、より多くの人に関心を持ってもらうことができます」
左から日本のシライフウタさんによるカメラワークを駆使した九州観光スポットの紹介動画、韓国のクリエイターcicicindyさんによる沖縄観光スポットの紹介動画、台湾の云(tonyun_)さんによる九州・沖縄のスポットを連続で紹介する動画(提供/TikTok)
クリエイターの影響力という点では、推しのクリエイター目当てに遠方からリアルイベントに足を運ぶ、コアなファンも存在します。
また、「この人の発信する情報は信頼できる」と定評があるクリエイターは、紹介した商品がヒットする「TikTok売れ」という現象も呼び起こしています。
笠原「そういうクリエイターの影響力を生かして、今後はオンラインだけでなく、オフラインのリアルイベントも強化していきたいですね」
TikTokクリエイターが出演するリアルイベントに足を運ぶ熱心なファンも。写真は、2024年5月に福岡市「博多どんたく祭り」とコラボして実施した「TikTok Local Love in 福岡」のファン交流ブースの様子。(写真提供/TikTok)

成功するショート動画のポイントとは?

人気クリエイターとコラボするだけが、自治体の「推し活」ショート動画というわけではありません。知識やスキル、人材、予算など、その自治体に合わせたやり方がありますが、共通する重要ポイントが2つあります。
笠原「ひとつは企画設計で、最も基本的かつ重要なポイントです。広報戦略の課題がどこにあり、それをどう解決したいのか、そのためのターゲットは誰なのか。これらを明確にするところから企画を立案していくことが大切です。
もうひとつは、ユーザーにウケているショート動画のトレンドを踏まえて、どんな動画を作るかという演出を考えることです」
この2つがなければ、単に「ショート動画を作った」というだけで終わってしまうことになりがちです。
特に、「TikTokといえば、ダンス動画だろう」という思い込みで、とりあえずダンス動画を作るのでは、ほとんど期待した効果は得られないでしょう。TikTokのダンス動画がトレンドだったのは以前の話。はやっている動画の傾向はどんどん変化しているからです。
また、KPIを具体的に設定し、分析をすることも大切です。
笠原「『100万回再生された!』『“いいね”がたくさんついたから、よかった』で終わってしまっては、もったいないですよね。
例えば観光促進が目的であれば、それがどれくらい誘客につながったかを調査・分析して、具体的な効果を見える化したほうがいいでしょう。そのためにもコメントなどのユーザーからの反応や、事後の結果分析が重要になってきます」
自治体が自らの広報をするだけでなく、マーケティング戦略に悩む地域の事業者、中小企業向けに動画制作を支援する施策の展開も期待できそうです。
笠原「地元の中小事業者向けにショート動画によるマーケティングセミナーを自治体が主催して、知見を共有する。人気クリエイターを講師に招いてショート動画の講習会を開催するのもいいでしょう。我々もそういう施策には、どんどん協力していくつもりです。
地域を『推す』ことは、イコール地域活性化となります。
ショート動画を軸にしながら、ライブ配信、クリエイターを活用したリアルイベントなどの多様な展開で、地域への推し活マインドを高めることに貢献していきたいですね」