政策正常化めざす日銀に迫る決断の日、世界で最後のマイナス金利に幕
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ボルカー元財務長官が1970年代から続いた米国のしつこいインフレを強烈な引き締め策で抑えて長期に亘る成長の礎を築いて以来、中央銀行は経済をいかようにも動かせるとの万能論が、世界を席巻したように感じています。インフレ・デフレも経済が成長するのもしないのも、全て中央銀行の匙加減一つといった感覚です。
しかし、一国の中長期的な成長力に決定的な影響を及ぼすのは労働人口、設備投資、技術が自国でどれだけ伸びるかに依存する潜在成長率で、それを高める環境整備は、中央銀行より政府の責任の方が重い分野です。中央銀行がマクロ的な政策で動かせるものではありません。そうであるにも拘わらず、日銀がベースマネーを供給すればデフレがインフレに転じ、インフレ期待が高まれば人々の行動様式が変わって消費が増え、設備投資も盛んになって、日本の潜在成長率が高まって、成長軌道に戻れると主張したのが所謂リフレ論の本質であるように私は感じています。
しかしベースマネーを10年近くに亘って供給し続けたにも拘わらず意図した形のインフレは起きず、資源価格の上昇と円安が引き起こしたインフレは、消費者心理を逆に冷やして需要を減らす方向に働きました。政府と日銀はインフレ率を超える賃上げを企業に要請して解決しようとしていますけど、円安と価格転嫁で企業の利益が膨らんで下がった労働分配率を引き上げる形で賃上げしても効果は一時的に留まって、企業の生産性が上がらぬ限り、つまり日本の潜在成長率が高まらない限り、実質賃金は中長期的に下がり続けそうな気がします。
極端な円安を招いて庶民の購買力を世界の中で決定的に落とした異常な通貨毀損策は即刻改めて然るべきと思いますけれど、長く続いた異常な緩和と財政拡張の組み合わせで、日本には利上げに耐えられない構図が生まれています。今の時点金融政策を修正すれば、溜まりに溜まった歪が表面に浮き出て、日本の景気は冷えざるを得ないかも。
日銀万能論と言ってよいムードが蔓延るなかでそうなると、政府も世論も批判の矛先を日銀に向けるに違いありません。現に岸田総理は、デフレ脱却は見通せないとして日銀を牽制しています。それを承知で日銀は政策をどこまで修正することが出来るのか。いよいよ正念場に差し掛かって来たような・・・ (・・;私はマイナス金利解除には異論を唱えてきましたが、世の中では「既定路線」となっているそうでして、早くもこうした振り返り記事が出始めましたか。
今思い返しますと、マイナス金利は急激な円高進行に対する牽制として導入されたにもかかわらず、そうした(隠れた)意図に反して、円高が進行したこともあって、民間金融機関の方から「目の敵」にされる政策となってしまいました。
マイナス金利は日銀当座預金金利をマイナス0.1%にしただけでなく、2016年半ばに一時、5年、10年、15年、20年までのイールドをマイナス圏に「押し潰す」絶大な効果がありました。行き過ぎたのです。
仮にマイナス金利解除となった場合、同時に YCCを撤廃して自由変動に戻すことで本当に大丈夫なのでしょうか。マイナス金利解除は「いつ?」よりも「それでYCCは?」に注目しています。