Twitter Inc. Chief Executive Officer Dick Costolo Interview

座右の銘は「今この瞬間を生きる」

2010年10月にツイッターの最高執行責任者(COO)から最高経営責任者(CEO)に昇格したディック・コストロは、ここ数年はタフな場面が続いている。2013年11月にニューヨーク証券取引所に上場。

ユーザーからの高い期待に応えて売り上げを伸ばすべく、経営陣を入れ替えてきた。しかし、4月末に発表した第1四半期の決算は、同社として初めてアナリストの予想を下回り、株価は急落した。

最近は市場もコストロのリーダーシップを注視しているが、本人は上機嫌。会社を率いる者として批判にどう向き合うか、ブルームバーグ・テレビジョンのエミリー・チャンにその哲学を語った(以下はインタビューの抜粋)。

──CEO就任から約5年で、プロダクト部門の責任者は5人変わりました。なかなか適任者が見つからないようですが、ツイッターのプロダクトマネジメントにふさわしい人とは。

コストロ:会社にとってその時々に適切なチームかどうかを、私は考えなければならない。マネジャーたちにはいつも、自分のチームを弁護するのではなく、向上させることが仕事だと話している。

私が現在のチームをとても誇りに思い、とても期待している理由のひとつは、現在の会社にとって最高のチームだと心から信じているからだ。私たちは必要なことはすべてやってきたし、チームを束ねるために必要な難しい選択を重ねてきた。

──現在のチームはどのくらい続きそうですか。

コストロ:さあ、わからないな。「今後何日間、何カ月、何年間、続くチームだ」と明言することはできない。

そういうことは、常に評価を更新する必要がある。先発投手を引っ張りすぎてはいけないんだ。このチームは今この瞬間にふさわしいかどうか、常に評価し続ける。

「年間最優秀CEO」の落とし穴

──あなたは即興コメディの舞台に立っていた頃、最前列の客から「最悪!」と野次を飛ばされたとか。

コストロ:言ってくれるね。「最悪!」だけじゃない。「最悪! 引っ込め!」だったよ。

でも、1時間の舞台のうち3分くらいのことだ。だからいいという話でもないが。(訳注:コストロは大学卒業後8年間、即興劇の役者をしていた)

──世界でもとりわけ注目され、詮索されるポストとはそういうものなんですね。知らない人から言われてしまう……。

「最悪! 引っ込め!」

そう言われたら、どんなふうに受け止めますか。お前なんかクビになれと言われて、1人の人間としてどう思いますか。

コストロ:数年前、あるところに招待されて、私の娘は「絶対に行くべきだ」いう意味のことを言った。でも、私は「行かないと思う」と答えた。

私という人間が招待されたのではなく、私の肩書きが招待されたからだ。ディック・コストロだからではなく、ツイッターのCEOだから。「年間最優秀CEO」といった類のものは、あまり気にしないように心している。その次は「年間最低CEO」が待っているんだ。

だから、そのようなことを言われても興奮しないし、正直なところ、それほど意識もしない。ただし、採用に影響を与えかねないとわかってからは、少しは気にするようにしている。

「ツイッターで働きたいけれど、ディックがいなくなって、すべてが変わったらどうしよう」では困るから。その点は意識するようにして、会社に誘っている人には「ご覧のとおり、そんな心配はいりません」と言っている。

2014年の末に娘からメールが来た。

「パパ、いいニュースと悪いニュースがあるの」

「悪いニュースは?」

「2014年の最低CEOのトップ5に入っていること」

「なるほど。いいニュースは?」

「パパは5位よ。いいニュースは5位だったこと」

私はこれを子どもたちへの教訓にしている。こういうことは、ひとつの見方にこだわりすぎてはいけないのだ。

過去に縛られず、未来にとらわれず

──あなた自身が(いくつかのベンチャーの)創業者だったことを考えた時、ツイッターの創業者ではないことはリーダーシップに影響を与えていますか。

コストロ:(ツイッターの共同創業者兼会長の)ジャック・ドーシーがここにいたら、「最初にツイッターに出資した時は、どんなふうに考えていたか」と質問できる。私に同じ質問をしても「私はツイッターに出資しなかった」と答えるだけだ。

創業者ではないCEOも、熟慮した意見をもち、必要なものを手に入れるタイミングを見極めることは可能だ。そのような資質は、会社の役に立つ。(6秒間の動画を共有するアプリ)「Vine(バイン)」を気に入ったジャックは、これだと確信して、すぐに私と話し合った。2人とも気に入って、「これは欲しい」と決めた(訳注:Vineが正式サービスを開始する前にツイッターが買収)。

ツイッターの開発チームが私のところに来て、(動画実況アプリの)「Periscope(ペリスコープ)」について説明した時も同じように感じた。「うちの傘下に収めよう」(訳注:今年1月に買収、3月にサービス開始)

──ディック・コストロの次のステージは。

コストロ:私は自分が今やっていることに集中している。自分に与えられた人生を生きる。生まれ育ったデトロイトでそう学んだ。今この瞬間を生きて、過去に縛られすぎず、2年後の自分がどうなっているかはあまり考えない。そういう生き方を心から支持している。

賢い生き方とは言えないだろう。それでも人生には、イブ(ツイッターの共同創業者エヴァン・ウィリアムズ)からDMで、「うちに来ないか(ツイッターを引き継がないか)?」と聞かれる時もある。そういう人生も楽しくていいと思って決断した。自分の子どもたちにも、重大な転機で同じように考えてほしい。

──ツイッターのCEOにぴったりですね。すべては瞬間で決まる。

コストロ:アメリカのような国で子どもを育てて教育を受けさせると、「この学校に入るためにこれをやらなくちゃ。いい成績を取るためにあれをやらなくちゃ。目標の点数を取らなくちゃ」と走り続けることになる。期待に応え、期待を超えられるように、常に訓練される。

そして世の中に出てみると、期待など存在しない。人生があるだけだ。人生とは、常に期待に応え、超えることではない。今を生きることなのだ。自分自身のために、友人たちのために生きることだ。そうすれば、いい人生になるだろう。(文中敬称略)

(執筆:Emily Chang and Sarah Frier、翻訳:矢羽野薫、写真:Bloomberg)

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