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「理想のリーダー像」とは

誰でも頑張れば「リーダー」になれる

2015/5/19
スターバックスコーヒージャパンの元CEO、岩田松雄氏が「リーダーシップ論」を語る。リーダーとは無縁と考えている人にこそ、伝えたいメッセージとは。数々の著書を出版してきた岩田氏のエッセンスが込められた全2回。

誰にでも「リーダー」になる局面がある

「リーダー」と聞いて、あなたはどんな姿を想像するでしょうか。

生まれつき強いリーダーシップを持ち、プレゼンテーションも見事で、とにかく「オレについてこい」というカリスマ的な雰囲気を漂わせているのがリーダーなのではないか。でも、自分はとてもそんなふうにはなれない……と悩んでいる方もいるかもしれません。私は「誰でも頑張ればリーダーになれる」と断言します。

2011年に初めて出版した著書『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』が、30万部を越えるベストセラーになり、とても多くの方から反響をいただきました。

想定していたビジネスマンの読者層以外にも、部活のキャプテンに選ばれて、困っていたという中学生から、エステを開業して初めて人を指導する立場になった50歳代半ばの女性まで幅広く読んでいただいています。

それほど、リーダーシップは多くの人の関心事であることを実感しました。考えてみれば、たとえ2人の組織でも必ずリーダーは必要であり、誰でもリーダーにならなければならない局面があります。

世の中には、生まれつきリーダーになるために生まれてきたような人もいますが、私はまったくそうではありません。学校時代を考えても、社会に出てからも、リーダータイプとして周りから見られていたわけでもなかったと思っています。

しかし、そんな私が、周りの人たちに推されるまま、気が付いたらとうとうスターバックスのCEOにまでなっていたのです。

リーダーは「特別な人」ではない

「リーダーや社長になるのは特別な人たちなのではないか」と思っている人が実は少なくないようです。

生まれつき、強いリーダーシップを持ち、プレゼンテーションも見事で、とにかく「オレについてこい」というカリスマ的な雰囲気を漂わせているのが、リーダーなのではないか、と。しかし、そんなことはないのです。

私は、誰でも頑張ればリーダーになれるし、社長にもなれると思っています。なぜなら、私自身がそうだったからです。

しかし、実際には私自身、必ずしも順調なキャリアだったわけではありませんでした。日産自動車時代には、ソリの合わない上司によって、非自動車部門に異動させられ、そこで納得のいかない評価をされたこともありました。

その後、留学制度に応募して、やっとの思いでカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に合格するのですが、実際に留学するまでの過程では、ほとんどノイローゼに近い状態にまで精神的に追い込まれました。思えば、私の20代、30代というのは、挫折と苦難の連続でした。

岩田松雄(いわた・まつお) 日産自動車、外資系コンサルティング会社を経て、日本コカ・コーラ、タカラで役員を歴任。アトラス、イオンフォレスト、スターバックスのCEOとして業績回復。専門経営者としての確固たる実績をあげてきた。現在リーダーシップコンサルティングを立ち上げ、次世代リーダー育成に注力している。UCLAより卒業生100人に選ばれる。

岩田松雄(いわた・まつお)
日産自動車、外資系コンサルティング会社を経て、日本コカ・コーラ、タカラで役員を歴任。アトラス、イオンフォレスト、スターバックスジャパンのCEOとして業績回復。専門経営者としての確固たる実績を上げてきた。現在リーダーシップコンサルティングを立ち上げ、次世代リーダーの育成に注力している。UCLAビジネススクールより全卒業生3万7000人から、「100 Inspirational Alumni」(日本人でわずか4名)に選出される。

「理想のリーダー」の姿とは

もしかしたら、皆さんの中にも「今のような状況で自分はリーダーになれるのか」とお感じの方もおられるかもしれません。

「自分はリーダーに向いているのか、いずれ本当になれるようになるのか。強いリーダーシップなどないし、オレについてこいなどというタイプではない」と思われているかもしれません。

しかし、それでいいと私は思っています。それでもリーダーになる日が、やがて必ずやってくるからです。なぜなら、「ついていきたい」と周りの人が思うように、あなたがなっていたとするならば、みんなに推されるかたちで自然にリーダーに選ばれることになるから。

リーダーになろうとするのではなく、周りに推されてリーダーになる。私はこれが、理想のリーダーの姿だと思っています。

「THE BODY SHOP」(イオンフォレスト)でも、スターバックスでも、私が実践していたのは、「オレについてこい」という強烈なリーダーシップでもないし、カリスマ的な魅力で部下を引っ張る、といったマネジメントでもありませんでした。そもそもそんなことは、私には無理なことだと思っていました。

しかし、「誰よりもみんなのために頑張ろう」と思っているリーダーなら、もしかしたら目指せるのではないかと思っていました。結果としてみんなに「ついていきたい」と思われるリーダーとなれたのです。

次回、私がどんなことを考え、どんなことをしてきたかをお話したいと考えています。

※明日に続く。