2023/11/24

【白熱】次世代CTOが集結。「Startup CTO of the year 2023 」、栄冠は誰の手に?

今年も、あの激動の舞台が帰ってきた──。
2023年11月22日、水曜日。地上から200mをこえる、東京虎ノ門の虎ノ門ヒルズ ステーションタワー46F「TOKYO NODE HALL」場内は、独特な緊張感と異様な熱気に包まれていた。
創業5年以内のスタートアップCTOによる白熱のピッチコンテスト、 「Startup CTO of the year 2023 powered by Amazon Web Services」。
CTOの挑戦を讃えたい/スポットライトが当たる場をつくりたいという思いから、2014年に始動したCTO of the year。これまで計75社(今年登壇の6社含む)のスタートアップCTOが登壇し、今年で10周年を迎えた。
登壇者は、事前応募のなかから厳正なる審査を経て選ばれた以下6名のファイナリストたち。
1.ミチビク株式会社 金杉優樹氏
2.Turing株式会社 青木俊介氏
3.アスエネ株式会社 石坂達也氏
4.株式会社ALGO ARTIS 武藤悠輔氏
5.株式会社tacoms 井上将斗氏
6.株式会社フツパー 弓場一輝
最終審査員には、グリー CTO/デジタル庁 CTO 藤本真樹氏、ビジョナル CTO 竹内真氏、東京大学 FoundX ディレクター 馬田隆明氏、AWSスタートアップ事業本部技術統括部本部長 塚田朗弘氏、Yazawa Ventures CEO 矢澤麻里子氏など、経営と技術の関係性に詳しいメンバーが集結。
技術課題の解決を通じた経営インパクトやリーダーシップなど、以下大きく4つの基準を評価指標に表彰を行った。
①課題解決力(経営インパクト:技術課題の解決を通じた経営・事業成長への貢献度)
②組織開発力(組織としての強さや開発者体験の設計力)
③技術力(技術、アーキテクチャなどの独自性や先進性の高さ)
④リーダーシップ(CTO個人のビジョンや人間性などリーダーとしての資質)
今年、その新たな歴史と物語に名を刻み、栄冠を手にしたのは──。Startup CTO of the year 2023、速報レポートをお届けする。
INDEX
  • 1.ミチビクCTO 金杉優樹
  • 2.Turing CTO 青木俊介
  • 3.アスエネ VPoE 石坂達也 
  • 4.ALGO ARTIS VPoE 武藤悠輔
  • 5.tacoms CTO 井上将斗 
  • 6.フツパー CTO 弓場一輝 
  • Startup CTO of the year 2023、栄冠は誰の手に?

1.ミチビクCTO 金杉優樹

 1人目の登壇者は、ミチビク CTOの金杉 優樹氏。「経営を、あるべき姿へ導く。」をミッションに、取締役会の「運営効率化」や「見える化」を実現するサービスを提供する。
 金杉氏は、「取締役会に革命を。100%フルリモート組織で切り開く未来」と題して発表。
名古屋大学卒。北欧最古のスウェーデンのウプサラ大学へ留学。新卒でワークスアプリケーションズに入社し、エンジニアとして従事する。その後、スタートアップ企業のプロダクトマネージャー、テックリードを経て、2020年にフルスタックエンジニアとして独立。2021年4月にミチビクを創業。
 自ら400以上の商談記録をチェックして気づいた「議事録の作成」の課題に対してChatGPTを活用した機能開発や、効率的なオフショア開発体制や規模拡大を見据えた組織開発について紹介。ピッチの最後には、「全ての上場企業の取締役会をDX化し、日本の株価を10倍にしたい」と力強く締めくくった。
 質疑応答では、「今後の組織拡大を見据えた課題」や「取締役会の効率化の先をどう捉えているか」などの問いが寄せられた。
東京大学 FoundX ディレクター 馬田隆明氏
 現状のフルリモート体制を前提に組織拡大を目指したい一方で、ビジネスサイドとのコミュニケーションを課題として捉えていることや分析プラットフォームを軸に取締役会の「質向上」に重きを置きたいと答えた。

2.Turing CTO 青木俊介

 We Overtake Tesla──。2人目の登壇者は、Turing CTOの青木 俊介氏。打倒テスラを掲げ、完全自動運転EVの開発および量産化を目指している。
米・カーネギーメロン大学 計算機工学科で博士号取得。米国では自動運転システムの開発・研究に従事し、サイバー信号機の開発や大手自動車メーカーの運転支援ソフトウェアの開発に携わる。2021年より国立情報学研究所 助教として着任し、青木研究室を主宰。名古屋大学 特任准教授・JSTさきがけ研究員を兼任。MITテクノロジーレビュージャパンより35歳未満のイノベーターIU35に選出。2021年にTuring社を共同創業し、技術部門を統括。
 製造業・モノづくりは伝統的に強いが、ソフトウェアによる「変化」で負けてきた日本。そんななか、テスラ誕生により日本の基幹産業である製造業も市場を奪われつつある危機的状況が、Turingの創業につながったと紹介した。
 創業後、日本産の完全自動運転EVの開発・販売を創業からわずか1年半で達成したことや、Turing独自のAI・自動運転に対する思想、CTOとして大切にしていることを明かしてくれた。
 質疑応答では、「エンジニアの組織構成」や「日本の顧客ニーズ」などに関する質問を投げかけられたが、独自の開発体制やTuringを応援してくれる人、ストーリー・未来をともに信じてくれる人を見つける大切さを語った。
AWSスタートアップ事業本部 技術統括部 本部長 塚田朗弘氏

3.アスエネ VPoE 石坂達也 

 3社目に登壇したのは、アスエネ VPoEの石坂達也氏。同社は「次世代によりよい世界を」をミッションに、CO2排出量の可視化・削減・報告サービス「アスエネ」を提供している。
 石坂氏は、「急成長プロダクトを支えるエンジニア組織づくり」と題して発表。
大学院を卒業後、楽天に入社し、Webエンジニアとして出前宅配サービスやCPC広告の入稿システムの開発・運用を担当。 2016年よりリクルートにて業務支援サービスのシステム開発・運用に従事。その後、飲食領域および美容領域の開発統括として開発組織のマネジメントに従事。アスエネではVP of Engineering(VPoE) として、プロダクトの開発・運用や組織運営を行っている。
 参画当時の経営課題として、社会課題やソリューションは明確なのに、それを実装する「エンジニアがいない」ことが最大の課題だったと話した。
 そこで選択したのが、「フリーランスエンジニアとの共創」。仲間を集め、文化を作り、プロダクトを作るサイクルを意識しながら、「自走力を育む文化づくり」に挑戦してきたことを語った。
 「新機能を追加する際の経営判断」についての質問には、ユーザーからフィードバックを得ながら、ニーズに対して愚直に取り組んできたと答えた。
Yazawa Ventures CEO 矢澤麻里子氏

4.ALGO ARTIS VPoE 武藤悠輔

 4社目に登壇したのは、ALGO ARTIS VPoEの武藤悠輔氏。「社会基盤の最適化」をミッションに、サプライチェーンの計画最適化AIサービスを提供している。
 武藤氏は、「大きな社会課題への技術的挑戦」と題して発表。「サプライチェーン計画業務」における技術継承の課題に対して、AIを活用した属人化の解消やコスト削減の実現の取り組みについて話した。
慶應義塾大学物理学科を首席で卒業後、スマホアプリ制作会社を起業しCTOとして従事。2019年にDeNAに入社し、認証・認可基盤を中心にさまざまなプロダクト開発を行った。2021年7月にDeNAからスピンオフしてALGO ARTISを設立する際に取締役に就任し、現在に至る。ALGO ARTISでは、「社会基盤の最適化」の実現を目指し、VPoE として組織づくりからプロダクト開発まで幅広く推進している。
 過去のデータが基本存在しないサプライチェーンの計画問題に対しては、競技プログラミングコンテストから最適解を見つけ出す技術を学習・適用していること。また競技プログラマー就職人気ランキングNO.2の最適化集団を実現していることも紹介した。
 質疑応答では、「CTOではなく、VPoEを名乗る理由(VPoEとしての責務やあり方)」を問われ、いかに強い技術を持ったエンジニアが活躍できるフィールドを作れるかが自らの役割であり、自分よりも優秀なエンジニアを採用できる環境を作ることを大切にしていると熱を込めて語った。
グリー CTO/デジタル庁 CTO 藤本真樹氏

5.tacoms CTO 井上将斗 

 5人目に登壇したのは、tacoms CTOの井上将斗氏。同社は、「発明で、半径5mの人を幸せに」をミッションに、デリバリー注文一元管理サービス「Camel」などを開発・提供している。
 井上氏は、「API連携が牽引する事業成長」をテーマに、API連携ネットワークの構築を基点とした事業戦略について紹介。
1998年生まれ。大学2年時より医療系メガベンチャー、マーケティング系スタートアップなどの長期インターンを経験。大学在学中の2020年3月に株式会社tacomsに参画。プロダクト開発業務や開発組織作り、お客様やパートナー企業との折衝、プロダクトマネジメントなど事業グロースに関わる業務に幅広く携わる。
 「迅速」「柔軟」「高品質」を意識しながら、API連携ネットワークが事業成長を加速させたこと。またCTOとして大切にすることとして、開発以外も含めた全領域を横断した課題解決の必要性や多くの人生を背負い経営に取り組む覚悟について話した。
 API連携ネットワークの構築における工夫に関する質問には、これから連携先のターゲットも広がるなかで新たな戦略も見据えたいと語った。
ビジョナル CTO 竹内真氏

6.フツパー CTO 弓場一輝 

 最後の登壇者は、フツパー CTOの弓場一輝氏。同社は、「最新テクノロジーを確かな労働力に」をミッションに、外観検査自動化AI「メキキバイト」をはじめ4つのプロダクトを開発・提供している。
 弓場氏は、「世界で戦えるAI企業を目指すためのプロダクト戦略」と題して発表。
広島県呉市出身。広島大学大学院先端物質科学研究科修了。研究テーマはゲノム編集。バイオ技術を主体とした専門分野の研究を行う中で、機械学習及び深層学習周辺の技術を習得。学生時代に複数のAIモデル構築を経験し、新卒でフツパーを共同創業。CTOとして、組織マネジメントや新規プロダクト開発に関わる。NVIDIA「GTC 2020」登壇実績あり。
 インターネット上にない「データセット」を作ることが、より強固なプロダクト開発につながることに着目したことを明かした。
 今後は、検品検査領域から工場全体の最適化や無人工場の建設などの未来も見据えながら、製造業の人手不足の課題を解決し、全製造業の現場で本当に役立つソリューションを提供したいと締めくくった。
 質疑応答では、4期目で4つのプロダクト開発に取り組む戦略の背景に関する質問を投げかけられ、製造業全体の課題を俯瞰したときにさまざまな入り口があることやまずは課題に対してプロダクトごとに解決する戦略について語った。

Startup CTO of the year 2023、栄冠は誰の手に?

 今年も個性豊かなCTOが集結し、白熱の舞台となったピッチコンテスト。
 表彰式では、視聴者による投票で決まる「オーディエンス賞」と「Startup CTO of the year 2023」が発表された。
 高まる緊張感のなか、約150近くの投票が集まったオーディエンス賞を受賞したのは、Turing CTOの青木氏だった。
 審査員のAWSスタートアップ事業本部 技術統括部 本部長の塚田氏からは、「大きなインパクトのある事業・人にとても惹きつけられた」とコメントが寄せられた。
 そして栄えある「Startup CTO of the year 2023」の栄冠を手にしたのは、ALGO ARTIS VPoEの武藤氏だ。
 グリー CTO/デジタル庁 CTO 藤本氏からは、「今年も非常にレベルの高いピッチだった。理由としては、まずシンプルに課題を明確に捉えしっかり成果が出ていると感じたこと。また技術者とビジネスを結びつけることがCTOとしての役割であり、会社にとっての自分のポジションや動き方を考えていることが武藤さんのピッチから感じられた」とコメントが寄せられた。
 ALGO ARTIS VPoEの武藤氏は、「ALGO ARTISの事業は、いつも分かりにくいということで評価される機会は少なかったが、今回こうして評価してもらえたこと、また会社のことも知ってもらえたことをとても嬉しく思っています」と顔をほころばせながらコメントした。
 過去のイベントのなかでも、多様な課題解決に挑戦するスタートアップCTOが集結したStartup CTO of the year 2023。記事の最後には、表彰式で各最終審査員からファイナリストへ向けて送られたメッセージを紹介する。
 「1回目から審査に携わっているが、過去と比べて採用も難しければ、技術も奥深く追求しないと戦えない時代を迎えたと感じます。逆にいうと、私たちの時代では届かなかった領域にまで技術で打ち込むことができると思うので、これからも素晴らしい事業・サービスづくりを応援しています」(ビジョナル CTO 竹内氏)
 「別の評価基準が設定されていれば、別の会社が選ばれていた可能性もあるでしょうし、時間がもっと長ければより魅力が伝わることもあったと思います。今回、この制約のなかで結果は出たものの、技術で会社・社会をよりよくしたい共通の思いを持った方々だと思うので、この場が良いネットワークのきっかけになればと思います。ぜひこれからも難しい課題を選択し、それを技術で解決し、世界を変えていくことを期待しています」(東京大学 FoundX ディレクター 馬田氏)
 「こうしたCTOを表彰する機会自体が少ないなか、さまざまな業種・業態のCTOの方々を審査するのは決して簡単ではありませんでした。ただどのピッチも素晴らしく、日本の未来は明るいんじゃないかと実感しました。自信を持って、自社の成長、ひいては日本の経済力の発展に向けて、みなさまで力を合わせていけたら良いなと思います」(Yazawa Ventures CEO 矢澤氏)
Startup CTO of the year2023 powered by Amazon Web Services
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