ノボの減量薬「ウゴービ」、FDAが心疾患治療への適応拡大を承認
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ウゴービ(一般名 セマグルチド)はGLP-1受容体作動薬というグループに分類される薬です。セマグルチドは最初は糖尿病の治療に使用されていましたが、血糖値を下げるだけでなく、食欲を抑制して体重を減らす効果もあることがわかり、肥満治療にも使われるようになりました。(糖尿病治療薬の商品名はオゼンピック、肥満治療薬の商品名はウゴービ、となっています。)昨年の8月には、ウゴービが心血管疾患やそれによる死亡を抑制する効果があることが示され、そういった臨床試験の結果を鑑みて心血管疾患への適応拡大となっています。
注意すべき点は、臨床試験の対象となった患者は元々心臓の疾患がある肥満の患者さんであるということです。肥満がない方や心疾患がない方には効果があるかどうかは現時点では不明です。心疾患や脳梗塞のリスクを低減させるとありますが、あくまで、肥満の方に対して使用することによる効果である事を認識しておいてください。記事を読むと、対象者が書いていないため、全ての方が対象の様な誤解をされる方もいらっしゃるかもしれませんので、ご注意ください。
2024年3月8日、米国食品医薬品局 (FDA) は、死亡、心臓発作、心臓発作などの主要な心血管イベントのリスクを軽減するための「Wegovy」の追加適応症を承認したと発表しています。このようなデータ構築、追加効能取得は、市場での選択を促すために、製薬企業にとって重要な戦略になります。
「Wegovy」は、これまで高度肥満の方に対する効能を取得していましたが、「『肥満は健康被害を起こす』から、それを抑えると当然に健康被害がなくなる」とまでは言えませんでした。この理屈は他の医薬品や疾患でも同様で、例えば、高血圧症が一因となって起こり得るとされる脳・心・腎などへの障害が、降圧薬を投与したからと言って、減少するか否かは、降圧薬の種類によって様々であり、これを確認するためには、ターゲットを明確にした臨床試験が別途必要になります。
今回の米国における追加効能(既知の心臓病を有するとともに、食事・運動療法を行ってもなお肥満または過体重を有する成人における主要心血管イベントの抑制)取得は、対象患者の心血管障害の発症の抑制を確認するためにデザインされた大規模臨床試験(「SELECT」と名付けられた臨床第3相試験)の結果に基づいています。
この臨床試験「SELECT」は、心血管疾患が確立し、糖尿病のない過体重および肥満の成人を対象に、心血管標準治療に「Wegovy」2.4 mgまたは「プラセボ」を追加し、心血管障害の発症頻度を確認しています。2018年に開始されたこの試験には、17,604人の成人が登録され、41カ国の800以上の研究施設で実施されています。
その結果として、「Wegovy」群で、心血管死、非致死性心臓発作、または非致死性脳卒中からなる 3 つの部分からなる複合主要心血管イベント(Major Adverse Cardiovascular Events: MACE)の初発リスクを減少させたという結果が得られています。主なMACEは、「Wegovy」で治療された患者の 6.5% 、プラセボで 8.0% で発生しており、MACE の推定相対リスク減少率はプラセボと比較して 20% でした (HR 0.80 [95% CI: 0.72, 0.90] p <0.001、平均追跡期間 40 か月の絶対リスク減少率 1.5%)。