[東京 14日 ロイター] - 政府が今年6月に改訂する「日本再興戦略」では、情報技術やデータ活用を産業や医療介護、行政サービスの幅広い分野に取り込む戦略を盛り込めるのかどうかが焦点となっている。日本は「インターネット・オブ・シングス」(IoT)の技術で欧米に大きく後れを取っており、今のままでは産業競争力の柱を失いかねないとの危惧が政府部内にある。予算措置を含め具体化できるのか、成長戦略の命運を左右することになりそうだ。

今年の成長戦略取りまとめに向けて、産業競争力会議では、自動運転を取り入れた次世代交通システムや、電力データ活用による効率的なエネルギーシステム、診療データやビッグデータを活用した医療の高度化や創薬開発などの議論が行われてきた。

産業競争力強化に加えて、人口減少・高齢化社会での様々な問題解決にもつながると期待されている。

同会議で、こうした議論に参加している経済産業省では、産業構造審議会の情報経済小委員会で15日に、身の回りの様々な製品をネットで接続するIoTの活用に向けた施策の中間とりまとめを行う。

企業や業種の垣根を超えて、事業データ共有の仲介ベンチャーの支援や、ビッグデータ提供のルール整備、IoT活用人材の強化支援、サイバー攻撃への対応強化などを盛り込むことなどが中心となるとみられる。同省は、来年度予算にIoTへの取り組みに向けた予算の獲得にも乗り出す。

安倍晋三政権は、こうした議論や報告を踏まえ、昨年と同様6月に「日本再興戦略」15年度版として閣議決定する。

昨年は「稼ぐ力」の回復に向けて、コーポレートガバナンス強化やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直し、法人税改革を柱に掲げた。

今年の再興戦略では、先進国で急速に実用化への動きが加速しているIoT活用に向け、政府の取り組みが盛り込まれるかに注目が集まる。

というのも、日本は、産業分野や医療介護分野、そして行政サービス面でも、この面で先行する欧米に対し、「周回遅れ」となっているためだ。

中でも米独両国では、社内外でのデータのネットワーク化や、最適生産・流通への活用が数年前から動き出している。

ドイツでは国を挙げて「インダストリー4.0」と名付け、第4の産業革命として製造業の復活に貢献している。企業間でのデータネットワークで生産・在庫の最適管理や、人口知能によるロボットの導入が生産性向上につながっている。

米国でも、グーグル<GOOGL.O>やアマゾン<AMZN.O>、ゼネラル・エレクトリック(GE)<GE.N>といった先端企業がデータ活用により、全く新たなビジネスを生み出している。

6月の再興戦略に向けて産業競争力会議では、このほかに水道事業など公的事業の民営化や、次世代医療へのデジタル基盤整備、対日投資やインバウンド促進など、幅広い分野で議論を進める方針だ。

(中川泉 編集:山口貴也)