進撃の中国IT

ユーザーのロイヤリティを武器に、金融にも進出

新たなマネタイズを模索するシャオミ、だが「5年は上場しない」

2015/5/19
5月12日、「シャオミNote」の最上位機種が発売され、オフラインで3000人、オンラインで100万人の予約という大人気を博した。社内では祝宴とはいわないものの、「ビールと麻辣小龍蝦[訳注:トウガラシで炒めた激辛B級ザリガニ料理]で祝った。みんな上機嫌だった」と、雷軍・シャオミ最高経営責任者(CEO)は言う。以前に比べて、近ごろたびたびメディアに姿を表わすようになった雷CEOが、財新網のインタビューで今後のビジネス展開とマネタイズについて語った。

 Xiaomi Mi Note Plus goes on sale in China

発表日前夜に突然変更された製品価格

6日に行われた「シャオミNote」製品発表会ではサプライズがあった。事前にメディアに配られていた資料で「シャオミNote」最上位機種の価格が3299元(約6万4000円)となっていたのが、同日の発表会で突然2999元(約5万8000円)にまで引き下げられたのである。

これは、雷CEOが発表会前夜に悩み抜いた結果だった。ユーザーの受容度とシャオミの初心であるコストパフォーマンス、これらを熟慮した結果、3000元を分岐点とするハイエンド・スマートフォンの底値ともいえる価格を選んだ。

雷CEOは、「コストパフォーマンス」という単語を繰り返す。トップクラスのパーツを原価そのままの価格で届けるという意思の表れだ。

シャオミNote最上位機種はシャオミが運営するリアル店舗「小米之家」で初回オフライン販売を行うことになっている。この点からしても、この製品がシャオミにとってどれほど重要かがわかる。2999元というハイエンドな価格を考えれば、実機を触ってもらわなければ購入欲が減退してしまうと、雷CEOは述べる。

また、「中国版ジョブス」と呼ばれる雷CEOは5年前の時点ですでにスティーブ・ジョブズにならい、ユーザーが体験できる実店舗を繁華街にオープンしようと考えていた。客の出入りが激しく、きちんとしたサービスを提供し、そして最高の体験ができる、そういうショップを目指そうと。

だが、現在の「小米之家」は主にアフターサービスを担当しており、コストを考慮したうえで繁華街での出店には踏み切れていない。「もし実店舗を使った手法が成功すれば、シャオミを体験してもらううえでも極めて重要な意味を持つことになるだろう」と、雷CEOは語る。

ソフトからハードへ、そして金融やクラウドにも進出

雷CEOは、マネタイズについても言及した。

シャオミは今、ふさわしいマネタイズの手法を見つけ出すという急務を負っている。というのもスマホ市場はすでに曲がり角を迎えた。アメリカの市場調査機関「IDC」によると、2015年第1四半期における中国スマホ出荷台数は1億台前後で、前年同期比で2.5%のマイナスとなった。6年ぶりの減少である。

業界関係者は、シャオミはハードウェアに注力しすぎていると懸念している。米クアルコムのあるチップ・エンジニアは、「シャオミはソフトウェアの優位性を強調してきたはずだったのに、それがハードウェアの進化に追いつかなくなりつつある」と語る。

そんなシャオミは、5月11日にシャオミ金融サービスを正式に発表した。まず提携パートナーの「易方達基金」傘下の天天理財貨幣基金が資産管理する財テク商品「小米活期宝」が発売されている。近いうちに続けて、無担保貸付やインデックスファンド、証券業務など多様な金融サービスを提供する予定だ。

[訳注:「小米活期宝」はMMF(マネー・マネージメント・ファンド)の一種。安全性の高い資産に投資して1日ごとに収益を配分する。中国ではアリババが提供する「余額宝」など多くのIT企業関連の財テクサービスで紹介されている]

雷CEOは、シャオミ金融についてこう説明する。同金融はシャオミ・クラウドが提供するビッグデータに依拠している。

それによって、シャオミ・アカウントを持つユーザーがシャオミの取引記録を元に信用評価を受け、投資・貯蓄・融資などのサービスを受けることができるものだ。シャオミのECプラットフォームが同金融の主要な資金源になるという。

シャオミユーザーのロイヤリティが「資金源」に

そこから(アリババのように)第3者決済業務に参入するのかどうかについて尋ねると、雷CEOは「大胆に構想して、慎重に検討する」と答えた。ただし、金融業務がシャオミの今後の成長における重要な要素となっていくことは間違いないと断言した。

さらに、シャオミがこれまで集めたユーザーを通じて、もうひとつの意味の「流量の現金化」にチャレンジするという。すなわち、シャオミ製品を他社製品と比較することなく購入するような、忠誠心を持ったユーザーの存在だ。

そんな彼らを対象にシャオミのクラウド・サービス上に構築するシャオミ金融は、単一的な「カネを焼くマーケティングモデル」[訳注:大々的な投資でユーザーを集める一方で、収益に結びつかない事業形態]を打破するためのものだと、雷CEOは説明する。

そして、シャオミのマスコットキャラクター「米兎」は、昨年だけでキャラクターグッズが197万個も売れた。雷CEOはこれをシャオミのマネタイズにおける「チップ型モデル」だとみる。キャラクターグッズがもたらすものはユーザーからシャオミへのチップのようなものであり、その認知と支持を示しているのだ、と。

テレビ事業はコンテンツ開発に注力

注目すべきは、雷CEOが今回、マネタイズのルートとしてコンテンツ販売モデルに触れたことだ。昨年10月、大手ポータルサイト「新浪網」の総編集長だった陳彤氏を迎え入れ、コンテンツ担当に任命した。そして、一気に10億ドルという大金を「iQIYI」「優酷土豆」の二大動画配信サイトに出資した。

テレビ産業の競争力はコンテンツにかかっていると雷CEOは考えている。シャオミテレビの販売台数はまもなく月20万台を超えるが、コンテンツ・ビジネスの可能性はマーケットの想像をはるかに上回るものだと言う。

今回のインタビューで、雷CEOは改めて上場しないという態度を明らかにした。少なくとも今後5年間は上場を検討しないと語る雷CEOは、「急成長期にある現在、最も重要なのはしっかりと足場を固め、基盤を整えることだから」と述べている。

(執筆:王瓊慧/財新網、翻訳:高口康太、写真:imaginechina/アフロ)

※本連載は毎週火曜日に掲載予定です。

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