ベネフィット・ワン、第一生命HDの対抗TOBでフェムテック業界が変わる?
🏢この記事でわかること
・第一生命HDがベネフィット・ワンに対抗TOBを実施することで、フェムテック業界に与える影響
・保険会社が、フェムテックの福利厚生を展開する理由
・フェムテックの福利厚生を展開している国内保険会社事例
1.第一生命HDの対抗TOB、住友生命保険のPREVENT買収
12月8日、第一生命ホールディングス(HD)は、企業向けの福利厚生サービスを手掛けるベネフィット・ワンに対して、賛同を得られることなどを条件として、2024年1月めどに株式公開買い付け(TOB)を実施した。
さらに同日、住友生命保険が、生活習慣病などの発症リスクが予測できる医療データ解析事業などを手掛けるベンチャー、PREVENT(プリベント)を買収し、子会社化したと発表と、立て続けに保険会社のTOBや買収が相次いだ。
複数の国内保険会社がこの1〜2年、フェムテックの福利厚生事業を展開しはじめている。
第一生命HDが、福利厚生サービス代行業界大手のベネフィット・ワンを買収すれば、フェムテックの福利厚生事業において、第一生命HDが有利になることは間違いない。
ではなぜ、国内保険会社が、フェムテックの福利厚生に力を入れているのか。次の章で紹介する。
2.保険会社が、フェムテックの福利厚生事業を展開する理由
①女性の月経回数増加による、婦人科系疾患のリスク増加
女性のライフスタイルの変化により、生涯月経回数が約50回から約450回と10倍近く増えている。その結果、子宮に負担がかかっており、婦人科系疾患(子宮内膜症・卵巣がんなど)のリスクが高まっている。
②主婦から企業の要職へ。女性が保険顧客として増加
約40年前は、共働き世帯43%であり、専業主婦世帯の方が多かった。しかし、2022年は73%の世帯が共働き世帯となり、女性の社会進出で「働き続けるライフスタイル」が拡大している。
これまでは家庭の大黒柱であった男性(夫)に対し、顧客は保険を掛けてきた。しかし、共働き世帯が増加し、重要顧客が女性(妻)にも広がる中、男性とは異なる健康リスクがある点でも、保険会社として「女性特有の健康課題」に注目していかなければならない。
③企業における「フェムテックの福利厚生」ニーズの増加
女性特有の健康問題による女性社員のパフォーマンスの低下は、離職や昇進辞退などにつながり、経営にも影響する。
女性の健康課題を解決する福利厚生制度を企業が導入し、社員をサポートすることで、パフォーマンス低下を防ぐメリットは大きい。そのため、フェムテックを活用した福利厚生制度を導入し、女性社員が安心して働ける環境づくりを行う企業が増加している。
さらにいくつかの保険会社は、フェムテックを活用した福利厚生事業を事業として展開しており、福利厚生分野におけるフェムテックは注目が高まっている。
3.フェムテックの福利厚生事業を展開している国内保険会社事例
①住友生命保険
企業向けに、不妊治療と仕事の両立支援を通じた「企業のDE&Iソリューション」としての福利厚生サービス「Whodo整場」を提供。(2023年10月)
②SOMPOひまわり生命保険
企業の健康経営や女性活躍推進の一環として、生理・妊娠・更年期など、からだの悩みやキャリアの不安など、働く女性のライフデザインを総合的に支援するサービス「Linkx Life is」を提供。(2022年9月)
③日本生命
企業の人的資本経営を支える福利厚生制度「ライフイベント・キャリア両立支援パッケージ」を開始。結婚・出産・育児など女性のライフステージに応じた悩みごとを解決する商品・サービスをパッケージとして提供(2023年10月)
④損害保険ジャパン
不妊治療を受けている企業の従業員およびその配偶者に対し、企業が福利厚生として金銭面で支える際の下支え商品として、「不妊治療と仕事の両立プラン」を提供。(2022年4月)
⑤三井住友海上火災保険
フェムテック領域のビジネス共創、データ利活用のコミュニティ「Value Add Femtech Community」に参加。このコミュニティは、健康課題に対する予防・治療・ケアデータの事業者間連携を支援し、新サービスを生み出すことを目的としている(2023年1月)
4.まとめ:保険会社が福利厚生サービスを買収する意味
保険会社がフェムテック事業を手がけるにあたり、避けて通れない課題として「保険業法」を考慮する必要がある。
保険会社は、保険会社本体で事業範囲・業務範囲が規制されるようなつくりになっているため、保険会社本体で行うことができる業務が限定されている。
そのため、保険会社のフェムテック新規事業は、間接的に保険につながるような福利厚生事業が多いと推測している。
第一生命HDがベネフィット・ワンにTOBを提案したことで、保険会社が力を入れているフェムテックの福利厚生市場が、大きく変わってくるかもしれない。
5.お知らせ:保険業界も注目する新たなビジネス領域、フェムテックの可能性
保険業界も注目するフェムテックについて、過去に記事も書いています。今回は国内保険会社事例を紹介しましたが、こちらの記事では海外の保険会社事例もご紹介しています。
ぜひご覧ください!
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トップ画像:UnsplashのSamsonが撮影した写真
コメント
注目のコメント
ベネフィット・ワン、第一生命HDの対抗TOBで買収が実施された場合、日本のフェムテック業界、特に福利厚生分野が大きく変わる可能性があると感じています。
保険会社がフェムテック事業を手がけるにあたり、避けて通れない課題として「保険業法」を考慮する必要があります。
保険会社は、保険会社本体で事業範囲・業務範囲が規制されるようなつくりになっているため、保険会社本体で行うことができる業務が限定されています。
そのため、保険会社のフェムテック新規事業は、間接的に保険につながるような福利厚生事業が多いため、複数の保険会社がフェムテックの福利厚生事業をこの1-2年で手がけています。
今後の流れに要注目です。
保険会社×フェムテックの事例はこちらもご参考に↓
・保険業界も注目する新たなビジネス領域、フェムテック(Femtech)の可能性
https://thefinance.jp/strategy/230731婦人科系リスクを基軸に保険会社を見たことなかったのですが、生涯月経回数の増加は考えたことなかったですね。その分子宮に負荷がかかる、と。確かに、子供産まないor産んでも1人だと月経回数が上がるって、なるほどです。
全く知らない領域でした、こういった業界があること自体
女性の健康課題をテクノロジーの力で解決する「フェムテック」は、女性のライフステージ全体にわたり、保険業界にも新たなビジネスチャンスを与えている
保険会社は、保険会社本体で事業範囲・業務範囲が規制されるようなつくりになっているため、保険会社本体で行うことができる業務が限定されている。
そのため、保険会社のフェムテック新規事業は、間接的に保険につながるような福利厚生事業が多いと推測している