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7割の会社が退職社員の復職を受け入れ

サイバー藤田晋氏も悩む。「出戻り社員」は是か非か

2015/6/3
Weekly Briefingでは毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、注目ニュースをピックアップ。水曜日は、ワークスタイルに関わるニュースをコメントとともに紹介します。

勝手知ったる仕事だから即戦力になる。いや、一度は辞めていった者を再度受け入れるのは甘やかしだ──。何かと議論を呼ぶ「出戻り社員」の受け入れ論。

サイバーエージェントの社長、藤田晋氏が出戻って欲しい退職者に「ウェルカムバックレター」を出す問題で悩んでいる様子を、Web版日本経済新聞のコラムに書いたところ、賛否両論を巻き起こしている。

Pick 1:サイバー、「出戻りOK」を伝える「ウェルカムバックレター」制度

退職者の「出戻りOK」をどう伝えるべきか ” 日本経済新聞(2015年5月27日)

同記事によると、サイバーエージェントには、もともと「出戻り社員」は相当数いるそうだ。それでも社内では、「出戻りOKになればいいのに」といった声が上がっていたという。

そこで、藤田氏ら役員は、会社として積極的に「出戻りOK」のメッセージを伝えるため、「ウェルカムバックレター制度」を始めた。復職してほしい社員に「向こう2年以内は、元の待遇以上で出戻りを歓迎します」という旨を書いた手紙を郵送するというのだ。だが、対象者を厳選して送ることなどに、藤田氏はいまだ戸惑いを隠せない様子だ。

同記事の読者コメント欄でも、「ウェルカムバックレター制度、基本的賛成です。そのような制度が開示されていれば戻りやすい」(40代、男性)といった賛成論の一方で、「私は出戻りは反対です。(中略)辞めていく人は大なり小なり愚痴や批判を内部で行って同情を誘い、周囲の雰囲気を暗く落として辞めていきます。(中略)社内では『頑張った人が報われず、出戻りが気に入られて出世する』が共通認識になっています」(40代、女性)といった反対の声も多く上がり、議論を呼んだ。

実際、出戻り社員の評判はどうなのだろうか。

Pick 2:「出戻り社員」が嫌われる理由

嫌われる「出戻り社員」が生き残るための条件” ダイヤモンド・オンライン(2014年2月10日)

少し前の記事だが、このコラムでは、この会社はぬるま湯だと強気で辞めていった社員が、まるで借りてきた猫のようにおとなしくなって帰ってきた事例が紹介される。

その理由は、本記事に譲るが、著者のセレブレイン社長高城幸司氏は、「辞めた社員を受け入れることに批判的な社員はゼロではありません。辞め方の悪い社員は出戻りを認めない。あるいは辞めたときより厳しい環境で出直す姿勢を示させることも重要かもしれません。安易な出戻り社員の受け入れで、生え抜き社員の不信感を抱かせるようなことは避けたいものです」と記事を結んでいる。

上記記事で紹介されたように、「出戻り社員」の多くは、「会社に不満があって辞めていった人間が、よくいけしゃあしゃあと戻ってきたな」といった揶揄の声にさらされやすい。

一方で、歓迎される出戻り社員もいる。その筆頭は、子育てや介護などを理由に退職した女性社員を中心に、再雇用を促す「ジョブ・リターン制度」を活用し、再雇用される例だろう。

厚生労働省の2011年度雇用均等基本調査によると、53%の事業所がジョブ・リターン制度を設ける。トヨタ自動車、ブリヂストン、ライオンなどが先行事例として有名だ。

こうした制度を活用して復職する社員は、もともと会社に不満があって辞めたわけではないから、復職後、歓迎されるのは至極もっともだし、雇用者たる会社と従業員双方にメリットがある制度と言えるだろう。欲を言えば、子育て中の社員の復職を促す制度を充実させる前に、子育てや介護をしながらも退職することなく仕事と両立できる制度を拡充すべきではないか、という気もするが……。

Pick 3:72%の会社が「出戻り社員」受け入れ実績あり

出戻り社員(再雇用)実態調査。72%の人事担当者が受け入れ実績があると回答” エン・ジャパン(2015年1月29日)

こうしたジョブ・リターン制度の広がりや、人材流動化に伴い柔軟な人事をする会社が増えたせいだろうか。エン・ジャパンの「出戻り社員」についてのアンケート調査によると、72%の会社が出戻り社員の受け入れをしたことがあると回答している。
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出戻りを受け入れた理由としては、39%が「即戦力を求めていたから」、38%が「人となりがすでにわかっているため安心だから」となり、多数を占めた。

やはり、「即戦力」と「ミスマッチのなさ」が、出戻り社員の一番の魅力のようだ。

また、出戻り社員の復職に対する職場の反応は、「とても良い」が13%、「まあまあ良い」が57%とおよそ7割は良好だと回答。つまり、一度辞めた会社に復職することは、世の中全体として受け入れられつつあるようだ。

かつての日本の会社は、自分の意思で退職していった者には、「裏切り者」の烙印(らくいん)を押し、二度と受け入れない風潮があった。

そのため、社員にとって、退職や転職のリスクはあまりに大きく、適職とは思えなくても渋々仕事を続けるしかなく、それが職場の士気悪化などに直結していた。こうした風潮により、人材流動化も進まなかった。

そこへいくと、会社を自由に出たり入ったりすることができる文化や風潮が醸成されてきたことは、歓迎すべきことだろう。

出入り自由だけではなく、職種や雇用形態などについても、自ら就きたい仕事に応募する社内公募制度を拡充する、契約社員から正社員に変更する、はたまた総合職社員が専門職コースに移行するなど、従業員それぞれのライフステージや思考に沿った、柔軟な働き方がもっと広がれば、人材の適正が発揮しやすくなり、組織としてもより生産性が上がるのではないだろうか。