2024/5/25

VTuberとのコラボが続々。地方自治体への長期的メリット

ライター
アニメルックなアバターを使い、ライブ配信や音楽などさまざまなフィールドで活躍する「VTuber」。若い世代を中心に多くのファンを抱え、海外からも人気を集めています。

そんなVTuberが地方自治体と組むケースが増えています。自治体はVTuberの起用でどんなメリットを期待しているのでしょうか。

多くのVTuberが所属するホロライブプロダクションを運営するカバーのマーケティング本部本部長 喜多円華さんに、最新事情を教えてもらいました。
INDEX
  • VTuberが東京観光大使に
  • リアルイベントでインバウンドを。配信ではトレンド入り
  • ファンの熱量の高さがPR効果をアップ
  • デジタルコンテンツへの感度とキャラクターとの親和性が決め手

VTuberが東京観光大使に

「VTuber」について具体的に説明できなくても、なんとなくイメージが浮かぶのではないかと思います。
VTuberとはもともと「バーチャルYouTuber」の略。2Dや3Dのアニメキャラクター(アバター)を使い、インターネットメディアで動画投稿や生配信をしたり、SNSで発信をしたりするバーチャルライバーを指します。
そんなVTuberを自治体がPR戦略に起用して発信する事例が増えています。
2016年にVTuberとしてデビューした「Kizuna AI(キズナアイ)」を皮切りに、その後、続々とVTuberが登場。自治体としてVTuberを最初に起用したのは、茨城県です。
2018年、茨城県が運営する動画サイト「いばキラTV」の公式アナウンサーとして「茨(いばら)ひより」が登場。茨城県のバーチャル広報課・Vtuberチーム配属の県職員として、茨城県のPRを行っています。
県が運営する「いばキラTV」で活躍する「茨ひより」。県職員として名刺もある(提供:茨城県)
以降、VTuberがさまざまなかたちで自治体とコラボするケースが増加。なかでも、2023年に東京都が観光大使として「さくらみこ」「森カリオペ」「がうる・ぐら」という3人のVTuberを任命したのは大きな話題となりました。
東京都の観光大使を務める3人の人気VTuber。左から「がうる・ぐら」「森カリオペ」「さくらみこ」(提供:ホロライブプロダクション)
VTuberのマネジメント事務所大手で、東京観光大使を務める3人が所属するホロライブプロダクションでは、現在86人のVTuberが所属しています。
ホロライブプロダクション(以下、ホロライブ)の運営母体であるカバーのマーケティング本部 本部長の喜多円華さんは、VTuberについて次のように説明します。
喜多「カバーではVTuberをバーチャルタレントと呼び、活動の根幹をなすルック(見た目)などのクリエイティブ部分を全面的にプロデュースしています。
また、それぞれの個性や世界観をブラッシュアップしてVTuberをデビューさせていて、その後の活動のプロデュースやマネジメント業務などを行っています」
デビュー後は、それぞれのVTuberが生配信などでファンとのコミュニケーションを重ねるほか、関連グッズの販売やイベント出演、企業タイアップなど、活躍の場を広げていきます。

リアルイベントでインバウンドを。配信ではトレンド入り

ホロライブでは、これまでも地方企業とのコラボ事例がありましたが、東京観光大使任命をきっかけに、自治体からの問い合わせも急増しています。
そんななか、2023年11月から宮城県仙台市と「がうる・ぐら」によるインバウンド施策をスタート。メインイベントとなったのが、2024年1〜2月に仙台うみの杜水族館で行った、コラボイベント『Gurarium in Sendai Umino-mori Aquarium』です。
喜多「実はこのコラボに関しては、我々ホロライブ側から仙台市にアプローチしたのが始まりです。ホロライブではこれまでもさまざまなリアルイベントを実施してきましたが、どうしても東京など首都圏での開催に集中していました。
地方のファンともリアルに触れ合う場を設けたいと、コラボの可能性を探る中で仙台市とのイベントが決まりました」
イベントでは、「がうる・ぐら」が音声で館内の生き物を紹介したり、生き物のパフォーマンスショーに「がうる・ぐら」の楽曲を採用したり。
ほかにもウェルカムムービーや等身大パネル展示によるフォトスポット、コラボフードやグッズの販売なども用意しました。
喜多「『がうる・ぐら』は、海底から地上にやってきたアトランティスの末裔というキャラクターなので、水族館との相性も抜群でした。
また、英語圏向けVTuberグループ『ホロライブ English』に所属するタレントでもあります。ガイダンスは日本語だけでなく英語も使い、海外ファンの集客も目指しました」
仙台うみの杜水族館とがうる・ぐらによるコラボイベント『Gurarium in Sendai Umino-Mori Aquarium』(提供:ホロライブプロダクション)
もうひとつの事例が、群馬県からのオファーで実現した群馬県出身の「大神(おおかみ)ミオ」と群馬県のコラボです。
このコラボでは「大神ミオ」と山本一太県知事との対談や、群馬県のグルメ紹介、名所を訪れるコラボ動画を配信。2023年11月に群馬県の公式YouTubeチャンネルでコラボ発表の動画を配信したところ、5万7000回再生と通常の配信に比べて爆発的な伸びを記録。
ホロライブ公式 YouTubeチャンネルから配信された群馬県知事と大神ミオの対面動画は、13万回も再生されました。
喜多「再生回数がバズっただけでなく、XやYahoo!でもトレンド入り。話題性という点で、十分な結果が得られました。群馬県からもぜひ第2弾、第3弾もやりたいというお話をいただいているところです」
【#大神グンマー】VTuber大神ミオのReal群馬レポ#1【群馬県知事&ぐんまちゃんとご対面編】(提供/ホロライブプロダクション)

ファンの熱量の高さがPR効果をアップ

リアルのタレントやYouTuberではなく、VTuberを起用するメリットはどこにあるのでしょうか。
喜多「ひとつには、キャラクターそのものに価値があること、そしてホロライブファンの熱量がとても高いという点です。
ホロライブのファンは、日本全国におり、イベントを開催する地方の方だけでなく、遠方で開催するイベントにも足を運ぶようなファンがたくさんいらっしゃいます。
海外にも多くのファンがいるため、日本で開催されるリアルイベントに参加するため訪日したりとインバウンド効果もおおいに期待でき、グローバルに愛されるのがホロライブの強みです」
コラボイベントではありませんが、この3月に日本で行ったホロライブの単独イベント『hololive SUPER EXPO 2024』にも、アメリカ、台湾、韓国、香港、ヨーロッパなど、世界中からファンが集まりました。
喜多「地方にとっても、海外からの熱心なファンを呼び込めることは、大きな起爆剤になるはずです」
『hololive SUPER EXPO 2024』の様子(提供/ホロライブプロダクション)
さらに、VTuberのファンが若年層に多い点もポイントです。一般メディアではリーチしにくい10代、20代にもアピールできるのは、VTuberならではといえるでしょう。
また、ファン自身もSNSなどを通じて発信を繰り広げることで、口コミで二次的、三次的効果が見込めます。

デジタルコンテンツへの感度とキャラクターとの親和性が決め手

一方で、今後の課題もあります。
喜多「まだまだVTuberという存在への社会的認知や理解が進んでいないという点は改めて感じています。自治体によっても、サブカルチャーやデジタルコンテンツへの感度に大きな差があります。
特に企業側の担当者の方にもVTuberのメリットをしっかり理解してもらうことが重要なポイントとなるので、丁寧な説明をする必要があります。
そういう意味では、前述の群馬県は山本知事も含めてデジタルコンテンツへの理解が深く、県を挙げて積極的に取り組んでいただいたので、非常にスムーズにコラボできたと思います」
また、コラボにあたっては「キャラクターとの親和性」は大前提であり、最も重要なポイントでもあると喜多さんは語ります。
喜多「何でもかんでもコラボできればいいというのではなく、そのキャラクターの個性やストーリーに合うもの、そして、ファンが喜んでくれるものであること。それがコラボ企画を成功に導く最も重要な条件です」
ホロライブプロダクションを運営するカバーのマーケティング本部本部長 喜多円華さん
今後、VTuberの活躍の場が増えることは間違いありません。ビジネスとしてコラボすることによる可能性も大きく広がっています。
喜多「今のVTuberは、ちょうどYouTubeが世の中で注目され始めた頃と同じようなフェーズに来ています。今後数年で、社会的にもっとメジャーな存在へと変わっていくはず。
そんなVTuberとのコラボも、配信のみならず地方の特産品とのコラボやイベント開催など、さまざまな展開が考えられます」
配信やイベントは一過性のものですが、特産品とのコラボは長期的に展開できる点も魅力です。ほかにもVTuberを軸としてその地方を回遊するツアー企画などの可能性も今後は考えていきたいと語ります。
喜多「私たちにとっても、地方とコラボすることで地方のファンの方にコンテンツを届けることができるというメリットがあります。そういうお互いWin-Winなコラボを今後は積極的に増やしていきたいですね」
地方の自治体や企業で、VTuberたちが「推し活×ビジネス」の中心に躍り出てくる日も近そうです。