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【7日連続特集】「ビジネス書は本当にビジネスの役に立つのか」スタート

ビジネス書大賞発表。経営者、書店員、ピッカーに支持された作品は?

2015/4/27

ビジネス書大賞が発表。大賞は『ゼロ・トゥ・ワン』

2015年4月27日午前10時、1年間を代表するビジネス書を選出し、表彰する「ビジネス書大賞2015」が発表された。同賞は、2009年に創設された日本初のビジネス書アワードだ。

6回目の今回は、ビジネス書に造詣の深い企業経営、書店員、書評家、メディア関係者、アカデミーヒルズライブラリー会員、千代田区立図書館利用者に加え、「NewsPicks」のピッカー(読者)も「投票者」に加わり、集計の末、上位8作品をノミネート作に選定。そこから、さらにベスト3に絞り、投票を行い「1位=3点、2位=2点、3位=1点」で順位を決定、最終選考会にて各賞を選出した。

ちなみに、審査対象は2014年1月から2014年12月にかけて刊行されたビジネス書で、新書、文庫は書き下ろし作品のみ。フィクションは対象外だが物語形式のビジネス書は可としている。

さっそく、その結果について報告しよう。

大賞は『ゼロ・トゥ・ワン』(著:ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ、出版:NHK出版)が選ばれた。

「いまどき流行しているリーンスタートアップやピボットではなく、他社を凌駕する高度な技術で、小さな市場を独占することから始めることなど、多数ある起業やイノベーション関連の書籍の中でも主張が特徴的で刺激に富む」(松尾茂/ブログ「TravelBookCafe」)

「ビジネスに同じ瞬間は二度とない」という言葉のもと、リスクを選び目的志向をもって生きる人生を推奨しています。事業の創業者の重要な仕事は、初めにやるべきことを正しく行うことであり、土台に欠陥があっては偉大な企業を築くことはできないということを訴えているのが印象的でした。これからの未来を描いて、著者の言う「隠れた真実」を見つけ出したくなってきます」(北野有希子/株式会社TSUTAYA 商品本部 BOOKMDグループ 書籍MD チーム)

「逆張りの天才である著者が強調するのは、新しいビジネスは、競合相手が存在せず市場を圧倒的に独占できるまったく新しいコンセプトをもって始めろということ。企業間競争に対しては大変批判的で、企業は競争に明け暮れる結果、目先の利益に追われ、長期的な未来に対する備えができなくなってしまうので、独占こそが重要なのだと言っている。

皆が信じる『競争は、アメリカ人の思考を歪めている単なるイデオロギー』に過ぎないと言い、『競争』という強迫観念に駆られたアメリカの教育制度に対しても大変手厳しい。皆が著者のような生き方を選択できるかどうかは別として、あらゆる常識を明快に切って捨てる著者の主張の切れ味は、一度味わってみるべきである」(堀内勉/森ビル株式会社 取締役専務執行役員 アカデミーヒルズ担当)

など、ビジネス書の枠を超えた著者の思想や哲学に支持が集まった。

準大賞は『How Google Works』、書店賞は『エッセンシャル思考』

また、準大賞には『How Google Works』(著:エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジ、出版:日本経済新聞出版社)が選ばれた。

「プロダクトのつくり方、スマートクリエイティブと呼ばれる人材をどう採用し、マネジメントするのかをグーグルの具体的なエピソードを交えて書かれていたので、とても楽しく読めた」(吉岡 諒/株式会社ウィルゲート 専務取締役)

「グーグルに関する書籍は何冊も出ているが、本書は今まで描かれておらず知りたかったマネジメントに関することを中心に描かれており、グーグルの本当の強さを改めて知ることができた」(昼間匠/株式会社リブロ 商品部マネージャー)

など、グーグルという誰もが知る有名企業の働き方の本質を、現会長自身の手で、明日にでも生かせる実践的・具体的内容にまで落とし込んだ点を評価された。

さらに、書店賞には『エッセンシャル思考』(著:グレッグ・マキューン、出版:かんき出版)が選ばれた。

「忙しすぎる毎日において、『なにをやめるか』を明確に考え直させる本である。方法論だけではなく、『考え方としてどうするのか』をもう一度見直すきっかけになった」(丸山純孝/ブログ「エンジニアがビジネス書を斬る」)

「自分の本当に大事なことを選択し、それに集中する。これまで何度も言われてきたことではあるけれども、絶妙に織り交ぜられるエピソードとともに読み進めることであらためて納得させられる部分も多く、仕事のみならず、人生についても見つめ直すきっかけとなる一冊だと思います」(中島万里/株式会社TSUTAYA 商品本部 BOOK 部 TBN ユニット BOOKMD チーム)

加えて、出版業界の枠を超えて社会現象とまでなった『21世紀の資本』の翻訳を担当した山形浩生氏に審査員特別賞が贈られた。

 受賞書籍紹介 (1)

ビジネス書は本当にビジネスの役に立つのか?

ビジネス書大賞には、いずれも示唆に富む内容の、納得の顔ぶれが並んだと言っていいのではないだろうか。

ただ、読書は、読み手が適切な本を選び、それをどうそしゃくし味わうか、読者の力量も試される。

そこでNewsPicks編集部は、読書家として、書物に一家言のあるプロピッカーを中心に、「座右のビジネス書」を聞くと同時に「ビジネス書の読み方、付き合い方」について話を聞いた。

題して「ビジネス書は本当にビジネスの役に立つのか?」。具体的なラインナップは以下の通りだ。「ビジネス書をリアルビジネスに生かす秘訣」などについて、新たなヒントが見つかるはずだ。(本日の夕方、【Vol.1】を公開します。以降、毎日掲載します。)

*目次

【Vol.1】塩野誠「『失敗本』と『変遷本』から人間の機微を学べ」

【Vol.2】横田響子「ビジネス書は企画の突破口となる“ブレークスルーの種”だ」

【Vol.3】海老原嗣生「ビジネス書は『栄養ドリンク』。効果は錯覚だ」

【Vol.4】慎泰俊「読み直す価値のある『古典』も読むべき」

【Vol.5】大室正志「ビジネス書は『西洋薬』、文学は『漢方薬』」

【Vol.6】崔真淑「ビジネス書は『教養』には効くが『専門分野』には不十分」

【Vol.7】山崎元「経営者の自分語りをうのみにするのは危険だ」