Airbnbが大手ホテルのライバルになる日

2015/5/29
すでに巨大な存在感を放つAirbnb。発祥の国アメリカでは今のところホテル業界に目立った影響は見られない。事実、今夏のホテルの売上動向も手堅いと見られている。だが、密かに、そして着実にAirbnbは次なる手を打っている。「Concur」との連携との狙いは? そして「見えない部屋数」とは? したたかに事業を進めるAirbnbの戦略を追う。

Airbnbは脅威でも競争相手でもない

2008年に創業した宿泊仲介サイトAirbnb(エアビーアンドビー)の成長ぶりは、とにかく目覚ましい。登録物件──一軒家の部屋、アパートメント、改装した納屋まである──は100万件に届く勢いで、マリオットやヒルトンなど大手ホテルチェーンの部屋数を超えている。
しかし大手ホテルチェーンは、少なくとも表向きは、新興の宿泊サービスが秘める脅威に本格的な対策をとっていない。
その理由のひとつは、旅行市場全体が堅調なことだ。旅行市場調査会社フォーカスライトのアナリスト、ダグラス・クインビーによると、市場全体の宿泊費は2014年に大幅に増えたが、2015年はさらに増える見通しだ。旅行客の習慣も大きな要因で、特に高齢者と経費で出張するビジネス客にとって、旅のスタイルを変える理由はない。
割引料金を狙う旅行客が多いチョイス・ホテルズ・インターナショナルのスティーブ・ジョイスCEOは、コンフォート・インやスリープ・イン、エコノロッジなど傘下のチェーンはAirbnbの影響を受けておらず、2015年夏の売上予想も手堅いと語っている。
インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ・オーナーズ・アソシエイションのケリー・ランソン会長は、Airbnbのことは「オンラインの短期レンタルにすぎない」と、脅威とも競争相手とも考えていない。

経費精算アプリと連動

ただし、ホテル業界の重要な顧客層であるビジネス客に、Airbnbは着実に狙いを定めているようだ。2014年夏から、経費管理サービスの「Concur(コンカー)」と提携。Airbnbで予約した宿泊費はコンカーで自動的に経費情報が作成される仕組みで、法人市場の宿泊費の支払い方法を変えようとしている。Airbnbによると、ビジネス利用は現在10%を下回っている。