「アース ミュージック&エコロジー」逆張り男の成功方程式

2015/5/23

衝撃的な手紙

「社長はバカだ」
社長の私にとって衝撃的な手紙でした。辞めるスタッフが友達宛に書いた手紙を見つけてしまったのです。
私に対する「調子に乗るな」というメッセージかもしれない……。私はその手紙をコピーして、小さく折りたたみ、お守りのようにいつもポケットに入れていました。
のちにこのメッセージは正しかったと実感することになります。

逆転の発想、4つの転換期

1994年、23歳のときに岡山で起業しました。
急成長すれば、どうしても調子に乗り出します。外車も買うし、時計も買うし、発言も強くなる。
「東京の代官山に進出するべきだ。代官山から世界に向けて発信するべきだ」
私は3店舗の店長を呼んで懇々と説得しました。
すると13人いたスタッフの10人に辞表を出されてしまった。残ってくれたスタッフを守るためにも、逆転の発想が必要でした──。
創業20年を迎えた2014年1月期、年間売上高が1000億円の大台を超え、2015年1月期は1103億円でした。
岡山で始めた小さなセレクトショップが、大きく躍進した4つの転換期があります──。

大反対された、駅ビル・ショッピングモールへの出店

たまたま新宿の駅を降りて駅ビルをふらふら歩いていたら、乗降客はOLや学生、サラリーマンの男性がほとんどなのに、ミセス向けの洋服や呉服、ドラッグストアがずらっと並んでいる。
なぜこんなに乗降客と乖離したMD(商品政策)を組んだ駅ビルが多いのだろう。
この時代はファッションビルと路面店がアパレルのチャネル戦略の中心でしたが、私は駅ビルやショッピングモールへの出店に舵を切ります。
「駅ビルですか? 絶対にやめたほうがいい」
「社長、スーパーの食品の横で服を売るつもりですか?」
社内のデザイナーに伝えると大反対されました──。

宮﨑あおいのテレビCMで認知度アップ

競争相手が到底追いつけないマーケティング戦略を社内で話し合いました。
強いプロモーション戦略に打って出よう。そのためにテレビCMをやってみよう。
私はまず競争相手に聞いてみました。
「テレビCMってどう思いますか?」
みんな口をそろえて、こう言います。
「打っても当たっているか当たっていないかわからない」
「コアなターゲットが読むのは雑誌だから、雑誌に広告費を使うのがセオリーだ。マス向けのメディアは合わない」
どうやらこれが業界の常識らしい。しかし、みんながそう言うならチャンスだと思いました。
私はクロスメディアの新しいCMを展開しようと提案しました。
宮崎あおいさんのテレビCMによって、ブランドの認知度がそれまでの17%から83%に跳ね上がり、既存店の売上前年比は140%に急増しました──。

全員正社員にこだわる

「この業界では人は調整弁だ。働くスタッフはアルバイトやパートで十分。業績が悪くなったら切ればいい」
アパレルの経営者は10人中10人がそうアドバイスします。
そんなことをしていたら、いい人材は集まらないし、経験やノウハウが蓄積されないではないか。
そこでクロスカンパニーでは全員正社員でいこう、何年何カ月続けられるかわからないけれども正社員制度を大事にしよう、と決めたのです。
ただし、女性を長期的に戦力化していくにあたり、二つの課題があります──。

猛烈にがんばるキャリアがウケなくなってきた!?

2014年に入ったあたりから、猛烈にがんばるキャリアは今の若者たちにウケるのだろうかと疑問を抱き始めました。
早く課長になりたい、早く本社や本部の仕事に就きたい。そんなスピードキャリアを望まない若者も多いのではないか。
やはり正社員は責任が重いという声がありました。就職後、すぐに辞めてしまう人が増えている。
ある一定期間、社会になじませる期間が必要な時代に入ってきています──。

ファストファッションからフェアファッションへ

世の中の主流がファストファッションになっていますが、「ファスト」とは短いサイクルで大量生産する低下価格商品のこと。貧困国での生産が中心にならざるをえません。
中には女児を含む小さな子どもが繁忙期に長時間労働を強いられ、国の法令に反した汚染された環境の工場で「ファスト」な商品をつくっているケースも数多くあります。
そうした問題を全部排除したフェアなモノづくりが、フェアサプライチェーンです。
私たちは「ファストファッション」から「フェアファッション」へと業界に働きかけていきます──。
20年後、売上1兆5000億円、そして純利益1000億円という目標を掲げています。
目標達成のためには、次の4つが必要だと考えています──。
(聞き手・構成:上田真緒、撮影:今 祥雄)